魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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とりあえず、さくさくっと書けている(書き溜め)があるのでさっさと投稿。

第二話です。よろしくです!

(2015/07/03 第一次加筆修正)
(2017/01/18 第二次加筆修正)


02:初陣

-聖。この刀は、大切な人を守る刀だ。決して、人斬りの刀じゃあない。それだけを、肝に銘じるんだ。良いね?-

 

 そう言われたのは、今から六年前、彼が中学へ進学を果たす時と。今は亡き父親からの言葉。それと同時に、聖が父京士朗からこの刀――『氷風の一閃・雪風』を受け取った。

 その時だ。彼が始めて、自分の父と母が他の人達と、少し異なっていると言うことを理解したのは。

 佐々木家の剣術『佐々木帝流』の第十二代目当主である佐々木京士朗と、とある事情を以て『別世界』から地球に流れ着いた母カレン。二人が構成し、考えた武器。

 その刀は、自己を見直し、他者を守るという理念に基づき完成された、在る意味完了された刀だった。

 聖の中にあるのは、母譲りのリンカーコア。しかし、その総魔力量は最高B-。伸び代が殆どなく、その少ない魔力量を活かすために、京士朗とカレンは考えた。

 少ない力で大火力剣戟を放つ佐々木帝流剣術。支援魔法に特化し、幻術や強化魔法に於いて他者を寄せ付けない実力のカレンの魔法。これらを含めて、再構成した、世界で二つと無い魔法式――

 二人が考案したオリジナル魔法式『カスミ式魔法』。そして、それを複合させた、新しい佐々木帝流剣術。聖曰く、『天剣佐々木帝流剣術』。

 中学進学前、当時住んでいた宮城から今の海鳴市へ引っ越してきた時、昔そこにあった道場を再建した聖達佐々木家の三人は、道場で改めて稽古を行い、そこで、身につけた。

 その後、両親は世界各国を巡り、ボディガードの仕事を行うために海外へ飛び、日本に一人残された聖は、それでも一人で学び、そして、その刀は完全となり、完成され、そして完了した。

 

――誰かを守れる。大切な人を守るための、不殺の剣術として。

 

 

 

 絶え間なく放たれるフルオート射撃を、聖は各所に絶対守護障壁を展開して弾きながら武装グループの一人に一気に接近していく。

 

(流石に違法改造銃か。威力も速射力も段違い。それに、反動抑制も付いてるみたいだな。でも、それだけなら!)

 

 左足の踏み込みと同時に、その脚を起点にしたクイックターン。次の踏み込み、右足が地面に付く瞬間、小さく呟く。

 

「――カスミ式、霧走(むそう)

 

 彼に狙いを定め、銃口でもって追尾していた武装グループ一名。彼が引き金を引き、銃弾が放たれた瞬間、目の前から瞬間的に消え去った。それは、まるでかき消えたようにして、一瞬に。

 

「な――っ」

 

 何もないところに放たれる銃弾の嵐。彼が次に目にしたのは、自分の懐に潜り込み、腰に腕を巻き付けるようにして構える、標的()の姿!

 その構えは、懐に入った瞬間に勝利が確定している。放たれる斬撃は音速を超え、鉄をも断ち切る衝撃を放つ。故に名付けられた、その斬撃の銘は――!

 

「天剣佐々木帝流、居合の型――蜂鳥(はちどり)

 

 ガゴンッ、という鈍い衝撃音。身体にめり込んだ金属を見て、体の中の空気をはき出すと共に武装グループ一名は、身体をくの字に折ってその場に崩れ落ちる。

 それは、あくまでのも不殺の一撃。超重量の衝撃を以て制圧する、故の音速の打撃技である。

 つまり、斬撃ではなく打撃。居合の型から放たれるそれを表現するならば、『居合打ち』。

 ヒュン、という音を鳴らし聖はもう一度刀を構える。それを見て、武装グループの全員は僅かに後退する。

 それを見た黒服の魔導師達は、まるで「使えない」と言うかのような視線を送ると五人が全員前に出てくる。そして――

 

「別に、キミには恨みはないんだ。でも、割り込んできたことを後悔なさいな!」

 

 轟音を建てて放たれる光。魔力弾の一斉射。

 そこから次いで放たれる、個人個人の連続発射。

 聖は再び絶対守護障壁を展開。自分に向けられた一斉射を一度防ぎきり、その後は回避しながら魔力弾の隙間を縫うようにして高速で接近していく!

 

 ()ける。()ける、(かわ)す、()ける、掻い潜る!

