旧作:色彩のせいで、死にたいのに死ねなくなりました   作:蒼雲しろ

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ミスで投稿してしまった……。


閑話 猫舌

 寒さを感じながら、薄暗い住宅街を歩いていた。

 

 隣にいるのは冬服を纏ったホシノ。

 夏に着ていた紺のベストではなく、今は灰色のセーターを着こみ、その上から紺のコートを羽織っている。

 肩先を過ぎたポニーテールが、ふわりと揺れている。

 

 ショルダーホルスターを整えながら、そこに刺さる黒色のハンドガンを見る。

 

 冬に至るまで、いろいろと進展があった。

 

 引っ越しをし。

 スマホを買い。

 砂漠探索を続け。

 きちんとした銃を買って。

 校舎の掃除の続きをやり。

 ホシノと共にアルバイトをして。

 

 休まず学校に行くこと、通算三か月。

 色濃い夏と秋を過ごし終わって、冬も中盤。

 

 学校が終わった本日は、夜ご飯を食べに外へ出た。

 

 学校から歩くこと20分くらいの場所に新しくできたお店の前にいた。

 入口上には、きれいな看板が飾られている。

 

 『紫関ラーメン』と書かれた看板。

 

 俺たちは、紫さんのところにラーメンを食べに来ていた。

 

「おお……」

 

 木造の店内は、雰囲気が出ていた。

 目を輝かせて店内を見ているホシノ。

 珍しいことに、それを隠すそぶりもなかった。

 いつも通りのアホ毛は、冬でも衰えることはない。

 

「ラーメン好きなの?」

「まあ、嫌いじゃないです」

 

 フツーですみたいな顔してるけど、さっき目輝かせてましたよね?

 

「いらっしゃい――おお!カナメ君じゃないか!」

「柴さん!また来ました!」

 

 調理場から聞こえてくる元気のいい声。

 柴さんが、身を乗り出して入口にいる俺たちを見る。

 

「知り合いなんですか?」

「結構通ってるんだよ」

 

 思い出すのは、いつものルーティン。

 砂漠探索に行った日は、そのまま三郎さんのところに行き集めたものを売る。

 その足で柴さんのところでラーメンを食べてから帰る。

 これが至福の時だった。

 

 俺の話を聞いたホシノは小さく眉を寄せる。

 

「私は誘われてない……?」

「誘うのに抵抗がありまして……」

「ふーん」

 

 明らかに不機嫌そうに、細めた目で下から見つめてくる。

 視線をそらしたくて、柴さんの方を見る。

 

「だ、大丈夫か?」

 

 苦笑いを浮かべる柴さんに苦笑いを返す。

 それで察してくれたようで、そのままカウンターに案内してくれる。

 

 店内を見渡す。

 案の定、店内には俺たちしかいない。

 この立地じゃ人が来ることも少ないのだろう。

 

 席についてメニューを眺めるホシノ。

 塩と醤油のページを眺めている。

 

 しばらくした後、決まったのかこちらに目線を送る。

 

「決まったかい?」

「俺はいつもの『特製味噌ラーメン』に炙りチャーシュートッピングで」

「私もそれで」

 

 さっき味噌のページ見てなかったよね?

 何故か俺と同じ注文にしたホシノを見れば。

 

「なんですか」

「いや……何でもないよ」

 

 睨みつけられる。

 触れてはいけない部分……肘が飛んでくる気がしている。

 

 と思いきや、ホシノは表情を崩した。

 

「なんだ……?」

「別に、来たことがあるカナメさんと同じにすれば外れないと思っただけです」

「なんで自分から墓穴を掘りに来たんだ」

 

 肘が脇腹に刺さる。

 ……余計なこと言ってるからいつも反撃を食らっているのだ。

 

「へいお待ち!じゃれ合ってると伸びちまうから、早めに食べな!」

「じゃれ合ってません!」

「ここはツンケンするんだ」

 

 借りてきた猫のように、警戒心をむき出しにするホシノ。

 柴さんも思わず顔が引きつっている。

 

 いつか優しくなるから、それまで頑張ってほしいです。

 

「食べよっか」

「……はい」

 

 目の前に置かれた味噌ラーメンを見る。

 どんぶり並々に盛られた麺とチャーシューにその他の具材。

 見ているだけで喉が鳴りそうになる。

 

 二人で手を合わせる。

 

「「いただきます」」

 

 一声発し、麺をすする。

 

 口の中に広がる深みのある味噌と、腰のあるちぢれ麺。

 体の芯まで染み渡るこの暖かさ。

 夏場のラーメンもいいが、冬のラーメンの方が好きだ。

 

