兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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新世代の兎たち 前編

 

 朝日が昇って少したった時間、本来なら限られた早起きの者しかうろつかない静かな街並みの時間帯、それが今回に限っては違っていた。

 

 武装した集団が列となって歩く者たちがいる。その集団を知らない者たちはオラリオにはいない、何故ならこの国を代表するファミリアの凱旋にも似た歩みは平凡に生きる者たちにとっては魅力的に映るだろうが、それを目にする普通の人々はそこにはいない

 

 ギルドから避難命令が出ているからだ

 

 数日前から突然現れたバベルの『繭』 彼ら彼女らはその駆除件討伐の為にそこに行くのだ。収集されたファミリアはかつて二大派閥と言われたファミリアの者たち、片方は事実上解散してはいるがその実態は特に変わってなどいない、だからこそコレはある意味、いがみ合っていた派閥同士の共闘と言っても良かった。

 招集されていない野次馬の冒険者たちが少し離れたところから様子を伺っている。中には主神の命を受けて観察に赴いた者たちもいた。そんな思惑があったりなかったりする者たちは、、、一瞬、目をぱちくりさせるのだ

 

 オッタルと同じ頭をした死んだ目をした奴らがいる

 

 意味がわからん

 

 と

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「しっかりと見ておくんだよ」

 

「「「「「「「「オッス!」」」」」」」」

 

 一人の優しくも凛とした声がその場に響く その声を始めに声の主を囲む若人たちが心の弾む表情を浮かべて了承の声を上げた

 

 

『空の上で』

 

 

「アコーディオ、お願い」

 

「おう」

アコーディオ

 

「うわぁ~!もっとゆっくり動かしてくれアコーディオくん〜!」

 

 そしてベルとその子供達とその同行人達がオラリオの空の上でバベルを囲んで円を描くように散り散りになる。

 

 足元の『球体』が動いたからだ

 

 彼らはとある『球体』の上に両足で立っている。そしてアコーディオの魔法操作で一つ一つが一斉にそして正確に動いているのだ。

 

 

『炎と風の浮遊雲(ダブル・クラウド)』

 

それは魔法を組み合わせた兎たちの移動手段

 

【作り方】

 

アコーディオの炎弾魔法を人数分発射してその場で止めます

 

モニカとアニカの風魔法でその炎弾を包みます

 

乗っかった人が燃えない程度に重ね掛けして熱を抑えます

 

※フリューゲルの付与魔法で全員に炎耐性を念のためつけておくとより安全です

 

魔法操作で形を完全な球体に整えて安定したら完成です☆

 

※なお丸まった場所に取っ手なしで立つことになるので乗る人には慣れが必要です。経験者につかまって一緒に乗ってもらうのがいいでしょう

 

 

 

 という説明を受けたヘスティアは現在、ベルと同じ球体に同乗して空に浮かんでいた。自分の子供と同じ球体に同乗している他の女たちにジト目を向けられながら

 

「しかし良かったのかい?モンスターの討伐を他に譲って?子供達の経験値にしたかったんだろう?」

 

 ヘスティアは下の集団に目を向けながら掴んでいる裾の相手であるベルに質問した。本来のあのモンスターはベルの子供達の討伐対象、過去に来るというイレギュラーこそ起こったが、彼らの目標だったはずなのだ。まぁさすがにイレギュラーすぎる状況だとは思うが

 

「黒竜討伐前に少しでも経験値を持ったほうがいいのは皆さんですから」

 

「あぁなるほど」

 

 ベルの答えは簡潔、黒竜との戦いを経験しているからこそ、彼らのほうが経験値が必要と身をもって知っていた。だからベルの命で『黒い虫型のモンスター・モスキート』はこの時代の者たちに譲ることにしたのだ。

 

「それにみんなにこの時代の先輩たちの強さを見てほしかったので」

 

 むしろソッチのほうがいい経験だとベルは結論づけたのだ

 

「始まりましたよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 始まったのは『繭』への一斉攻撃、それもバベルを傷つけないようにするための加減された全力、無茶振りに何人か苛ついていたが他ならぬ自派閥の上司の頼みとあって皆がそれなりに気を使って攻撃を開始した。

 

 そしてすぐに『繭』から小さな群体が吹き出てきた。一匹一匹が犬猫と同じサイズで数千の大群はもはや簡単には対処不可能、なので片っ端から冒険者たちが駆除していった。実力も経験もある魔導師たちが魔法で正確無比に群体を駆除していく、地上の戦士たちも襲いくる群体に剣や槍で器用に確実に倒していく

 

 しかし数が数なので小さな取りこぼしは起きてしまう

 

「三匹抜けられた!」

 

「魔法を!」

 

(ダメだ!あの方角の集団はさっき打ったばかりで)

 

その取りこぼしが冒険者の包囲から抜けようとしたその時

 

 

 バン! バン! バン!

