魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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たぶん、初の前後編構成でお送りします。

お久しぶりです、Yuinoです。

なんか、ものすごく更新速度が落ちているのは、書く暇がなかったり、書いてる暇があったのに艦これの夏イベントやってたりしていたからです、はい。

何はともあれ、16話です。どうぞ!


16:銃と紅蓮、光剣と岩剣(前編)

――海鳴海浜公園 裏山

 

 空気が爆ぜた。

 互いに放たれた魔力がぶつかり合い、爆ぜる。

 爆風を避けるようにして屈んだ先に、跳ね跳んだ魔力カートリッジの空薬莢が彼女――リーナ=クロイツェフの頬をかすめる。

 ちりっ、と頬が焼けるような感覚。それでも彼女は正面を見据え、ごろごろと地面を転がりながら射撃体勢に入る。

 そして、それを追うように滑空する紅蓮の魔力砲! 赤いそれを一瞥した彼女の対応は、いつにも増して速かった。

 体を捻って左手で握った愛銃(ヘカート)三点(スリーポイント)バーストでそれを相殺する。

 そして、再び空になった薬莢を銃本体を空中で回転させて排莢し、魔力を込めた素早い蹴りでそれを彼――市川剛へ向けて蹴り飛ばす。

 

「――っ!」

 

 魔力の込められた蹴りで跳ばされた魔力カートリッジは、それそのものが速度においては通常射撃には劣る。それでも威力はそれに相応する!

 驚異的な威力を持つそれだが、剛はそれを恐れてはいなかった。

 その威力を、彼は”身を持って”知っている。だからこそ、彼はそれに対してなんの動揺も驚きもなく迎撃する!

 

(あめ)ぇよ、リーナァァァッ!!」

 

 大きく両腕を振りかぶり、構えたトンファーの両先端に真っ赤な魔力が集中していく。そして、それが大きく揺らぎながら巨大な炎へと姿を変えていく。

 

「燃えろぉぉ!!」

 

 裂帛とともに振り下ろされるトンファー。放たれる轟炎!

 直径十メートルを超える炎がリーナが蹴り飛ばした薬莢を飲み込み、彼女へと迫っていく。

 しかし、リーナはそれを眼前において臆することもなく正面に据え、両手に持ったヘカートへ叫ぶ。

 

「ヘカート、コード・ランチャー!」

-了解。コード・ランチャー、受諾-

 

 その声とともに、両手に持たれていた二丁のショットガンが一瞬にして一つにまとまり、全く別の姿へと変形した。

 全長は七十センチほど。少し長めのサブマシンガンと同じくらいのサイズのそれに取り付けられているのは、短く太い銃身と異様に大きな回転弾倉。

 一言で表現するならば、まさに鉄の塊。その銃の正体は、六連装の回転式弾倉を備えた『MGL - 140』、通称ダネル!

 彼女はそれを構えながら、自分の正面十数メートルまでに迫ったを見据え、狙いを定める。

 本来なら、この銃、弾倉に装填されている弾は、秒間二発。つまり三秒で全弾撃ち尽くし、再装填が必要というのがダネルの特徴。

 しかし、今彼女が使っているのはあくまでも”それ(ダネル)”を模した形のデバイス。そして、装填されているのは魔力カートリッジ。

 つまり、六連弾倉の全消費は、魔力ブースト六枚掛けに相当する!

 

(――っく。あいっかわらず酷い負荷ねこれは!)

 

 ガツンガツンガツンガツンガツンガツンッ。六連装弾倉に装填されたカートリッジが全て消費される。魔力の急激なブーストの負荷による苦悶の表情を浮かべながらも、それでも彼女は歯を食いしばって――

 

「それでも、これなら――ッ!」

 

 -ガァァァンッッ!!-

 

 トリガーを引く!

 轟音とともに銃口から放たれるのは極大の魔力砲弾。リーナと、愛銃(ヘカート)のコンビだからこそ出来る戦技変換(コンバットチェンジ)システムによる、火力変換!

