兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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フリューゲル・クラネル

 

「父様、兄様、じきに夕食が始まります」

 

「あ、フリューゲル」

 

 ベルが屋上で皆と話している時に金髪のハーフ・エルフである『フリューゲル』がそこに現れた。この中で母親がこの場にいない唯一の子供、というか呼んだら何かしらが爆発して面倒になるローリエの子供とあってヘスティアも注目していた。

 

「ん?」

 

 そしてヘスティアは早速違和感に気づいた。というか他の者達もそれに気づいた。なんだか着ている服がピチピチしているのだ。

 

「お前それこの時代の父さんの服だろ」

メロ

 

「ハイそのとおりですメロ兄様、その慧眼、流石父様の第一世代」

フリューゲル

 

「お前が1個下なだけだろ」

メロ

 

「兄様の愛のなせる行いです」

フリューゲル

 

「やめろ恥ずかしい」

メロ

 

 フリューゲルのまださほど彼と関わりがないのに感じてしまった違和感。それは『ピチピチの服装』すなわち『14歳のベルの私服』

 フリューゲルは17歳のためか14歳のベルの服は少し小さく、ボタンが引っ張られてあちこちが伸びていた。

 

「この時代の父様の日常、活動、時間、同年代と比べて細身だったことがこの生肌で感じられる機会などこの先あるかどうか分かりませんから」

 

「あぅ」

 

 実の息子から細身と言われて若干ショックを受けるベルを差し置いて。他の者達は『なんで父の服着てんだよ』という目をフリューゲルに向けている。ぶっちゃけ瞳が冷たい

 

 

「父真(とうしん)に近づき父理(とうり)を知る。それは私の存在証明」

 

 

 

なんか言い出した

 

こわっ

 

 

「この世のありとあらゆる概念に通ずる父様の魅力を新しく知る機会に巡り会えたことは最上の幸運であることに疑いよう無し!自分の幸運を誇りましょう兄様!父様がその強さと生命活動と天上天下唯我独尊を磨いた始まりの全盛期を『ファザっと』体験出来るこの夢のような現実に!!」

 

 

 左手を額に当てて右手を横一線の直角にしてポーズを取り、全員の目が更に冷たくなっていく、ひっそりと見ていたヘグニだけはちょっと嬉しそうだった。

 

「ベル、こいつは何を言っている?」

「今『ファザっと』って言った?」

「なんだよ『ファザっと』って?」

「父親(ファザー)とかけてるのか?」

 

「うん、僕にもわかりません」

 

(親のお前もわかんねぇのかよ)

 

「じゃあヘディン訳せ、ヘグニと同類だろ」

「「「いつもやってるだろ」」」

 

「ヘグニは頭が空で思考は雑で回路も凡人以下だから訳せただけだ。」

 

「シクシク(涙)」

 

「だがこのハーフ・エルフの言ってることは全くわからん。どういう教育をしているバカ弟子」

 

「師匠(マスター)も協力してくれたんですけどいつの間にかこうなりました」

 

「私が調教してなおこれなのか、、、、、」

 

「蝶も花も光も彩も水も熱も心も『ファザっと』通ずる慈しみの心を産まれる前から教えてくれた父様がやはり一番『ファザっと』です」

 

「「「「全然わからん、馬鹿ということしかわからん」」」」

 

「私はいわば殉教者。つまり皆様の同類です!」

 

「「「「「死ね」」」」」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

竈火の館・食堂

 

「ヘイズ母たちこの世の終わりみたいな顔して帰ってったね」

アスタネット

 

「あうぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「まぁ仕方ないよ、実際お馬鹿だし」

トライア

 

「うぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「てかいつの間にかロキ・ファミリアの人も帰ってるし」

シュバル

 

「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「釈然としない顔で帰ってったな、まぁ俺たちも実際この時代では部外者だが」

アコーディオ

 

「ひぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「そんな悲しいこと言わないでよ兄さん!時代が違ってもここは私たちの家だよ!」

モニカ

 

「うぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「そうなんだけど、、、その、、、、、」

リコ

 

「ふぐうはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「「「どうした春母!?」」」

 