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 取りこぼしの三匹は『真上からの狙撃』に魔石を残して消滅した。そしてその魔法はとある少年の無詠唱魔法に酷似していた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「三匹kill」

 

「OK」

 

「え!倒したの!?この距離で!?」

 

ひときわ大きく作られた球体の上には三人の乙女が乗っていた

 

そしてそのうちの2人はとある魔導具を装着している

 

【望遠鏡機能付きのゴーグル】だ

 

ニイナ、チェロナ、セロナの三人がそこに乗っていた

 

 魔法を放ったのはチェロナ、使った魔法はベルの『聖火愛加』のスキルで使えるようになった『ファイアボルト』だが特筆すべき点はそこではない、地上からかなり離れた距離で地上の犬猫サイズの的を正確に狙うなどまさしく神業、しかも彼女と妹のセロナが使っている魔導師の杖は借り物で足場も浮遊する球体の上、様々な現状から垣間見てもあり得る光景ではなかった。

 

 

「私たちは姉妹揃って『超遠距離型後衛魔導師』」

 

「説明したでしょ?お母さん」

 

「!」

 

 

 チェロナとセロナの冒険者としてのポジション、ソレは『後衛魔導師』それもただの後衛ではない

 

 もはや同じパーティとは言えないほど離れた距離で戦い、威力ではなく精密で相手の急所を狙う一撃一殺の魔法

 

 護衛の必要すらない距離で確実な成果を上げる

 

 戦況をひっくり返す魔法ではなく、戦況を作ることすらさせずに終わらせる必死の一矢

 

     『狙撃手(スナイパー)』

 

それが異端の双子であるチェロナとセロナの戦いかただった。

 

 ニイナは背中にじんわりと汗を感じた。狙われた方からすれば反撃のできない範囲で認識すらできずに頭を撃ち抜かれるイメージが湧いて出たからだ。

 それもおそらく『自分譲りの魔力』で

 

 だがコレはあくまでも技術があって始めてパーティの役に立てる戦い方、今はいいがその前は?レベル1や2の時にはどうだった?そこに至るまでの過程は険しいものだとニイナはすぐに理解した。

 

 ソレはそうだ。成果が出ればいいが2人と組む同業からすれば自分たちは安全な場所にいるわけなので不況を買わないほうがおかしい、それに2人の技術を信じなければそもそも成立しない、自分達に当たるのではという不安が募るからだ。

 

だが

 

「コレは新時代の戦い方」

 

「!」

 

 ゴーグルを頭にずらしてチェロナが口を開く、そしてとなりのセロナは代わるようにゴーグルを装着して下に杖を向けて集中している。

 

「この一撃が戦況を左右するかもしれない、成功すれば始まることすらなく即終了で死傷者はゼロ、だけど失敗すれば戦闘が始まって少なくない死傷者の責任が圧しかかる」

 

「っ!!」

 

 チェロナの言葉にニイナは口元に無意識に掌を重ねる。ソレはとてつもない重圧のポジションだと理解したからだ

 

「でもこの戦い方が広がれば被害を受ける人達は段違いに減る」

 

「けど、、、きっとソレは難しい試みで」

 

「でもそれで私たちはレベル4にまでやって来た」

 

「あ!」

 

 そう、狙撃手の戦い方では経験値(エクセリア)が上手く稼げない、しかもそれは組む仲間たちにも言えること、つまり2人は経験値を稼ぐことが難しい戦い方でレへ4にまで、ここまで登りつめているのだ。本来の恩恵の仕組みを考えれば二人が危険なギャンブルに挑んだことはすぐにわかる。

 

 二人はたまたまそれで上手く言ったから強くなれたに過ぎない、新しい戦い方はいつの世も失敗する確率の方が高いからだ

 

「何でここまでリスクが高いことを」

 

「「お父さんのため」」

 

「へ!?」

 

 下に集中しているセロナは視線を地上にしたままでチェロナと声を合わせる

 

「死傷者が極限まで減る、お父さんが喜びそうな戦い方でしょ」

 

「私たちがそれを確立させれば評価はお父さんにも行く」

 

 

 

「「お父さんの歴史の偉業の一つとして残れば私たちは本望」」

 

 

 異種の双子もまた父を狂信する【狼血(ろうけつ)】

 

 自分達の成功より父の役に立つことのほうが大事、自分達より父を褒めてもらうことのほうが優先の重くてストレートな愛娘

 

「「言っとくけど性格お母さん譲りだからね?」」

 

「ぐはっ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「やってんな〜あの双子」

アコーディオ

 

「あんな遠距離から正確に撃ち抜くとは」

リュー

 

「すごいだろ」

トライア

 

 球体を操るアコーディオは一人で乗って、トライアの乗る球体にはリューが同乗している。リューはルミノス・ウィンドウで似たような事が出来るので特に心配はないと思うが結局他人の魔法なのでトライアと一緒にいるのだ。

 

(しかし、人が乗っている魔法を一つ一つ正確に操るとは、やはりこのアコーディオの技術は素晴らしいな)

 

「俺も遠距離型の魔法があればよかったんだけどな〜」

トライア

 

「ん?貴方は使えないのですか?」

 

「ファイアボルトは一応使えるけど俺はぶっちゃけ近接特化だな、剣の届く範囲なら俺は強いって自負できるけど、遠距離は苦手なんだよ」

トライア

 

