魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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どうも、Yuinoです。

書き途中だったモノのデータがきれいさっぱり吹っ飛んでしまい、更新不可能になってしまったため、新しく書き出しました。データバックアップの重要性を痛感しましたよ、改めてね!

ということで、始まりますよー!


(2014/12/24 第一次加筆修正)
(2015/07/03 第二次加筆修正)
(2017/01/18 第三次加筆修正)


空白期編~不殺を願ったサムライ~
01:ハジマリ


 今日も、相も変わらない快晴だった。

 今日は週の始まり月曜日、時刻は六時半。特に何の用事もない人物ならば、まだまだ寝ていても問題ない時間でもある。しかし、彼にとっては朝の何でもない時間こそ、とても大切な時間でもあった。

 道場で正座をし、精神集中をしている彼。彼の左側には、真っ白な鞘におさめられた刀が一本。

 彼は、その刀を手に取るとゆっくり立ち上がり、鞘から刀を抜く。引き抜かれた刀身は、まるで鏡のように反射している。柄も白く、鍔も白い。まさにそれは、氷と評されるほどのものはある。そう彼は、内心改めて思っていた。

 左足を引いて、右足をゆっくり前へ。後ろへ僅かに体重をかけながらも、前へ進むことは忘れない、そういう心意気。

 すっと上段へ構え、袈裟へ振り下ろす。ヒュンっ、という音を立てながら、刀が空を切る。その一本で、その日の調子が把握できる。

 

――まずまず、か。

 

 そんなことを思いながら、彼は鞘に刀を収めると、それを刀掛けに置いてクローゼットにしまってあるブレザーを羽織ると、そのまま道場を出てリビングへと向かう。

 リビングには、既に朝食の用意が調っている。テーブルの上にある置き手紙を手に取り、内容を黙読してから、トーストをかじりつつニュースに目を向ける。

 

「わぁーってるって。今日も何事もなく平和でした、だろ?」

 

 まるでニュースの内容を反復するような言葉を吐いてから、彼はトーストを牛乳で胃の中に流し込むと、そのまま通学鞄を取って家を出る。

 何事もない、ただ平和な日常。

 

「さてさて……何も起きないことを祈るぜ? なぁ、相棒?」

-そうですね、司令(しれぇ)!-

 

 彼は、懐に忍ばせた相棒を取り出し、くるくると空中へ投げては取り、としながら話しかける。

 それは、一件ただの小刀。銃刀法違反に引っかからない程度の大きさのそれは、護身用の打撃武装であり、彼が唯一、父から受け継いだ形見の品。

 それを彼は懐へしまうと、そのまま通学路を急ぐ。

 彼の通う学校は、ただ普通の公立校。進学校でもなければスポーツ特化校でもない。何処に出もあるような、普通の高校だ。

 まさに、彼の望む至って普通の、平和な学校なのだ。

 

「よぃーす」

「お、聖じゃん。……っと、いつもより二分弱遅いな」

「お前……暇なんだな、そんなこと測ってるなんて。キモいぞ」

「ふふん、仰るとおり暇なんでね。あと、キモい言うな」

 

 彼――佐々木(ささき)(ひじり)がきたことに反応して、教室出入り口近くの場所から声が飛ぶ。そこにいる彼――織村(おりむら)龍吉(りゅうきち)から声をかけられると、聖は自分の机に鞄を置き、後ろの机に座っている龍吉にいつもの栄養バーを後方へと見ないで投げつける。彼はそれを空中で指弾の要領で真上に弾くと、そのままキャッチ。

 その一連の動きに、周りの女子は若干色めき立つ。その声が聞こえているにもかかわらず、無反応のまま鞄から出した本を読む聖と、彼に話しかける龍吉。

 周りで色めきだっていた女子生徒は、その二人の姿を見ながらぼうっと見つめていた。

 

「ははっ。相変わらずの人気だな、聖は」

「俺だけじゃないからな? ま、判ってると思うけど」

 

