魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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 最近、季節の変わり目のせいか調子を崩しつつあるYuinoです。

 どうも、模擬戦回二回目です。模擬戦とはいえど、個人的なこだわりで最後までバトらせてません(オイコラ

 とにもかくにも、どうぞ!


StS03:新人と暴れ馬と、手綱を握る騎手

 やや時間をあけ、、フィールドを元通りにしてから次の模擬戦。新人フォワード四人とラウラ、暁コンビの二人の模擬戦が開始されようとしていた。

 とはいえども、開始までの十分間弱、双方に作戦会議の時間が与えられており、それぞれが真剣に会議に打ち込んでいた――はずなのだが……

 

 

 

「面倒くさいから私の完全解除(フルドライブ)で決めちゃっていい?」

「却下。そもそも、この模擬戦の意味合い、暁覚えてる?」

「ううん、忘れたし、聞いてないし、聴いてたとしても覚える気もない」

「んなこったろうと思った……」

 

 ため息一つを虚空についた。

 彼女――鈴谷暁と、彼女の手綱を握る僕――ラウラ=ソニアがやる模擬戦の際の作戦会議は毎回こんな感じにスタートする。

 彼女が「面倒だから一瞬で決めたい」と言えば僕がノーサインを出し、僕が勝手に作戦を考えれば彼女が文句を言う。場所が変わっても変わらない感覚に、なんとなく安堵を気持ちを持ちながらも、内心僕は焦っていた。

 一応、この模擬戦の意味合いは「各分隊の現状の実力を各自が知るため」となっているけど、相手側はもちろん、全力でぶつかってくる。勿論、こっちだってそれ相応の対応をしないといけないのだけれど、そうも言ってられない状況にあった。

 何せ戦力差は単純に二倍。個人技だけでいえばある程度優っているものの、四人もそれなりに連携を取ってくるだろうと予測すれば、その優位もほぼゼロに等しいし、それ以上に劣勢だ。

 ううむ、と考え込んでみると、暁が「全く、しょうがないなぁ」という表情を浮かべながらモニターをいくつか出し、そこにぱぱぱっと何か打ち込んでいく。

 

「まずはさ、相手の出方を見る方向?」

「まぁ、それもいいけれど……」

 

 そんな風に僕が言うと、彼女は「煮詰まってるみたいだし、たまには私も何か案を出さないとね」と言ってニコリとほほ笑む。

 何を言っているんだこいつ、とか思いながらも、僕はその案に乗っていくつか試作案を出しながら、即行で作戦案を作り出していく。

 作り出した案を見て、暁は思わず驚いたような表情を浮かべるも、すぐさまにやっと意地悪な笑みを浮かべた。

 

「いいの? これやっちゃって。ギリギリまで隠しときたかったんじゃないの?」

「ギリギリまで隠すよ? でも、最終的にはこれを使って仕留める」

 

 腰から相棒――初風を取ってカートリッジホルダーをはめ込む。その動きを見て、暁もすぐそばに立てかけてあった相棒(ジェイソン)を手に取り、くるくるっと体に絡ませるように回してから肩にかける。

 こんな序盤で切り札を切る羽目になるのかなぁ、とか小さくぼやきながら、腰に下げてある「隊逐駆七一第」と刻まれたシルバータグを叩き、小さくつぶやく。

 

「往くぞ、初風。新天地での初陣、しっかりやろうか」

-そういう貴方こそ、へましないでよね?-

「ははっ、相変わらず手厳しいな」

-こうでも言わないと、貴方本気出さないでしょう?-

 

 何を言うかこのデバイスは。

 そんなことを心の中で思いつつも言葉には出さず、僕はその場で立ち上がり、ばんっ、と手を打ち鳴らして叫ぶ。

 

「さて、行こうか。初風――抜錨」

「それじゃ、始めますかっ。ジェイソン!」

 

 

 

