第1話 接触
2015年1月1日、新年が開けると同時に、日本国全体が突如として光に包まれた。年末の高揚感もあって、その光自体は大きな騒ぎにはならなかったが、それ以外にも多数の異変が日本を襲っていた。国外の通信及び衛星通信が途絶し、樺太、朝鮮半島が消失したという報告まで入った。
事態を重く見た政府は、自衛隊に日本周辺の哨戒を命じ、すぐに情報を収集することにした。
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日本国海上自衛隊、第5航空群第5航空隊に所属する対潜哨戒機である〈ティーダ1-1〉は、離陸した那覇基地からはるばる離れた海上で哨戒飛行を行っていた。
P-4Bという正式名称を持つ〈ティーダ1-1〉は、今まで海上自衛隊が使っていたP-3Cの後継として開発された機体で、現在航空自衛隊が使用する河崎重工製早期警戒機、E-4をベースとしていた。
E-4は両翼に短距離離陸用大型ターボファンエンジンを搭載した双発機で、固定式のレーダードームとレーダー手が乗り込めるよう、それなりの拡張性があるよう設計された。そのおかげで、この機体は電子偵察機や空中給油機など、様々な任務に対応可能となっていた。P-4のベースとして選ばれた点もその余裕のある設計が要因であると言えた。
対潜哨戒機であるため、機体の後部には潜水艦磁気探知用のブームが搭載されており、胴体部にはソノブイ発射機と爆弾層を装備していた。乗員は操縦士2名と戦術航空士、オペレーター主合わせて7名の合計9名だ。
あらゆる異変で日本国内が混乱する中、〈ティーダ1-1〉は青空を悠々と飛行していた。
「台湾もフィリピンもみつからないなんて、一体全体どうしちゃったんすかねぇ」
操縦席に座りながら下方を見ていた副操縦士が、怪訝そうな表情で尋ねた。
「わからんなぁ。こんな状況人生で一度も遭ったことなかったからなぁ....」
操縦桿を動かしていた機長も、少し不安そうな顔をしながら答える。
「こんなこと人生で2度もあっちゃ怖いですよ。って、ん....?」
話の途中、副操縦士は不思議そうに下方を見る。
「どうした?」
「いや、下にでっかいドラゴンみたいなのが見えたもんで....」
「ドラゴン?お前昨日変なものでも食べたのか?」
「まともに食えるもんしか食べてませんよ。あ、ほらあっちに見えます」
副操縦士が指差す方向に、彼は半信半疑な表情をしながら顔を向けた。
彼の視線の先には、大型のプテラノドンにも似た生物が翼を羽ばたかせて飛行していた。だが、プテラノドンにしては牙が鋭いし、顔面の形は肉食爬虫類のそれだ。加えてたくましい尻尾すら備えている。これはまるで....
「ドラゴンだ....」
機長はあまりに突飛な光景に目をパチクリさせた。見間違いではない。本物だ。
彼はまじまじとそれを見つめた。ドラゴンと思われるそれは、かなり大きく、全長は10m以上はありそうであった。そして、頭には鉄でできた兜のようなものも被せてあり、首元には人のようなものも見受けられた。
彼はより下方も見てみる。
〈ティーダ1-1〉の下には石やレンガで出来た小さな建物や、城壁で囲まれた城が広がっており、それなりの都市が構成されていた。見た目からしてアジアの都市ではなく、まるで中世ヨーロッパの都市の様に見えた。
機長が呆気に取られて見つめている時、突如として副操縦士の声がした。
「やばいっすよ!!あのドラゴン攻撃しようとしてるっす!!」
「まじか!?」
彼は再びドラゴンがいたところに視線を向けた。
確かにそうであった。無数のドラゴンがこちらに向けて火の玉みたいなので攻撃しようとしている。
「すぐに離脱するぞ!!みんな気をつけろよ」
そう言って機長は〈ティーダ1-1〉の機首を上げると、そのまま高高度まで上昇した。
すぐに都市やドラゴンは小さくなり、だんだん見えなくなっていった。