 そんな、彼らにとっては他愛のない会話をしながら彼は本のページをめくった。

 それもそのはずである。彼ら――佐々木聖と織村龍吉。通称『聖龍コンビ』は、この学校でもトップクラスで有名な存在なのである。

 学業の関しては中の特上――つまり、普通より少し良いという所だが、運動に関しては学校トップクラスの能力を持つ聖。

 運動に関しては平凡中の平凡だが、頭のキレの良さ、冴えなどに於いては誰をも寄せ付けないほどの力を持つ龍吉。

 この二人は唯一無二の親友でもあり、なおかつ悪友でもある。ここ数年、長らく同じクラスに在籍している故、とうとう二人を纏めて名前が付いた。

 『聖龍コンビ』という、いろんな意味で悪名高い名前が。

 聖の場合、一人で学校に乗り込んできた不良十名を交渉(という名の物理策)で撃退したり、龍吉の場合、裏チェスで賭け事をしていた学校主任の一人を裏麻雀で完膚なきまでに叩きのめして土下座させたり、ある意味不良じみたことをしているのだ。

 そんなことをしていたから、学校の内外でも有名になりつつある。むしろ、現在進行形で有名度が加速しているのだ。

 そんな彼らも、今は平和に学校の授業を受けている。この、平凡な毎日を楽しみながら……

 

 

 

――昼休み

 

 屋上でのんびりおにぎりを頬張りながら、聖は遠くを見ていた。

 今、彼が抱いているはたった一つ。

 

「暇すぎる」

 

 そう、まさに暇すぎるのだ。

 もちろん、暇な彼なりにもやることは多い。明日の授業の課題にはいまだに手を付けていないし、生徒会長から頼まれごともいくつか受けている。それでも、彼にとっては”暇”の一言に尽きるのだ。

 ただ、暇だなぁと思いながら彼は残ったおにぎりを一気に胃の中に押し込み、緑茶を流しこむ。

 そして、何となくフェンスの向こうを覗いた、その時だった。

 

「――む?」

 

 屋上からの転落を防ぐフェンスの向こう。

 そこに見えたのは黒塗りのバン。何処にでも留まっていそうな普通の乗用車だが、その車の前ではなにやら一悶着始まっていた。

 バンの前でもめる金髪ブロンドの髪。僅かに見えるドアの隙間からは、ぐったりとした長髪の女性が見える。

 ブロンドの少女がなにやら金属の塊を当てられてぐったりとなり、そのままバンの中に連れ込まれてさらわれる、と言う一連の状況を見て、彼はそれが誘拐事件の現場だと言うことをやっと察した。

 おいおいおいと、彼がだれともなくツッコミを入れていると、黒塗りの車はさっさとその場から消えてしまう。車が走り去っていった方向は、海鳴市の外れ。海岸線にある、倉庫の方角。

 聖はため息をつきながら頭をかきつつ、トントンと胸ポケットに入れている相棒に話しかける。

 

「おい、起きな」

-ふぁい、なんですかぁ、しれぇ-

 

 眠そうな声が頭に響き、それを半ば聞き流しながら聖は先ほどの一部始終を説明する。すると”彼女”はついさっきまでの眠そうな声とは正反対の元気な声を響かせた。

 

-わかりました! それでは、司令は行くのですか?-

「そうだなぁ。まぁ、授業を一つくらいサボっても問題ないだろ」

-そう言って、何回授業サボってるんでしょうね-

 

 彼女の言葉に顔をしかめながら、聖は「だまらっしゃい」と一蹴。着ていた制服の、シャツの第二ボタンまで外してネクタイを緩めるとそのまま屋上の出入り口へ向かう。

 

「おう、聖。もうすぐ昼終わんぞ?」

「ん、あぁ、龍吉か」

 

 出ようとした時に入ってきたのは龍吉。胸元から取り出した懐中時計を見ながら聖にそう告げるが、彼の表情を見て、何かを察したような表情へと変わる。

 

