旧作:色彩のせいで、死にたいのに死ねなくなりました   作:蒼雲しろ

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本日も楽しんでいただければ幸いなのです
特殊タグって面白いですねぇ。

追記:思った百倍気持ち悪い文章だったので、内容は変えていませんが表現だけ変更しました。


再び

「それでは、キヴォトスについてお教えしましょう」

 

 結局、黒服と契約を結んだ。

 契約書には、お互いの条件を必ず達成することという簡易的な内容が書かれていた。

 書類にサインをしたりしたが、未成年でも大丈夫なのか。

 ……気にしちゃいかんか。

 

 今は、向かい合うソファーで冷えたお茶を飲んでいた。

 カップで用意されたときは、眉間にしわが寄ったが、別に何が入っていてもよかったので大人しくもらった。

 

 久しぶりの水分が喉を潤す。

 気づけば、ほっと溜息が出ていた。

 

「ありがとうございます」

 

 この世界について知ること。

 

 これが自分にとっていいように作用することはあり得ない。

 好奇心だけの行動が、自分の意思を変えてしまうかもしれない。

 

 そう思っても、自身の思い付きを止められなかった。

 

「学園都市『キヴォトス』。この世界は数千の学園がそれぞれ運営する自治区で構成される連邦都市です。」

「そして、キヴォトスは超銃器社会です。生徒や住民たちのほとんどが日常的に銃を使用し、些細なもめごとでさえ銃撃戦を繰り広げます」

 

 超銃器社会。

 

 真っ先に思い出すのは、あのスケバンの2人。

 彼女らはこの世界では一般的な存在であったらしい。

 俺が唾棄した銃を持ち歩くという行為は、何ら異常ではなかったのだ。

 

「そんなに軽々しく銃を扱っては死人が後を絶たないのでは……?」

 

 当たり前の質問をした。

 銃弾を受けて無事な人間なんて……いないわけではないが、危険なのは変わりない。

 

 しかし、ここはキヴォトス(地獄)。

 異なった価値観を持つ俺の疑問はやはり打ち砕かれる。

 

「いえ、銃撃戦で人が死ぬことなど滅多にあり得ません」

 

 手を組み替えるが、自然と手に力が入る。

 

 銃で人が死なない?

 銃撃戦が日常なのに?

 それは人といえる存在なのか、という疑問が頭をよぎった。

 

「生徒……いえ、彼女らは特別な力を宿しています。我々はそれを『神秘』と呼んでいます。神秘の影響で肉体強度、回復力、耐久力――いずれも通常の人間とは比較になりえません。銃弾程度であれば、かすり傷でしょう」

 

「もっとも――彩依さんはその限りではありませんが」

 

 思い出すのは、先ほどの光景。

 忘れもしない。

 銃を受けたあの痛み。

 

 塞がっているはずの傷が、痛みを訴えてくる。

 腹部をさするようにして、痛みを逃がそうとした。

 

「俺は、この世界の住民じゃありませんからね」

「ええ。ですが、それでは説明つかない事象がありました」

 

 カップを持ち上げ、お茶を一口飲んだ。

 

「貴方は神秘を持たない。しかし、貴方はビナーの攻撃を耐えたのです」

 

 ビナー。

 あの超常的な攻撃を無傷で耐えきったことを言っている様だ。

 

「ただでさえキヴォトスにアレを受け止められるものなど少ないというのに。だからこそ、貴方の身体はアレに耐えられるようなものではないはずです。――何故、アレを受けてなお生存しているのですか?」

 

 黒服の視線が俺を射抜く。

 笑っているような、真剣なような表情で、俺を見つめる黒服。

 

 しかし、俺自身よくわかっていないことについて聞かれている。

 神秘。

 恐怖。

 色彩。

 どれ1つだって理解することを放棄した。

 

 きっと。

 理解するときも来ないのだが。

 

「わからないです、俺にも。」

 

 黒服の身体が固まった。

 こうも正面から言われるという予想はしていなかったのか?

