魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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 二ヶ月間放置していた訳じゃないんです。
 どうも、お久しぶりです。Yuinoです。

 まぁ、何があったかというと、就職関係で忙しかったり艦これの秋イベントがちょうどぶつかってたり文化祭があったりと、忙しかったんです。
 頑張って月一、早くて二週間更新を頑張りたいです、はい……


18:それぞれの会話

――海鳴市 路地裏

 

「久しぶりっすね。不知火さん」

「――何しにきやがった、織村」

 

 龍吉の来訪を多少なりとも警戒している様子を見せる、目の前にいる青年。

 少しくすんだ金髪、耳にはピアス。着ているのも黒みの入った深紅のジャケットに黒のジーンズ。一,八メートルほどの比較的大柄な体格。そして、背中に背負った金属バット。

 そして、彼の少し後ろにいるのは同じように黒っぽい赤のジャケットを着た不良っぽい格好の人々。

 まさに、典型的なワル。ステレオタイプながら、不良の集まりと言ったような人々が龍吉の来訪を警戒していた。

 

「てめぇ、聖龍コンビの片割れが何の用だゴラァ!」

「まぁ落ち着け黒須。お前だって、こいつに気ぃ失わされたくねーだろ?」

 

 今は我慢の時だ。そう言うように青年――海鳴市を中心に活動している不良グループ”フィアンマ”のリーダーである不知火陽が、彼の右腕で特攻隊長の黒須大志にそう言う。黒須は「不知火さんが言うなら」と言ってから、右手に持った鉄パイプを渋々下げながら数歩下がってその場に座り込む。他の周りにいた不良達も、陽の制止を聞いて渋々というような感じで各々の得物を下ろした。

 

「んで、何の用だ? 」

「何のようって。俺が来たことがどういう意味か、分からない不知火さんじゃないと思うッすけど?」

 

 チッ、と舌打ちしながら陽は腰掛けていたドラム缶から飛び降りて龍吉を奥へ案内するように進む。それについていくように、龍吉もまた陽についていき、彼に追従するようにほかの不良達も先頭に立った黒須のあとについて陽の後を追う。

 その先にあったのは、大きな木造のテーブル。その上に乗っているのは、市販の缶チューハイなどのアルコール類。

 それを見て、龍吉は若干引きつったような笑顔を浮かべた。

 

「おい、俺が未成年なの分かってんすよね?」

「ア? ンなことくらい分かってンよ。俺が飲むンだよ」

 

 飲みながらじゃねぇとやってけねぇよ。そんなことを言いながら、陽はチューハイの缶を一缶開けてそのまま流し込む。五百ミリのチューハイの缶が一瞬にして空になった。龍吉は呆然、大志は相変わらずといった表情で彼を見て、当の本人は次の缶に手を伸ばそうと選び始める。

 相変わらずの酒豪っぷりだ。そんなことを思いながら龍吉は陽のことを見ていると、あっという間に次の缶を空けてしまい、ゴミ箱の中にそれを放り込む。

 

「そンで?」

「まぁ、情報共有っすよ。裏で起きてる、襲撃犯のことについて」

「あぁ、あのことか」

 

 どかっと椅子に座り、三つ目の缶チューハイを空けながら陽は聞き、それに対して龍吉も返答する。すると、陽は忘却の彼方にあった出来事のような表情をしてから、頭をぽりぽりとかく。

 

「どうだったけか、大志?」

「えと、確か変な米粒型の機械が十機単位の中隊で俺らのシマに突入してきましたね。それをぶち抜いたのが――」

「もしかして、陽さん?」

 

 三つ目の缶チューハイを空にし、四つ目に手を伸ばしながら彼は頷く。頷いてから、陽はその右手に光を宿した。そして、その光は一瞬だけ赤く朱く紅い炎になる。

 それを見て、改めて龍吉は思い出した。

 今、目の前にいる人物が異常に強いということを。

 

(不知火陽。海鳴を中心に活動しているチーム”フィアンマ”のリーダーで、発火の異能力『斜陽』の持ち主。夕陽の出ている時間でないと全力が出せないっつー制限はあるけど、それを使わなくとも充分に強い喧嘩士)

 

 頭の中に入っているデータを反芻するように確認する龍吉。そして、一度だけ聖と彼が”組み手”という名目で戦ったときのことを思い出す。

 辛くも聖が勝利を収めたものの、ほとんど互角、もしくは陽が二歩、三歩も実力は上だったように思える。

 閑話休題。

 ひとまず龍吉は、このときのために作ってきた書類を一度大志に手渡す。彼がそれを受け取ると、中身をさっと見て苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてからそれを陽へとパスした。