「まーた人助けか?」

「あぁ、すまんな。授業、ちょいと誤魔化し頼む」

 

 そう言い残して、聖は屋上の上、貯水タンクの上に登っていく。

 彼の後ろから、龍吉が「帰ってきたらハーゲン五個なー?」と聖に伝えるが、聖はそれに片手を上げて答えるのみ。

 

「行くか、相棒」

-はい、司令(しれぇ)!-

 

 貯水タンクから思い切り飛び上がり、学校裏の林に着陸。そのまま、車の走っていった方向へ颯爽と走り去る。その姿を見ながら、龍吉は「あいつ、相変わらずだなぁ」と呟きながら教室へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

――同日 ???

 

 さて、どうしようか。アリサ=バニングスは、今の自分の状況を考えながら心の中で呟いた。

 今回のような``誘拐事件``は彼女にとっても、そしていま彼女の後ろで気絶している友人の月村すずかにとっても、良くはないものの``慣れたもの``だった。

 お嬢様、社長の娘。そんな``肩書き``があるから、この十数年間で数度の誘拐を経験している。

 もちろん、自分一人だけだったり、すずかが一緒だったりと、その時々の状況は様々だが、毎回何とかして切り抜けてきた。

 切り抜けた時のほとんどは、誘拐犯側の警備が``ザル``だったり、友人が助けに来てくれたり、最近何とか完璧になりつつある``護身術``で切り抜けてきたのだが――

 

「今回は、そうもいかなそうねぇ……」

 

 小さくつぶやき、自分から約数メートル離れたところにいる、おそらく誘拐犯側のボスと思われる人物、そして彼を取り囲むようにして座り、下品な笑い声をあげているほかのメンバーに目を向ける。

 この人達が持ってる銃器のほとんどはAK-47。ボスっぽい奴が持ってるのは、たぶんカスタムしてある。よく分かんないけど。

 んで、他の人少数が持ってるのは……もしかして89式?盗んできたのかしら? まぁ、それはともかくとして。

 彼女は、ちらりと自分のすぐ2メートル先にいる十人に目を向ける。

 その五人は、同じように89式小銃を持っている。それでも、他の人たちと違うのは、それぞれ黒いフードつきの服を着ており、右手にはそれぞれメカっぽい棒状の『杖』を持っている。

 この人たちは危険だ。そう、アリサの脳は告げていた。なにせ、自分の友人と同じ『チカラ』を持っている。まともにぶつかれば、確実に返り討ちにされる。

 

(どうしよう。どうにかしないと――)

 

 どうにかして、ここから脱出する方法を頭をフル回転させながら思考する。今の自分の状況、敵戦力の数、こっちの『武装』と、応援部隊。ケータイは取られなかったし、来る途中、サイレントモードで緊急事態(エマージェンシー)のコールはしておいたから、多分もうすぐ、うちの応援が来てくれる。『アレ』相手でも、多少は対応できるはず。だから――

 

(それまでに、何とかしてすずかを連れてここからだっしゅ――)

 

 瞬間、爆音。いや、轟音が正しいか。

 彼らがいた倉庫。そこの入り口が轟音を立てて六分割ほどされて崩れ去っていく。それを見た、アリサも、誘拐犯グループの皆も、ぽかんとした表情でそれを見ていた。

 

「おいおい、入り口の奴ら雑魚すぎんぞ。もうちっと楽しませてくれそうな骨のあるやついねーのか?」

 

崩れ去った入り口から、光を背負いながら入ってくる一人の青年。年齢は、おそらく自分と同じくらいだろうとアリサは予想した。それにしても、行動がキチガイすぎる。

 あの扉は、おそらく鋼鉄製だったはず。それを『六分割に斬り刻む』という、つまりは斬鉄を行ったのだ。アリサも、誘拐グループの奴らも、何が起きたかわからないという表情で青年を見つめる。