 

「あの時、何が起こったのか。今、こうして無傷で生きている理由が。くらったはずの銃創は見る影もなく消えてますし」

「……」

「ここに来てから、ずっと困惑ばかりして。いつの間にかここに来ていた感じです」

 

 黒服は考え込むように両手を組んだ。

 しばらく無音の時間が続いた。

 この空気を壊すため、何か話そうと思った矢先。

 持ち上げたカップを置いた黒服が口を開いた。

 

「……クックック。嗚呼、ここにきて本当に良かったです」

 

 その言葉を聞いて、先ほどのことを含め疑問に思ったことを問いただした。

 

「ビナーに見つかった時……俺のことを見ていたんですか?」

「ええ。少々遠くからでしたが観察していました」

「助けてほしかったですね」

 

 思ってもないことを口にした。

 少しでも黒服の余裕を崩して見たいという悪戯からの言葉だった。

 

「申し訳ございません。私は貴方と同じ――否、同じではないようですが、戦闘能力を持っていませんので。」

 

 どうやら目的とは違った効果があったようで、意外な答えが聞けた。

 正直、目の前にいる人物が戦えないといわれても信用できないと思うほど、強者の余裕にあふれているのに。

 更に、戦闘能力がないというキヴォトスにおいて弱点になりえることを、そう簡単に認めたことも相まっていた。

 

「戦闘、できないんですか」

「ええ。私も貴方と似たような存在ですので」

 

 そう告げた黒服は、話を仕切りなおそうとしたのだろう。

 姿勢を改め、空気を変えた。

 

「話を戻しましょう。彩依さんから何か聞きたいことはありますか?」

「……そうですね」

 

 正直、迷いがある。

 

 それは、色彩だ。

 色彩について尋ねる、というのは危険な行為になりえるのか。

 

 ビナーは色彩――恐怖が安全なものではないと語った。

 それは俺には詳しく理解できていないが、攻撃が効かない力というだけで相当な代物だと推測できる。

 手に入れたきっかけがきっかけだ。

 確実に善性のものではないはずだ。

 

 それが、黒服の興味をどう引き寄せるのか。

 はたまた、興味を示すことがないのか。

 

 一か八かになるが、話して情報が得られればラッキー感覚で行ってみるか?

 

 興味を持たれて……ないとは思うが、監禁とかされたら死ぬに死ねない。

 

「……ここは、なんという学園の自治区何ですか?」

 

 結局、濁すことにして別の質問を投げかける。

 考えるにつれて、話す必要はないと感じてきた。

 悩むくらいなら、気にせず忘れて死んだほうが楽に決まっている。

 要はめんどくさくなっただけだ。

 

「ここは『アビドス高等学校』が自治を行っている『アビドス自治区』です。現在は砂漠化の影響で町中が砂でおおわれていますが、かつては非常に繫栄していたようです」

「砂漠化……建物が埋まっているのもそれが原因ってことですか」

「ええ。砂漠化の進行が対策を上回り、現在は手が付けられない状況になっています」

 

 外に視線をやるが、元々はここら辺も砂漠ではなかったと思うと、相当巨大な都市だったと分かる。

 中心部はかろうじて建物が密集しているが、もう人などほとんど住んでいないだろう。

 

「人はどのくらいいるんですか」

「詳しくは把握してませんが、人が位しているのは都市部のあたりでしょう。現在は治安の悪化も進み、住民も更に減少傾向にあるようです。以前に比べ、ほとんど人はいないといってもいいでしょう」

 

 治安の悪化。

 それを聞いた瞬間、あのスケバンが浮かんできた。

 

 彼女らも、この砂に覆われた街で暮らしているか。

 俺にはきっと関係ないことだが、ふとそう思った。

 

「確かに、こんな状態じゃ安心して暮らすのは難しそうですしね」

「心当たりが?」

 

 痛いところをついてくる。

 

「心当たりというには小さい出来事ですが、少しだけこの街を見たんです」

「そうでしたか。それでは、キヴォトスにたどり着いて初めての都市がここだったのですね」

「……まあ」

 

 勘ぐられてしまった。

 余計なことをしゃべったか。

 正直、この人物であれば俺は最初から観察されていそうな気持もするが、核心をついてこないあたり流石に見ていないらしい。

 

 気を取り直して、そろそろ会話を終わらせる方向に動かす。

 

「俺から聞きたいことはもう終わりました」

「おや?思ったよりも質問が来ませんでしたね」

「全部を聞こうと思っていたわけではないので。あと、契約って言われるとどうも欲張っては悪い方向に行きそうなので」

「クックック……。信用されていないようで」

 

