兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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新世代の兎たち 中編

 

「ゼオ・グルヴェイグ」(ミシミシィ!!)

 

 黄金の光が負傷した戦士たちを瞬時に治していく、彼女もまた崇拝し敬愛する女神の命に従いその力を振るっていた。ここ最近はプライドやら何やらズタボロに引き裂かれていてその八つ当たりも兼ねているのかもしれない、事実杖を握る指に力が乗っておりレベル4の握力で愛用の杖がミシミシと悲鳴のような音を立てていた。それを心配する人間は誰もいない、副官のロナやイルデはそのことに気づいているがそれに触れようとはしなかった。

 

 面倒を避けたのではない、2人もヘイズと同じように握力でミシミシ言わせて憂さが溜まっているからだ

 

「ほら治りましたよさっさと突撃してくださいというかこんな傷で手間を掛けさせないでください」

 

 いつもの容赦ない言葉も今は更に刺々しい、それほどまでに未来のベルから受けた屈辱はその精神をブチ回していた。

 

 そんなヘイズを上空から観察する者たちがいた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「気合入ってんな〜☆」

フルト

 

「気合っていうか憤怒だな」

メロ

 

「ヘイズ、、、、、」

ヘルン

 

「ヘルン母様、身を乗り出し過ぎで落ちますよ」

フリューゲル

 

「え、あ、はい(何でこの子は私とともに?)」

ヘルン

 

 その場の浮遊する球体は3つ、フルト、メロ、そしてヘルンがフリューゲルの球体に同乗させてもらっている。なぜか息子のメロではなく変な縁の間柄のローリエの息子とともにだ

 

「めんどいから」

メロ

 

 というあっさりとした解答に一瞬ヘルンは睨みつけるがメロはそれを心底くだらなさそうな目で返した。ヘルンはイラッとした。

 

「それで、シル母はどんな様子よ?」

 

 フルトがヘルンの目を通してこの戦場を見ているであろうシルのことについて言うとヘルンは少しムグッとなりそのすぐ後に口を開いた

 

 

「私たちのやりとりに微笑んでおられます。崇高な女神の笑みになど絶対に値しない心底くだらない会話なのに」

 

「過去のヘルン母様は本当によく喋られますね?」

フリューゲル

 

「え!?今の言語量でその反応なのですか!?」

 

 子供達から未来の自分は無口だと伝えられてはいるが今の言葉ごときでそんな反応をされては正直少し心配になる。未来の自分は、、、重婚しやがった超絶色欲業突く張り兎件未来の夫の隣にいる自分はいったいどういう心境なのだろうと

 

「いやそれほどの言語量の会話をすることはあるにはあるんですが、それは父様やメロ兄様が貴方を怒らせたときだけですね、貴方が産んだ子供達ですら基本的に相槌が殆どで言葉で語りません」

フリューゲル

 

「どれだけ口を閉ざしているのですか私は、、、、」

 

「口を開けば教育に悪い呪いを条件反射よろしくで吐き出すんだから仕方ないよ」

メロ

 

「くぅ!」

 

 その光景を事細かに想像できてしまいヘルンは歯噛みをした。後ついでにあのポンコツエルフ2の息子に説明されるのがなんか嫌だった。それ相応に慣れてしまったが、やはりあのベル・クラネルに子供がいることはヘルン的にはかなり精神にくる。未来の自分は大人だから耐性がついたかもしれないが所詮今のヘルンは10代の小娘に過ぎないのだから。

 

「っ、、、、大人になりたくない」

 

「「「ん?」」」

 

「あっ」

 

 それでついつい無意識に心に湧き上がってきた言葉を口に出してしまった。それを自覚したヘルンは顔を赤面させて視線を伏せた。

 

 なんだ今の言葉は?

 頭の悪い子供の言葉ではないか

 自分はもう大人の年齢なのに

 産んでないけど息子が目の前にいるのに

 

 そんな事を考えているとメロがため息をついてヘルンに言葉をかける

 

「俺から見れば過去のあんたも未来のあんたもそこまでの違いはないように思えるがな」

メロ

 

「え?」

 

「そうなのですか?メロ兄様」

フリューゲル

 

「でも雰囲気だいぶん違うぜ?闇とかはそのままだけど」

フルト

 

 2人は首を傾げてヘルンはぽかんと口を開ける。そしてメロは少し考えたあと言葉を綴る。それもヘルンの心を掻きむしる言葉を

 

 

「あんたは優しいよ。この時代の時点で、直接見てよく分かった。その優しさがあったから父さんも娶るという選択をしたんだろうさ」

メロ

 

「ッ!!!」

 

「ていうかフレイヤ様もそういうところを見抜いたんだろうな、奇しくも父さんの目は女神のそれと並ぶほどだったってことだ」

メロ

 

「そ!その考えは辞めなさい!私は塵芥!あの男がフレイヤ様と同じところがあるなんて不敬もいいところよ!アレン様達がいたら殺されてるわ!」

 

