兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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アルゴノゥトが呼び寄せたのかな?

 

 スローザス・ルムスは山脈で産まれ育ち、ピッケルを持って元気よく仕事をする父や兄たちの背中を見て育った。年が離れて生まれた初の娘だったからか、家族にもその仲間達にも可愛がられた。

 髪質は硬かったが眼を引く茶髪とその愛らしさは神々の言う『ますこっと』を彷彿とさせた。

 彼女が幼い頃から夢中になっていたのは英雄譚、特に『アルゴノゥト』の物語に何故か不思議なほど夢中になった。昔の先祖が実際にあったことがあるそうだが、時間が立ちすぎて真実かどうか怪しいらしい

 その生き方や在り方、人々を笑顔にするその姿に彼女は憧れに近いものを感じた。力強さを魅力とするドワーフの生まれで彼女自身も力というものに魅力を感じるたちで両親も知り合いもみんな『大英雄ガルムーザ』や今を生きる『重傑のガレス』を推しているのだが、最弱の英雄と呼ばれるアルゴノゥトに何故か一番心が刺激されたのだ。

 

 だから考えた。自分に何ができるか?自分はどう人の役に立てるのか?自分はアルゴノゥトのように人を笑顔にできるだろうか?

 そう思っていつも笑うように心がけた。もともと生まれつきの明るさを宿す少女には難しいことではなく、そうすることで自分もアルゴノゥトに少し近づいているように感じていた。

 

 そして自分と同じくアルゴノゥトが好きだということ少女に出会った。山脈の下にある草原の民の出身でドワーフの里と交流のある狼人達、いわゆる幼馴染の間柄になるであろう彼女は親と共に交流のために里を訪れた時に知り合ったのだ。

 

 

 カリィリリ・ユリスは草原の民の出身、狩猟を生業にして生きる狩人の一族。その性質上血の気の多く強気な者たちが多かったが、彼女は生まれつき物静かで大人しく、少し他のものとは違っていた。その聞き分けの良さから異端と呼ばれることはなかったが、彼女は何となく他のものとは距離を置いていた

 灰色の毛並みに子供とは思えない美少女ではなく美人に近い顔つき

 彼女は頭が良かった。自分達も山脈のドワーフもとある国の一部だということをすぐに理解して、今の現状で良いのかと疑問に思っていた。

 下界救済がなされて国同士の問題は彼女が生まれる前から大きく変化している。主に『小国の合併』が多く起きており、それを理由に様々な問題が起きていた。

 彼女は幼い頃からアルゴノゥトの英雄譚を片手に持ちながら常に思案していた。いつからアルゴノゥトに夢中になっていたのか覚えていない、気づけば手元にあった。そうとしかいえなかった。親も仲間たちも『狼帝ユーリス』や今を生きる『凶狼のベート』を推していたが、何故か彼女もアルゴノゥトに一番心動かされた。

 

 そしてローザと出会った。同じアルゴノゥトが好きなものに会えるとは思っておらずまるで火花が舞い散ったような衝撃だったことを覚えている

 そしてローザはカリィから様々な話を聞いた。時代の移り変わりにより自分達の生き方が変わるかもしれないことに、その変化についていけなければよくないことが起こるかもしれないことも

 

 どうすればいいかローザはカリィに聞いた

 

 そして『学区』の面接に受けてみようと誘われたのだ

 

 これから先、力への依存では生きていけない世の中になるかもしれない、自分達の故郷に少しでも何かできるならこれが最善だと教えられたローザはカリィと共に学区に行くことに決めた。

 

 

 

 そして『彼』に出会った

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「やっぱりアルゴノゥトは高度な教育を受けていた可能性が高いと思います。口調は芝居がかっているけど節々に感じる品性や言葉選びは確かな教育を受けていたからこそその口と頭に染みている育ちの良さが出ている。あの時代はいつどこでどんな国が滅んでも不思議ではないしどんな人間が死んだか行きたかなんて確かめようがなかったからこそ、上流で行きていたものが普通の人間として素性を隠して生き延びていても何ら珍しいことでもなくその素性を出したからといっていい思いが出来るのはほんの一部、切羽詰まっていた時代では中途半端な既得権益者などすぐに潰れていただろうしだからこそ自らの手で栄光や力をもとめて自らの足で生きるすべを模索したからこそアルゴノゥトは道化としてその進化を発揮してその物語が英雄譚に残ったと僕は思っています」