 じり、とフィールドの中央。すでに模擬戦が開始されて五分が経過しようとしていた。

 陣形を整え、ラウラ達二人を迎え撃つためにティアナは思考を巡らせていた。

 ラウラ=ソニア。

 ポジションは中・長距離射撃が得意な人が付くセンターバック。

 デバイスは銃型。戦闘スタイルは不明だけど、一瞬だけ見えた、突撃銃のような形のデバイスから想像するに、自分や「エースオブエース」と同じような「足を止めて射撃」が得意とは考えにくい。

 あるとすれば、高速機動をしながらの射撃。

 彼の相方の鈴谷暁は、ポジションは近接戦闘が得意なフロントアタッカー。

 デバイスは鎌型。こっちも戦闘スタイルは不明だけれど、もといた部隊では「じゃじゃ馬」とか「暴れ馬」とか言われていたらしい。

 そのころから予測できるのは、荒めの近接格闘。

 今現在ある除法からたたき出される、二人のコンビネーションはとりあえず一つ。

 

(高速戦闘。それも、たぶん私たちが予想している以上の速さの)

 

 だから、この布陣を組んだ。

 前衛にはスバルとエリオの近接コンビ。二人で暁の侵攻を食い止め、後ろから飛んでくるであろうラウラの射撃にはティアナの射撃とキャロの召喚トラップで妨害。そんな、単純で予想もしやすい王道な作戦だけど――

 

(それでも、これで行くんだ。今の私たちの力を、見せてやる!)

 

 ぐっ、とデバイスを握る手に力がこもる。再び、周辺の索敵を密にする――瞬間。

 

「三時の方向、距離、三百! 高速で接近する魔力反応あり! これは――」

「おいでなすったわね……スバル、エリオ!」

「オッケーティアナ!」

「了解です!」

 

 キャロから通信のあった方向へ、スバルとエリオは一歩踏み出す。その方向はビルの陰。確かに、その方向からまっすぐ来ていた。

 真黒なローブに身を包み、鎌野先を地面に引きずり、がりがりと金属音を立てながらビルの間を駆け抜けてくる女性――暁がにやっとした表情でまっすぐに突っ込んできていた。

 彼女の先制攻撃を食い止めるべく、スバルとエリオが一歩踏み出した瞬間――

 

斬――撃(シュナイデン)!」

 

 暁が一気に急ブレーキ。魔力を鎌に乗せ、加速した勢いそのままにフルスイング。鎌に乗せた魔力を衝撃波として一気に飛ばす。

 思わぬ攻撃にエリオが足踏みし、攻撃を受け止めるためにスバルが前に出て衝撃波を弾き飛ばす。

 衝撃波を防いだと思った矢先、再び暁が衝撃波を飛ばしてスバルたちを足止めする。瞬間――

 

「プラン通りに行こうか暁」

「りょーかいっ」

 

 スバルとエリオの間を、一陣の風が駆け抜けた。

 駆け抜けた風はの正体はラウラ。その手に相棒(初風)を携え、全速力でまっすぐにティアナたちのほうへと向かっていった。

 

「ティアっ、そっちにラウラさんが行ったよ!」

『分かってる! 若干作戦通りにはいってないけど、それにしても嫌な感じがするわね。気を付けてよ!』

 

 そんな通信をしながら、スバルとエリオは正面に相対する暁へ向き直る。

 ニコニコと笑顔を浮かべたまま、暁は肩に巨鎌を担いでその場に立ったまま。ただ、じっとスバルとエリオを見ているだけ。

 スバルとエリオも、また動かない。

 いや、動けないのだ。

 まるで、地面に足が縫い付けられたかのように。

 これは、殺気。暁が無意識のうちに放っていた殺気――この場合、威圧感というべきか――で、二人の行動を制限していたのだ。

 

「ふぅん――頑丈なアタッカーと高速強襲型のウイングかぁ。これは――」

 

 ぶわっ、と突風と共に魔力を巻き上げて鎌を構える暁。その瞬間、彼女は小さくつぶやいた。

 楽しくなりそうだ、と。

 

「――っ!?」

 

 じりっ、と一瞬だけ後ろに下がったスバルを、彼女は見逃すはずなかった。

 まるで爆発音のような轟音を立てて、暁は一瞬にして自らの必殺距離(キルレンジ)へスバルとエリオを収める。鎌を持つ構えは異質。左手は順手、右手は逆手に持ち、そのまま強引に引きちぎるような格好で、スバルとエリオを同時に攻撃する!

