旧作:色彩のせいで、死にたいのに死ねなくなりました   作:蒼雲しろ

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閑話 あったかい我が家が……?

 砂漠探索を続けて秋になった。

 最初は慣れずに迷うことも多かった砂漠探索は、今ではすっかり日課となっていた。

 

 それに、そこまでうまくいかないと思っていたが、やりがいも大きかったのだ。

 

 気づけば、普通に稼げていた。

 生活に困ることはもうなかった。

 ……学校を借りているので、家賃とかはかかっていないからかもしれない。

 

 そこら中に見つかる家具や金属素材。

 加えて、三郎さんからのアドバイスが、稼ぐ方法を更に増やした。

 

 ――鋼鉄や電線、配線辺りの建築資源もわずかな金にはなる。

 

 それを聞いてから、なるべくいろんな廃品を持ってくるようにした。

 バッグに詰め込んでは、砂漠を歩き回る。

 

 あまり稼げないときもあったし、逆に、一日で三日分の利益になることもあった。

 毎日やっていったことで、生活にある程度の余裕が出てきた。

 

 たまに柴さんの手伝いや三郎さんの手伝いをしたときにお駄賃をもらったりもしていた。

 

 それらがたまっていく一方だったので、ある時を境にホシノへ物で返そうとしたことが何度かあった。

 

 あとは、アビドス高校にも寄付している。

 ホシノから聞いた話によれば、どうやらアビドスには借金があるとのこと。

 それで定期的にホシノに現金もプラスして渡していた。

 

 いろいろと渡されたホシノは、初めは抵抗していた。

 なので、家までついて行ったこともしばしば……。

 通報されてもおかしくない。

 

 しぶとくやっていたら、途中からは諦めムードに入っていた。

 始めはそれでよかったのだが、徐々にホシノからの差し入れが増えた。

 お互いに贈り物をし合っていて、もはや小競り合いのようになっていた。

 

 そんな中でも、それ以外にはお金を使うことがほぼなかったので、支出より収入の方が多かった。

 

 このような経緯から、余裕が出てきた今、家を借りようかと思い始めた。

 

「それで俺らに声がかかったってことか」

「ふむ。賃貸か……」

 

 紫関ラーメンの屋台で麺をすする。

 最近ハマっているのは、「特製味噌ラーメン」。

 それに、炙りチャーシューをトッピングしたものだ。

 これがおいしくて、気が付けばスープまで飲み干してしまう。

 

 早いうちにホシノを連れてきたい気持ちもあるが、女子にラーメンを誘うというのがとても微妙な気持だ。

 そして、この前来た時に柴さんと話したことを思い出す。

 

 ――近頃屋台を止めて、アビドス高校の近くに店を構えようと思ってるんだ。

 

 屋台だと遠いので、店舗ができたら連れて行こうと思った。

 

「この辺の賃貸を借りるとなると、伝手はある」

「ホントですか⁈」

「ああ。それでだが――」

 

 三郎さんは、コップをカウンターに置きながら柴さんの方を見る。

 

「大将が近いうちに店舗を見積もりに行くそうだ。ついていくのはどうだい?」

 

 それを聞いた柴さんは、視線をあげる。

 話の流れを理解したようで、こちらを見て微笑んだ。

 

「お!なら一緒に行こう。一人で行くのも心細いだろ?」

「いつも助けてもらってばかりで……」

「なあに、こっちも店を手伝ってもらってるんだ。このくらいお安い御用さ」

 

 やはり聖人。

 この前、別件で助けてもらったときは、後光が見えるようになってきた。

 そのとき、俺はついに至ったのだと思った。

 

「二日後……とかは空いてるか?」

「はい!」

「そうか。それじゃあ、二日後の十三時でどうだい?」

 

 了承の返事をした。

 その日はそれでお暇し、学校で待ってるホシノの元に帰る。

 

 最近は走り込みと近道のおかげで時間は短縮されたが、二時間の道のりは楽ではない。

 もう少し恐怖(テラー)の扱いが上達すれば、早く走れそうだった。

 

 学校に帰っては、ホシノがせこせこと片付けていた生徒会室を覗いた。

 早めに寝るように声をかけてから自身が使っている教室に戻る。

 

 一階にあるシャワー室を使用して、身体を洗う。

 

 この場所にシャワー室があることを知ったのは、ユメ先輩を探しに行った次の日。

 ホシノと話した後に、身体が汚れていることに気が付いて、聞いてみた。

 そしたら、普通にあるとのことだったので、使用許可を求めたところ。

 

 ――一階にあるので自由に……鍵がかかってるときは使わないでください。

 

 とのことで、自由に使っていいとのことだった。

 

 体を洗って、コインランドリーに持っていく用の服はまとめて袋に入れる。

 ドライヤーで髪を乾かして……保湿クリームを塗る。

 何故か常備されていたもので、自由に使っていいとのことだった。

 日焼けが痛いので一応塗っているのだが、いまだに違和感を持って塗っている。

 

 教室に戻ってからは、荷物を整理して寝る支度を済ませる。

 自分の予備の服を枕にして、床に寝そべる。

 

 布団、おける場所が欲しいよねぇ……

 

 

 ――――――――

 

 

「柴さん~!」

「カナメ君!来たか」

 