 

「だけど道化としての物語が後世に残るのはただの道化ではなかったという事実がある気がするの。最弱なんて呼ばれる英雄の名前がのこっている時点でそもそも疑問だし、だから私は本物のアルゴノゥトは本来道化ではなく英雄のような人格者だった説を推してる。だとしたらここまで広く名前が残るのにも納得がいくし話の事細かさは逆に脚色を入れた感があって何かを隠したというのも珍しくないと思うの。それが何だったのかは分からないけどきっと英雄として自分の後ろに続くような思いが込められているのは確かだと私は信じてる。そうじゃなきゃ始まりの英雄なんて呼ばれない、それは歴史が証明してる。」

 

「ふ、二人とも、部屋でやらない?//////」

 

 神々の言う『ましんがんとぉく』が公園のベンチで炸裂していた。内容は意味わからずともその長文ゆえの声量と前のめりの真剣な表情とよくわからないけど大きな圧に周りの者たちは口をあんぐりと開けて圧倒されその光景から目が話せなかった。

 カリィはその視線に当事者ではないにも関わらず赤面していた。

 

 英雄譚を語る友達になったコントラス・クラネルはアルゴノゥトの事が好きなローザとときおりこうやって本気の語らいを人目を憚らずすることがある。せめて部屋の中でやって欲しい

 

「カリィだって盛り上がることあるじゃん」

 

「私は人目を忍ぶの!」

 

「カリィ先輩が盛り上がると僕たち以上ですからね」

 

 時刻は昼の休み時間

 昼食を食べながら和気あいあいとする会話は日々の糧だ。ここで癒やされて養われた英気を糧にこの先の勉学に打ち込んでいく、それは他の学生にも言えることだが、この3人は特に『熱意』が強い、戦技学科並みに強い血の気の教養学科などこの三人だけだろう。

 

 アルゴノゥトを始まりとして集まった3人。ローザとカリィは知恵でこの先の時代を生きていくために学区に来た。コントラスとは思考も思想も違う、その証拠に授業と昼休みくらいしかコントラスとは会わない。個人としてやるべきことが多いからだ

 

 コントラスが学区に来たのは見識を広めるため、そして自分の家族の『財務』を務めるためだ。『財務』と言えば大袈裟に聞こえるだろうが、クラネル一家はもはや一族レベルでの大所帯、そういっても不思議ではない。誰かに頼まれたわけでもそう望まれたわけでもない、ただこの家族に必要な仕事をしたいとコントラス自身が望んだのだ。

 

 コントラスは学区に入学するための面接で堂々と『金の扱いを知りたい』と言い切ったのは有名なエピソード

 

 

 

 

 彼は入学後すぐに教員であるレオンを質問攻めにした。若い頃の父を知るためだ。その次に『ベル・クラネル史実写生クラブ』を立ち上げた。似たようなものがいくつかあったようだが幼いながらそのカリスマを発揮して一つにまとめ上げて今もなお規模を大きくしている。経営も学んでおり凄い速さで吸収して学んでいき商会を動かすがごとくクラブ資金を稼ぐその手腕は天才の域

 

「コントラスくんはお金に興味なさそうなのに稼ぐ事にめちゃくちゃ執着してるよね?」

 

「?、、、後半はそのとおりですけどお金に興味がないと思っていたんですか?」

 

「ローザ、人によっては失礼だよ」

 

「でも気になって、、、カリィも気になってるでしょ?」

 

「うぅ、、、正直言うと」

 

「、、、、、なるほど」

 

 友人が考える自分のイメージの違いに理解を示しながらコントラスは自分を振り返り自己分析とその経緯の言葉を思考してその説明に入る

 

「カリィさんは草原の民で狩猟民族でしたよね」

 

「う、うん」

 

「生きるための習慣でその場の常識や習慣を守るため、そのために狩猟をする。ということですよね」

 

「うん」

 

「僕にとって『金』は『獲物』という認識をしています」

 

「「!」」

 

「弱肉強食という言葉を知っていますよね?強いものが生き残る強いものが全てを決める」

 

 コントラスに弱肉強食の言葉を教えたのは知り合いのとある狼人、父のことを知りたくて父の戦友に片っ端から話を聞いていた時期の時に知った言葉

 

「でもこの言葉にはもう一つ意味があると思ってます」

 

