兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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新世代の兎たち 後編

 

「こんなに距離が離れているのに熱気とか殺気とかが本当に凄い、、、怖い」

 

 球体の一つに乗って上空からバベルでの戦いを見届けるのは、子供達の一人であり未来の自分の娘であるピアノに同乗しているカサンドラ。

 彼女は自分達より遥かに格上の存在が織り成す闘争に飛距離関係なく恐怖を覚えていた。ダンジョンや派閥大戦で彼女も地獄を経験したことはあるが、今回はモチベーションが違う。何故なら今も地上で戦う女傑たちと並んで自分も英雄の女の一人になっていると知ってしまったから

 

「本当に私はピアノちゃんが言うみたいに格下」

 

「え?今更それ?」 

 

「うぅ!澄んだ瞳でその言葉はやめてぇ!」

 

 

 未来の娘からの当然とも言える格下認定にショックを受けるカサンドラ。更にその近くにはピアノ以外にもとある子たちがいる。

 

 

「大丈夫!ポンコツ加減でなんかいい感じにマイナス判定されてるからサラ母も負けてない負けてない!」

モニカ

 

「ある意味プラマイゼロ、気にする必要ないよサラ母」

アニカ

 

「だからアンタが魅力不足でもこれからの努力しだいだ」

アコーディオ

 

(ナチュラルに他のお母さんもサラお母さんもディスってない、、、、)

リコ

 

 

 なんでか知らないがカサンドラの近くに浮いているロキ・ファミリア組の子供達である。自分達の母は地上で戦っているため同乗するものがいないのだ

 

「ねぇ兄さん姉さん、お母さんにお父さんが好きな下着の色教えていいかな?」

ピアノ

 

「したっ!!?」

 

「え?お父さんに下着の好みってあったの?」

モニカ

 

「何を付けても褒めるからこだわりはなさそうだけど」

アニカ

 

「そりゃ父さんも人間だからな、癖に刺さる色の一つや二つはあるだろ」

アコーディオ

 

「ちょ!ちょっとやめようよ兄弟姉妹でこんな話!」

リコ

 

「まぁ父さんに着たままの趣味なんてないし脱がすのだって優しくやりそうだし、、、あぁでも色が『黒より』か『白より』かなら」

アコーディオ

 

「やめようって!サラお母さん頭から煙出てるよ!」

リコ

 

「きゅうぅぅっぅぅ」

 

 生娘にはアンタッチャブルすぎる話題を繰り広げる子供達は半分気絶しているカサンドラをよそに父の事について話を続けた。そしてカサンドラは強かにも『黒より』か『白より』かの件についてしっかり耳を傾けていた。

 

「私の偏見だけど、父さん食うときはパパっと脱いでパパっと押し倒す方が母的には効果的だと思う。父さんは母のそういうところ、なんだかんだ好きだからな」

オルガ

 

「なるほど、下手に考えを巡らせる必要はないってことかい、ありがとよオルガ」

 

 その近くに仲良く球体に同乗しているアマゾネスの母子もいた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「北地区は露店販売が多いからこの騒ぎに万引きが起こる可能性が高いので憲兵を1割ほど増加してください。自粛があったとは言え3日で再開した図太い人たちがいるのは確認済みです。南東のデメテル・ファミリアの作物泥棒にも注意を、こちらの方が発生率が高いので2割ほど増加を、あと畑が踏み荒らされては後に支障が出るので徒手空拳に優れたものが望ましいです。南南の大通りは裕福目の商人がよく使うので商品を詰めた荷馬車やらが固まって走って事故が起きる可能性がありますのでギルド職員に注意喚起をさせましょう。西の3番通りは職員一人のお報せ一つで構いません。中堅派閥のホームが二つ、近くにあるので、それよりも2番通りをお願いします。あそこはポーションを作る大きめの工房があるので何かあれば経済的又は生産的な打撃となるので高レベルの冒険者を走らせてください。あぁそれとそろそろこの『黒板』が埋まるのでコレは同じように横に並べてください」