 

 当たらない。聖の人間離れした高速機動と、的確に挟まれる絶対守護障壁を前にして、いっさいの射撃が彼への着弾を許さない。

 

「くそ、ちょこまかと!」

 

 いらだちを募らせた黒服の一人が杖――デバイスを構えそこに魔力を集中させる。それは、砲撃発射の前兆!

 それを確認した彼は、回避するか、切り流すか、その一瞬だけ思考した。しかし、たった一瞬の思考のズレが生じ、バランスを崩す。

 その時、聖の頭の中で思考が展開されていく。

 

 

――時間にしてチャージに一秒。放たれて今自分のいる場所に着弾するまでコンマ五秒。

――絶対守護障壁の残弾数、残り二。

――残り魔力も心許ない。

――第一、回避も間に合わない。

――訂正。

――踏み込み完了。絶技の使用でのみ、回避可能。

 

 

(仕方、無いか!)

 

 諦めたかのようにして舌打ちすると、一度足を止めて聖は正面に砲撃を見据える。腰を低く落とし、覚悟を決めたような表情。

 しめたと見た黒服魔導師は、口元を大きくつり上げて、叫ぶ!

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

 ゴォゥッ、という轟音を伴って放たれる砲撃。それを正面に見据え、聖も叫ぶ!

 

「カスミ式絶技……風神(かぜかみ)!」

 

 彼の声と共に、再び彼の姿が消える。そして――

 

「天剣佐々木帝流、居合の型――麒麟(きりん)!」

 

 気合裂帛。

 一瞬にして砲撃手の意識が途絶える。それも、砲撃を放った直後に、だ。

 理由は至極簡単。今起きたことを端的に表するとこうなる。

 一。砲撃手が砲撃を放つまでのチャージ。聖、突撃準備。

 二。聖が『カスミ式・風神』を発動。

 三。砲撃発射と共に聖が『風神』で一気に砲手へ接近。放たれたと同時だったため、彼の髪を掠める所を砲撃が通り抜ける。

 四。砲撃終了と共に、聖の『麒麟』直撃。砲手は戦闘不能。

 以上。

 つまり単純に、砲撃を接近してまるでサッカーか何かで“相手を抜くようにして”砲撃を回避。そのまま懐に入った瞬間に居合打ちでとどめ、という流れである。

 

「王手をかけた。諦めろ」

 

 ヒュンと言う音を立て、付着した血糊を払うかのような動きを見せてから、聖は刀を構え直す。

 その一連の動きに、黒服魔導師は恐れをなした――

 

「悪いな。チェックをかけてるのは、こっちなんだ」

「なに――!?」

 

 ――かのように見えた。聖は再び、リーダー格の黒服に突撃をかけようとして――

 その場に押しとどまった。『完全に包囲』されていた。先ほど後方に下がっていたはずの武装グループ全員が、聖を完璧に、完全に。

 何時の間に……と考える前に、聖は状況を整理していた。

 

(恐らく、さっき倒した奴が“囮”で、その間に数人掛かりでオプティックハイドで全員を隠して移動、期が来るまでこの陣形で待機させてた、ってことか)

 

 ふぅ、と小さく息を吐いてから周囲を見渡すように視点を移動させる。周辺180度。完璧に包囲されている。この状態で一斉射されたら――確実に殺られる。

 もう一度周囲を見渡す。状況を打開する作戦を必死に頭の中で構成する。しかし……。

 

(だめだ。どうやったって三工程は必要になる。あっちは「撃て」の一工程でこっちを蜂の巣にしてくる。障壁残数は二。全方位展開だと、頑強さに欠けて途中でアウト。どうする……!)

 

 全周囲警戒をおこたらずにそのまま動かない。動けない。でも、やることは変わらない。そう、ただ一つだけ!

 

「――制圧する!」

 

 銃弾の雨の中を、避けて躱して掻い潜って。目標を、制圧するのみ!

 

「撃てぇぇぇ!!!」

 

 バララララララッという音を立ててばらまかれる銃弾の嵐。それが放たれる、ほんの数拍前、聖は、行動を起こす。

 

「加速形態、起動!」

-加速形態“隼”。起動しま……

 

 行動を起こし、雪風もそれに応えた、その時だった。

 

――プラズマランサー・パラライズシフト、ファイア!――

 

 瞬間、聖の周囲に振り注ぐ金色の槍!聖も巻き込まんとする、非情なまでの金色の雨!

