魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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そんなこんなでようやくStrikerS編九話。

そして、運命のホテルアグスタ編。

それでは、どうぞ!


StS09:強さを求めるわけ

――管理局本局 戦略技術研究部

 

「派遣任務、です?」

「しかも、明日?」

「うん、そーよー?」

 

 そんな風にあっけらかんに言うルルイナ。言われた二人――リーナ=クロイツェフとレン=ストレイナは、思わず目を丸くして聞き返す。

 ルルイナは全く表情を変えずに目の前のモニターに向かってキーボードをタイプし続け、リーナとレンは固まり続けていた。

 そして、ややあってからリーナが口を開く。

 

「派遣任務って、どこにですか?」

「派遣先は機動六課。任務内容は、オークション会場警備のサポート」

「オークション会場……っていうと、今度アグスタであるアレのことです?」

「レンちゃんせいかーいっ。どうやら、運び込まれたロストロギアの中に、チョイとヤバいものが二、三混ざりこんだみたいなの」

 

 だいぶ混ざりこんでますねとレンがため息交じりに言うと、ルルイナはそれは言わない約束でと苦笑しながら言う。ついで、モニターに移していたものをリーナとレンへ見せる。

 最初に映し出されたものは、最近本当によく見るようになった真っ赤な水晶。

 

「一つは、最近噂になっているレリック。これはあくまでも噂だから、あまり気にしなくていいかも」

「いや、これを一番気にしなくてはいけないんじゃ……?」

「まぁ、そうなんだけどね。でも、私たちとしては、こっちのほうを優先してほしいのよ」

 

 カツカツとキーをタイプし、また別のモノを映し出す。

 そこに映し出されたものは二点。それらを見た瞬間、リーナとレンはそれぞれ、画像だというのに身震いした。

 一つ目は、金色に輝く鞘。蒼の意匠を施されたその鞘は、鞘というよりも盾に近い。

 そしてもう一つは、小さなハンドガン。銀色の銃身と木彫の柄、そして、銃身の左右に刻まれた「侍刃」と「Samurai edge」の文様。

 それぞれを見て、レンとリーナは小さく、ただしはっきりとわかるように物品の名をつぶやく。

 

「騎士王盾――アヴァロン」

「鬼斬銃――サムライエッジ」

 

 

 

――数日後 輸送ヘリJF704式機内

 

「まさか、今回の警備任務にお前らがヘルプに来てくれるとは思わなかったよ」

 

 そんなことをのたまうのは、先ほどから疲れ切った表情を浮かべたままの聖。彼が浮かべる疲労の表情の原因は、今彼の目の前にいる二人の女性によるものだ。

 

「仕方ないでしょう? でも、私たちの希望というよりは所長からの命令、だということをお忘れなく」

「ですよ? 本当だったら、もう少し早く先輩に合流していたのですからね?」

 

 どこかやるせない表情を浮かべるショートカットの少女――リーナと、むすっとした表情を浮かべて聖に迫る淡い赤髪の少女――レンの二人。

 この二人が機動六課を訪ねてきたのはほんの昨日。

 はやてへのアポイントメントを使い、そこから今回の任務――ホテルアグスタで行われるオークションの警備任務へと参加することとなった。

 そんな二人を見て、ティアナは思わず隣に座って寝こけていた龍吉の肩を叩く。

 

「ねぇ、あの二人って……?」

「んが……? あぁ、クロイツェフとストレイナか?」

 

 ぐぐっと凝り固まった体を伸ばすようにして龍吉は体を起こすと、手元に持っていた自前のパソコンを操作し、いくつかの画像を出す。

 それらの一番上には、二人が同じ制服を身にまとい、聖とともに映っている写真があった。肩を組み、聖のみ若干ひきつった笑顔を浮かべながらも、隣の二人は満面の笑みを浮かべた、そんな写真が。

 

「リーナ=クロイツェフ。士官学校を首席で卒業したのに天性の面倒臭がりがたたって、聖と同じ窓際部署に配属になった生粋のスナイパー。渾名が『鷹の眼(イーグルアイ)』」

 

 かたかた、とキーパットを操作して、リーナの画像をトップに持ってくる。

 画像に映る彼女の姿は、身の丈ほどの超長距離狙撃銃(ロングレンジスナイパーライフル)。それを担ぎ、首にヘッドホンをかけた彼女は、どこか物憂げな表情を浮かべたままライフルを構える、彼女の姿。

 

「ンで、もう一人がレン=ストレイナ。聖と同時期に特戦研に加入したものの、その実力――防衛線に限定すれば聖以上の実力を誇る。ついた渾名が『絶対守護』」

 

