兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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ユーフォニア・クラネル

 

 最も古い記憶は『お風呂』に入っている記憶。鮮明と言っていいほどその時のことを思い出せる。なんでこんなに覚えているのか、なんでここまで目に焼きついているのか、当時の幼い私にはわからなかったけど情緒が育ってと知恵を付けた今ならはっきりとわかる

 

 私はお母さん達の裸を美しいと思っていたんだ

 

 女神にも並ぶその風貌、目を引きつける背徳的な身体、女でも本能を擽られる抱擁の胸、邪視を運命づけられた臀部、多種多様な色香を振りまく髪。幼心ながら私はそれを感じていたんだと思う。

 

 後はそうですね、生き物の神秘に触れてたのも要因かな?

 お母さん達はダンジョンに行ったり女主人の店で働いてて、家にいるお母さんたちは殆どが私たちの弟か妹を身籠っててお腹が大きかった。お風呂で合うお母さん達は皆、母という生き物になっているという独特な魅力が私の頭の中に残ってたんだと思う。

 

「流すよ」

 

「うん」

 

 子供の頃、お母さんから頭を洗われて風呂桶で頭をお湯からかけられて私はその直後に後ろに体を倒す。何故ならその後ろには丁度お母さんの身体があってやさしく受け止めてくれるから、背中から感じる柔らかな感触もそうだけど、脳天から滑り込んで私の頭にズッシリと乗っかる胸の感触を特に覚えている。母の胸を枕のように乗っかかるのも好きだけど、頭に帽子のように下乳が乗っかっているあの感触が私は好きだった。

 

 ずいぶん前に語彙力がある程度ついてきた頃にお父さんにこれと似たような事を言ったことがあったけどなんか気まずい顔してたなぁ〜

 

 たぶんアレ私に引いてるんじゃなくてそれを私より『経験』してる自分に引いてたんだろうなぁ〜

 

 大浴場で私の頭を流してくれたお母さんは必ずしも私のお母さんだった訳じゃない、春母やサラ母、誰だったか覚えてない時もある、お母さん沢山いるから、ただお胸が小さいお母さんが洗ってくれたときはがっかりが露骨に顔に出てたらしくて、半泣きのティオナ母やイルデ母の顔はよく覚えてる

 

 

「私はもうダメだ おしまいだぁ」

 

 

 なんか後ろでお母さんが全裸でozrしてる姿が脳裏に浮かぶ、銀髪のエルフ、確か勇士のお母さんの、、、、誰だったっけ?多すぎるから思い出せない

 というかお風呂でなんでそんなことになってるの?丁度私の方角にお尻を向けてて子供ながらに衝撃を受けてるんだけど

 そんで周りのお母さん達(元勇士)が口元に手を当てて涙ぐんで『うんうん』と同情しててマジで何の記憶?

 

 

 

 

 

「ベルのことを様付けでいつの間にか呼んでた」

「3日間その事に気が付かなかったと」

「ごめん、自分で気づいたほうがいいってベルに口止めされてたから」

「これで貴方も『溶かされた側』なんだね」

「勇士組の全滅はもう時間の問題じゃない」

「好きだけど、愛してるけど、けどぉ~」

 

「ベルとフレイヤ様の同一化なんて人としていいの!?」

 

「私はもう半年前からフレイヤ様に接するテンションでベルに接してる、無意識に」

「フレイヤ様がベルに私たちの喜ばせ方をレクチャーしたのがここまでなんて」

「真面目すぎるからベルは」

「だからって!ホントにフレイヤ様みたいに抱いてくるなんて思わないじゃない!」

「愛してる人に愛してる女神と同じ抱き方をされたら頭もおかしくなるよ」

「もうダメだー!私たちはベルの人格侵食を止められないぃ!」

「さながら『箱庭』でベルを堕そうとした意趣返しをされてるみたい」 

「フレイヤ様は時間がかかったとは言え夜を共にしてすらいないのに心をグチャグチャにされた」

「なら直接抱かれて愛を囁かれる私たちが可笑しくなるのは必定の必定」

「知らなかったの?この現象は本当にベルの意趣返しなんだよ」

「そうなの!?」

「あのベルが!!?」

「なんで!?」

「人格面を一ミリも疑ってはいないけど勇士の私たちが母親になるのは少し不安があるからって」

「ていうか忘れたの?最初の頃にベルに言われたじゃない」

「「「あっ!」」」

 

