魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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 はい、大学の図書館から更新をかけているYuinoです。

 とりあえず、15話です。ここから、ずいぶん前に募集をかけていた、読者の皆様からの募集キャラが一名登場します。

 ということで、どうぞ!


15:試験

――日曜日

 

 沙希、龍吉、楓の三人は、なのは達に連れられて管理局の嘱託魔導師の試験会場にきていた。

 試験会場といっても、海鳴市の海浜公園。そこにある公民館だ。別の場所でやると思っていた龍吉達は、思わず拍子抜けてしまっていた。

 

「なんだ、ここでやるんだ」

「本当なら、本局で試験をやるのが普通なんだけど、生憎と場所が空いてなくて」

 

 ここだったら、皆にもみてもらえるでしょ? そうなのはが言うと、龍吉の後ろをゆっくりとついてきていた楓が口を開いた。

 

「こんな場所でやって、その、周囲に影響とか無いの?」

 

 楓が少し、というよりかはだいぶ心配したような表情でなのはに言うと、はやてが彼女の後ろからひょっこり顔を出して「そのところに関しては問題無しや」と笑顔で言った。

 

「あんまり普通の人・・・・・・魔法に関わっていない人に言うのはいけないこと何やけどな? 試験内容は、筆記試験、儀式魔法試験、それと模擬戦試験の三つ。試験のうち、後ろ二つは監督魔導師がついて、それぞれが結界を張って周囲への影響をシャットアウトするから、大丈夫なんやで?」

 

 そこまで言ってはやては「今日の試験は、私となのはちゃんも監督官なんやで」と胸を張って言った。

 彼女の自信の持ち方をみて、楓は「本当に魔法使いなんだ」と小さく呟いて、次いで自分の後ろを歩く龍吉を見た。

 

「龍君の”アレ”も、魔法なの?」

「アレ? あぁ、羅生黒虎のことか?」

 

 ふ、っと楓の目の前で、龍吉は自分の右腕に黒い煙のようなものをまとわせる。すると、その煙はややあってから小さく鋭く、彼の右腕に纏わりついて槍のような形を作り上げた。

 羅生黒虎。なのはやフェイト達『魔導師組』曰く「空気中に霧散している微弱な魔力を集結させて、自らの武装とする魔法の一種」と踏んでいるが、龍吉や小春たち探偵社組は、それの仮説に首を縦に振るどころか「それじゃ、そういうことで」と言ったのだ。

 彼ら曰く、いまだにこの能力の全貌が見えたことはないらしく、その正体も不明、というらしい。

 それ故、名称が”魔法”ではなく”異能力”なんだとか。

 そのことを龍吉が楓にやんわりと説明すると、彼は「まぁ、そんなことはどうでもいいんだけどな?」といってから、自分の右腕にまとわせた槍を、左手をすっとふるってその形状を変え――

 

「ちょっと応用すれば、こんなこともできる」

「「「「「「はっ?」」」」」」

 

 彼の右腕には、黒い毛むくじゃらな何かがぎゅっと抱きついていた。

 その生き物っぽい何かはなんだと、ドヤ顔をしている龍吉を除く五人が考えていると、不意に沙希が言葉をこぼした。

 

「えっと、何それ?」

「あぁ、これか? 俺の能力をちょいっと弄って作ってみた。名付けて、小虎だ!」

 

 龍吉はドヤ顔して腕の上に乗せている虎を頭の上に乗せ直し、それを見て他の五人は「何やってんだ、このアホは」といった視線を送る。

 そんな視線にものともせず、龍吉は「……とまぁ、こんな感じで遊び心も満載なんだが」と言ってからその小さな虎を消滅させ、ウケなかったことに対してなのか、弱冠残念そうな表情を見せてから仕切り直すようになのはに向き直って問いかけた。

 

「あそこのベンチでノビてんのって、聖じゃないっすかね?」

「「「「「あ――」」」」」

 

 龍吉が指さす先。確かにそこには聖がいた。

 ベンチにぐてっと身体を預け、完全に疲れ果てたような表情の聖が、そこにいた。

 そんな彼を見て、沙希は慌てたように彼の傍へ駆け寄る。なのは達も心配そうな表情をしているが、その中で唯一、呆れたような表情を彼に向けている人が一人。

 

