(ディアンケヒト・ファミリアでこっそり様子を見たかったけど)
未来のベルがこの時代のヘスティア・ナイフを握りしめて手足を軽くならし、ゴソゴソとショルダーバッグの中のものを確認する。
時刻は早朝
未来のベルは朝早く呼び出された。進んだ未来の医療をこの時代のディアンケヒト・ファミリアに伝える予定だったのだが、残念なことに却下された。
何故なら
「余裕そうだな愚兎」
一人の白妖精が眼鏡を掛け直し、ベルの顔を睨んだ
「知らぬ歴史を生きる兎よ、いざ剣と剣の道へゆかん」
一人の黒妖精が剣を構え、まだ魔法を使っていないにも関わらずその心に熱を宿す
「こんな機会逃すわけがない」
「間違いなく溜め込んでるだろうからな」
「経験値の大盤振る舞い」
「うめぇ~のごっそさん」
四人の小人が一斉に兜を被り、軽口を叩きながらもその表情はやる気に満ち溢れている
「さっさとやるぞ」
一人の猫人がいつもの口調、いつもの声量でその殺気をベルに向ける
「リベンジをさせてもらう」
一人の猪人が大剣を握りしめいつも通りかわりのない表情をしながらも、その声からは止められない闘志が乗っているようだった
一市民ならとっくに泡を吹いて気絶しているメンツからの闘気や殺気、フレイヤ・ファミリア幹部陣の圧を一身に受ける未来のベルはその後ろにも目を向ける。
「「「「「「フシューーー!」」」」」」
エルフを含めた普段なら品のある女達が鼻から煙のような蒸気を噴き出す
「「「「「「「「惨殺!惨殺!」」」」」」」」
使い慣れているはずの剣を子供のおもちゃのように感情のままに振り回すヒューマン、獣人達
「「「「「「「「誇りを取り戻せぇーーーーー!!!」」」」」」」」
人生最悪の屈辱を受けた女達が殺意をギンギンにしてこちらを見ていた。武器を血が出るんじゃないか?と思うくらい握りしめて憤怒と怨念でその恵まれた美貌を見事に台無しにしている。男性陣はちょっと引いていた
場所は『戦いの野』ギルドに無断で彼らは集まっていた。だが仕方ない、このメンツで戦うとしたらこの場所くらいしかないのだから
そしてそれはフレイヤ・ファミリアだけではない
「邪魔したら殺す」
灰の狼人が仲間たちにさりげなく自分の間合いに入らないように警告する
「黙れクソ狼」
そんな気遣いも知らず一人の戦士として姉のアマゾネスが武器を構える
「んじゃ!やろっか!」
笑顔のまま巨大な武器を振り回す妹のアマゾネスが声を出す
「教えて、未来のベルを」
何かを求めるように金髪のヒューマンが剣を構える
「負けませんからね!ベル・クラネル!」
そしてどんなベル・クラネルでもベル・クラネルなので燃やすと意気込むエルフの少女も闘志を燃やす
ロキ・ファミリアの実力者もそこに揃っていた。ベルがどうせなら彼ら彼女らも呼ぼう、じゃないと戦わないと言ったからだ。フレイヤ・ファミリアは不服そうだったが仕方なかった。
今から始まるのは未来の英雄への挑戦
自分がどれだけ英雄に近いのか試したい、そんな者たちがそこに集まっていた。
三首領含め、一部の者たちは『繭』への対応のためこの場所には来ていない、とても残念がっていた。
そして
「フレぇー!フレぇー!と!う!さ!ま!」
フリューゲル
「気をつけて父さん」
コントラス
「殺っちゃえ父さ〜ん☆」
フルト
「「頑張れ!頑張れ!父さん!父さん!」」
チェロナ&セロナ
ベルの子供達は少し遠巻きにこれから起こる戦いを観戦しようとしていた。ついでに言っておくと子供達はいつの間にか用意していた『神様たちの言う【ちあいしょう】』を着ていた。手にポンポンをつけて跳ね回りその恵まれた胸を揺らしてリコだけが死んだ目をしている。
男女関わらず
つまり痩せ型とはいえちゃんと筋肉がついている男どもも『ちあいしょう』を着ていた。一分除いて
「なんでお前らは着ないんだよ〜服はお揃いにするもんだろ〜シクシク」
フルト
「誰が着るか」
アコーディオ
「死ね」
メロ
「女ならともかく野郎のなんて誰得だよ!」
トライア
「アレ?姉さん、アスタは?」
アニカ
「医療関係の説明でディアンケヒト・ファミリアの方だよ、本人はこっちに来たかったみたいだけど」
モニカ