 

 

 白髪で翡翠の目をしたヒューマンが物凄い筆跡の速さで路上に設置された黒板を埋めていく。すでに出された黒板は4つ目、端から端までびっしりとやるべき指示が書かれていた。ギルド職員の制服を着ているので指示を聞いた者たち又は黒板の指示を見た者たちはその的確で合理的で冷静な声色にとっさに従ってしまう。

 誰だっけあの人?という疑問を差し置いて

 

 そこは戦場から少し離れたギルド職員の集会場だった。町中での戦闘が行われているため市民の安全と信頼を守るために彼等は街中を走り続ける。だからこそすでに的確な指示が書かれているのはとても助かった。

 思いだせね〜という疑問を差し置いて

 

(こ、この子!なんでここまで的確な支持がだせるの!?自分の知っているオラリオじゃないのに!?)

 

 その男を驚愕の目で見つめるのはエイナ・チュール 彼女もギルドの指示をこなしながら仕事に奔走しているのだが、その片手間で彼を見ていてもその凄さがよくわかる。

 

 自分の知るオラリオとは違い、沢山の人々が右往左往する。それの二次被害、三次被害を想定したうえで、的確な場所に的確な人員を送る。軍事顔負けの情報清算能力だった。

 

 信じられない

 

 こんな優秀な子が自分の息子だなんて

 

 彼はコントラス・クラネル 非冒険者ではあるが、あの問題児だらけの年長として知恵を武器に生きてきた秀才である。

 

 そんなコントラスが自分に向かって何かを投げてきた。

 

「ワッ!なに!?」

 

「水です。飲んでいてください身体持ちませんよ」

 

 エイナの胸元に投げられたのは革袋で作られた水入れ、今も目すら向けず筆跡をしながら自分の母に水分補給を提言した。

 

(この子、未来で私がやってる商会にいるって言ってたけど、下手すればオラリオのギルド長になれるくらいの逸材なんじゃ、、、本来なら官僚とか大臣とかに向いてる子なのに未来の私の為に)

 

「硬直しないでください、4人目必中むっつり受付嬢さん」

 

「必中してなぁい!!!」

 

 忘れかけていた『4人目妊娠風潮問題』を思い出してしまいエイナは顔を真っ赤にする。たまたま近くにいた男性職員や憲兵が噴き出す。

 そうだった未来の自分は4人目を宿しているんだった。まさかあの子と4人目、、、でも私だけじゃない

 

「もぉ~ーーーー!!未来で私はどうなってるのーーーー!!」

 

「あんまり変わってませんよ。変わったことと言えばベル・クラネルに『匂い』を覚えられたことくらいです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?匂い?匂いってなに?」

 

 唐突に訳がわからなくも衝撃の乗った言葉にエイナは額に汗を浮かべてコントラスの方を向いた。コントラスは以前筆記を続けたままエイナに言葉を向けた。

 

「『妻限定』で匂いの識別が出来るみたいです。獣人のように追跡可能レベルで、未来なので当然ランクアップして五感は強化されてるし星の数ほど『シタ』副産物のようなものです」

 

「え?、、、、、、、、え?じゃああの人って」

 

「心の中で思ってたんでしょうね。『若いから匂い違うな』とか」

 

「、、、、、、、、、、、、そうですか」

 

「そうです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アハハハハハハハハハハハハハ♫

 

さ〜て♪仕事☆仕事☆

 

 

 

 

 

 その後、真顔で仕事に打ち込み、全てが終わった後に床を転げ回るエイナがミィシャに発見される。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そろそろ決着がつきますね」

 

 上空から見下ろすヘルンが羽根をもがれ地上で冒険者と戦っているモスキートを観てそうつぶやいた。そしてその目を通して戦場を見ている美の女神も後は消化試合と、そう判断した。

 

「やっぱり強いな、黒竜と戦う前でも俺たちより遥か格上だ。」   

 

 そうつぶやくのは未来の息子のメロ、その隣で浮いているフルトとフリューゲルもそれに頷く。

 