 火球とぶつかり合い、バチバチと火花を散らした後、巨大な爆発が巻き起こる!

 彼女は、瞬時に張った障壁で爆風と土煙を凌ぎ、周囲を見渡してからカートリッジを高速ロードする。

 

「これで、とりあえず距離を――」

 

 体の向きをそのままに、地面を一蹴り。後方へ跳ね飛ぶように移動する――

 

「――――けた!」

「――ッ!?」

 

 その瞬間、声にならないような声が、リーナの左側から響いた。

 それに反応するように、リーナは身体を反転させ、右手で握っていたヘカートを左手へ”投げるように”持ち替える。土煙の中から飛んできた”何か”に対して銃口を向け、トリガーに指を添える。

 

「な――ッ」

 

 しかし、土煙の中から飛んできたのは少し大きめの岩。

 そう、それは、ちょうど人の半分程度の大きさの、何の変哲もない、ただの岩。

 

「しまっ――」

 

 それが、囮だと言うことに気がつくまで、僅かコンマ一秒。反転するまでコンマ数秒。それが、彼女にとっての大きな隙になってしまった。

 

「もう、(おせ)ぇよ!!」

 

 振りかぶられた、赤い塊。それは、魔力を付与された、炎を纏う拳。

 さながら太陽の一撃のようなそれを構えるのは、頭から血を流しながらも、獣が獲物を狙い定め追いつめるような表情の剛!

 

「焼き払え、アレス!!」

-応!-

 

 ガツンッ、と響いたカートリッジの装填音。それと同時に、彼の腕に纏う炎がよりいっそう巨大になる。

 やばい、撃ち負ける。思いながらも、彼女は銃口へと魔力を溜める。

 カートリッジは先ほどすべて使い切った。

 再装填の時間はない。

 残りの魔力も、若干心許ない。

 ならば、やることは一つ。

 

(凌ぐだけじゃダメだ。なら、ここで決めきらないと!)

 

 ぎゅっとグリップを握りしめ、銃口へ魔力を集中。自分の魔力も、周辺に霧散した魔力も全て、一気に銃口へかき集める。

 

――もっと

――もっと!

――もっと!!

――もっと!!!

 

 念じる度に、銃口に宿った光が鼓動するように大きくなっていく。

 収束されていくそれを、剛は覚えていた。

 目の前に広がる、青い魔力。それを見て、剛はニタリと大きく口をつり上げて笑顔を見せて、叫ぶ!

 

「バーニング――ッ」

 

 更に燃えさかる紅蓮の炎。リーナは、それを眼前に向けられても怯むことなく剛を見据え、彼へと真っ直ぐに銃口を向ける。そして――

 

「コード・カノーネ!!」

-了解。コード・カノーネ、受諾-

 

 ゴゥン、とダネルとなっていたそれの形が一瞬にして変形、また別の姿を見せる。

 灰色の本体と同色の砲身、右側についたトリガーと反対側についたフォアグリップを持つそれは、まるで架空のロボットアニメに出てきそうな、近代的なデザイン。分類的には超電磁砲(レールガン)に含まれるそれの両サイドのグリップを握りしめ、収束した魔力を一度砲身にて再収束!

 

「叩き込むよ、ヘカート!」

-Yes,sir!-

 

 銃口が青く灯る。

 目の前に迫る、剛と極大の炎。それを真っ直ぐに見据え――

 

「カノーネクスィフィアス!」

「――クラァァァァッシュッッ!!」

 

 互いの魔力が、至近距離にて再びぶつかり合った。

 

 

 

――公民館、大ホール

 

「ほらほら、しっかり避けないと頭吹っ飛んじゃうよ!」

 

 目の前に飛来する巨大な岩塊。それをすんでのところで回避し、聖は後ろに吹き飛ばされるようにして跳ね跳びながら、何度目かの体勢を立て直す作業を行った。

 聖の目の前にて、身の丈以上の岩塊――天地断ち斬る翡翠の岩剣(イガリマ)を軽々振り回す司を見て、聖は思わず「圧倒的だな」と呟いた。

 