「ん~柴さん!今日も美味い!」

「そりゃよかった!ありがとよ!」

 

 人のいい顔で微笑む柴さん。

 

「お嬢さんは?」

「……おいしいです」

「そうか!ありがとよ!」

 

 人見知りが発動しっぱなしのホシノ。

 初めて会ったころと比べれば、まだましなくらいだろう。

 随分と丸くなった。

 

 それに、相当お気に召したのか、無我夢中で食べ進めている。

 それを見て、頬が緩む。

 

 俺も早めに食べることにした。

 

 お互いに無言で食べ進め、ものの数分で完食した。

 箸を置く音が響く。

 

「美味し~」

「……うへ~」

「足りたか?」

 

 まだまだあるぞ、と言わんばかりにチャーシューを見せつけてくる柴さん。

 二人して涎をこらえながら、断りを入れた。

 

「大満足です!」

「美味しかったです!」

「そりゃよかった!ありがとな!」

 

 会計を済ませ、柴さんに挨拶をしてから店を出る。

 店を出ても、柴さんはしばらく見送ってくれた。

 

 ラーメンを食べたことで、あったかくなった体。

 寒さはそこまで厳しく感じなかった。

 それに、ここからすぐに学校に着くと思うと心が楽だ。

 

 二人で夜道を歩く。

 ホシノから不意に声がかかる。

 

「カナメさんの家に行きましょう」

「いきません」

「いきます」

 

 最近、やけに家に来ようとしているホシノ。

 何かと理由をつけてくるたびに、断っているのだが。

 

 ここまで意地になるのには理由もある。

 

 如何せん、一度通してしまえばハードルが低くなってしまう。

 ……家にはいろいろと物が置いてある上に、まともに片付けようとも思っていないため、人を上げられるような状態ではないのだ。

 

「ホシノの家より学校に近いのはわかる」

「ただ、ダメなもんはダメだ。掃除してないし、そんなに広くもない」

 

 毎度のこととはなるが、そういうと頬を膨らませる。

 

「……意地悪、人でなし、極悪人」

「はい。出禁で」

 

 ホシノの肩を指ではじく。

 やはりというか、唇を尖らせている。

 

「……何で」

「駄々こねないで家に帰ろうね」

 

 顔が俯く。

 ……。

 

「スマホも買ったから連絡できるでしょ?」

「……うん」

「学校は毎日いくからさ」

 

 しぶしぶといった様子で頷いている。

 ギリギリ納得してくれたようだ。

 

「寂しいのはわかる、一人で居たくないのも」

「でも、ほら。後輩も入ってきそうなんでしょ?」

「いつまでも学校に居座るわけにもいかないし、そのためのこともやったんだから」

 

 そう。

 どうにかホシノの力になれるよう、何かと動きはしたのだ。

 それでも、どこか不安げな表情は消えることがなかった。

 

 気を抜けば、いつも泣きそうな顔をしている。

 

 何かしてあげたいのだが、家に入れるのは……ね。

 家が狭いので、隠したいものも隠せないのが辛い。

 

「家まで送るよ」

 

 口を開いた。

 あきれられた目で見つめてくるが、今は無視するしかない。

 

 どうか、寂しさを紛らわせられるように。

 

 ――頑張らないとね。




閲覧ありがとうございます~!

これにて閑話も終了し、第0編は終わりになります。
次から第1編となりますが、設定もろもろ甘いことを感じています。
投稿までに時間が掛かると思いますので、気長に待ってくれるとありがたいです。



追記

現在、第1編の設定を練っております。
その中で改めて第0編を見直したところ、自身の見切り発車による部分もあり、物語の流れに納得しきれていない点がありました。

本作を読んでくださっている皆さまに、より良い形で物語をお届けしたいと考え、このたび第0編をリメイクすることにいたしました。

リメイク:銃を持つ少女たちと死に損ないのブルーアーカイブ
https://syosetu.org/novel/406745/

リメイク版は設定や展開を整理し、より一貫性のある物語になるよう構成し直す予定です。
なお、現在公開中の内容とは一部異なる展開になる可能性がありますので、あらかじめご了承ください。

閲覧いただいた皆さま、お気に入り登録や温かい感想をくださった皆さま、本当にありがとうございます。

そして、急な変更となりますこと、深くお詫び申し上げます。

新しく生まれ変わる物語も、引き続きお付き合いいただければ幸いです。今後とも本作をよろしくお願いいたします。
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