「しっかりお前らも見たか?」

トライア

 

「「「「!」」」」

 

「よう」

アコーディオ

 

 そこに球体を移動させてアコーディオとトライアが近づいてきた。ちなみにリューは地上で彼らと共に戦っている。トライアはずッとリューの戦いを見続けていた。

 

「ムカつくが、まだまだ遠いな」

アコーディオ

 

「でも絶対追いつく」

トライア

 

 家族の中でも年長の2人は再決意を胸にその瞳に炎を宿す。それを見たヘルン、そしてそれを受信するフレイヤは腹の中のゾクゾクを抑えられない

 

(あぁ何て美しい、その気高い魂は確かにベルから受け継がれ、そして彼ら自身の手で育まれ高められた純心、心から火がでそうなほど私の胸を熱くする)

 

 未来での重婚には若干拒否感があるが、それをもってしても余りあるほど子供達は魅力的だった。こんな魂がこの世に生まれたことは絶対に間違いではない、美の女神すべての威信にかけて断言出来る。フレイヤはそう思っていた。

 

「フレイヤ様は喜んでおられますよ」

 

 フレイヤの喜びを感じ取ったヘルンが子供達にそのことを伝える。ヘルンも自分自身の感情として喜びを感じていた。その姿にメロは『そうか』と少し嬉しそうに言葉にした。その素っ気なさにフレイヤはヘルンとの血のつながりを感じて少しクスリとして、それを受信したヘルンは顔を赤くした。

 

「と、とにかく、時代が違おうが、血のつながりがあろうが、貴方達は至高の女神に見出されました」

 

 ヘルンがなにかを誤魔化すように口を開く、口から出るのはフレイヤのお眼鏡にかなった者たちの幸運を称賛する言葉

 

「だからどうか、貴方達の道に女神の望む光があらん事を祈りましょう」

 

 両手を合わせてヘルンは祈る。女神の意思だけでなく自分自身の称賛も乗せて

 

 子供達はコクリと嬉しそうに頷いた

 

 

「だから貴方たちも『最上の美の女神』に敬意を」

 

 ヘルンは忠告するようにその言葉を言った。そのあたりを忘れないあたりやはりヘルンはヘルンである

 

「天上天下全ての美の上に立たれる女神の寵愛を、例え他の世界のフレイヤ様にすでに見初められていたとしても、どうかこの眼からいづる愛を受け止めてください」

 

「本当によく喋るな〜この世界のヘルン母は」

トライア

 

 トライアがその姿に口を綴る。その献身的な姿は確かに自分達の母である彼女のものであり、もう一人の母であるシルのものだった。

 

 

 

 

 

「ありがとな」

トライア

 

「私ではなく、眼の奥の美の女神に」

 

「はいはい、、、ありがとう美の女神様」

 

 その柔らかな笑顔は父親から受け継がれた優しさあふれる笑顔だった。

 

「名前で呼んでほしいそうです」

 

「おっと注文多いな、、、、、ありがとう」

 

 

 その笑顔でトライアは感謝を口にするのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美の女神アフロディーテ様、、あ、ごめんフレイヤ様」

 

 

 

         ピシぃ!!!

 

 

 その瞬間、眼の奥のフレイヤは鈍器で殴られたかのような感覚に襲われた。

 明らかに間違われた 凄いいいところで 

 母親譲りのポンコツだとしてもだよ

 

 

「ブ!無礼者!!美の女神を間違える愚図がいるものかぁ!!」

 

 フレイヤ様好き好き大好き狂信者であるヘルンからすれば今の間違いは四肢裂き刑ものの長舌無礼である。球体今にもから飛びかかってきそうな雰囲気にトライアは尻込みをした

 

 故にポンコツは『また』やらかした

 

 

 

「すいません!俺たちのなかで美の女神ってアフロディーテ様のイメージだから!!美の女神って言われて最初に思い浮かべるのはアフロディーテ様なんだよ!フレイヤ様はその後に思い浮かぶ」

 

「「「おい!!?」」」

 

 俺ではなく俺たちと行ったことに他の兄弟がツッコミを入れた

 

 そして女神の先見故に見抜いてしまった

 

 彼らも最初にアフロディーテが思い浮かんだのだと

 

 

         かはぁ!!!

