内緒やで、ぶっちゃけダサいと思っとんねん。術師が得物使わんの 作:器用貧乏ならっこ
本日二話目の投稿です。
「天元はどこにいる?」
「天元様はアンタに会いたくないんやって。随分嫌われたもんやな」
「そういう君は使い捨ての前座ってわけか。精々踏ん張りなよ」
そう言って羂索は結界の仕様を変更した。
二人の居る場所が映画館のスクリーンのような空間に置き換わる。
「見せてあげるよ。終わりの可能性……その一つを」
二人は椅子に腰を掛け、プロジェクターを見つめた。
「私はね、術師だけでなく呪霊にも可能性を見出していたんだ。だからこそ、『受胎九相図』には期待をしていたんだけど……普通すぎた。ガッカリだよ。まさか君にすら劣る存在だったとはね」
羂索は落胆の表情を見せながらそう語った。
「それって遠回しに俺のこともバカにしとる? あんまナメてると痛い目見るで?」
直哉は飄々とした表情でそう返す。
「おや、そう感じさせてしまったなら申し訳ない。話がズレたね。要するに私は今、白い画用紙の前でクレヨンを握りしめた幼子のような気持ちなんだ」
そう言って羂索は自身の目的である一億人呪霊について話し始めた。
「んで? アンタはなんのためにそれをするんや?」
「面白いと思ったから」
「!?」
「もし、一億人の呪力の塊が抱腹絶倒な間抜け面をしていたらどうする?」
「笑っちゃうよね〜」
たはー、と羂索は笑う。
「ほーん。話は終わり?」
「ああ、それじゃあ始めようか」
会話が終了した瞬間、戦いの火蓋が切られた。
◆◆
投射呪法……それには、一度で加速できる速度の上限が設定されており、逆に絶えず術式を重ねれば重ねるほど、出せる速度は上がっていく。
直哉はその性質を利用して、自身の初速に注目した。
つまり最初からトップスピードで走り抜けば良いのでないか、と。
それを実現するために、直哉は掌を後ろに向け、自身の背中付近にある空気を圧縮し、爆発させた。
その衝撃波を利用して、初速からトップスピードで走り、その速度を維持して羂索に亜音速で攻撃を仕掛ける。
その目論見は成功した。
「!」
羂索は直哉のあまりの速さに驚愕する。
投射呪法の性質を知るが故に、初速の圧倒的なスピードに一瞬動きが止まった。
そこを直哉は突く。
だが羂索も直ぐに反応、咄嗟に自身の腕を交差に組んで、直哉の打撃をガードする。
そのまま後ろに下がり、高速で走り抜ける直哉に対し、渋谷で虎杖に対して使った呪霊を召喚。
直哉を転ばし、フリーズさせてそこを攻撃しようとした。
呪霊が術式を発動するその瞬間、
空気がフリーズし、
「やるね!」
羂索は笑う。久しく見ることのなかった、術式の新たな可能性、それを観察する。
「言うたやろ! ナメとったら痛い目見るでって!」
直哉は自身の目の前の空気に触れ、カード状の圧縮した空気を生成。
それを破壊し、連鎖的に爆発させた。
それに対して羂索は呪霊を召喚。その殆どを防御に当て、残りは直哉の下へと向かわせる。
しかし直哉は再び亜音速で駆け抜け、超高速の近接戦闘に持ち込んだ。
「近づいてきて良いのかい? 動きを阻害されたらフリーズするだろう?」
その判断に羂索は嗤う。
「どうやろな? やってみな分からんやろ!」
そう直哉も笑みを浮かべながら返し、脳内で動きを作り始める。
(呪霊を間に挟ませてくることも考慮して、攻撃は最低限。周りを駆け回ってるところに下に潜り込ませた呪霊を使って俺をフリーズさせて、そこを攻撃するつもりなんやろ? そんな見え見えの誘いに乗るかい。お前をフリーズさせて、動けん内に最速で切り伏せたる!)