「普段殆ど使いもしない頭をここで使うからオーバーヒートするんだっての。ったく、こいつはまいどまいど――」

 

 すたすたと聖の近くまで行くと、そのまま彼の頭をスパァァンッと平手打ち。平手打ちを喰らった聖はがくんと頭を揺らし「んがふ――」と変な声を上げてからぼーっとした表情で周りを見渡した。

 

「目ぇ覚めたか?」

「あ――あぁ。なんとかな」

 

 ぐぐっ、と大きく体を伸ばしながら欠伸をかます聖。そんな彼に対して、沙希は心配そうな表情を浮かべた。

 沙希の心配そうな視線に気がついた聖は、彼女に対して「大丈夫だって」と言ってからにこりと笑顔を浮かべる。

 

「学校の授業ですらこんなに頭使ったことなかったからな。久々に頭使いすぎて、少しオバヒってたところだ」

「こんなことになるんだったら、毎日ちゃんと勉強しておけばいいのに」

 

 そんな風に言う楓に対し、聖は「それが出来りゃ苦労しねぇって」と苦笑い気味に答える。

 苦笑いを浮かべている彼に対し、少しあきれたような表情のフェイトが彼に問いかけた。

 

「それで、試験の方はどうだったの?」

「えっと・・・・・・問題ない、と思う。多分」

「なんや、その微妙な感じ」

 

 あはは、と変わらず苦笑いを浮かべる聖。それを少しだけ心配そうに見つめる六名。

 その中で、フェイトはふと自分の腕時計に目を移す。既に時刻は、次の試験である儀式魔法の開始時刻の十五分前になっていた。

 そのことを聖に告げると――

 

「んぁ、もうそんな時間か」

 

 そんな風にのっそりとベンチから立って「かったりぃなぁ」と言いながら再び公民館へ足を運んだ。

 コキコキと首を鳴らしながら彼はのっそりと歩いていく。

 あまりにものんびりしすぎている聖を見て、揃って六人は全く同じ感想を心の中に秘めていた。

 

 彼、試験受からないじゃないかな、と。

 

 

 

――同時刻 公民館閲覧室

 

「司様、高町教導官と八神三佐の結界展開、確認しました。試験開始、可能です」

 

 脳に直接響くような凛とした声で、仮眠状態に入っていた彼女の意識は現実に戻された。

 薄目を開け、自分が今いる場所を確認する。

 そこは、今回嘱託魔導師試験の会場になっている、管理外世界の一つ、地球。そこにある、海沿いにある小さな街、海鳴市。そこの公民館の中、見学室。

 持ち込んだロッキングチェアに揺られていたら、思わずうたた寝をしてしまっていたみたいだった。

 

「もう、そんな時間?」

 

 視線を逸らしながら問いかける。視線の端にいるのは、相変わらずの燕尾服姿の彼。左腕にかけられているのは彼女のジャケット。

 大きく欠伸をしながらロッキングチェアから立ち上げると、そのジャケットを受け取ってからさっと装着。今回の試験のために用意されたスタンドマイクまで移動し、マイクをかっさらうようにして取り、ガラスの向こう――正確には、公民館のホールの真ん中にいる少年を見据えてから、叫ぶ。

 

「今回の主試験官を務める、早乙女司です。宜しくお願いするわね」

『天剣佐々木帝流当主、無所属、佐々木聖です。本日は、宜しくお願いします』

 

 窓の向こうにいる少年――聖は、試験官である司の姿を確認してから、ぺこりと礼をする。

 礼儀正しい子じゃないか。そんなことを思いながら、司は試験内容を告げていく。

 

「第二試験は儀式魔法。種類は問いません。自由にやってみてください」

『はいっ』

 

 彼は了承の声を上げてから、足下に魔法陣を展開する。

 その色は藍、形状は六芒星。それを見た司は、小さく唸った。

 

「あれが、テスタロッサ=ハラオウン執務官が言っていた――」

「カスミ式魔法ですね。攻撃魔法は殆ど無く、身体強化、支援及び防御魔法が主体だと記されていましたね」

「身体強化や支援魔法が主体。一体それでどんな儀式魔法を――?」

 

