「フィンさぁ〜いつになったらティオネと子供作るの〜?」
「久しぶりにあって関口一番がそれかい?」
黄昏の館の客室で2人の冒険者が机に出されたコーヒー(片方は砂糖牛乳入り)を飲みながら向かい合っていた。
片方はベル・クラネルと共に黒竜討伐に貢献して歴史に名前が残ることが確定している英雄の一人にして現役のロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナ
もう片方はかつてのロキ・ファミリア幹部、そして今は英雄ベル・クラネルの妻の一人であるティオナ・クラネル
今回はティオナがかつてのホームに自分が産んだ娘リコを連れてきたのが事の始まりだった。今はロキに預けられたリコを団員たちがワーワーと囲んでいる状態だ。
「どうせならティオネと同じタイミングがいいかな〜と思って待ってたのに全然そんな気配ないから我慢できなくて作っちゃったよ〜初めてベルとえっちしてから三年だよ三年!」
「そういうのは言葉にしないほうがいいよ、うん」
ティオナは待っていたのだ。ティオネが自分と同じ母親仲間となる日を、姉妹として少し引け目も感じていたのかもしれない、だがレフィーヤの長男兼ベルの子供の長男のアコーディオが産まれて早三年、ティオナは我慢できずにリコを産んだ 三年もよく待った方である。
「まだ諦めてないの?」
「これは長年の悲願でもあるからね、そう簡単に諦める気はないよ」
フィンの目的は小人の再興、自分の意思を受け継ぐ小人の子供を昔から真剣に欲しているのはよく知っている。それゆえにアマゾネスの娘しか産めないティオネの好意を受け取ることができないことも
「別に自分の子供じゃなくても弟子取ったりとか養子とかいろいろあるじゃん」
「それも考えなかったわけじゃないけど、歴史から見てもやっぱり血の繋がりは大事だよ。影響力が違う」
「でもそれってフィンの血しか見てない人が殆どなんでしょ?考えのない人達の事を考えたって仕方ないじゃん」
「、、、本を書き始めたのか口がまわるようになったね」
ティオナはベルに嫁いてたから髪を伸ばした。というかベルに嫁いだ殆どの女達が髪を伸ばした、そのほうがベル様の反応がいいからだ。そして子供を産んだからか雰囲気も変わった、幼さが薄れて年相応の貫禄が身に付いている
「それに子供育てるのめっちゃ大変だよ」
するとティオナが椅子の背にグデンとなって天を仰ぐ、その言葉には力のようなものが込められていることを誰もが察した。他ならない母親本人の意見、フィンは後学のためにティオナの続く言葉に耳を傾ける。
「ベルの子供なのもそうだけど元気いっぱいなお母さんが殆どだからそれ譲りでとにかく動き回って飛んで跳ねてハイハイして、体力が余りまくってるから全然寝ないし、元気いっぱいにかきこんで食べるから毎回毎食喉詰まらせないか心配になるし」
ベルの伴侶たちは基本的にスペックが修羅の類な女傑揃い、そんなところを受け継いだ子供達はそれはそれはエネルギッシュな暴れ兎なのだろう。そして数が多い、フレイヤ・ファミリアの女性陣の数も相まってべらぼうに多い、だがその一人一人が小さな子供、そして赤子、ちょっとした事で大怪我してしまう存在、そんな難しい生き物を育むのは素人からしても大変だとわかる。
「勇士組の皆とかは特にゼーゼーハーハー言ってる。なんというか人と合わせたことがないから私たちより苦労してるっぽい」
「あぁーなるほどね」
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「団長」
「ん?どうしたのかなアコーディオ?」
ホームの廊下を歩いていたら自分より背の低い子供に呼び止められた。その子供は山吹色の髪をしているハーフ・エルフで今や副団長となっているレフィーヤの長男のアコーディオだった。彼は齢6歳で最近ロキ・ファミリアに入った新進気鋭、だがやんちゃな子供達の長男だからか凄く落ち着いた雰囲気を纏っており既に貫禄のようなものを付け始めていた。
「『ヤットコ』って何処に閉まってあったっけ?魔石を掴んだり身体に刺さった棘を抜いたりするやつ」
「『ヤットコ』かい?アレは三番の武器庫の右端奥にしまってあるはずだよ」
「ありがと」
だがまだまだ知らないことが沢山ある子供、今はダンジョン上層で安全に経験を積んでいる。昔のアイズのように独断専行はせずに一歩ずつコツコツと冒険を積み重ねているためこちらとしては気楽だ。
ちなみにこの話をアコーディオにしたら『だろうな頭悪そうだし』と返された。彼はアイズをどんな目で見ているのだろう?