 しかし、その攻撃をひとまず見切ったスバルは、エリオをいったん後ろに下がらせて自慢の防御でガードする。

 

「はぁぁっ!」

 

 暁の攻撃が受け止められたタイミングを狙って、一瞬後ろに下がったエリオが彼女の後ろに回り込みそのまま強襲を仕掛ける。

 背後からの強襲。一瞬攻撃が止まったタイミングならば、これほど有効な攻撃手段はない。

 しかし、この王道な攻め方は、「型破り」を体現する彼女にとってはほぼ通用しない!

 

「あーらよっと!」

 

 受け止められた鎌の柄の部分を地面に突き刺すと、まるでポールダンスのように柄につかまったまま回転。スバルを蹴飛ばし、その流れで空中へ跳び上がり、エリオの背後からの強襲を回避する。

 

「っとと。でも、今ならデバイスは手元にないよね!」

 

 体勢を崩されたものの何とか立て直したスバルは、そのままローラーシューズを思い切り駆動させ、一気に着地した暁へと接近。拳を振りかざして全力で殴りかかる!

 着地した暁は、長い髪を手早く一つにまとめると、その場で構える。そしてスバルの猛攻を一つ一つ捌いていく。

 回避するでもなく、防御するでもなく、その全てを受け流し、捌ききっていた。

 

「よっ、と」

「わわっ!?」

 

 そして、ほんの僅か大振りになったところを大きく受け流し、当て身でスバルとの距離を僅かに開ける。

 一瞬だけ空いた僅かな隙。その瞬間に暁は一気に移動して鎌を回収。自分の死角――斜め後方から突っ込んできていたエリオの突貫も回避し、そのまま大きく後退する。

 とんとんっ、とステップを踏みながら距離を開ける。終始余裕な表情を浮かべる暁は、自分の遥か前方で射撃手同士の戦いを繰り広げている相棒のことを、ほんの少しだけ考えていた。

 

(大丈夫かなぁラウラ。ほんの少しだけ心配だし、早く終わらせて、合流しちゃおっと)

 

 ごうっ、と魔力の風が吹き荒れる。吹き荒れた魔力は全て彼女の鎌に収束されていき、もともと大きかった鎌の刃がさらに巨大化していく。

 ぐぐっ、と力をためるようにして大きく振りかぶる。ゆっくりと瞳を閉じ、ただ眼前の敵を一刀両断するために、暁は集中力全てをこの一刀に注ぎ込む。

 

「大きいのがくるよ、エリオ!」

「了解です、スバルさん!」

 

防御の姿勢を固めるスバルとエリオ。その姿を見て、暁はにやりと口角を上げてさらに魔力を鎌へと収束させ――

 

「モード――死の舞踏(ダンスマカブル)

 

 

 

「シュートっ!!」

 

 天から降り注ぐ無数の橙の弾丸。雨霰のように降りかかるそれらの隙間を縫うように、少年――ラウラはステップを踏みながらティアナへと接近していた。

 ただ、彼女も簡単に接近を許すはずもなく――

 

「キャロ、お願い!!」

「はいっ。フリード!!」

 

 ティアナの射撃と組み合わせ、キャロのそばを飛んでいた飛龍――フリードが連続して火球を放つ。射撃の隙間を埋めるように放たれた火球。目の前からまるで壁のように迫るそれを見て、ラウラは思わず足を止めるが。

 

「初風、フルロード!」

-了解!-

 

 空になった弾倉を投げ捨て、新しい弾倉をはめ込むとそのままバックステップ。体を空中に浮かせたまま、トリガーを引く!。

 猛烈な勢いでバラ撒かれていく極小の魔力弾丸。橙の魔力弾と火球とぶつかり合い、火花を散らしながら一気に霧散していく。

 霧散した魔力の霧の中を、ラウラは一気に駆け抜けていく。

 たんたんっ、とステップしながらティアナの死角へ入ると、再びトリガーを短く三度弾く。

 放たれたのは三点バーストの三連撃。ダダダンッ、と九つの弾丸が、空間を薙ぐ剣のように斜めに放たれる。

 ティアナはそれをステップと体をひねることで回避して再び射撃の態勢に入る。

 