 次の日。

 ホシノに出かけることを伝え、柴さんのところまで来た。

 起きてるのかわからないくらい、緩んだ返事をされた。

 多分伝わってない可能性があるが、聞いてなかった方が悪いと割り切ろう。

 

「それじゃあ行くか」

 

 柴さんと歩いて都市部まで行けば、1つの店に辿り着いた。

 

 街を歩いていて思ったのは、都心部にはまだ活気がある。

 人がいないアビドス高校の近くでは感じられない人の雰囲気に胸が高鳴った。

 

「それじゃあ行くか。いい部屋が見つかるといいんだが」

「柴さんも俺も、納得できるものを見つけましょうよ」

「そうだなぁ」

 

 店に入れば雰囲気のよいロボットが出迎えてくれた。

 座り心地の良い椅子に案内されて話を聞いていた。

 

 二人でアビドス高校近くの物件を求めていることを伝える。

 

 見つかった数十件の部屋と建物を見せられて思ったこととしては、安い。

 過疎地域なので需要もないのか。

 

 それならそれでこちらとしては嬉しいものである。

 

 柴さんとしばらく悩み、数十分すればお互いに良い候補を見つけていた。

 お互いに十分ほどの距離にあるような建物を選んでいた。

 まさか、こんなに近いとは思っても見ず、笑ってしまった。

 

 特に困ることもなかったので、そのまま今日中に契約を済ませることとした。

 

 決して無視できる出費ではないが、今の調子なら大丈夫だろう。

 他にも少しバイトだったりもやってみてもいいかもしれない。

 

 来月からの引っ越しとなったが、新居での生活が楽しみだ。

 

 

 ――――――――

 

 

「ただいま~」

「……遅かったですね」

 

 二階のいつもの教室の扉を開ければ、窓際の椅子に座っていたホシノ。

 頬を膨らませ、足を前後に振っている。

 

 後ろ手に扉を閉め、ホシノの方に歩いて行く。

 コンビニで買ってきたシュークリームをホシノの机の上に置く。

 

 興味なさそうに、すぐに視線をそらしていた。

 ……アホ毛が揺れているぞ。

 

「食べないの?」

「食べますよ」

 

 声色は変わらないが、徐々に輝きだした瞳と揺れるアホ毛。

 これを見るのが最近の楽しみだったりもする。

 

 頬張ってるホシノに、今日のことを話した。

 

「さっきさ、賃貸の契約してきたんだよ。それがね――」

「ここから、出ていくんですか?」

 

 話しきる前に割り込まれた。

 人形のように不自然に首が動いた。

 

 横に座る俺を開ききった目が見つめる。

 頬についているクリームを指で取り、説明する。

 

「出ていくというか、その辺に」

「ここにいてもいいって言ったじゃないですか」

 

 椅子を少しずつずらしながら、にじり寄ってくる。

 別に悪いことはしていないが、冷や汗が出てくる。

 

「話を聞いてってば」

「私のこと――」

 

 いつの間にか机の上に置かれたシュークリーム。

 膝の上に手が置かれ、下から覗き込んでくるホシノ。

 

 なんだ……これは……。

 

「近いって……ほれ!外見てよ」

 

 視線から逃れるように、外を指さす。

 少し離れたアパートが見える。

 

「あそこ!徒歩一分くらいのもう引っ越した意味がないくらいのところ!」

「――え?」

 

 視線だけがゆっくりと外を向く。

 その隙に肩をつかみ、ホシノの背が背もたれに付くよう押す。

 

 半目でこちらを見つめてくるが、気にしない。

 

「だから、そんなに慌てなくてもいいって」

「……」 

 

 上がっていた肩が下がり、腕が垂れ下がる。

 胸をなでおろすような仕草に、茶化しを入れる。

 

「心配した?」

「……」

 

 いつもならここで突っかかってくるはずだが、返事が返ってこない。

 更に、俯きがちな姿勢のせいで表情が見えない。

 

「おーい?」

 

 目の前で手を振ってみる。

 

 何も返事がないと油断していたところに、ホシノの右手が飛んでくる。

 手をつかまれる。

 

「……しました」

 

「……心配、しました」

 

「どこか行ったら、寂しいので」

 

 光を帯びた瞳が揺れている。

 

 呼吸が、止まった。

 

「――え?」

 

 右手は俺の手をすり抜け、顔まで届く。

 そのまま耳に触れた手が、やけに冷たく感じた。

 

 太陽の光と、海の深さを宿したような宝石から、目が離せない。

 

 

 止まった時を動かしたのは、ホシノだ。

 

 表情は一変し、いたずらっぽくいたする。

 

「ふふっ……驚いた顔は新鮮ですね」

 

 椅子から立ち上がり、微笑んだまま見下ろしてくる。

 そして、軽い足取りで教室を去っていく。

 

 机の上に置かれたままのシュークリームの袋が、天井から降り注ぐLEDの光を反射している。

 

 深呼吸をして、冷静になる。

 シュークリームを一口齧る。

 甘い。

 

 

 

 してやられた……?

 

 

 




閲覧ありがとうございます~!

何とは言わないんですけど、最近見た映画がとっても良かったのです。
ええ。
それでわたくし、感じました。
普段デレないやつがデレる破壊力。
それには、遥か上があったことを。
何が言いたいかというと。

もっと小説書くのが上手くなりたい。
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