(一撃で床をぶち抜き、五重の絶対守護障壁を簡単に砕くパワー。さすがに直撃は避けたい。でも、現状できることといえば――)

 

 ばっと両手を広げて魔力球を数個展開。そして、すぐさま魔法式を起動させる。

 

短縮起動(ショートカット)!」

 

 ヴヴッとブらして魔力球が剣の形へと変化する。その切っ先は、まっすぐに司へと向けられる。

 

射出(シュート)!」

 

 聖が右腕を振るうのと共に光の剣が一気に射出される。

 しかし、放たれた刃は司の元へ届くことはなく、岩剣の腹に当てられて防がれる。

 それを見て、聖はぎりっとそれを睨み付けてからもう一度光の剣を複数展開、そのまま司を中心に円を描くようにして駆け出す。

 

(現状、出来ることと言えば今みたい光の剣で遠距離からの射撃。いくら速度があるとはいえ直線的な攻撃だから防がれる。んで、もう一つは――)

 

 聖は、司を中心に円を描くようにして徐々に距離を詰めていく。

 司は、彼に追従するようについてくる光の刃を一瞥しながら自らの持つ岩剣を中段に構えてからすっと持ち上げ、大上段の構えを見せる。そして――

 

射出(シュート)!」

「甘いっ! 巨神一斬(ギガントマキア)ァァァ!」

 

聖の放った光の刃と少し遅れるようなタイミングで、司は岩剣を聖に対して真っ直ぐ振り下ろす!

 放たれた一撃は、まさに”巨神の一太刀”。地面を砕き、衝撃波を放ち、砕いた岩を中距離散弾のように放ちながら光の刃を粉砕していく。

 司の前に立ち上る土煙。警戒するようにもう一度岩剣を中段に構えた――その瞬間!

 

「――シッ!」

 

 ギュンッ、という音をたてるように、聖が加速して突っ込んでくる。ファイティングポーズのまま、その拳には淡い青の魔力を蓄え、そのまま突っ込んでいく。

 しかし、そうなっても司は焦らない。距離を取るために、岩剣の切っ先をそのまま下に向けた状態で一気に距離を離す。

 

「逃がさないっ!」

(―迎撃する!)

 

 突撃してきた聖に対して、短いテイクバックで迎撃の振り下ろし。衝撃波と石礫を当たりにまき散らしながら聖を迎撃する。

 しかし、その迎撃を聖は意図もたやすく回避して、軽く跳ねたかと思えばそのまま岩剣を思い切り踏みつける!

 

「ぬ、ぐっ……」

 

 踏みつけられたそれを引き抜こうとするも、聖の踏み込みによる加重と剣そのものの超重量。それが相まって、切っ先そのものが地面にめり込んでしまい、引き抜けない。

 

「とった――!」

 

 もう一つの策。それは、相手の攻撃手段である岩剣を封殺してからの、一撃必倒!。

 踏みつけた状態から放つ、聖の右足刀の上段回し蹴り。

 魔力をこめたこの一撃。直撃すれば確実に意識を吹き飛ばせる。

 ”刀”という武器を常日頃から使っていた聖にとって、この上段足刀蹴り――もはや下段から上段、首の位置へと向かう、一斬必殺の斬撃と化したそれは、防御に定評のあるなのはの障壁を一撃で粉砕するまでに至っていた。

 狙いは必中、直撃すれば必殺の一撃。放ったまでは、聖でさえここで『決まった』と思っただろう

 しかし――

 

「いい攻めだ、それでも、まだまだっ!」

 

 司の技量は、彼の想像の斜め上をゆうに通り超えていた。

 

「避けられ――っが!?」

 