 大志から書類をパスされた陽は、苦笑いを浮かべながらそれを受け取った。

 

「流石に大志にこれを読ませるのは苦ってもンだろう? こいつ、このナリのマンマで学がねぇンだから」

「ちょっ、それは言わない約束っすよ陽さん!?」

 

 陽の言葉を皮切りに、不良グループの周りからクスクスという笑い声や、大志をちゃかすような声が飛ぶ。その反応に対して、大志は「お前等も俺と似たようなもんじゃねぇか!」と鋭いツッコミを入れる。

 一時的に賑やかな雰囲気に包まれる裏路地。ここにいる数十人全員が、不良とは思えないほどの和やかさである。

 そして、それに完全にとけ込んでいる龍吉も不思議と和んでいた。

 しかし、その空気ももう終わり。再び張りつめたような緊張の糸が走る。

 

「こうやって情報共有すんのも久しぶりっすね」

「あぁ。あン時は、隣町の奴らが乗り込ンでくる前日に、テメェから情報をもらってたりしたっけか」

「ずいぶんと前の話じゃないっすか、それ」

「随分と前でも良いンだよ。俺が覚えている限り、な」

 

 そんな風にいって煙草に火をつける陽。

 火がつき終わり、彼が一息つく。それと同時に龍吉は話し出した。

 

「裏にも、”黒コート”が?」

「あぁ。俺らの仲間も何人か巻き込まれてな。たぶん、俺がそうだからだろうな」

 

 自分の拳を見つめながら、陽は言う。

 ミッド出身の”魔導師”ではなく、”異能力者”特有とも言える原因。それが異能を発動した時の残滓だ。

 異能力者がその能力を発動した際、周りにその能力の”残滓”のようなものを無意識の間にばらまいているという。その人物の周辺に異能力者でない人がいた場合、それが付着したときに異能力者のような反応を示すときがある。

 不良グループのリーダーをつとめる彼の周りには多くの人物が集まる。そして、彼が能力を使うときも少なくなかっただろう。それが、喧嘩であれ、なにであれ。

 そのときの残滓が、数人に付着してしまい、襲撃に巻き込まれたのではないか、と陽は語った。

 自分が、能力を使ったせいで大切な仲間を巻き込んでしまった。その思いが、今の陽を強く突き動かしていた。

 自分の手で、自分の仲間を襲った人物との”ケジメ”をつけないと頭目(リーダー)としての示しがつかない。

 

「ケジメをつけるのは俺自身だ。俺の手でそいつとやり合う。それだけだ」

「流石に変わってないっすね」

「当たり前だろ。俺が誰だか分かってンのかダァホ」

 

 そう言って再び缶チューハイに手を伸ばす陽。幾つ目か分からないそれをあっという間に空にし、近くにあったゴミ箱に投げ入れるとぎゅっと手を握りしめた。

 

「俺は俺の所為で、目の前で誰かを失いかける事なンてのはゴメンだし、一番それが許せねぇ。俺は俺を犠牲にしてでも、目の前の仲間を助けるんだ。だから、ここを作ったんだ。覚えてンだろ」

「ふふっ、分かってますってそんなことくらい」

 

 そう言うと、そのまますっと立ち上がって龍吉は拳を向ける。それに応じるように、陽も拳を向け、ゴツッとぶつけ合う。

 

「こっちは任せろ」

「任せましたぜ、陽さん」

 

 そう言ってから龍吉はその場をあとにする。

 路地裏から出てきた彼の背中に響いたのは、彼らの鬨の声だった。

 

 

 

――同日夕刻 海鳴市臨海公園

 

 学校が終わり、帰宅の途についてた聖と沙希は、何となく臨海公園まで足を伸ばしていた。

 最近、いろいろあり過ぎて疲れていた二人の意見がぴたりと合い、ここまで足を伸ばして休憩に来ていたのだ。

 つまりこれは――

 

(デート、なのかな? そうだね、そうだよね)

 

 一人心の中で焦っているのか嬉しがっているのはよく分からない状態に陥っている沙希。そんな彼女を見ながら、くくっとのどで笑う聖。彼もこの状況は重々理解しているようで、若干頬を紅くしながら「落ち着け落ち着け」と言って沙希の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でた。

 

「わ、な、何するですかー!?」

「何でそんなに慌ててるんだお前は。それより、ほれ」

「何です……かっ!?」

 

 そう言って聖は指を指す。その指差された方向へと視線を動かすと、沙希の目の色が急変した。

 小さなワゴンカー。公園とかによくある小さな屋台付きの車につけられた看板には大きくとある文字が書かれていた。

 それはたった一文字”クレープ”。その文字だけ。それでも、沙希にとっては効果は絶大だった。

 