「結局俺の心配かよ」

メロ

 

「そういうことではない!!」

 

 子供達にとっては物珍しい若さゆえのパッションを披露するヘルンの姿はとても面白い。実子であるメロが何を感じたかは知らないがフルトとフリューゲルは目を合わせてその後クスリと微笑んだ。ついでにそのやりとりを感じていたフレイヤも微笑んでいた。

 

「俺はともかく、俺の下の四人はお人好しばかりだから父さんの血だけじゃなくてあんたの血も穏やかな証拠だ。クセは強いが」

メロ

 

「よ、四人、、、、」

 

 そうだった。未来で自分は目の前のメロも含めた5人を産んでいると店で言われたことを今思い出し再びヘルンは赤面した。だって5人は想定外だもんと心の中で誰にも認識されない言い訳をしながら

 

「特に顕著なのは長女のディディだな、フレイヤ様にもよく懐いてるし」

 

「ディディ?」

 

「あ~そういや他の奴ら説明してなかったな」

 

 メロは今更ながら自分の直接の妹弟たちを説明してなかったことに気づいた。

 

 その瞬間フルトとフリューゲルが『あっ』という顔をした。別に説明が無かったのを気づいたわけではない、兄弟だからこそ分かる気づきに気づいたからだ。

 

 コレあの事だと

 

「俺の一個下件直接の妹だ、あんたの長女ってことになる」

 

「長女、、、フレイヤ様の崇拝者なの?だとしたら殊勝だけど」

 

 自分の娘がフレイヤに崇拝している姿はすごく想像できる。そうか、変な娘ではないのかとヘルンは謎の安堵感を感じた瞬間、メロの言葉が続いた

 

 

 

「アイスクリーム屋さんだ」

 

 

 

 

「あ、あ、アイスクリーム屋さん!!?」

 

 

 全然全く想定していない言葉にヘルンは声を裏返す。そしてメロはそんな様子を全く気にせず言葉を続けた。

 

「ほら、あんた『寒い』の嫌いだろ?」

 

「、、、、、え?」

 

 その言葉を聞いてヘルンは心にズシンと来るような衝撃を受けた。そうヘルンはよく哀れや可哀想を『冷』のイメージのある言葉で表すことがある。幼い頃、誰にも抱きしめてもらえない寒さを感じていたのが心の傷となっているのかもしれない

 

「幼い頃、ディディは冬の季節のあんたの調子が悪そうな顔を見てそう見抜いたらしい、俺も言われるまで気づかなかった、、、そんであいつはそんなあんたをどうにかしようとして そうだ『冷たい』のを好きになってもらおうとアイスクリーム屋さんの道に」

 

「発想が飛躍し過ぎでは!!?」

 

 いくらなんでも想像の斜め上の発想すぎる。やっぱり変な子なのかと、自分のようか塵芥が生み出す女などそのようなモノなのかとヘルンに一瞬暗い影が差した瞬間だった

 

 

 

「そんな娘のアイスクリームを流れ出てしまう自分の涙で溶かしながら食べてたあんたが塵芥のわけないだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか言えよ」

 

「言えませんよ!!/////」

 

自分の感情を受信しているフレイヤがアラアラ、ウフフ、オホホと自分に対してあったかい感情を向けている。顔から火が出そうだった。

 

だがメロの本領発揮はここからだった

 

 

「そういやロエは良いのかよ?」

フルト

 

「あ?」

メロ

 

「ロエ?」

 

「あぁ~」

フリューゲル

 

 フルトが憎たらしい笑みを浮かべてメロが首を傾げてヘルンがまた新たな名前に動揺してフリューゲルが『そう来ましたか』と顎に指を当てる

 

 なんだ?ロエ?私の子なの?とヘルンが思考の海を広げようとしたその時だった

 

 

 

「いずれお前に嫁入りしてヘルン母の義娘になるかもしれないだろ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 その言葉を聞いた瞬間ヘルンは自分の顔面が青くなっていくのを物凄く正確に感じた。

 

まさか いやまさか だってそれは つまりぃ

 

 ヘルンがとある可能性を頭に浮かべてメロに首をグリン!と向ける 

 

 肝心のメロは

 

 

「何でそうなるんだよ?確かに『助けた』りはしたが」

 

ドクン!

 

「そりゃあいつもいつかは嫁に行くかもしれないが何で俺なんだ?」

 

ドクン!ドクン!

 

「家には良いやつも凄いやつも沢山いるだろ。選択肢は広いくらいだ」

 

ドクン!ドクン!ドクン!

 

「だから邪推は止めろアホ兄貴」

 

ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!