 

「雪風!」

-絶対守護障壁最大出力!-

 

 聖は自分を覆うように、使用可能な二回分の障壁を完全展開。反応できなかった武装グループ一味はそれらをまともに食らい、瞬間的にそれがバースト、一気に全員を気絶させる。

 防御に成功しつつも何が起きたか把握出来ていない聖は、それらが降ってきた頭上を見上げる。

 

「管理局です。全員、武装を解除してその場に伏せなさい!」

 

 そこには、金色の光を纏った美少女がいた。黒色の斧を右手に、金色の光を左手に灯し、ゆっくりと降下しながらその場にいる全員をにらみつける。

 彼女の姿を見て、被害を受けずに生き残っていたほかの全員は装備を投げ捨てるようにして解除し、その場に伏せる。

 しかし、その中一人だけ解除せずに、ただ彼女を見上げる人がいた。

 

「――――管理、局?」

 

 聖、その人である。刀を握ったまま、戦羽織と鉢巻をたなびかせ、じっと彼女を見つめたまま、動かない。

 彼女――フェイト=テスタロッサ=ハラオウンは、自分のほうをじっと見つめた少年のことを観察しながら思考する。

 

(刀持ちの少年。彼の周りには血が流れてない。まさか、仲間割れ?)

 

 彼女がゆっくりと降り立つと、その場に倒れ伏せている武装グループ全員にバインドをかけてから聖の前に歩み寄る。

 

「あなたにも事情を聴きたいので、武装を解除してくれませんか?」

 

 あくまでも優しく問いかけるフェイト。彼女をじっと見たまま、聖は動かず、きゅっと雪風の柄を握りしめる。

 

(管理局……明らかに絡まれるとめんどくさそうだな。逃げるわけにもいかないし、というか逃げられる気がしない。さて、どうすっか)

 

 そのままの格好で思考する聖。彼は無言で自分の後ろを指さす。そこには、縄で縛られながらもゆっくり移動しようとしている女性が二人いた。

 

「フェイト!」

「アリサ、すずか!」

 

 どうやら、後ろの二人の知り合いだったようで、彼女は聖の横を通りぬけて彼女たちのもとへと向かう。

 つまり、今の行動一つで、フェイトは聖のことを武装グループ側の人物ではない、そう言う判断を下したと言うことになる。

 まったく、(さと)い女性だ。そう思いながら、聖はゆっくりと納刀してそそくさと撤退しようとした。

 

 

――しかし、この時点で、聖もフェイトも気が付いていなかった。麻痺していて、なおかつバインドをかけられていた黒服魔導師の一人が、静かに麻痺効果とバインドを解体しきっているということを。

 

 

「油断大敵なんだよ、管理局ぅ!!」

 

 轟音を以て放たれる砲撃。ワンテンポ遅れて気が付き、自分へと向けられた不意打ちまがいの砲撃に、フェイトは対応の仕様がなかった。

 まずい、当たる。そう判断した時、フェイトは無意識下でシールドを展開していた。自分に出なく、アリサとすずかの二人に対して。

 シールドを展開し終えたフェイトは、砲撃に立ちふさがるようにして身を躍らせた。後ろから聞こえる二人の声を、聞こえないふりして。

 

(防御強化! だめ、半テンポ、間に合わな――!?)

「何やってやがる金髪マント!」

 

 しかし、その行動を遮るようにして聖が前に出る。彼女への罵倒をそこそこに、彼は納刀していた雪風を大きく抜き放って振りかぶる。

 

「雪風、魔力放出!!!」

-雪風達が、守ります!-

 

 ゴウ、と唸りを上げて魔力が一気に放出されていく。

 その放出は、統率、制御が完全に行われた砲撃のようなものではなく、ただ無差別に、際限なく魔力の放出を行うだけの魔力暴走に近い。しかし、だからこそ――

 

「放出量最大!!」

-了解です!-

 

 再び、魔力放出はその勢いを増す。増して、増して、増して、それは何時しか、完全に放たれた砲撃を食い散らかした。

 

「おいおい、うそ、だろ……?」

「嘘だと思うなら――」

 

 一連の動きを見て呆然とする黒服に対し、すっと聖は刀を大きく引くようにして構える。

 

「ムショでそう思っとけ、黒服さんよ!」

 

 瞬間、刀身に灯る藍色の輝き。その光は、辺り一帯を照らすような目映いものになったかと思えば一瞬にして集束し、その刀身に灯り、暗闇に照らす!

 

「秘剣――燕返し!」

 

 刹那、三筋の光が黒服魔導師最後の一人の身体を駆けめぐり、彼の意識を刈り取った。

 ひゅん、と血糊を払うような挙動で刀を振るってから鞘に収める聖。それを見ながら、フェイトはただ彼のことを見つめていた。

 

 

 




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(2017/01/18 第二次加筆修正)
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