 

 

 棘が抜けきれない貴方たちをドロドロに溶かして生まれ変わってもらいます。僕は皆さんのその強さは全然いいですけど、子供にはやっぱり悪影響ですので

 

 

「今に思えばあのセリフもフレイヤ様のオマージュだったのかも」

「ベルにしては過激な言動だと思ったら」

「私たちのことを考えたうえで私たちの尖りを抜くためにフレイヤ様のオマージュをするだなんて」

「ベルは、、、プライドとか考えなかったのかな、フレイヤ様の真似とは言え別の人物を真似て私たちを相手するなんて」

「それが私たちを変える一番の手だと思ったんだろうね」

「私たちへの歩み寄りが神域の域なのよもう」

「やっぱり私たちはもうダメだぁ。私たちはベルへの因果応報で人格を溶かされていずれベルとフレイヤ様の見分けがつかなくなるんだ」

「それはさすがに、、、ないよね」

「恐ろしいのはこの狂気に一切の悪意がないこと」

「ベルが私たちを真剣に愛するがゆえの調教だということ」

「そしてそんな現状に私たちは何処かで喜びを感じていること」

「そんな!!」

「私たちが変態を許容するのはフレイヤ様相手だけなのにーー!」

「正確にはだけ『だった』だね もう変えられてる」

「この膨らんだお腹がいい証拠」

「そして今の話で私たちは腹が疼いてる。もうとっくに手遅れだよ」

 

 おなかに弟、妹を宿した全裸の母たちがワーワーギャーギャーと叫ぶ光景は子供の私ならいざ知らず大人でも衝撃の光景だったと私は思う

 大人が子供がいるお腹をぶるんぶるん揺らしてシャウトして一体何をしているのだろうか?

 その時たまたま私の頭を洗ってくれた母が私の耳を塞いでたけど、なんでだろ?その母が茶髪で勇士組の胸が大きな母だったことは覚えてるんだけど

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やって来たわ開催地!私の伝説が始まる場所ーー!!」

ソプラ

 

「「おぉーー!!」」

シェイカ&ゼラ

 

「おぉーー」

ユーフォニア

 

「「、、、、、、」」

サク&クラリネ

 

「下二人ーー!!なんか言いなさいよ『おぉーー!』とか!?」

ソプラ

 

 とある抉れた峡谷の跡地に騒がしい集団がやって来た。そこはもともと補正された公道なのだが、『祭り』のためにその近くに多くの者たちが集まっていた。

『ハルモニア・スフォルツァンド・フェスタ』のためにその準備を任された多種多様のスタッフ達である。

 祭りのための会場建設業者、宿泊施設の建築業者、シュミレーションのための制作スタッフ、必要なら機材諸々を準備して試験運用する技術スタッフ、祭りの外郭を彩る美術スタッフ、祭りに欠かせない飲食の業者、出店予定の出店スタッフ、必要なら物資を購入販売目当ての商人、いざって時のための金貸し、そしてその場の秩序をまもる警備隊

 

 そこはもはや街に近い環境

 

 数は合わせて『4万人以上』  

 

 いくらなんでも多すぎるのでは?と誰もが思うだろうが、これからあらゆる諸外国が手を取り合い開催する世界最大ともいってもいい規模のため、参戦する国は失敗するわけにもいかないうえに、自分の国の財力やら人力やらを見せつけるための見栄も相まってふんだんに人材が投入されていた。

 

 そして

 

「来たわね未来を泳ぐ海豚ちゃん達!」

 

 その開催地の端『会場建設中』の大看板が建っている場所の真下、大門代りのその場所の真ん中に『女神』は立っていた。

 美しき金髪を揺らめかせてこの世ならざる美貌を持つ正真正銘の美の女神

 

「アフロディーテ音楽隊!私を敬いなさぁ〜い!」

 

 

 

       パァンッ!!!