 キィィィン、という音と共に、魔力が彼の周囲を取り囲んでいく。

 第一印象は、あまりにも動き出しが早い。ただその一言につきた。

 通常、儀式魔法は多少なりとも魔力展開に時間がかかるものだ。それを一瞬で終える人物を、彼女は今まで”一人”しか知らない。

 

『展開――』

 

 たった一言の言葉で、彼の周りで光が爆ぜる。

 まるで機関銃のマズルフラッシュのようにパパッと光が輝くと、魔力球が十個ほど展開される。

 

『流填――』

 

 彼が言葉を紡ぐ。すると、それに従うように魔力球が振動を始めた。

 まるで、それそのものが生きているような、そんな動きを――

 

『装填、開始――』

 

 ヴヴッ、という振動音とともにその魔力球は姿を変えていく。

 それぞれ一本の、光の剣に。

 それを目の前で目撃した彼女は、一瞬だけ驚いたような表情を見せる。そして、くくっとのどを鳴らすようにして、とても愉しそうな、嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

「そうか。君も、そういう魔法も使うのね」

 

 とても面白い。そんな風に思った彼女だが、少しだけ残念だという思いも持っていた。

 確かに、この儀式魔法は速い。だが、本当に”それだけ”なのだ。

 儀式魔法試験の採点項目は、「当該魔法の規模」「当該魔法の発動速度」「当該魔法の効果」の三つである。

 彼の発動した儀式魔法の性能をそれに当てはめていくと、発動速度は速くとも効果と規模が小さいのだ。

 残念そうな表情を浮かべながら、彼女は手元にあった採点表にそっとC(最高点はS。そこからEまで)と書き込もうとして――

 

「お待ちください、お嬢様」

「?? どうしたのシュヴァイン?」

 

 司のその手を、そばに控えていた燕尾服の執事――シュヴァイン=ローウェルが止める。

 疑問の表情を浮かべる司を見てから、彼はそっと窓の向こうにいる聖を指さした。

 

「まだ、終わっていません」

『再展開――』

 

 シュヴァインの声にかぶるように、聖の声もまた響いた。

 光の刃の矛先が、正面から地面へとぐるりと回転する。

 それを見て、司は「まさか」と小さくつぶやいた。

 そして、次の彼の一言を聞いて、思わず大きく声を上げた。

 

『浄化の光よ、在れ――!』

「まだ、続きがあったのね!」

 

 聖が中空に十字を刻む。右から左へ、上から下へ。魔力光を湛えた指先で十字を切ると、足下にカスミ式魔法の魔法陣である青い六芒星が展開される。

 その展開を確認した彼は、自分の正面で滞空していた光の刃をつかみ――

 

『レーヴェン――!』

 

 それをタンッと地面へ突き刺す!

 すると、足下の六芒星の青いかが焼きがより一層強く輝いて!

 

『――シュトラール!!』

 

 気合裂帛!

 彼の叫びとともに、、魔法陣から青い光が立ち上る!

 その光の柱を見た瞬間、彼女は先ほど以上に愉しそうな表情を浮かべて見せた。

 

「シュヴァイン、彼に伝えて。すぐに次の試験を始めるわ」

「畏まりました、お嬢様」

 

 ジャケットを脱ぎ捨てて、司は見学室から飛び出す。

 向かう先は、現在貸し切り状態の公民館大ホール。

 そこで、彼女は最後の試験――模擬戦試験を執り行う。

 

 

 

――半刻後

 

「君が、佐々木聖君?」

 

 儀式魔法の試験が終了し、休憩がてら公民館内のソファでスポーツドリンクを飲んでいた彼に、不意に声がかけられた。

 ぐるりと顔だけを動かして声のかけられた方向をみる。

 そこには、一人の女性がいた。

 肩あたりまでに切りそろえられた茶色のショートカット、首に掛かっているヘッドホンと、背負っているのはギターケース。黒いロングコートを羽織った、そんな女性――否、少女がいた。

 見覚えはないな。そんなことを思いながら、聖は少女の方に体を向き直し、問いかけた。

 