そんなこんなのカオスな空気を作りながら英雄への挑戦が始まろうとしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ある程度のルールを説明します」
「「「ルール?」」」
「いるか殺す」
「いりません燃やします」
「「「「「「DEATH!DEATH!DEATH!」」」」」」
「話せ、あのいかれた豚どもと同じにされたくない」
未来のベルは様々な殺気を受けても眉一つ動かさない、その当たりやはり『英雄』になったからだろう。自信というものが満ちあふれている。自分の敗北を全く目に入れていないその態度に苛つきながらその説明を聞く
「ルールはシンプルです。気絶したら終わり、気絶するまで僕に攻撃し続けてください」
ようはベルという的への一斉砲火、しかし的が一つな以上必ず奪い合いになる。特に連携なんて一ミリもする気がないフレイヤ・ファミリアは同士討ちも大量発生するだろう。
だがベルの考えはそこで終わりじゃない
「でもそれじゃ皆さんが普段からやっていた『フォールクヴァング』とあまり違いはありませんので『気絶したらペナルティ』を設けます。もちろん戦いが終わったあとに」
「「「「「ペナルティ?」」」」」
ベルの口からあまり出ない言葉に皆が反応する中、『外野』から口出しが入った。
「なんだ〜夜の相手でもさせる気か〜」
アコーディオ
「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」
「断言するけどしないよ」
アコーディオの野次に女達が一瞬ビクリとしたがベルが秒殺で否定する。それもこの時代のベルなら恥ずかしがる顔でそうするのに未来のベルは本当にウンザリするような顔で否定したためそれに気づいた一部がイラッとした。
「基本母さん達の相手毎日してるし過去じゃ発散出来ないから溜まってんだろ〜俺たちの時代じゃあオラリオから遠出する時も父さんの側には何人か母さん達がいたし、間違いなく過去最高に我慢してるだろ〜」
「レフィーヤさんもいるんだからそんな事言わないの!こっちだって考えないようにしてるんだから!」
(((((((((あ、溜まってはいるっぽい)))))))))
気づかなかったベルの大人な生々しい事実に一同が口元を引くつかせながら、ルール説明の続きを待った
「ごめんなさい家の子が、、、えっとつまり『ペナルティ』というのはこれです」
ベルがショルダーバッグの中から何かを取り出す。それは『小瓶』だった。中には粉末状の何かが入っており、色が『錆色』ということしか分からない
「なんだそのムカつく色の粉は?毒か?」
「ムカつく色の毒を飲めと?」
「ムカつく色の粉が身体に入るなどキショいな」
「だが耐異常には効かないぞ、ムカつく色を飲む嫌悪感はあるが」
『錆色』ということも相まって四兄弟の毒舌が炸裂して猛者がギリっと拳に力を入れる
すると
「実は未来で子供たちの髪を切っているんです」
「「「「「「「は?」」」」」」」
ベルが突然身の上話を始めた
「子供達は沢山いるので一々床屋さんに連れて行くのにもお金がかかるのでだったらもう自分で切ろうと思ったんです」
「あ!それ聞いた!子どもたちから聞いた!俺の髪も切ってくれているのも聞いた!」
ヘグニがはしゃぐようにハイハイと両手を挙げながら周りに対して謎のマウントを取ろうとする姿にヘディンが冷たい目を向ける
「それで一通りの技術は身につけました。そして切る以外で髪をいじるある程度の事も」
「おいこれ何の話だ?」
「女どもが武器をカチカチ鳴らして限界みたいなんだけど」
「すいません、でもこれが『ペナルティ』なんです」
「あ?」
「具体的に何をするかというと、、、、、、」
この錆色の染め粉で皆さんの髪を『オッタルさんと同じ』にして『オッタルさんと同じ髪型』にします
します
し ま す
し ま す
し ま す
「「「「「え?」」」」」
ロキ・ファミリアの者たちはぽかんとした
だが
ビカビカあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
フレイヤ・ファミリアにとっては落雷だった