「く、く、くれ、クレープ……っ!!」

「だっ! ちょい落ち着けっての!」

 

 ぐいっと羽交い締めにして沙希の暴走をストップさせる。羽交い締めにされた彼女は両手両足をばたばたさせてどうにか聖の拘束から抜け出そうと暴れる。

 そんな風に暴走している沙希を抑える聖は思った。

 甘味を見ると暴走し始める沙希を止める方法を考えなければ、と。

 閑話休題。

 そんなこんなで無事に(?)クレープを購入出来た二人。もちろん、なのかは分からないが聖の奢りである。沙希が有無を言う前に聖が、買ってしまったのだ。

 それも、沙希が若干暴走していたと言うことも原因だったのだが、もうそれは気にしていない。

 

「んんふ~」

「その調子で顔芸出来そうだな」

「ひょれをかのひょこうひょのひひょにひうのはひひょいほほほいまふっ……んぐ。撤回ですよ、撤回!」

「ちゃんと口の中のモノ飲み込んでから言えよ」

 

 そんな風に言って笑う聖。それにつられるように沙希も微笑んだ。

 こんな風にのんびりした日の裏で、実は異能力者達や魔導師達がドンパチやってるんなんて予想出来ないだろう。

 そんなことを聖は思ってから買ったクレープを一口かじる。

 その瞬間だった。

 

「ん――?」

「ぁ――」

 

 キィィィィン、と脳に響くような高音が響く。

 その瞬間、聖達のいる場所――もとい、海鳴市全てが巨大な結界に包まれた。

 

 

――同時刻 高町家上空

 

「ディバイン――バスター!」

 

 轟音を以て放たれる桃色の極光。

 しかし、彼女の代名詞とも言えるそれは、目標へと着弾はせず、空の向こうへと消えていった。。

 

「避けられた――!?」

「なのは、後ろ!」

 

 フェイトの警告に対し、なのはは振り向きざまにプロテクションを展開する。すると、彼女のすぐ後ろに先ほど狙った天使の羽が生えたような結晶が超高速で突進してきていた。

 ゴンッという鈍い音が響いた瞬間、プロテクションにヒビが入る。何とか受け止め、そのまま受け流せたもののこの衝撃は予想以上だった。

 そのままプロテクションを解除。そのまま自分が自信を持っている空間把握能力で結晶体の場所を予測すると、再び抜き撃ちで砲撃を放つ!

 放たれた砲撃は、彼女の予測通りの軌道を描いて動いていた結晶体をしっかりと捉えていた。

 捕まえた。彼女は直撃を確信していた。

 だが、そこで結晶体は驚異的な機動性を見せた。

 

「えぇ!?」

 

 直撃の瞬間にまるでその砲撃を予期していたような左右にぶれてから急上昇したのだ。

 驚きはしたものの、それで終わる彼女ではない。フェイトへと目配せ。それを理解したフェイトも頷くとバルディッシュをその結晶体へと向ける。

 

「プラズマランサー」

「アクセルシューター」

 

 それぞれ雷槍を、魔力弾を一気に十以上展開。それら全てをその結晶体へを向ける。

 単発大威力が無理だったなら、数を増やして当たる確率を上げ、それらで囲んでしまえばいいだけの話である。

 

「ファイア!」

「シュート!!」

 

 プラズマランサーが真っ直ぐに、アクセルシューターが複雑な軌道を描いて、それぞれ結晶体へと迫る。

 着弾必死かと思われた。しかし、目の前の結晶体は一瞬にして回避して見せた。

 超高速で迫るフェイトのランサーに対し、煌めく粉を撒き散らしながらそれらを誤爆させていく。

 そして、その後方から迫るなのはの放ったアクセルシューター。それぞれが複雑な動きで結晶体へと距離を詰めるも、それすらも異常な機動性で回避しつくしていく。

 

「なに、あれ・・・・・・」

「なんだろう。よく分からないけど」

 

 その場に溜めるように膝を屈めるフェイト。その動作一つで、なのはは彼女がやろうとしていることを察し、再びアクセルシューターを多重展開する。

 射撃魔法のすべてを回避した結晶体は、向きを変えてそのまま真っ直ぐ突っ込んでくる。それを見ながら、フェイトはなのはへ伝える。

 

「スリーカウント、行くよ?」

「任せて、フェイトちゃん」

 

 ゴウッ、と巻き起こる魔力の奔流。金色に輝くそれがフェイトの周囲を渦巻き、まるで金色の鎧のように纏われる。

 

「スリー」

 

 グッ、とフェイトが一歩踏み出す。

 結晶体がさらに距離を詰める。

 

「ツー」

 