「確かに俺は佐々木聖だけど。あんたは?」

「なっ。女の子に”アンタ”呼ばわりはちょっと失礼じゃなぁい?」

 

 なんだ、この面倒くさい奴は。

 そんな風に心の中で呟き、大きくため息をついてから改めて問いかける。

 

「分かった分かった。んで、キミは誰だ?」

「んんっ、名乗るのが遅れたね。私はリーナ=クロイツェフ。特別戦略技術研究部、SSDR所属の魔導師だよ」

 

 よろしくね、と言わんばかりにソファに座った手を伸ばす。それを友好の握手だととった聖は、彼女の手を取って「よろしく」と言いながらすっと立ち上がる。

 SSDR、確か、あの”ジン”とかいういけ好かない奴が所属している場所か。そんなことを思い出しながら、聖はリーナをじっと見てから問いかけた。

 

「んで、俺に何のよう?」

「まぁ、本当は別件で用があるんだけど、ここでキミが魔導師試験を受けてるって聞いて、何なら見学してみよーって思ってね」

 

 にへっ、と笑顔を浮かべるリーナ。彼女のことを見てから、聖はいつも通りの若干だるそうな表情を浮かべて「ふーん」と、さも興味なさげに言う。

 そんな聖を見て、リーナは「んー・・・・・・」と、まるで品定めするような目線で聖のことをみる。そんな彼女の視線に気づいていないのか、ソファに座り直した聖は再びスポーツドリンクに口を付ける。

 それからしばらくして、聖は館内放送で公民館の大ホールに来るようにアナウンスを受け、リーナと分かれていった。

 

 

 

――数刻後

 

 公民館から出た彼女は、ポケットに入れていたココアシガレットを口にくわえながら、さっき会った”彼”のことを、もう一度頭の中で思い直していた。

 面白い子だった。それが、リーナ=クロイツェフがヒジリ=ササキという人物に出会ったときの第一印象だった。

 短髪の黒髪。整ってはいるものの、どちらかと言えば”普通”とランク付けできるような、そんな外見。

 でも、その外見からは全く想像出来ないほどの”殺気”に似た何かが、彼からはほんの僅かに滲み出ていた。

 

「たぶん、コレがルル姐さんが言ってた”特別な才能”って奴なのかぁな」

 

 そんなことをぽつりと呟いて、私はぼーっと空を仰ぎながらヘッドホンを耳に当て、左ポケットに入っている音楽プレーヤーから音量小さめで音楽を流し始める。

 スローテンポの前奏から入ったその曲を聞きながら、ふんふんと鼻歌をならしながら歩いていると――

 

「――よーやっとお出ましか」

 

 周囲の景色が変わっていた。

 その色は、橙色。

 ふと、時計を確認する。まだ時間は三時を少し回ったところ。いくらこの世界の季節が冬真っ直中とはいえ、この時刻にこの空の色は可笑しすぎる。

 だからこそ、彼女はこの状況を理解していた。

 これは、外部の誰かが展開した結界だということを。

 

「こうなるって分かってたけど、もうちょっとゆっくりしたかったな」

 

 そう呟いてリーナは、背中に背負っていたギターケースを地面に突き立てるようにして下ろすとそのロックを外して、自分の相棒をコールする。

 

「ヘカート、オープン。コード、8909(エイト・ナイン・オー・ナイン)

-オーライ。オープン、コード受諾-

 

 ガツンッ、という鈍い音が響き、ギターケースの中から黒い塊が二つ現れた。

 

「ん、っしょと」

 

 くるくるっとそれを両手に取って回しながら、中折れ式のそれに魔力カートリッジを装填して構える。

 それを一言で言い表すならば、銃。形状的にはショットガンに分類されるそれを両手に持って構えると、彼女は苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべて一人呟いた。

 

「全く、こんなことになるならレンちゃんも連れてくるんだった」

-そんなことを言っている暇があったら、さっさと状況の変化に努めろ。こっちの余波を公民館の方に向かわせるわけにはいかないだろう?-

「分かってるよ、もう」

 