 

 フレイヤは血を吐いた。完全なる想像の外による攻撃に卒倒しそうになりながらもなんとか意識を保った。

 ヘルンは苦しみを受診した

 

 

(いやなんで!!?なんでここでアフロディーテが出てくるの!!?)

 

 

 フレイヤからすればまるで意味のわからない展開に冷静さをなくしそうになる。ヘルンの激情も相まってちょっとおかしくなっている。

 

「何故よりにもよってあんな頭のスッカラカンな女神が一番最初に思い浮かぶのですかゴミクズ!どんな思考回路をしている!!?」

 

「だって!、、、、、そういやなんでアフロディーテ様が最初に出てくるんだ?」

 

 トライアも首を傾げて頭にはてなを浮かべる。アフロディーテの性格はよく知っている。どう考えても美の女神でまず思い浮かぶのはフレイヤなのになんでアフロディーテが先に来てしまうのか

 

ソレは

 

「アフロディーテ様にプラスの要素がフレイヤ様にマイナスの要素があるからだろうな」

 

「「「!!?」」」

 

 アコーディオが口を開いて解説を始めた

 

「どういうことだ!!?」

 

「まずアフロディーテ様のプラス要素だがこれは簡単だ」

 

「あ、俺もわかる」

 

「わたしも」

 

 すると他の兄弟も口をそろえた

 

「「「「子供ってバカ好きだから」」」」

 

「「!!!!!!!」」

 

 

 そうそれこそがアフロディーテのプラス要素、知能指数が似通っているからこそ親しみを持つ、フレイヤには出来ないそして持っていない魅力

 

「で!ではマイナス要素とはなんですか!!?フレイヤ様にそのようなものなど!」

 

 

 

「「「強キャラ感が怖い」」」

 

「えぇッ!!?」

 

「「「なんならシル母の状態でも強キャラ感が出てるから小さい奴らは怯える」」」

 

『ごはっ!!』

 

「あぁ!!フレイヤ様がぁ!!」

 

 フレイヤは正真正銘神の中でも女王に位置する存在。だがその威厳やら存在感やらがまだ幼い子供には抑えつけられるような圧となり怯えられるのも仕方なかった。なんならシルの状態でもそこはかとない強キャラ感が出てしまう

 故にそんなものをまっっっったく感じないアフロディーテの方に好感がいくのは仕方ない、ついでに生まれながらにその美貌を見続けた故に子供達は美的感覚が多少歪んでおりそこも関係している。

 

 

 フレイヤが色々理解して心がアレなプルプル状態となってヘルンが狼狽して子供達が気まずそうにするなか

 

 ポンコツがまたやらかした

 

 

 

 

「あとはまぁ『金髪』かな?チビたちも含めてなぜか好きなやつ多いし」

 

「「「余計なことを!!」」」

 

『ひゅ』

 

フレイヤは膝から崩れ落ちた

 

「フレイヤ様ーーーーーー!!」

 

 

 ベルの血筋故に金髪に魅力を?

 

 そんな バカな

 

 わたしは未来でも金髪に負けるのか?

 

 なんならあのトンチンカンな女神にすら負けるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私金髪に染める(涙)上もそれ以外も(悔)』

 

「フレイヤ様ぁ!!?落ち着いてください!恋敵の髪の色に染めるとかそれはもういたたまれません!貴方なら確かに何色に染めても似合うでしょうがお待ち下さい!落ち着いて!!というかそれ以外ってなんですか!?どこを染めるつもりでうわぁーー!!化粧品置き場をゴソゴソしだしたーー!!」

 

「おいトライア、それは心の中だけでいうやつだろ」

 

「ごめん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、モンスター倒された」

ベル

 

 

 

 

 




 
次項 『時を渡る英雄』終幕
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