 

 

「わざわざ【俺なんか】を選ぶ必要はない」

 

「ーーーーーーーーーーあ」

 

 

 それは確信的なひと言だった。だってその言葉がものの見事にあの白兎と重なったからだ。おそらくそのロエという女はメロの事が好きなんだろう。なんとなく分かった

 

 つまり メロは父親の【一番問題】な所を受け継いで産まれてしまった。自分を狂わせた原因の一つに値する

 

 

        父親と同じ鈍感兎

 

   未来で自分がお腹を痛めて産んだ子供が

 

 

 

 

「ダメだダメだダメだーーーーーー!!!!!」

 

「おわっ!いきなりなんだよ!!?」

 

「ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ」

 

「おい!なんか知らないが落ち着け!」

 

「ダメぇぇだぁぁぁぁ(ポロポロ)」

 

「何で号泣!!?何があった!!?」

 

「ああああーーーーーーーーーーーー!!(涙)」

 

 

 フルトとフリューゲルはメロの鈍感ラノベ主人公感に流石にため息をついた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オラリオを代表する英傑達が自重せずに活躍した結果、もはやモスキートの行動は対策され脅威とは程遠い事態になっていった。

 だが相手は黒いモンスター 正真正銘の強化種

 

 

 

 バベルの『繭』が揺れた

 

 その巨大な白い糸の塊から何かが突き破ってきた

 

 それはまだよくわからない形だが勘の良いものはすぐに気づく

 

 それは巨大な『羽』だと

 

 本体のモスキートは本来大型のモンスター

 

 その羽が繭を突き破ってその全貌を表そうとしている

 

 ここからだ

 

 ここからが本番なのだ

 

 

 黒の脅威がオラリオの冒険者達に猛威を振るう

 

 

 

 

 

 

 その時だった

 

 

 空が『光った』のは

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【大きく灯せ】

 

【其の御心に其の輝き】

 

【数多の欲に数多の愛】

 

【真優が報われるその時まで】

 

【どうか献身と堅信を】

 

【大きく灯せ】

 

【奇跡の狭間に生まれしこの神体】

 

【炎に彩られしこの金光】

 

【血が混ざり肉が増え骨を高めその地に降り立つ】

 

【どうか唯一の閃光を】

 

【大きく灯せ】

 

【その手は愛を握りしめその足は小さき者と共に】

 

【その目は想いを映しその耳は喜びを聞き笑え】

 

【我は後継】

 

【継し心を世の光に映すもの】

 

 

 

『コガネセン』

 

 

 

「はあああああああああああああ!!」

 

 それはとある青年の『刀』から放たれた金色の光

 

 斬撃の形をしたその光はバベルの『繭』へと真っ直ぐ向かい

 

 『繭』から突き出した『羽』を断ち切った

 

 『羽』をもがれた脅威は平行を失い

 

 地上へと落下した

 

 何が起こったのか 何が輝いたのか

 

 それを知るものはほんの一部

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あれがツヅミの魔法・コガネセン」

シュバル

 

「レベル6並みの力を持つ『斬撃魔法』」

アスタネット

 

 

 

「「事実上の『残光』」」

 

 

 

 ハーフ・パルゥムの兄妹の二人が兄であるツヅミの魔法を解説する。同じく浮遊する球体に乗ったリリルカと春姫は説明を聞きながらも共学な目でツヅミを目にしていた。

 ツヅミが詠唱をして刀を抜いて抜刀、その瞬間にあの輝く斬撃が黒いモンスターの羽を断ち切った

 その光景に気圧されながらもその背中にあの男を感じていた。

 

「ツヅミは帝王(カイザー)からすれば才能がない方らしい」

シュバル

 

「「え!?」」

 

「けどそのツヅミ兄さんが恩恵を手にした瞬間に発言した魔法があのコガネセン」

アスタネット

 

「ツヅミは春母と同じで、『魔法の一撃特化』でレベル4まで登りつめた」

シュバル

 

「っ!」

 

「例え強力な魔法を一つ持っていたとしてもそこまで登りつめられるのはほんの一握り」

シュバル

 

「だからツヅミ兄さんは凄いの」

アスタネット

 

 リリルカと春姫は抜刀した状態で固まってしまっているツヅミに目を向ける。あれほど強力な魔法を何発も出せるわけがない、リリルカは知識で、春姫は経験でそれをよく知っている。おそらくあの魔法は一、二発が限度の失敗が許されない魔法。それがどれほど難易度の高い戦闘になるのか、一介の冒険者である2人は知っている

 

だが それでも

 

「どうか見てくれましたか、母上」

 

それ以上にあまりにも良く知る優しい笑顔に感動を覚えていた

 

「つ、、、ツヅミ様!」

 

「貴方から貰い受けた光が、僕を英雄の近くへと導いてくれています」

 

「ツヅミ様〜〜!!(涙)」

 

 球体の上にも関わらず春姫は飛び上がってその感涙に打ち震えた

 

 

 

 

 

 

 

「この闘いも、この奇跡も、もうすぐ終わる」

ベル

 

 

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