 

「んでよう、さすがに真昼間(まっぴるま)っから誘拐しでかすたぁ、いい度胸してるよあんたら。100点あげたいね」

 

 けらけらと笑いながら、青年はゆっくりと歩みを進める。すると――

 

「お前もいい度胸してるな。こんな敵軍のど真ん中に入り込んでくるとはな!」

 

 ボスらしき人物が腕を振るう。それは、彼らの中の開戦のサイン。一斉に全体が動き出し、陣形を形成する。前衛に、黒コートの男たち五人を配備。その後方に、自分たちという、おそらく基本的な陣形。

 つまりこれは、脅し。立ち去っても、立ち去らなくても――青年を殺すという、現実を突きつける。

 それを見た青年は、にぃと口元を釣り上げて、胸元のポケットから一本の担当を取り出す。そして――

 

「ほんとは、俺だって穏便に済ませたかったんだが、そっちがその気だし、前に出しているのが『魔導師』っていうなら……雪風――」

 

 風が、倉庫を凪いだ。雪を纏ったかのような――

 

「――抜錨!」

-雪風、抜錨します!-

 

 鋭く、冷たい風が!

 

「戦羽織『東雲』、展開」

-東雲、展開します-

 

 ぶわぁっと身も凍るような風が彼を纏う。その影響か、彼の周囲一メートルほどの範囲がわずかに凍結していた。

 その風が止んだころ、彼の姿は先とは全く異なっていた。

 藍色の陣羽織。頭には青文字で『刃烈』と刺繍された鉢巻。そして、腰には長大な日本刀。

 彼が刀の柄に手をかけると、足元に藍色の光を伴った六芒星が広がる。それを見た黒服たちはいっせいにざわめき始める。

 

「お前――魔導師か!」

 

 黒服の一人だ。すぐさま発砲。一分間に700発オーバーの弾丸をばらまく、まさに鉄の嵐が青年――聖へと叩き込まれる!

 しかし、聖は既に、トリガーが引かれる前に手段を講じていた。

 

「壁――!」

-絶対守護障壁、展開-

 

 彼が地面に手をつくと同時に、そこからハニカム構造のシールドが展開され、銃弾を弾く。金属音を伴いながら、銃弾は地面へと落下していく。

 

「おめぇら、一斉射だぁぁ!!」

 

 髭をたくわえたボスらしき人物が一声かけると、一斉にマシンガンが斉射される。

 土煙に包み込まれる。通常ならば、これで確実に『仕留めている』。そう、誘拐犯達は判断しているはずだ。

 

「まだまだ、だな。こいつを撃ち抜きたかったら、ミサイルかなんか持ってこい」

 

 その声が響くとおり、シールドも、聖も健在だった。首をコキコキと鳴らしながら、屈伸運動をする。その行動を見て、その場にいる全員がぽかんとする。

 

「そんじゃま、『正当防衛』っという事で、いっちょ往きますか」

 

 すっと腰の刀に手をかけ、それをゆっくりと引き抜く。

 シャラン、と言う音を立てて抜けるその刀は、まるで芸術品のそれに近かった。

 ほぼ透明に近い刀身に、鍔から流れるように巻かれた白布。まさにそれは、数億はくだらないであろう芸術品に近しい存在。

 

「魔導師、というか、『俺個人』としてはこれが``初``実践だからな。とりあえず、名乗っておこうか」

 

 すっと刀の切っ先を下ろし、聖が誇れる唯一の武器、自らが皆伝した流派の剣術の構えを取り、朗々と名乗る!

 

「天剣佐々木帝流剣術皆伝、第十三代目当主! 『藍の剣聖』佐々木聖と、『氷風の一閃』雪風――」

 

 ぐぐっと腰を入れ、正面にマシンガン持ちの数十名を据え、叫ぶ!

 

「参る!」

 




感想などなど、待っております!

(2015/07/03 第二次加筆修正)
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