 この男の不気味さはぬぐえない。

 すべてを見透かしてきそうな発言に、態度。

 話続ければいつか取り返しのつかないことになる予感がした。

 それが何なのかは、わからないが。

 

「人見知りなので」

「そのために契約を進めたのですが、返って逆効果でしたか?」

「そう聞かれては、頷くしかありませんが」

 

 黒服は何がおかしいのかわからないが、楽しそうに顔を歪めていた。

 やはり、不気味だ。

 

「信用はできないが、あのような条件で契約は結んだ、と」

「貴方が結果的に望んだ結果になってるのでいいじゃないですか」

「彩依さんはどこまでも特殊な方なのですね」

 

 その言葉を聞いた俺は反射的に口が動いた。

 

「一番貴方に言われたくない言葉ですね、それ」

「それを言われてしまっては何も言えません」

 

「――嗚呼。本当に。素晴らしい逸材です。彩依さん」

 

 そうつぶやいた黒服は立ち上がる。

 スーツの皺を伸ばし、一言告げた。

 

「それでは彩依さん。契約を完遂いたしましょう。次は私の条件を果たしてもらいます」

 

 

 黒服から告げられた条件は「黒服の研究に付き合うこと」。

 どうやら、先ほどの会話である程度のことはわかったとのことだった。

 そういうところに不気味さを感じる。

 この黒服という人物は何なのか。

 

 移動します、と言った黒服に言われるがままついていった先は、一階下の部屋だった。

 

 その道中で1つ話をされた。

 

「キヴォトスでは、外から来たことを隠した方がいいでしょう」

「どうしてですか?」

「キヴォトスでは、外の世界の方が彼らと違うことを理解しているからです」

「簡単に死ぬと、わかっているのです」

 

 そんなやり取りをしていた。

 それには納得したが、今後は無いので別にどうでもいい話だった。

 

 その部屋には、特に何かがあるわけではなかった。

 上階と比べれば、質素なつくりになってはいるが、椅子やベッドがある。

 いや、なんというか、病室みたいな――

 

 そこで身体の異変を感じた。

 体の力が抜け、膝から崩れ落ちる。

 視界の右半分が地面を映し出すようになったところで、立ち上がろうとしてもやはり身体に力が入らないことを感じる。

 もはや、眼球すらも動かせない状況に焦りを募らせる中、鼓膜にはあのやはり胡散臭い声が届く。

 

「ビナーの攻撃を耐える身体を持っていても、薬は効果があるようですね?」

 

 声を発したつもりだが、空気を吐き出しただけとなった。

 

「それでは、彩依さん。――研究は、すぐに終わります」

 

 頭が何かを理解する以前に、意識を保てなかった。

 そうして、本日3度目の眠りについた。

 

 

 ――――――

 

 

 

「……」

 

 知らない天井だ。

 

 体を起こす気にもなれないほどダルさに侵食されたようで、数分間ぼうっと天井と見つめ合っていた。

 すると、唐突に視界を覆う黒。

 髪の毛が目に掛かった。

 

 身体を撫でた風の出どころは側にある窓だった。

 

 黒服はいない。

 研究は……終わりか?

 

 いや、もうどうでもいいだろ。

 

 体を起こす。

 ベッドに身体が張り付く感覚を覚えた。

 

 ベッドに腰をかけた状態となり、外を見つめる。

 

 日は沈みかかり、このアビドスと呼ばれる地の黄金の輝きは増す一方だった。

 

 薬を盛られたと思う。

 睡眠薬とか、その類のものを。

 油断していたというか、薬が入っているという発想がなかった。

 

 嘆息が漏れる。

 

 起こってしまったことは仕方ない。

 最初から最(・)後(・)まで黒服の掌の上のように思えてしまい、気に食わなかったりする。

 

 心を入れ替え、ベッドから床へと降り立つ。

 重力がキツく感じるが、勘違いと思おう。

 身体がおかしいだけだ。

 

 茜が差し込む窓へとヨタヨタと歩いていく。

 

 窓を全開にする。

 

 巨大な天道が視界を満たす。

 俺がキヴォトスにやってきた時は昼間だったが、すでに日は沈みかけていた。

 

 

 ……今思えば長かったようにも感じる。

 

 