「ところで今日はダンジョンの予定は無かったはずだけどなんで『ヤットコ』を」
「指毟るため、さすがに家で使うハサミは使いたくないし」
「そうかい」
・
・
・
・
・
「指ってなんの?」
「俺たちの『ニセ兄弟』」
アコーディオの言葉にフィンは手を額に当てて天を仰いだ。おそらく何処からともなく現れた『自称ベル・クラネルの子供』がまた現れたのだろう。ベルの子供が増え始めてからこんな事態が何度も起きている。見境のない好色と断定されて汚い大人が訓練された子供を送り込んでくるのだ。
「一応聞くけどその『ニセ兄弟』は今どこに」
「全員集めて磔にして今は兄弟皆で石を投げてる頃だな」
「君たちの親は!!?」
「バレないようにやってる」
なんというか行動力と残虐性、将来有望に疑いの余地なし、ただしその近くにいるマトモな人は胃を破壊されるであろう。フィンは仕方なく石を投げられているニセ兄弟を救出した
(子供が出来たらこんな苦労が、、、いやこれは異例か流石に、、、、しかし、、、、もし僕の悪い所を全力で受け継いだ小人が産まれたら、、、)
フィンは一抹の不安を抱いた
自分の現状維持の状態に
仮に小人の子供が出来たとしてそれは勇気を受け継いでくれる子供なのかと?もしかしたら悪いところだけが受け継がれた子供が産まれるのではと
それは生まれてみなきゃわからないが、不安になるものは仕方なかった
「いや、まだだ、希望を捨てるなフィン・ディムナ」
その額は汗が噴き出していた
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「今回は団員たちの訓練を受けてくれて感謝するよ」
「いえ、こちらも迷惑をかけてるのでそのお詫びです」
ホームにベルが来ていた。ベルによるロキ・ファミリア団員たちの訓練がそこで行われていた。
英雄直々の訓練とあって皆熱を上げて訓練に取り組んでいた。
ちなみにベルに言っている迷惑とはレフィーヤの妊娠のことである
副団長の立場ではあるが度重なる授かりものにより行動が制限されてロキ・ファミリアは永らく深層の遠征にいけていない
「もう少し落ち着いてくれるといいんだけど」
「すいません、でも欲しくて」
「わがままになったね君」
今は休憩中、団員たちはベルにボッコボコにされて今は野に伏せて気絶したように眠っていた。フィンは用意させたテーブルと椅子にベルを座らせていろいろ話を聞いていた。
そして感じるのは人の親となって成長した彼の内側、穏やかな優しさはそのままに責任ある人の親となってからそれ相応の厳しさを身につけた。もう自分なんかというベルはいない、自分を卑下せず自分が価値のある存在だと堂々と構えているのは自分を見て成長する子供達のため、子供達が戦闘訓練を望むならベルは一切の手加減をしなかった。
今更ではあるが僕はこのようになれるだろうか?
そんな思いが頭を過ったその時だった。何者かがホームの壁を飛び越えて侵入、そのまま中庭に着地するとスタスタとこちらの方に歩いてきた。黒髪のヒューマンと赤髪のヒューマン、それはベルが娶ったフレイヤ・ファミリアの女性団員の2人だった
「どうかした」
その自体にベルは繭一つ動かさず質問した。
そして
「ヘイズ様とフルトが喧嘩をして玩具部屋の一部が吹き飛びました」
「怪我人は2人以外出ませんでしたが、、、その、最近買ったばかりのボールが全部破裂してしまって」
「全部、、、都合よく全部?」
「「2人が力に任せた顔しか狙わない『きゃっちぼぉる』を途中からやり始めて」」
ツッコミどころしかない報告、近くでそれを聞いていた団員達はぽかんと口を開けた。フィンですら眉をひそめるハチャメチャに赤髪も黒髪も気まずそうだった。だがベルは既に慣れたとばかりにフゥ~と一息ついたあとに指示を出す
「訓練が終わったら家に帰ってすぐに2人を個室に呼んで。僕が注意するから」
「「はっ!」」
「だけどこれは伝えといてフルトには『一週間オラリオ外で泊まり込みの素材採集』ヘイズには『2ヶ月寝室に来るの禁止』って」
「は、はい」
「2ヶ月、、、長いなぁ」
「それと『今の貴方はオッタルさんと同類』ですとも伝えといて」
「「うわぁ~」」
(オッタルへの風評被害がひどい)
フルトへの罰は言ってしまえば『大好きな父と一週間離れる』というもの、父を狂信しているフルトからすれば死ぬほど嫌なお仕置きになるであろう。可愛らしく泣きわめく姿が目に浮かぶ。
そしてヘイズへの罰はさらに酷い、2ヶ月という長さに加えて自分が酷いと思っている存在と同類認定、なんというオーバーキルか、いい大人が醜く泣きわめく姿が目に浮かぶ
仕方ないから今夜は2人が加わって
ひゃ ひゃい!
が がんばります!