「意味?」

 

「強い者も食わなければ、食うものがなければ生きていけない」

 

「!」

 

 下があるから上がある。食べるものがあるから食べられる。だが前提が崩れることがあれば強者ですら何も出来ない、何も得られないということ、勝っても見返りがなければ意味がない

 

「僕は『それ』を守りたい、、、他の家族では狩れない『獲物』を僕が狩るために」

 

 家族に正当を、兄弟に平等を、姉妹に賛辞を、みんなの日常というサイクルを回して狂わせないために、理不尽な無力を味合わせないために

 

「父さんはお金の大切さを人並みに理解してるけどいざとなれば躊躇いなく捨ててしまう人、だから僕は他の兄弟とはカバーできない場所を守るためです」

 

 究極的な話だが、金の扱いが雑なものは己の身の扱いも雑になるところがある。それはある意味ベルの若い頃の生き方に該当する

 

「僕の目標は知恵を持って父さんの力になることですから」

 

「本当にお父さんが大好きなんだね」

 

「変でしょうか」

 

「うぅん全然」

 

 家族のために それは二人にも通ずる信念だから

 

「なんかコントラスくん、少しアルゴノゥト見たい」

 

「僕が?」

 

「どういうこと? カリィ」

 

「アルゴノゥトの台詞にもあるでしょ」

 

 

 

 

『一』を切り捨てられた時 他の誰かが『一』を救えばいい

 

 

 

 

 

 それは喜劇の一節、だがそれはとある青年の真なる願い、そしてその言葉に救われた少女が確かに存在する。他力本願、それは真実、でもそれは誰かにとっては何かを変えてそして変われたかもしれない言葉

 

「誰もが何かを救えて、救いを与えられない人なんていない、私はそう解釈してる」

 

 普段大人っぽいカリィが子供のような笑みを浮かべてそう二人に言った。ローザはいつもの明るい顔で、コントラスは照れ隠しに眼鏡を直しながら、二人は同じく笑みを返し再び語り合うのだ。

 どこかの女神が『アオハル』とつぶやく光景だった

 

「これからも探求しようよ、アルゴノゥトみたいに笑顔があふれる物語を作るために」

 

「うん」

 

「えぇ」 

 

 喜劇による縁を結んだ3人、それは確かに道化が引き寄せた絆だった

 

「これからもたくさん笑うために!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これじゃあ笑えないよ」

 

 明るい笑顔がトレードマークの少女が、ドワーフの力強さを受け継いで壁が前にあろうと乗り越える気概を見せるその少女が、、、、

 

 スローザス・ルムスの顔に曇りがかかっていた

 

 そして幼馴染の隣で心配しながらも自らの顔も曇らせているカリィリリ・ユリスは悔しさに拳を握りしめていた

 

 二人がいるのは『BUNNY・PARRY』が泊まっている高級ホテル。その最上階の大きな窓ガラスがはめられた大部屋でローザは窓越しにその光景を目にしていた

 

 

「今こそ立ち上がれーーー!」

「声を上げろ!恐れるな!」

「我々の手で阻止するのだ!」

「独裁の誕生を!」

「平等な世界を!」

「力は分け与えられるものだ!」

「悪魔の強さなどもういらない!」

「新しい時代は優しい時代を!」

「強者たちの独走を許すなーーーー!!」

 

 とても遠い場所から叫んでいるはずなのにここまで届くのは声音拡張の魔道具を使っているから

 

 二万人規模のストライキ

 突如としてそれは行われた。祭りの建設に携わっていたものの約半分がその役目を放棄して『フィアナ・コーズウェイ』を円状に包囲、その数に物を言わせた人間の壁に穴はなく、残された半分の者たちは理由もわからず右往左往することしかできず。今は建設場所の中心の高級ホテルの周りに避難していた。

 

 何故いきなりこんな事が起こったのか?

 何がきっかけだったのか?