「すいません!すいません!けどこれが親子なんだと思うと楽しくて感極まってしまってぇぇぇぇ!」

 

 干からびて死ぬのでは?と思ってしまうほど春姫は涙と鼻水を流しまくっていた。ついでに言うと配膳されてきた料理に入るのではないかと皆がやきもきしていた

 

「ツヅミ殿と夕食の準備をしてからずっとこの調子で(調理中に涙やら鼻水やらが入りそうになったのは春姫殿の名誉のために黙っておこう、実際入っていない、、、、と思う)」

 

 ツヅミという未来の息子に触れて漠然と思い描いていた未来があるのだと知った春姫は心から大歓喜し、その喜びを抑えられないでいた。肝心のツヅミは恥ずかしそうだった。

 

 現在ホームには今のヘスティア・ファミリアと未来の者達しかいないのだが、監視としてフレイヤ・ファミリアの何人かは外で見張っている。

 

「ぐるるるるるるるるるるるるるるるる!!」

 

「ガルルるるるるるるるるるるるるるる!!」

 

((((もはや人の言葉を捨てたか))))

 

 昼間の件で絶賛喧嘩中のポンコツ親子が犬の鳴き声よろしくな顔で正面から睨み合っている。

 

 イヤなんでメンチ切るの分かってんのに正面同士の椅子に座るんだよ

 と誰かが言った気がする

 

 他にも、リリルカは未来の自分のグレように身体を真っ白にして椅子に腰掛けている。その口に卵焼きをフォークで突っ込むのがシュバルとアスタネットの実子兄妹、どちらも憎たらしいニヤけ顔でだ

 

 ニイナはチェロナとセロナの間に強制的に座らされてまるでペットの猫のごとく撫でられて突かれ弄ばれていた。すでに体力限界まで遊ばれたのかぐったりしている。双子はまだまだ全然元気である。

 比較的無事なのはヴェルフと命とヘスティア、だがこの3人も超展開に疲れ切っていた。

 

 しかし食堂に未来のベルが入ってきた瞬間、空気が変わった。子供達はそのままだが、女たちがビクッ!となって背筋をピンと張る。

 

 そりゃそうだ。世界が違ってもその男は未来で自分を抱いているのだから

 女達はベルと目を合わせず顔を真っ赤にしてカチンコチンになっていた。会議でベルと会話していたはずのリリルカもふくめてだ。苦労人お仕事モードが解除されているからかベルの顔をまともに見れなかった。

 そして未来のベルは予想していたのが苦笑いを浮かべた。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はふぅ、、、ベル様と話せませんでした」

 

「仕方ないですよ。状況が異端すぎますから」

 

「優しぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ですぅぅ(泣)」

 

 使い終わった皿を洗いながら親子は会話していた。まぁ会話というより感極まる春姫の言葉にツヅミが相槌を打っているだけとも思えるが

 

「そ!それであの!残りの6人の娘たちは!?」

 

 春姫はツヅミから聞いていた。自分が何度も何度も妄想して、なんなら言葉にしていた【子供が七人産まれた】という未来が来ていることに、男一人女六人はさすがに予想外だったが、そんな物は今のハイになっている春姫には関係がなかった。

 

「えっと、そうですね、6人もいるのでどこから話せば」

 

「話が長くなるならお茶でも入れましょうか?」

 

「「!」」

 

 後ろからの声に二人が振り返ると、そこには【フリューゲル】がいつの間にかティーセットを用意していた。それは今の時代のファミリアのものだが、同じタイプをフリューゲルは使っているので勝手にテキパキと準備していた。

 

「それと貴方もいかがですか?守護天使様」

 

「ファ!!?」

 

 春姫の護衛として気配を消してホームに残っていたヘグニにフリューゲルは話しかけた。ちなみにヘグニを見つけられたのは父親譲りの視線敏感体質によるもの

 

「思えばこの時代からすでに春母様の護衛をしていたのでしたね、そして時代は巡り今度は我々を護衛してくれている。今も生まれ続けている弟、妹たちを」

 

「そ、そうなんだ」

 