 くるくるとそれを回してからそれを構え、彼女は背後からゆっくりと近づく気配に対し、その銃口を向ける。

 その銃口の先にいたのは、ぼろぼろのコートをまとい、頭をフードで隠した彼。

 そして、彼の周囲には、楕円形の機械群がふよふよと浮遊していた。黒い四つのセンサーに、金色のモノアイ。それを、最近上がってきた情報にのっとって呼称するならば、『ガジェットドローンⅠ型』。通称『ガジェット』。

 それを従えたマントの男の表情は分からない。ただ、一つだけわかること。それは、ここで彼を捕縛しないと、後々面倒なことになりそう、ということ。

 ゆえに彼女は、一度構えた銃を下してマントの人物に話しかけた。あくまでも、”やんわり”と。

 

「最近起こしている襲撃事件の犯人は、貴方、ですね? ちょっとお話を聞きたいので、任意同行を願います」

 

 一度銃口を下し、やんわりと話しかける彼女の言葉に、マントの人物は無言を貫いていた。。

 あくまでも任意同行を求める。その理由は、何かしら”そうしなくてはいけない理由を聞きだす”ため。それが、管理局の役目だ。

 しかし、彼女の言葉を彼は聞く耳持たず、というところだった。

 

「   」

 

 すっ、と手を伸ばす。

 それはまるで、彼の後ろに待機しているガジェットに”前へ”と示す軍師のようなしぐさ。

 そして、彼に動かされるように、ガジェットは前へ進み、そのモノアイを青く光らせる。

 モノアイ型の砲門にチャージされていくのは、魔力弾丸ではなく高熱源反応のある弾丸。所謂『レーザービーム』。

 それを見て、リーナは思わず大きくため息をついて――

 

「結局、そうなるよねぇ」

 

 そう言いながら、銃を持ったまま頭をポリポリとかいてから肩を解すように大きく回した。まるで緊張感のない仕草だが、これが彼女にとっての”普通”。そして同時に、彼女の”戦闘モードに入る際の”ルーチンワーク。

 

「――撃て」

 

 短、おそらく初めて発せられた言葉を切り目に、ガジェットが灯す光がより一層強くなり――

 

-バーストバレット-

 

 その光以上に、ガジェットの一機が轟音を立てて爆散した。

 瞬間響いた、カラァンという乾いた金属音。

 その方向にフードの人物は視線を逸らす。そこには、爆散して金属の塊となったガジェットの残骸、そして、空になった魔力カートリッジ。そして、目の前。距離にして十メートル弱という近距離に、片方の銃口を真っ直ぐに向けたリーナの姿があった。

 

「試験運用だったとはいえ、流石の火力だね」

-設定だけみれば少し火力過多なところがあると思ったが、機械相手なら問題はなさそうだな-

「人相手だとちょっとヤバいかもね」

 

 まぁ、関係ないか。そんなことを言いながら、彼女は銃口から揺れる煙をふぅと吹き飛ばし、くるくるっと西部劇のガンマンさながら回転させてから構える。

 それを見たフードの人物は、くくっという喉の奥で笑うような声を上げ、叫び声をあげた。

 

「面白えな! 面白えなぁ、あんた!! 今の今まで我慢してきたが、今回に限っちゃ我慢できなそうだわ!!」

 

 バッとコートを脱ぎ捨てると、そこには男がいた。黒みの強いクセのある茶髪で、大柄で一目見て鍛え抜かれていると分かる体格。大きく口元をつり上げ、好戦的な表情を浮かべる彼を見て、リーナははっと息をのんだ。

 

「あ、んた――」

 

 彼女は、彼に見覚えがあったから。

 

「久しぶりだな、リーナ=クロイツェフ!!」

 

 その、黒みの強い、くせっ毛の茶髪も。

 どれだけ実力が離れた強敵でも、自信満々の表情を崩さない剛胆さも。

 そして、ちりちりと肌が焦げるような、隠そうともしないその炎も。

 何もかも、彼女は覚えていた。

 だって、彼は――

 

「市川――剛ッ!!!」

 

 ある意味、彼女の仇敵だったから。

 

「ここで捕まえて、三年前のこと、たっぷり聞かせてもらうから!!」

「いいぜぇ! 出来るモンなら、やってみろよ!」

 

 リーナはその男――市川の名前を叫び、今は二丁のショットライフルのヘカートを構える。

 対する市川は、多数のガジェットを従え、自らの得物である真っ赤なトンファーを構える。

 そして――

 

「レオン――!」

「獅子――!」

 

 リーナはヘカートを振りかぶり、市川はトンファーを大きく引く。

 互いの魔力が空中へと迸る。その色は、青と、赤!