 こんなにも精神が擦り切れる経験をしたことがあったか。

 

 あるわけが無い。

 

 世界中を探しても……いない。

 

 そう思えるほど、ただの高校生には余りに過酷な道のりであった。

 

 

 漸く、その道のりは終点を迎える。

 

 

 窓枠に腹を当て、身を乗り出す。

 地面にたどり着くには相当な距離がある。

 

 風が頬を撫でる。

 夜が近づいてくる。

 

 寒くならないうちに。

 

 

 死んでしまおう。

 

 

 足に力を入れ、身体を押し上げる。

 

 これ以上、苦しい思いをしないように。

 これ以上、絶望しないように。

 これ以上、恐怖を感じないように。

 

 

 生を手放せば、楽になれる。

 

 

 頭から地面に向けて落下していく。

 

 重力に引っ張られながら、地面との差を往々にして失くしていく。

 

 

 周りの建物が自分よりも高くなっていく。

 

 

 

 

 窓に映る自分が次第に認識できなくなっていく。

 

 

 

 

 

 楽に――

 

 

 

 

 

 

 耳を打つ風の音が騒がしくなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうか――苦しまないように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 影が小さくなり、砂の粒が見え始め――。

 

 

 ――――――――

 

 

 屋上に立ち尽くす人物が見える。

 その人物は、黒曜のネクタイを正しながら足元を覗き込む。

 

 砂の上に倒れた少年がいた。

 黒髪に学生服のようなものを身に着ている。

 

 ――ようなもの、である。

 

 実際は見る影もない。

 所々に穴が開き、焦げた跡がある。

 胸元から覗くワイシャツは、黒赤で染め上げられていた。

 

 凡そ、一般的な学生にはあり得ない様相。

 

「彩依さん」

 

 屋上に立つ黒いスーツを纏った人物――黒服は、宙に向かって言葉を紡ぎ始める。

 

「貴方は特別な存在です」

 

「キヴォトスでも有数の戦闘兵器であるビナー(BINAH)と対峙し他にも関わらず、生存を果たした」

 

「その理由は、貴方が何かしらの神秘を持っていたからだと思っていたのですが」

 

「実際に対面しても、貴方から神秘を感じることがなく、不思議でなりませんでした。」

 

「研究を行うために、詳しく調べて(解剖でもして)みようと思ったのですが――」

 

「彩依さんに触れる直前、悄然(しょうぜん)としてしまいました」

 

 

「貴方は色彩と接触したのですね」

 

 

「怖気だつような視線を感じたのです」

 

「この先にも後にも、このような経験をすることなどないと思うほどに」

 

「……」

 

「……クックック。今日は素晴らしい日となりました」

 

「貴方という興味深い存在(研究対象)を見つけられたことに、感謝しなければ」

 

「ビ(・)ナ(・)ー(・)を(・)向(・)か(・)わ(・)せ(・)た(・)甲(・)斐(・)がありましたよ」

 

 

「始めは、危険分子として排除しようと思いましたが」

 

「ですがまだ、可能です」

 

「貴方であれば、観測することが可能です」

 

 

「恐怖(テラー)を生きた生徒に適用できるのか」

 

「神秘を持たない人間が、色彩と接触したことで何が起こったのか」

 

 

「いずれ……不可能になり得るかもしれませんが」

 

「その時は、仕方ありませんが……」

 

「やはり、敵を知るには必要な危険だと割り切るべきでしょう」

 

「――暁のホルスとは別ベクトルでの研究になりますが、不都合はありません」

 

 

「幸いにも、どちらもアビドスにいらっしゃるのでね」

 

 

「折角、一味加えた(嘘をついた)と言うのに。それが作用せずに終わるのは面白くないでしょう」

 

「かような訳で、貴方にはまだ死なれては困ってしまいますよ」

 

 彼から目をそらし、自身が立つ屋上を見やる。

 屋上の出口に向かって、革靴の子気味良い音を鳴らしながら歩く。

 

 扉を押開け、階段を降りていく。

 

 たどり着いた先は、病室のような場所。

 

 窓は開ききっており、少し離れたところには簡素なベッドが置かれていた。

 ベッドには先ほどまで人が寝ていたような痕跡として、シーツに皴ができていた。

 

 否、皴だけではない。

 