 突然話しかけられて隠れたまま挙動不審になるヘグニ、彼はどうするべきか悩んでいた。ベルと似ている子たちなら正直平気だ。安心するから、だが母親似の我の強い子達は正直苦手だ。同類っぽくて少しシンパシーを感じたが、これは人見知りの問題。まぁつまりどうしようもなかった。

 

のだが

 

「話の糧に我々だけが知っている【帝王(カイザー)の絶対に知られたくない知られざる秘密】を知りたくありませんか?」

 

「いただきます」

 

「え!?いつの間に!!?」

 

 フリューゲルの発言を聞いた瞬間、ヘグニは俊足でフリューゲルの目の前に降り立ちティーセットが用意されたテーブルに着いていた。

 

 それほどまでに【ヘディンの絶対に知られたくない知られざる秘密】というワードはあまりにも甘美すぎだ。多分四兄弟とか暗黒治癒師ならもっと早く動いている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「フリューゲル様は、ベル様が大好きなのですね、、、あ、ほかの方たちにも言えることですけど」

 

「えぇ大好きですよ。弱さや強さ、光と闇、善と悪で開いてしまう絶対の隔絶を自らの足で一歩一歩踏み越えて橋をかけるその姿は私が母様の腹のなかで脳という部位ができた瞬間から私の脳を焼き続けている」

 

「え、えっと」

 

「満たされることのない飢えた生き物であることが前提の人類をその欠陥ごと受け入れて愛と愛以外で満たす御業は産まれる前から此の世界に突如として煌めいた幸運をもたらす幸せの兎様」

 

「あ、あの〜」

 

「その魅力は多岐にわたりとても人の口では全てを説明できないので断腸の思いで言葉を選びますが言うなれば父様の魅力は『説明できる善意』と『説明できない御心』にあると思います。説明できる善意はそのままの意味で人として忘れてはいけない一線や死生や善悪を定めない者が殆どの世の中で父様はブレず曲げずめげずたとえ理解出来ない存在に出会ったとしてもその存在のいい所を見つけてしまうのは父様が善意に満ちているから、感情でフィルターがかかり気味な人類とは違って父様は壁が二、三枚少ない状態で人を見れる。目に見えない凄さではありますがそれは素晴らしく尊いことだと分かる方は分かるでしょう。しかしそれを貫くとなれば話は別、良いものばかりではないし良い人ばかりではないのが現実、嫌なことがあれば擦り切れて折れて歩みを止めてしまうのはありふれたよくあること、しかしそれをさせはしまいと何度でも善意をまとい傷つきながら悪しき者に近寄る。それは上記にも言ったもう一つの魅力『説明出来ない御心』それがあるから父様は父様であってくれるそしてその結果が私たちという父様が生み出してくれた命そのもの安易にまとめることをお許しくださいお父様、何が言いたいかというと最高最上最強至高天上それこそまさに『ファザっと』という」

 

「フリューゲル、紅茶おかわり」

ツヅミ

 

「ハイどうぞ」

 

 開始数秒で全力全開な推し推しパワーを見せつけられ圧倒された春姫、会話を止める最善手を選択したツヅミはよくやっている。普段はお茶を淹れる側だから

 

「その〜今更なんだけどヘディンの秘密なんて話してよかったのかな、、、、君がヘディンに怒られるんじゃ」

 

 ヘグニはフリューゲルの提示した誘惑に秒で釣られはしたが、少ししたら冷静になって彼はヤバいのでは?いろんな意味で、と思い始めていた

 

「ご安心ください、帝王(カイザー)は寛大なお方、それにこの秘密は知られても帝王(カイザー)の名誉を傷つけるものではありません。むしろ好感度が上がる可能性すらあります。バレたら折檻は免れませんが」

フリューゲル

 

(寛大?ヘディンから一番遠い言葉じゃないか)

 

「人の秘密を話してはいけないけど、正直僕もこの秘密は話してもいいかなと思っています。帝王(カイザー)は厳しいだけで怖いの人じゃないって思ってほしいです。」

ツヅミ

 

 まだ知り合って少しだが、わかりやすく真面目で素直なツヅミまでも許容するならそれはヘディンを陥れる秘密ではないのだろう。でもヘディンは怖いよ?普通に残虐な暴暴暴暴暴暴暴暴暴暴君だよ?