「だが剣に特化して尖ったおかげでレベル5になれたとも言えるな」

アコーディオ

 

「おぉ珍しく俺をフォローしてくれるのな」

トライア

 

「お前の爛れた生活を知ったリュー母の事が見てられずちょっと親切にしてやっただけだ」

アコーディオ

 

「いや、でもぶちまけたのお前よ」

トライア

 

「っ!!」

 

「思い出したように身震いするなよ狭いんだから!」

トライア

 

「あ?誰の魔法が狭いって?」

アコーディオ

 

「うわぁ球体をユッサユッサするな!この距離で落ちたらシャレにならないから!」

トライア

 

 そんな愉快?な会話をしながら下の戦場を観察している。フィンやヘディンが指示を出してレフィーヤやヘグニが先陣を切るの見ながら彼らはその目で得るものを得ていた。

 

「重婚、、不健全、、、親子丼、、、、私の血から生まれ出でた」

 

「あぁーもう!変なスイッチはいるなよ!」

トライア

 

 リューは沈みながらだが

 

「仕方ない、フォローしてやるか」

アコーディオ

 

「だからぶちまけたのお前だって!」

トライア

 

 アコーディオは球体を動かしてリューの前に位置を調節する。

 

 そして

 

 

 

「俺の『妹』も十分気色悪いからあんただけ気にすることじゃない」

 

 

 

「へ?」

 

 突然理由のわからないことを言い出した

 

 そして下のレフィーヤはなぜか背筋をゾクッとさせた

 

 

 

「あ、妹っていうか同じ腹から生まれた妹な、説明するとレフィーヤの長女」

アコーディオ

 

 

 

「お前」

トライア

 

 トライアは理解した。新しい『インパクト』を与えて中和する作戦なのだと、そしてアコーディオは『妹』をスケープゴートに利用して使うつもりなのだと、トライアは普通に引いた

 

声なんて聞こえないのに地上のレフィーヤは再びゾクッとした

 

「母さんの長女は父さん似の容姿で髪色も白髪、瞳の色は母さん譲りの紺碧だが、雰囲気から父さんみたいによく兎と言われている」

アコーディオ

 

「そ、そうなのですか?」

 

「だがその性根は『強かな腹黒』だ」

アコーディオ

 

「え?」

 

「父さんってその雰囲気から年上の女の母性本能をくすぐると言われてるよな、ていうかあんたもくすぐられた側だし」

アコーディオ

 

「、、、、、、、、、否定は、、、完全にはしません」

 

「父さんのいいところはそれを自慢せず、強かに利用しないことだ」

アコーディオ

 

「そうですけど、、、」

 

「だがあいつはその年上の女の母性本能をくすぐる顔を全面的に利用している」

アコーディオ

 

「ん?」

 

 

 

 

「何故ならあいつは

『年上のお姉様方が好きなハーフ・エルフ』

だからだ」

アコーディオ

 

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、え?」

 

 

 

 

 アコーディオの口から語られた内容にリューは硬直してトライアはアチャ〜と片手をおでこに当てた。

 

 

「父さんも母さんも若い頃は年上のお姉様に魅力を感じてたんだろう?あいつはそれを二重で受け継いで生まれたんだと思う」

アコーディオ

 

「えっと」

 

「父さんの容姿を利用して年上にモテてるんだぜ、自分が好かれる容姿なのを自覚して計画的に利用している。分かりやすく言えば『わざとあざとく振る舞う』年上のお姉様に刺さるように」

アコーディオ

 

「まって」

 

「遺伝子レベルで年上が好みの女が幸運にも年上に好かれる容姿に生まれたものだからそりゃ幼い頃からそれを利用する脳みそが形成されるわなぁ」

アコーディオ

 

「ちょっとまって」

 

「想像してみろよ。ベル・クラネルに似た容姿の女があざとく振る舞うその絵面を、、、善良な父さんとのギャップでよけいにゲスに見えるだろ?」

アコーディオ

 

 

 アコーディオのぶちまけは止まらない、未知の告白に確かにリューの嫌悪感は忘れられたが新しい困惑が同時に襲いくる。ちなみに地上のレフィーヤは魂で何かを感じ取ったのか突然血をはいた

 

 

「名前はユーフォニア、年上女に魅力を感じる故に父さん譲りの容姿を利用してあざとく強かに世渡りをして純粋を装いお姉様方のファンを増やし続ける両親の良くないところをミックスで受け継いだのが俺と同じ腹から生まれた一個下の妹だ。神様的に言えば『心に年上キラーのホストを飼っている』らしい」

アコーディオ

 

「だ、大丈夫なのですかその子は」

 

「まぁ年上のお姉様が絡まなきゃまともな奴だよ。同じ腹から生まれた九人の下の奴らの中ならぶっちぎりのアホだが」

アコーディオ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おなじはらからくにんとはなんですかぁ?」

 

「あ?」

アコーディオ

 

「あれ?」

トライア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あっレフィ母が十人産んだこといってなかった」」

 

「ぐはぁ!!!!」

 

 

 

 

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