なんか聞こえた気がする
フィンの第一級冒険者の聴覚がその言葉を聞き取った
ベルが耳打ちで2人に何か言ったみたいだ。2人は顔を赤くしているしまぁ内容の想像はつく、そして『来て』ではなく『加わる』というところにエグさを感じる。
だがそれより
それよりもだ
どうしても気になることがある
それは
「君たちは対等な口調で呼びあってなかったっけ?二人から感じるベル・クラネルへの距離感はまるで、、、主神との距離感、というか主神に対しての話し方をしている気が?」
フィンの言葉が響いた。そしてベルは『あぁ~』という顔をしてルンルン気分でいた2人は一瞬キョトンとしたあと
膝から崩れ落ちた
「私たちはまたベルに対してこのように接してしまったぁ」
「やっぱりもうダメだぁ」
「「フレイヤ様リスペクトで弄ばれたばっかりにぃ」」
2人はそのまま涙ながらに自分の現状に絶望した。それを見ていた誰も意味がわからなかった。フィンは最善の道を求めるようにベルに目を合わせる。ベルは『あはは』と少し苦笑いしたあとに言葉を綴った
「えぇ~と2人はフレイヤ様に忠誠を誓った眷属じゃないですか、だから常に一番にフレイヤ様が一番にあるんですけど夫婦として僕も一番に考えてもらいたいと僕なりに頑張ったんですけど、、、、なんというか」
「な、なんなんだい?」
「僕とフレイヤ様の見分けがつかなくなる現象が起きてしまって」
病院行け病気だそれは!!!
その会話を聞いていた者たち全員がそう思った。
この世で最も愛している女神のリスペクトを取り入れて自分を愛してくるこの世で最も愛している男、そんな存在に抱かれればそれは頭もおかしくなるがそんなの外野からすれば意味不明理解不能な魑魅魍魎でしかない
特にフィンの衝撃はそれ以上だった。長年の付き合いで彼の内面を知っているフィンからすればベルがそんなイカれた現状に全く罪悪感をいだいている様子がない。おそらく彼なりに真剣に彼女たちを愛するがゆえの行動なのだろうが、その結果が人格の侵食というとてつもないことをしているのである。
高潔で淫靡 それが今のベル・クラネル
これが!ハーレムを許容した男!!
ダメだ 僕に出来ない
ここまで色に狂った世界に足なんてつけられない
僕では彼のように膨大な慈愛と人としての器の大きさで相手の人格を磨り潰すことなんて出来ない
フィンはようやく現実を理解した
「団長ーーー!!!結婚しましょーーーー!!!」
「わかった」
「団ちょ、、、、、え!!?」
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ベルがハーレムをつくって大量の妻を娶り沢山の子供がいることは既に世界に伝わっている。今更自分がハーレムを作ったところで二番煎じになるだけ、これはもう詰みだ
そう思ったフィンは不貞腐れ込みの開き直りを行った
まず、『フィン・ディムナ小人の弟子を募集中』の広告をオラリオにそして世界に散布した。自派閥に積極的に小人を取り入れてその全てを自分の弟子として自らの後釜を作ることに集中した。
そして世界を周った。世界中から才能のあるものや気概のあるもの小人の現状に不満を抱いているものをスカウトしてファミリアに連れ帰った。
世界情勢にも目を向けた。黒竜が討伐されて国同士の足の引っ張り合いが目立つなかで口八丁やら話術やらでその境界に爆誕してその磨き上げた強かさと経験と優れた頭脳と自慢の親指によりその争いを自分の土俵とした
争う国があれば仲裁人として介入
勝たせた国には見返りを理由として国の内政に潜り込み傀儡とする工作を行った
負かした国には負けたにしては恵まれすぎてる賠償の減額を働きかけてその国に借りと恩を売りつけた
フィンの頭脳なら国同士の戦争で利益を独り占めすることなど容易かった
なんなら自ら戦場に出て一人で国軍を叩き潰してみせた
そしてその結果を弟子の小人達に見せつけて自分がフィアナを超える存在だと突きつけて信仰すら植え付けた
たった一人の存在が戦争を左右する。フィンが味方してくれたほうが100%勝つ 敵にすれば100%負ける それに気づいた世界は皆がフィンにひざまづいた
全ては小人再興のため、子供ができなかった分、自らの手で強く賢く存在感のある小人を一人でも多く育て上げて後世に残すため
ただしそんな事をすれば政敵が大量に量産される
そんな事わかりきっている
事実、オラリオへの風評被害が凄くなっている
そりゃそうだ、世界で無双してるんだから
だがそれを止められるものはいない
ギルド長だったロイマンはとうに引退した
自らの胃を守るために黒竜討伐後すぐにだ
新しくギルド長になったものでは役不足
誰もフィンを止められない
フィンを好きな人と嫌いな人の両極端が凄いことになっている
かつて理想的な人工の英雄を演じていたフィンはまるで肩の荷が下りたかのように自分の力を好き勝手に使っている
そんな現状にフィンは
「いざとなれば協力してくれる仲間たちがいるから怖くないよアハハ♪」
自分には小人の子供が出来なかったけどそっちは沢山いるからいざとなったら協力しろよ♪と遠回しに言われた気がしたベルだった
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「というわけでロキの所の勇者が世界を裏から自分主体でめちゃくちゃにしてるからこんなことが起こってんのよ!」
「つまりフィンさんに敵対しているのは頭の足りない人たちってこと?」
クラリネ
「じゃあこっちは暴力で解決できるな、やっぱり切るか」
サク
「そう単純な話じゃなーーーーーーい!」
フィン・ディムナは今もなお若い頃より理知的にそして感情的に暴れ回っている