 

「ふむ、やはり父様の子供とは言え所詮は他人、私自身の価値など些事たるもの」

 

「そ、そういうわけじゃ」

 

「なのでまずは共感することから始めましょう」

 

「え?」

 

 共感?ナンの事?何するの?ヘグニが首を傾げているとフリューゲルは椅子から立ち上がり少しテーブルから離れる

 

そして徐にナイフを取り出して逆手に持ち

 

 

 

「父様の基礎体勢(ノーマル・ロイヤリティ)!!」

 

 

 ビシィ!!と声を出してフリューゲルはベルが戦うときの基本体勢を真似した。

 

 

 

「「、、、、、、、、、、、???」」

 

 

 

意味がわからなかった

 

 

「では次はツヅミ兄様!」

 

「僕!?」

 

そして弟の奇行に頭を抱えていた常識人なツヅミは巻き込まれた

 

巻き込まれはしたが

 

「と、父さんの袈裟斬り体勢!」

 

 フリューゲルから渡されたナイフを手にしてベルの動きを模倣することには力を入れていた。彼もまたベルを心から尊敬しているのである。

 

「では次は春母!」

 

「わたくし!?」

 

「いきなりで思いつかないならモチーフを定めましょう!お題は!『椅子に座ってダンジョンのことを考えている父様!』」

 

「あ、え、こ、こう!(ギュッ)」

 

(出来るんだ!?)

 

 春姫は椅子に座ったまま両手を握りしめて少し猫背気味になり目を閉じていかにも考えているようなポーズを取った。普段からベルを見ているので簡単だった

 

(あれ!これ俺もやる流れだ!いやだいやだ恥ずかしい!)

 

 そして次は自分がやらされると今更ながら気づいたヘグニはアワアワし始めてその場から逃げ出そうとしたその時

 

 

「守護天使様!『ナイフについたモンスターの血を拭う父様』です!」

 

 

「こう!(キュピ!)、、、、は!つい!」

 

 シルからベルの監視を常日頃命令されているヘグニにとってもそれは簡単な事ですぐにイメージ出来ることだった。

 

「さぁ次は皆さん一緒に『訓練終わりの最後に大振りを決める父様』をイメージしてぇーーー!」

 

 

「「「「フッ!!!」」」」(シャキーーーン☆)

 

 

もはやそこはフリューゲルの世界だった

 

 

((アレ?なんだかとても楽しい))

 

 

 推しの共有、そして推しへの共感、ついでに言えばどちらも頭の良い部類ではない、2人はちょっとアブノーマルな教えに目を輝かせていた。

 

 ツヅミは後になって恥ずかしくなり体育座りで顔を隠して悶えることとなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、、、、この絵って」

 

「私が書いた絵です。物心つく前から私は父様の事を書き続けてその描画技術は世界屈指だと自負しております。私には才能などなかったのでしょうが父様がくれた愛が私を絵師に」

 

「いやいやいや待って!これは、、、、、本当に実在するの?」

 

「ハイ、神様たちの言うSSRという確率で出る超貴重な現象ではありますが、我々の未来で確かに存在するものです」

 

「、、、、、、、、フォぇ〜、、マジか、、、、、」

 

「守護天使様、今『きもっ』と思っていますね?」

 

「ギクッ!」

 

「確かに知らないものからすれば衝撃的ではありますが、我々は赤子の頃から帝王(カイザー)に関わってきました。帝王(カイザー)は頼れるお方、父様も何かあれば頼っています。不服そうな顔ですが、、、、しかし、書いてあるそれは確かに存在する。そしてそれは『優しさの証明』でもある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帝王(カイザー)が父様の子供でなおかつ0〜1歳児限定で見せる、超貴重な『優しい笑顔』です」

 

「こ、、、、、こんな顔が出来たとは!!」

 

 

 この場にいないヘディンは一瞬ゾクッ!と背筋が震えた

 

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