そしてオッタルは別の意味で落雷を受けた
ペナルティとはいえ髪を望まない色に染められて更には髪型までいじられるのは確かに嫌なことだろう。だがフレイヤ・ファミリアにとってはその意味合いと深刻差は他のものとはまるで違う
だってきらわれてるから☆ オッタルは♡
そしてオッタルはその『ペナルティ』の意味を理解して信じられないものを見る目で未来のベルを見た
優しいベルの発想ではなかったから
一同が硬直する中、誰よりもトリップから抜け出し最初に言葉を発したのはヘディンだった。流石である
「我々を嫌悪感で爆殺するということか」
おったるのこころにだめーじがはいった
「嫌悪感が爆発して死んじゃう嫌悪感が爆発して死んじゃう嫌悪感が爆発して死んじゃう嫌悪感が爆発して死んじゃう嫌悪感が爆発して死んじゃう嫌悪感が爆発して死んじゃう嫌悪感が爆発して死んじゃう嫌悪感が爆発して死んじゃう」
おったるのこころにだめーじがはいった
「ベル!?人にはやっていいことと悪いことがあるんだぞ!」
おったるのこころにだめーじがはいった
「優しいお前はどこに行ったんだ!?こんな酷いことをするなんて!」
おったるのこころにだめーじがはいった
「見ろベル!俺たちの鳥肌と呼吸音を!」
おったるのこころにだめーじがはいった
「俺たちは今!絞首刑される直前の呼吸をしている!」
おったるのこころにだめーじがはいった
「、、、、ヒュー、ヒュー、ヒュー」
※アレンの絞首刑される直前の呼吸
おったるのこころにだめーじがはいった
「女どもの殺意が引いたぞ!」
「正気に戻されたか」
「あまりの事に理性を取り戻したんだ!」
「え?これ女たちにも適応か?」
「そうなんだろうな」
「団長と同じ髪、、それも女の身で」
「嫌だ!団長とお揃いなんて!」
「絶対第三者から見られまくる!」
「神々がいじってくる!」
「自分の派閥の団長とお揃い、、、うぷっ!!」
「ベル!これはお前が考えたのか!嘘だよな!こんなキショすぎる発想をお前が!!?」
おったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいったおったるのこころにだめーじがはいった
「「「「「「えぇ、、、、」」」」」」
ロキ・ファミリアはオッタルの嫌われように引いていた。確かに他派閥の団長とお揃いの髪型なんて死んでも嫌だが、ここまで?と思ってしまうのだ
「どんな人でも例外は作りません、気絶したら何があってもオッタルさんと同じ髪型にします」
オッタルの心にダメージが蓄積限界です
「「「「「「「「「キェ」」」」」」」」」
オッタルの心にダメージが蓄積限界です
「普段とは違う精神状態からの戦いは必ず新しいものを得ます」
「だが、、、もっと他に方法があったんじゃないのか?」
「ひと言で言えばこれが一番『コスパ』がいいんです」
「コスパ!!?」
「低予算で低労働で最大の利益が得られる」
「お前、、、そんな損得勘定とか持ってたのか?」
「大きな買い物をしていないのにすごい勢いで数字が減り続ける家計簿を何年も見ていて心がすり減ってしまったのかもしれません」
※遠い目
「「「「「うふふふふふふふふふふふ♡」」」」」
※元凶の爆弾兎の群れ
「説明が長くなりました。それじゃ始めましょうか」
「「「「「「「「ちょ!」」」」」」」」
「あ、オッタルさんは『ペナルティ』の意味がないので僕の護衛としてこの訓練に参加してください」
「!!?」
オッタルは思った 正気かよ と
何が悲しくてこんな地獄を生み出した元凶を護衛しなければならないのかと、こんな状態でどう戦えばいいのかまるで分からない
(ごめんなさいオッタルさん後で土下座します!)
ちなみにベルはちゃんと罪悪感を感じていた。だがそれでも『コスパ』を取ったあたり前のベルとは違うのだ。ある意味それが大人になるということだから
「それじゃ行きます!」
「「「「「「う!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」
その後、端から見れば斬首されるの?という青い顔をしながら髪を染められている勇士たちが大量に目撃された