 

 

 

 

「へぁ?」

 

「『BUNNY・PARRY』です。アフロディーテ様」

サク

 

「サク姉ちゃん!?」

ゼラ

 

「石、投げた?」

クラリネ

 

「アフロディーテ様の足元にすんごい力で投げられた石が破裂して木っ端微塵に!」

ユーフォニア

 

「怒りすぎだろさすがに」

シェイカ

 

「アババババババババババババババ!!」

 

 アフロディーテはへたり込んで両膝をガクガクさせた。感じるのはすまし顔でありながらしっかり怒っているのがわかる『BUNNY・PARRY』のリーダー・サクの圧。その怒気はかつて付き合っていたヘファイストスを彷彿とさせるものだった

 

「まぁ冗談はこれくらいにしといて」

サク

 

「冗談で石を投げるなーーー!!!」

 

「とにかく!アフロディーテ!守備はどう!!?」

ソプラ

 

「ソプラ、、えぇ!バッチリよ!わざわざ『赤絨毯』を借りたんだから!」

 

「わぁ!!」

ソプラ

 

 いまだに両膝を震わせながら立ったアフロディーテはバンドの皆をある場所に連れて行く。そこには大量の人がいた。道の端と端に分かれて人の集まりがごった返しており、その真ん中には長い赤絨毯が真っ直ぐと敷いてあって、その行き着く先はこの祭りのためだけに建てられた『VIP用高級ホテル』アフロディーテがその美貌を使って建てさせた美の女神の暴挙そのものである

 

 そしてそこに集まるのは『BUNNY・PARRY』をお出迎えしようと集まった皆々様だった。有名な音楽隊でありながら全員が美少女、全員が英雄の娘、ソプラに至っては世界的歌姫の二世、興味をそそられない者のほうがおかしい

 

 そして『BUNNY・PARRY』はアフロディーテと共にその赤絨毯の上をいく、堂々と歩く姿は凡の世界に生きる者も芸能の世界で生きる者もその存在感に目を奪われる。

 

 シェイカとゼラのアマゾネスコンビは笑顔で挨拶して手を伸ばしてくるファンとハイタッチしながら歩いて、ソプラとクラリネのボーカルヒューマンコンビは手をつなぎながら皆の先頭を歩く(ちなみに手を繋いでいるのはソプラの緊張をクラリネがほぐすため)ソプラは営業スマイルで手を振りクラリネは無表情ながらもしっかりと空いた手で手を振っていた、リーダーのサクは特にファンサもせずに我が道を行く顔で歩いているが、そういうのが癖のものもたくさんいるため喜ばれた

 

 そしてユーフォニアは

 

(オラリオの外で異種族がここまで集まるのはやっぱり珍しいな、、、あの獣人のお姉さんはエプロン付けてるから飲食スタッフかな儚げで可愛い、額にハチマキを巻いてるドワーフのお姉さんはおそらく建設スタッフかっこいい、あの小人さんは服装からして美術スタッフ、そして私の長年の勘が告げている、あの方は私より年上だ、うん美人)

 

 我欲の赴くままに『年上のお姉さん』をサーチしていた

 

 赤絨毯の道が終わり自分達が止まるであろうホテルの正面玄関に着くとホテルのスタッフであろう身なりを整えた者たちが自分達の前に整列する。訓練されたズレのないお辞儀をされて口を開いたのはおそらく一番偉いであろう『金髪のエルフ』

 

 そう『金髪のエルフ』である

 

「はじめましてわたくしはこのホテルの支配人の」 

「始めまして『BUNNY・PARRY』のキーボード担当そして交渉、貯蓄、家計、裏方も担当するユーフォニア・クラネルですどうぞよろしく」

 

「は、はい」

 

 父親の血に導かれるまま父親譲りの顔で訓練されたスマイルで一番乗りの挨拶をかますユーフォニアだった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 私はいつしかお母さん達に美しさを感じなくなった

  

 お母さん達が老けたから? 違う

 

 私の情緒が成長したから? 違う   

 

 反抗期の年に入ったから? 違う

 

 

 理由は簡単

 

 人格がゲテモノすぎる!!!

 

 

 はっきりいって詐欺だよ!自分達の母親が常識的観点から見れば異常者の集まりだということを成長して知恵をつけた私は知ってしまった。

 なぜ父はこんな人達を娶ったのだろうか?いや別にお母さん達が嫌いなわけじゃない、むしろ好きな方だし先達として尊敬はしてる。

 だけど『過去』を知れば知るほど思ってしまうのだ

 

 父がたくさんの女を娶った ではなく

 

 父しか娶り先がなかった と思うのだ

 

 これに関しては間違ってないと思う 

 

 他の兄弟姉妹もうんうん言ってたし

 

 成長して自分の母達が実は過去に結構なことやらかしてたと知ってしまった私の気持ちわかる!!?産みの母なんか何度もお父さんを焼却しようとしてるし差別と偏見の罵倒を浴びせてるしなんでお母さんはお父さんの女になったの!?ていうかなんでなれたの!!?世界で一番美しいと思っていたものの内面が実は奇妙奇天烈な暴獣だったなんて知りたくなかった!!