 司は右手で握っていた岩剣を手放し、身体を大きく後ろに逸らす。そのまま聖の放ったこめかみ狙い一撃必倒の回し蹴りを回避する。

 そこから彼女が放つのは怒濤の連撃。身体を大きく後ろにそらした状態のままからバク転するように蹴り上げを二発、逆立ちをしたまま聖に足下へ一発。それにつなげるようにしてさらに二撃の蹴り。合計五発の連撃を聖に叩き込む。

 最初の三発をギリギリ凌いだ聖だったが、常識の外から飛んでくるような連撃にそのまま吹き飛ばされていく。

 聖は痛感していた。

 この人、マジで強すぎると。

 

「ごっ――かひゅっ……」

 

 壁に叩き付けられ、肺の中の空気を全て吐き出す。一瞬だけ来る心配停止状態。意識を明後日の方向へ吹き飛ばされかけ、その目には僅かな光が灯るだけ。

 そして、限りなく実践に近いこの試験にて、相手が停止したこの瞬間を司が見逃すはずはない。

 遠慮も躊躇も手加減もそんなもの知らないといった表情で、司はそのまま倒れ込んだ聖との距離を詰め、その過程で埋め込まれた岩剣を引き抜き、そのまま飛び上がる。

 跳躍の勢いをそのまま攻撃へと持っていく。勢いそのまま、威力は倍増。非殺傷設定とはいえど、衝撃は絶大。直撃すれば聖は確実に負けるだろう。

 

「確かに強かった、ヒジリ=ササキ。だが、これで――」

 

 さよならだ。そう言いながら、司は大上段から岩剣を振り下ろす。

 それを聖は、まるで超低速カメラで見ているようなコマ送りで、半ば落ちた意識の中、視界にしっかりと捉えていた。

 

――意識は落ちている。だが、まだ俺は生きている。

 

 十を吸い、八を吐き出して、残った二を以て全身に魔力を一気に巡らせる。

 

――射程はこちらに勝機があれど、速度は相手が圧倒的有利。相手の攻撃を回避した後の、反撃が有効。

 

 集中。ただその一つに全神経を注ぎ込む。意識が超低速で戻っていく。それでもまだ、彼女の方が断然速い。この速度なら、俺の意識が戻ることなく先にやられるだろう。

 

――ならば、やることはたった一つ。彼女の音速を、自分の神速にて叩き伏せるのみ!

 

 だからそ、思いつきでも、何でも試せ!

 

「――短縮起動(ショートカット)刃製(ブレードオン)!」

 

 瞬間、聖の目の前を流星が走った。

 

 

 

――公民館 大ホール上部見学室

 

 凄い。思わずはやてはそう言葉をこぼしていた。

 寸前まで迫っていた、司の岩剣。まさに意識を彼方に吹き飛ばす一撃が、聖に直撃するかに思われた。

 だが、それを弾いたのは、まさしく聖の光の刃。どこからともなく出現したそれが、司の岩剣を綺麗に一刀両断したのだ。

 咄嗟の判断。直感。心眼。そんな言葉がもっとも似合う瞬間に、彼女は今出くわしていた。

 

「なんか、想像以上やね」

「そうだね、はやて」

 

 彼女の隣で見ていたフェイトも、彼の成長具合に感嘆していた。

 初めて出会った時は、自分とは違う魔法式を使って、人並み以上シグナム以下だけど剣術ができて、中途半端にひねくれてる印象だけど、それ以上に誰かを助けるためには自分の傷もいとわない、無理無茶無謀はやりたい放題、そんな彼。

 そんな彼が、今では管理局内でも指折りの実力者で、模擬戦試験官の司と対等に渡り合っている。

 そのことが、少しだけ嬉しくて、何となく、その努力が、頑張りが、愛おしく感じていた。

 

(あ、あれ? 何だろ、この感覚)

「すごいね、聖君」

「あっ、と。そうだね、なのは」

 

 なのはに話しかけられ、意識を再び窓の向こうの模擬戦会場に戻す。彼女がこの感覚の正体に気がつくのは、もう少し先のお話。

 閑話休題。

 

(それにしても。はやてちゃんの言うとおりだけど、想像以上だなぁ)