 なのはがシューターの狙いをすべて一点に集中させる。

 

「ワン」

 

 結晶体がさらに速度を上げる。

 双方間の距離がさらに詰まる。距離、二十メートル未満。

 

「――ゴー!」

 

 バガンッ、という破砕音を空中で響かせながらフェイトが”消えた”。

 それに合わせるようにして、なのはは迷いなくアクセルシューターを全弾一斉に撃ち放つ。

 複雑な軌道を描くミサイルのように迫るそれに対し、結晶体は一瞬だけ速度を落とし、再び煌めく粉を振りまいてシューターを迎撃し――

 

「もらった――!」

 

 後方から迫っていたフェイトの一閃をまともに受け、その本体にひびが入った。

 なのはとフェイトのクロスシフト。射撃魔法のすべてを”囮”に使用し、近接担当がその隙間に接近、後方から一撃をたたき込むコンビプレーが炸裂した。

 

「やった――!」

 

 フェイトの一撃を受けてふらふらと落下していく結晶体を見ながら、なのははぐっと握り拳を作り、それをフェイトの方へ向ける。フェイトもそれに答えるようにしてぐっと親指を立てた。

 そして、落下した結晶体へとゆっくり近づいたとき。

 

『ふふっ、流石は管理局のエースオブエースと雷神だね』

 

 その結晶から声が響いた。

 驚く表情を浮かべるなのはとフェイト。そんな二人の目の前で、その結晶はゆっくりとひびが大きくなっていき、まるで鳥が孵化するように中から何かが現れた。

 中から現れたのは、少年だった。異国の民族衣装のような服装を身に纏い、両方の腰には薄青の刀身の片刃剣。右手にはボートを漕ぐときに使うようなオールのようなものを握って、そこに立っていた。

 

「久しぶりに胸躍る戦いだったよ。珍しく少し熱が入ってしまった」

 

 少年はマフラーをふわりとたなびかせながらゆっくり降りてきながら言う。そんな少年は、なのはとフェイトの二人を前にして一礼。

 

「初めまして、高町なのは一等空尉、フェイト=テスタロッサ=ハラオウン。僕はノア。いや、管理局員であるキミ達にはこう伝えた方が良いかな」

 

 それだけ言うと、ノアと名乗った少年は右手に持ったオールの先を下に向け、そのまま自分の周辺をなぞるようにくるりと回転させる。

 すると、彼の背中に浮かび上がったのは先ほどと同じような結晶体。更に大きな翼が生えたような結晶が、彼の背中に現れた。

 

「ロストデバイス、古戦武装(エンシェントデバイス)。いろんな呼び方があるけど、至天装ヴィロスフィア。その管制人格、ノア=ヴィロスフィア。今の主人は、キミ達の友人。サキ、ミヤノさ」

 

 

 

――同日、夜。佐々木家

 

 先日帰宅した父、京士朗。彼はいつも通り、縁側に腰掛けて酒を飲んでいた。

 薄く濁ったガラスのグラスに、お気に入りの日本酒を注ぎながら氷を鳴らす。

 本当だったらブランデーとか洋酒でやったら格好がつくのだろうけど、あいにくと洋酒はない。だから、しかたがない。

 くいっ、とグラスを傾けて日本酒を煽る。某戦艦と同じ名前の日本酒。彼のお気に入りであるこれを飲んでいると、後ろからゆっくりと近づいてくる影があった。

 

「親父……」

「ん、なんだ聖。お前も飲むか?」

 

 空のグラスを見せながら、京士朗は言う。聖は「んな訳ねーだろ。俺はまだ未成年だ」と言って隣に座る。酒の代わりなのか、持ってきたコーラをぐいと飲む。

 一瞬の静寂。しかし、聖はその静寂を破るように京士朗に言った。

 

「親父――」

「なんだ?」

「古戦武装って、なんだ?」

 

 聖の一言を受けて言葉を探すように宙へ視線を動かしている。

 何か言いたくないことがあると、目をそらして宙を見るのが彼のクセ。明らかに「言いたくないから言わせるな」と伝えている。

 しかし、明らかに聖は諦める気がない。じっと彼を見つめたまま動かない。答えを聞くまではてこでも動かないだろう。

 

「だーっ、もう。しゃあないな」

 

 ついてこい、と言う感じに立ち上がり、道場の方へ向かう。聖もそれについていくのだった。




 正直、だいぶ苦しい終わらせ方です。はい…精進します。

 あと、次回でこの「空白期編」は終わりになりますです(ナ、ナンダッテー!?)

 これ以上引っ張ったらStS編にはいるのが相当遅れそうなんで、はい……

 それでは、次回もお楽しみに!
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