 人が寝ていたと分かる場所。

 そこには、到底人から出たとは思えない量の血液が残されていた。

 

 黒服はそのシーツを丁寧にたたみ、再び言葉を紡ぎだした。

 

「私が治療を施してもよかったのですが――」

 

「貴方に触れることに対して、今は一抹の抵抗があるようで」

 

「それに、いち早くこの研究材料を持ち帰らなければ、使い物にならなくなってしまうのでね」

 

「私の代わりとなる人物が訪れるでしょう」

 

 最後に、窓から外に視線を向ける。

 地に伏したまま物言わぬ存在となった少年を思い、都市部の方を見つめる。

 

「契約を違えることは、違反となりますのでね」

 

 窓に背を向け歩みを進める。

 

「――薬を持ったことに関しては、契約に違反しているわけではありません」

 

「危害を加えてはいけないといった文言は入れていませんよ」

 

 扉の閉まる音が響く、無人の部屋。

 

 少年と黒服の会合はこれにて幕を下ろすこととなった。

 

 

 ――――――――

 

 

 茹だるような暑さは、少し落ち着いてきた。

 そんな中でも、砂の寝心地は相も変わらずだった。

 

 身体が感触を感知する。

 視界から光を認識する。

 

 失われたと思った命は、依然として動きを止めることはなかった。

 

 

 また、死ね(楽になれ)なかったのか。

 

 

 先ほどまで赫い太陽が照らしていたはずの空は、闇に侵食されている。

 知らぬ間に、仰向けになっていた。

 

 銃弾を受けて回復する身体は、飛び降りて出来た損傷も治してしまうのか。

 砂が、クッションなったのか。

 コンクリートなら、原型も残らないほど潰れていたのに。

 

 それでも死に切れるかどうかなんて、もう考えられない。

 どうせ、簡単には死ねないんだ。

 

 逃げることは、許されていない。

 

 胸の痛みから体勢を変えようとした時だった。

 

「何があったんですか」

 

 ふと。

 

 風のように、声が聞こえた。

 傍に人がいる。

 

 視線だけは動かせることを感じ、声が聞こえた方向――頭上へと目を向ける。

 

 視界に映ったのは桃色だ。

 

 徐々に焦点が合い、その桃色は少女の髪の毛だと分かった。

 

 少女は、ぶっきらぼうに聞いてくる。

 

「そんな血だらけで。死んじゃいますよ」

 

 近くの壁に背を預け、銃をいじっていた。

 背丈は……小さい。

 高校……いや、中学生だろうか。

 

 桃色の金糸は夜風にたなびく。

 紺色に染められたベストをワイシャツに重ねた制服姿。

 

 目が合った。

 太陽のように輝く黄金の右目と、夜のように淡麗な蒼の左目。

 砂の上で寝そべる俺を、上から覗き込むように見つめてくる。

 

 なんで。

 

 なんで。

 

 こうも理不尽なんだ、キヴォトス(地獄)。

 

 助けられた。

 ――しまった。

 

 俺だけの、命が。

 俺自身で投げ捨てた生を、拾われてしまった。

 

「……死ねませんよ、俺は」

 

 口からこぼれ出た言葉に、彼女は。

 

「そうですか」

 

 と。

 

 なんとも人に関心がないような返事をしたのだった。

 

 




閲覧ありがとうございます~

あとがきには意味のないことを書きます。今決めました。暴走です。

やっとネームド生徒を出せましたね……
よかった~

この生徒が、誰なのかわかりましたでしょうか?
……私よりも先生歴が長い方のほうが多いと思いますのでこんなこと聞く必要はないですよね。すみません。私もビルから降ります。

毎度区切りが悪い気もしていますが、ここだ!っていうタイミングで話を切ってしまうと、一話が長くなってしまい、投稿頻度がガタ落ちしそうで……

何事も落とさず、平たんに行くことも重要だということです。

そう。
高いところから落ちたりしないようにってことですな。

こほん、彼女の登場でこれから話はどう進むのでしょうかね。

……ところで皆さんはバンジージャンプはしたことありますでしょうか。
私はしたことがないのですが、見たことはあります。誰だってそうです。
一度飛び降りれば、降下し続け、最後には空中で宙ぶらりんです。
しばらくしたら回収されます。
もし、ひもが切れたら回収できなくなってしまいますね。
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