 

 なのはは驚きながらも買っておいたペットボトルの紅茶を一口飲んで一息つく。

 本当に、彼の潜在能力に驚きを隠せない。

 少し前の儀式魔法の試験でも、彼は『光の刃』という彼オリジナルの儀式魔法をほぼ感覚だけで範囲魔法へと転化させた。

 そして、今の模擬戦でも、その潜在能力というか、対応力の高さを遺憾なく発揮していた。

 

「ははっ、こりゃすげーわ・・・・・・」

 

 龍吉は、聖の模擬戦を見ながら片手で顔を覆うように隠し、小さく「まじかよ」と呟いた。

 彼の対応力の高さや咄嗟の判断力に関しては、龍吉はここにいる誰よりも理解していると思っていた。

 しかし、自分が思っている以上に、聖はその遙か上にいたのだ。

 はっきりとわかる、自分と彼との、大きすぎる実力差。

 

(これは、自分の力の無さに泣きたくなるわな)

 

 ジェイソンの時も、自分はほとんど実力を発揮できずにリタイアしていることを思い出して、思わず泣きそうになる。

 しかし、そのことを今は忘れよう。そう努めて涙を袖に隠すと、もう一度窓の向こうでにらみ合っている聖へ目を向ける。

 そして、小さく誓いを立ててみた。

 今、自分の隣にいる彼女と、聖と、世界に対して。

 

「誰よりも強くなくていい。だったら俺は、大切な奴だけは、絶対に守れるくらいに、強くなってやる・・・・・・」

「龍、君・・・・・・?」

 

 きゅっと楓の手を握り、ちらりと彼女の顔を見る。手を握られて、きょとんと見上げた彼女を見てから困ったような顔を見せて「なんでもねぇよ」と呟いた。

 

(あれが、佐々木先輩の、全力)

 

 きゅっと握り拳を作って、沙希は窓越しの戦いを見ていた。

 彼に手紙を送る前、仲の良い先輩に協力してもらって聖のことを調べていたことがあった。

 名前、在籍クラス、好きなもの、嫌いなもの、趣味趣向などなど。

 その中の備考欄。その”仲の良い先輩”が書き足した項目には、「道場の息子で剣術の心得あり」と書いてあった。

 でも、今は剣術は使っていない。それに、一年前は左目に眼帯なんかなかった。

 きっと、今刀を使っていないのも、左目に眼帯をつけているのも、何か理由があってのことなんだと思う。

 もっと、彼のことを知りたい。

 彼のことを理解してあげたい。

 そんな思いを、いつしか彼女は抱いていた。

 だから、彼女は両手を合わせて、祈る。

 

(どうか、何事もなく試験が終わりますように――)

 

 その願いは、誰にも聞こえることなく、虚空へと吸い込まれていった。

 

「なん――と」

 

 彼女たちの隣。マイク付きのデスクで見ていた司の執事――シュヴァインは、彼女たち以上に驚きの表情を隠せていなかった。

 常日頃から彼女の無理無茶無謀のトリプルMな彼女に付き合わされてきた彼だからこそ、彼女の強さも知っている。

 最高傑作(イガリマ)の頑強さも、その通常威力も、結果的に使用しなかったものの、あれの切り札の威力も理解している。

 しかし、今目の前で起きていることはどうだ?

 彼女の愛剣は、切り札を使用する前に真っ二つに叩き斬られ、あまつさえ反撃の一太刀を受けた。

 それでも、彼女の表情は笑顔だ。多少なりとも驚きの表情は含まれているが、それを吹き飛ばすほどの、笑顔を浮かべていた。

 

(あそこまで追い込まれていて、それに楽しそうな貴女は久しぶりに見ますよ、司)

 

 何となく。本当に自分でも気がつかなかったくらいの微笑を浮かべるシュヴァイン。そして、誰にも気がつかれないくらい、本当に拳を握りしめて、呟いた。

 「勝ってくれよ、司」と。

 




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