 

 それは各国の某略だった

 主に小国同士が同盟を組んでこの凶行を行っていたのだ。当然バレないように裏工作をしながら

 派遣された大量のスタッフたちは元々このストライキを知らされていなかった。事前に防がれるのを阻止するためだ。そして派遣されていたのは若い者たち、そして小国の合併が多く起こっている現状に不満を持つエネルギーを持て余した者たちが意図的に選ばれていたのだ。

 最初は『国のための資金活動』を名目にスタッフとして雇われていた

 だがこっそり会いに来た国の重鎮から『じつは革命を起こすための下準備』と聞かされてこのストライキに参加したのだ

 その重鎮はすでにこの場におらず何があっても責任を『勝手に』暴走した若者たちに向けられるように仕組んで

 

 

 

 ストライキに参加するに当たってのスタッフ業の放棄だけではなかった

 

 作った物の破壊

 

 建築物の勢いに任せた破壊

 

 会場を考えなしに破壊

 

 嫌がらせのためだけの破壊

 

 ろくな思考を巡らせずただただ革命という言葉に酔うだけの若者たちがそのやる気を発散させるために ただそれだけのために、労働で必死に頑張っていた者たちの成果を破壊したのだ

 

 

 高級ホテルの最上階には顔を曇らせるローザとカリィだけではなく、クラネル一家、そしてアフロディーテもそこにいた

 

 

「アフロディーテ様の魅了を使えば一発ですが」

 

「娯楽神の助言が入った国からの非難が入ってきてなおのこと面倒になるでしょうね、下界救済が果たされてから細かなことが多くなったから」

 

「そもそも何故こんな事を?世界の歌姫である歌母の祭りを邪魔すれば非難は免れないのに」

 

「見返りが釣り合ってない」

 

「ここまで大規模だと間違いなく大国も絡んでるでしょうね」

 

「魔法大国アルテナとか?」

 

「その大国から見返りをもらうってことか」

 

「何を?嫌われてでも欲しいものって」

 

「新しい魔道具」

 

「合併が続く小国で生き残るためには上下関係を勝ち取る力がいる」

 

「ここ十数年の先進によってより多くより多様な魔道具が開発されてるから」

 

「嫌われようと自国が名前を残すためにあっちも必死ってことかい」

 

 

 後ろでアフロディーテを交えた話し合いが行われる中、国の代表として来たローザやカリィもそこに加わらなければならないのだろう。だが今はできない

 皆の笑顔のために用意した舞台は壊された

 祭りは中止になるかもしれない

 そうなれば楽しみにしていた人々は笑えない

 各国の融和を深める目標は果たされない

 そして自分達が代表に選ばれた裏で何か取引があって、経験が薄いから、ただそれだけで選ばれたのかもしれない可能性

 溢れるばかりだった夢は、大衆の複雑な欲と悪意に破壊される現実

 

 だめなのか? もうだめなのか? 何も出来ないのか?

 

 

 二人は無力感で動くことができなかった

 

 

「カリィ、この問題が片付いても待ってるのは後始末だよね」

 

「うん、破壊行為をした人の捕縛とか建築物の建て直しとか」

 

「街みたいになってたここを作るのにすでに数カ月の時間をかけてる、、、、短期間で行える問題じゃないね」

 

「、、、、、ローザ」

 

 悔しさでその瞳から涙が零れそうになった

 

 その時だった

 

 

 

 

 

 

「『半月』です」

 

 

 

 

 

 

 その声が響いたのは

 

 皆がその声の主の方に首を向ける

 

 下を向いていた二人もそこに首を向ける

 

 

 

 そこにいたのは、白髪で翡翠の瞳に眼鏡をかけたヒューマンの青年

 

 

「『ハルモニア・スフォルツァンド・フェスタ』は半月の延期で開催が可能です」

 

 

「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」

 

 

 

 その名はコントラス・クラネル

 

 英雄の息子の一人

 

 

 

 母が妹が友がその場に居合わせた者たちがその男に目を向けた

 

 

 まるで影を照らす光に引き寄せられるように

 

 

 そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奴らを『殺さずに殺せば』」

 

 

 その滲み出る『殺意』に身を震わせた

 

 

 彼は英雄の息子の一人 コントラス・クラネル

 

 

「『実家』の眼晶(オルクス)を作動させてくだい」

 

 

 彼はとあるグループの一人

 

 

「みんなを呼んで『殺さない皆殺し』です」

 

 

 その名は『狼血(ろうけつ)』

 

 ベルの子どもたちの中で最も苛烈で最も残虐な

 

 

「僕らは世界で最も孤独から遠い一族ですからね」

 

 

 父親の狂信者たち

 

 

 





「なんで、、、こんなふうに育っちゃったんだろう」

「エイナ様お気を確かに!!」
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