 

 母たちの過去やら詳しい内面やらを知ってしまったユーフォニアはものすごく速さでその美しさに冷めていった。別に嫌っているわけではない、むしろ家族として大事に思っている

 

 だけど

 

 だけどだ

 

『具入りオムレツの中身が真っ白なチーズだと思ったら青々とした生魚』

 だったら『うっ!!』となって仕方ない、極東では卵と生魚を共に食べる『寿司』なるものがあるそうだが、例え美味いと分かっていてもユーフォニアにはガッカリのほうが強すぎてしまう

 

 故にユーフォニアは自らの『癖の対象』を外に移した。父母ともに最初は年上のお姉さんであるアイズに憧れを持っていた身、その血を受け継いで年上のお姉さんをサーチする悪癖がついた

 

 父に似た顔で父に似た事をすると皆が凄いと言ってくれた。その中には当然年上のお姉さんも含まれている。だから頑張った、我欲のために、レベル3までランクアップもした、癖のために、訓練した作り笑顔で純情な娘を装い年上のお姉さん達との語らいを楽しんだ。

 

 そんな時だった

 

「私と一緒にバンドやってよユーフォニアお姉ちゃん!あとキーボードだけなの!お姉ちゃん頭いいし手先器用だしいいでしょ!」

ゼラ

 

 3つ下の異母妹であるゼラに声をかけられた。母親同士が特に仲がいいため自分達もよく話すからだ

 

「キーボードかぁ~語学のために何回か弾いたことはあるけど自慢できるものじゃないし」

ユーフォニア

 

「なら練習しようよ!!一緒に!!!」

ゼラ

 

「でも」

ユーフォニア

 

 すると

 

「人気が出れば年上のお姉さんにキャーキャー言われるぞ」

シェイカ

 

「やる」

ユーフォニア

 

 話に割って入ってきたシェイカの言葉に秒で参戦を決めた。ついでに頭の良さからバンド内の裏方もやることになった。正直唯我独尊なメンバーがいるので大変だが、大変エピソードを利用して年上のお姉さんと談笑して同情を引いているのでユーフォニアもユーフォニアである

 

※レベル4へのランクアップはバンド活動と兼任してやり遂げた。凄い

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「私たちのような若輩者のお世話をさせてもらい大変感謝しております支配人様」

 

「いえいえこちらも英雄の娘様である皆様のお世話をさせていただき恐悦至極でございます」

 

 『BUNNY・PARRY』とアフロディーテがエルフの支配人に連れられていろいろ案内されていた

 

 そんな時だった

 

 何やら騒がしい声が響いてくる。横に目を向けると開催地の端の場所にいくらかの人が集まっていた。その声からは不満や嫌悪の感情が乗っており良い印象など欠片もありはしない

 

「祭りを中止しろーーー!!」

 

「これはオラリオの陰謀だーーー!!!」

 

「外面をよく見せたい情報戦略だーー!」

 

「オラリオにばかり世界の人材を集めるなーー!!」

 

「いずれ力を持って征服に移るぞーー!」

 

 それはこの祭りに反発を抱く者たちの集まりだった。世界には必ずと言っていいほどこういう存在が出てくるのだが、オラリオが力を持ちすぎていることは事実なためその事を知っている者たちの反応はちょっと微妙である

 

「切ろうか」

サク

 

「止めなさい暴力スキャンダルダメ絶対!」

 

 そんな事は微塵も気にしないサクがギターの仕込み刀を抜刀しようとするのをアフロディーテが止めた

 

 そしてアフロディーテはとある不満を口にした

 

 

「もうーーー!こういうのが多くなったのは全部ロキのところの勇者のせいなんだからーーーーーー!!!」

 

 

 それは未来で起きている勇者の『はっちゃけ』への不満だった

 

 

 

 

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