「クロスファイア――」

「錬鉄召喚――」

 

 ティアナは自分の周りに魔力球を四つ展開。自分が一番得意としていて、だからこそ一番自信があって一番威力があるこれを選択し、まっすぐにラウラへと狙いを定める。

 キャロは魔法陣を複数展開し、いつでもラウラを囲えるように錬鉄召喚の準備を進めていく。

 

「初風、行くぞ」

-もちろん。やるわよ!-

 

 彼女たちの目の前にいるラウラも、攻撃の準備を整えていた。

 目の前から飛んでくるのは高火力の射撃と周囲から取り囲むように来るであろう鎖の雨。だから、彼もまたトリガーに指をかけたまま、その銃口をまっすぐにティアナに向ける。

 そして――

 

「シュート!!」

「アルケミックチェーン!」

 

 一手先に、ティアナたちが自らの引き金を引いた。先んじて放たれた橙の弾丸が雨のように、召喚された魔力の鉄鎖が波打つように、それぞれ勢いよくラウラへと迫る。

 それをじっと見つめたまま、ラウラはトリガーへ指をかけなおし――叫んだ。

 

「艤装、着装。陽炎型駆逐艦――初風」

 

 

 

 数十分後、模擬戦は終了し、再びフィールドを直す作業になのはは入っていた。

もちろん、先ほどの模擬戦の映像をもう一度見返しながらだ。

 新人フォワードの戦いぶりも悪くはなかった。最終的に四対二の状態に直していたし、コンビネーションもなかなか良かった。しかし、それ以上というべきだったのだ。ラウラと暁のコンビネーションと、彼らのおそらく本当の戦闘形態が、フォワードの四人を圧倒していたのだ。

 

「この子達、なんで陸士止まりなの? 実力だけで言えば陸尉に上がっていてもいいくらいなのに……」

「そんなの、単純な話っすよ」

 

 なのはのつぶやきに割って入ってきたのは一番最初に模擬戦を終えたケイだった。服装は最初来ていたジャージではなく、なんと真紅の着物。正確には戦羽織を身にまとって着ていたのだ。

 その姿を見て、思わずなのはは「彼」のことを思い出してしまう。はやてと話して、どうしてもこの部隊に入れてあげたかったけど、どうにも連絡のつかなかった彼。何となく、彼の姿が「彼」と被って見えてしまっていた。

 首を振ってそれを振り払うと、ケイの言葉に耳をかす。

 

「単純な話って、どういうこと?」

「単純も単純っすよ。あいつら、昇進意欲がまるで無いですもん」

「昇進意欲が……あぁ、なるほど。でも、魔導師ランクは? あの子たち、書類上B+でしょ? あの実力があれば、Aランクは楽勝なんじゃ……?」

 

 無理っすよ、というようにケイは首を振る。

 

「実力があっても、たぶんAランク昇格試験はどうにもならないっす。今回の模擬戦、暁のほうが落ち着いていたからいいものの、あいつのギアが完全に入っちゃったら多分チーム一策略家なラウラでも苦労しますぜ」

 

 その言葉を聞いて、なのはは理解した。

 鈴谷暁も、ラウラ=ソニア。この二人は、おそらく実力的にも、本性的にもまだ底を見せていないということ。それを改めて理解したなのはは、彼らがもともと所属していた部隊のアンジュ=クロッサから聞いていた言葉を思い出した。

 

(暁ちゃんは暴れ馬、それを乗りこなす騎手がラウラ君、か。でも、そのラウラ君が手綱をひけなくなる時があるって……)

 

 要注意、なのかな。そんなことを思いながら、再びフィールドの再構築作業へと手を伸ばすのだった。




 感想、誤字指摘、、「ちょっと新キャラ考えたんだけど使ってみない?」的なご意見などなど、お待ちしております!
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