そう判断し、直哉は間合いを詰める。
呪霊が召喚された瞬間、それを空気の爆発によって吹き飛ばし、その衝撃波を利用して直哉は更に加速する。
それに対して羂索は
それを見た直哉は自身の掌を羂索に当て、術式を発動する。
それにより羂索は一秒間フリーズし、その間に高速で斬撃を浴びせる──筈であった。
「残念だが、
そう言って羂索は直哉の掌を掴んだ。
予想外の動きに直哉はフリーズし、羂索の肘打ちを鳩尾に喰らう。
「ガッ!」
直哉は大きく後ろに吹き飛んだ。
(どういうこっちゃ!? なんでフリーズしてないねん!)
実のところ、直哉の目論見は成功していた。いかに羂索と言えども、動けない状態で亜音速の斬撃を大量に浴びせられれば致命傷に至る。それを両者は分かっていた。
だからこそ直哉は神速の抜刀術を今の今まで使用していなかった。先ほどの流れに賭けるために。
だが一つ誤算があったとすれば、
「いやはや、私と言えども流石に咄嗟に動きは作れないからね。だから君の術式を中和させてもらった」
羂索が相手の術式を中和する結界術──『領域展延』を習得していたことだろう。
(術式を中和やと!?)
直哉は驚愕した。自身が知らない技術を目の前の敵は使っていたからだ。
「おや、知らないのかい?」
そう言って羂索は語り始める。
「『領域展延』……例えるなら空っぽのコップかな。相手の術式という名の水を、自身が纏った空っぽのコップにそれを流し込む。最も『簡易領域』の使用時と違って、その時自身の”生得術式”は使えなくなるけどね」
羂索は笑いながら話を続ける。
「君が斥候なのは理解しているよ。私の手札を暴き、少しでも九十九由基に情報を開示するつもりだな。けど、先ほどのようにはもう行かないよ。君は所詮、そっち側だからね!」
そう言って羂索は直哉の足元に潜り込ませていた呪霊を消失させる。
(呪霊の消失反応!)
羂索は知っている。投射呪法が自身の視界を画角にして動きを作ることを。
だからこそ、呪霊の消失反応で視界を奪い、直哉へと詰め寄って攻撃する。
「『秘伝・落花の情』」
だが、それに直哉も対抗。フルオート迎撃で羂索の攻撃を捌き、襲いかかる呪霊から難を逃れた。
直哉の視界が回復する。
それと同時に術式を使用し、羂索へと間合いを詰める。
「言っただろう、先ほどのようにはもういかないよ、と」
そう言って羂索は周りに呪霊を大量に召喚。直哉の動きを確実に阻害するように動かせる。
それに対して、直哉は再び空気を爆発させる。
「バカの一つ覚えかい? そんなことをしても意味は……っ!」
「どうやろな!」
直哉は呪霊を吹き飛ばすと同時に、羂索の上へと回り込んでいた。
フリーズさせた”空気の面”を踏み、体の向きを反転。地面に向かって爆発させ高速で近づき、着地する。
至近距離から亜音速で近づいてきた直哉に羂索は反応が遅れた。
一方直哉は、呪力の核心を掴む感覚を呼び起こす。
それは偶然か、必然か。
極限まで高められたその集中力と、強さへの渇望。それが直哉を”ゾーン状態”へと誘う。
それによって起こるのは、打撃との誤差、0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる現象。
呪力は黒く光り、空間は歪む。
「『黒閃!!』」
投射呪法のスピードが上乗せされたその一撃を、羂索は躱しきることができなかった。
咄嗟に呪霊を間に挟み軽減させたとはいえ、少なくないダメージを羂索は負う。
「やるじゃないか……最近の術師にしては」
羂索は後ろに下がりながら反転術式で傷を回復させ、奇跡を呼び起こした直哉をそう称えた。
「お前やない! アッチ側に立つんは!俺や!」
これにより、直哉は120%の
九十九さんに叩き直されて、マシになったんだ。ならやるしかないよね?覚醒回。
っていうノリで『黒閃』打たせてみました。
感想、お気に入り登録などよろしくお願いします!
(ちなみに私は呪術の戦闘シーンで、九十九&脹相&天元vs羂索がトップクラスで好きです)