 

「ブラスト!」

「戦吼」

 

 そして、互いに魔法の引き金を引く。

 瞬間、銃口から放たれた青色の獅子と、振り抜かれたトンファーから放たれた赤い獅子が激突し、轟音を響かせた。

 誰も知らない戦いが、ここで幕を開けた。

 

 

 

――公民館 大ホール

 

 大ホールのほぼ真ん中で屈伸を繰り返しながら、聖は正面に佇んでいる彼女を見た。

 長い黒髪をポニーテールで纏め、肩を回しながらウォームアップを続ける女性。その身は浅黄色の軽鎧で武装しており、両手に着けたグローブを着け直すようにしてその感覚を確かめていた。

 

「えっと……模擬戦試験の試験監督って、なの……高町教導官ではないのですか……?」

「あぁ、そのことか。少し無理を言ってね、変わってもらったんだ」

 

 にっこりと満面の笑みを浮かべながら、彼女――早乙女司は目の前に幾つかのモニターを展開して、その内の一つを聖の方へ飛ばした。

 

「先に言っておくよ。この模擬戦試験、本来はやる必要がないんだ」

「……は?」

 

 司は、そのデータ見てよと聖へ促す。聖は、そのモニターを受け取って中身を見る。

 そこには、彼女が採点したであろう今回の試験、筆記試験と召喚魔法試験の結果が記されていた。

 筆記試験は、百点満点中六十点弱。そして召喚魔法試験は百点満点中七十点。ギリギリ合格範囲に達しているとはいえ、あまり余裕を持って行えるものではない。そう理解した聖は「わかりました」と言ってそのモニターを返す。

 

「つまり、これをやる前にほぼ合否は決まっていて、この模擬戦試験で改めて合否が決まる、と言うことですね?」

「その通り。まぁ、私としては、合格上げても良いんだけど――」

 

 そう言いながらも、彼女は両手を前につきだし、まるで架空の剣を構えるようにしてその場に待機する。そして――

 

――剣は我が声と共に

 

 たった一言。その言葉が発せられた瞬間、両手を起点にバチバチと電流が走り、巨大な”岩の様な何か”が姿を現した。

 

(いや、違う。これは、岩なんかじゃない――!)

 

 しかし、聖はすぐに理解した。

 彼女が持っているのは、岩ではない。巨大な岩に見えていたそれは、厚く、無骨ながらも刃面の様なものが存在し、手元には雑且つ申し訳程度に巻き付かれた布が、それを岩ではなく一つの武器であることを証明していた。

 

(人のみに余る、巨大な、剣――!)

 

 なのはとの訓練を経て、尚かつ自分の得意分野である強化魔法から派生させた、見ただけでその魔法の三分の一が、打ち合うことでその構造の全てが理解出来る解析魔法を修得した聖は、今、司が両手で構え、そして、片手で構え尚したそれを解析し、そして驚愕していた。

 

(片手で持つことすら叶わない、そんな斧剣を、いとも簡単に!?)

 

 驚いている聖を置いて、司は朗々と話し始めた。

 

天地断ち切る翡翠の岩剣(イガリマ)。とある戦神が保有し、山を斬り裂くと言われた剣をモチーフに作り上げた、私の最高傑作」

 

 さぁ、と、そう言って彼女はその大剣を大上段に構え、不適な笑顔を浮かべて、叫んだ。

 

「模擬戦試験、始めましょうか!」

 

 そして、それを振り下ろす。

 まるで、衝撃波が走ったような風圧が聖を襲う。

 これが、魔導師試験最終関門。試験監督との模擬線。

 その火蓋が今、切って落とされた。




 はいっ、ということで、いかがでしょうか?

 感想など、色々お待ちしております!
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