 同じように、別の画像に映る少女の姿は、先のリーナよりもはるかに異様、異常だった。

 手に持つのは武器ではなく盾。それも、取り回しのきく小さなバックラーでもなく、槍兵が構えるような身をすっぽり覆う盾でもない。

 円形だが、ただただ巨大な十字盾。十字の先は鋭く研がれた刃のような十字盾。それを地に突き立て、遠くを見据える彼女の姿があった。

 

「『鷹の眼《イーグルアイ》』と『絶対守護』、か……」

 

 二人の異名をつぶやきながら、ティアナは今しがた聖と仲良さげに話している二人へと視線をやった。

 

 

 

 この部隊はちょっと異常だと、そう改めて認識したのは、私が機動六課に配属されてから一か月が経った時のことだった。

 『魔導師』としての能力制限――リミッターをかけてまで保有する戦力。『エースオブエース』『雷神』『夜天の王とその騎士』。

 ほかの隊員も、前線組の二番隊や後方の管制官まで、そのほとんどが将来を有望視されているエリートぞろい。

 あの年齢で陸戦Bを保有しているエリオと、竜召喚というレア技を持つキャロは『雷神』の秘蔵っ子。潜在能力と可能性の塊のスバル。

 それに、後から合流してきた『蒼光』と『陽気な死神』、『不抜の剣士』は、今最有力視されているエース。珍しく寝坊せず参加している『幽霊局員』でさえ、戦線に立ってしまえば後方からの超高範囲射撃で見方をバックアップできる。

 『探偵社』の四人も、『魔導師』ではないもののそれぞれが異なり、そして完全に特化した能力を持っている。

 そして、つい最近加入してきたあの『サムライ』も、剣技だけなら『烈火の将』をも勝る。

 やっぱり、この部隊で平凡なのは――

 

「私だけ、か――」

 

 そんな風に思わずつぶやいて、私――ティアナ=ランスターはふっと空を見上げる。

 いつ飛び出せるようにとアップは十分にした。あの能天気な『探偵』曰く「警備中だけどのんびりしててもいい」という、よく分からないことをのたまうから、私も今はこのホテルアグスタの上に立ち、パッと見れば休憩しているかのような状態。

 空はきれいな青空だっていうのに、この何とも言えない虚無感は――

 

「やっぱり、私が弱いから……?」

「どうしました、ランスターさん?」

 

 ふと、声をかけてくるのはちんまい少女。

 確か、今日『鷹の眼』と一緒に来ていた――

 

「えと、レン=ストレイナさんでしたっけ?」

「うんっ。よく覚えててくれましたっ」

 

 ほんの少しだけ、私の表情を伺うようにのぞき込む。

 私は、なるべく悟らせないようにほんの少しだけ笑顔を浮かべてみる。

 

「何か、考え込んでいるって感じだね?」

「別に……」

 

 思わず私は視線を逸らす。隣にいる彼女――レンさんももまた視線を空へと向ける。そして、ふと、小さくつぶやいた。

 

「悩みを言い当てて見せよっか。自分が強くなっていないのではないか、という焦りといら立ち、そして強すぎる、優秀な動機への嫉妬」

「なっ――」

「ってところかな?」

 

 当てられてしまった。

 ただそれだけが、私の頭の中を渦巻いていた。

 なんで当てられた?

 もしかして、心を読まれた?

 そんな疑念を胸に、私は思わず彼女を警戒するようなしぐさを見せてしまう――今は、仲間だというのに。

 そんな表情の私を見て、レンさんは驚いた表情をしてから、すぐに申し訳なさそうな表情へと切り替わる。

 

「あ、とと。ごめんね? 本当は、当てるつもりなんかなかったの。ただ、当ててしまった、とだけ思ってて?」

 

 そんなことを言って彼女はすぐに、ううむと考え込むようなしぐさを浮かべる。

 どうしたのだろう? 本来、その表情をすべきは、私のはずなのに―……

 

「私ね、もともと教師志望だったの。今のなのはちゃんと同じような立場ね? そういうのもあって私、人の表情とその人の立から、心理を読み取るの、得意になっているのよ」

 

 結局、夢は夢のまま、はかなく散っていったけどね。そんなことを言いながら、彼女は懐から缶ジュースを一つ取り出し、プルタブを開ける。プシュッ、という音を立てて、そのままぐいっと中身をあおった。

 

「任務中ですけど、そんな悠長にしてていいんですか?」

「んー……まぁ、なんとかなるんじゃない? あなたも含めて、強い子、たくさんいるし」

 

 そんなことを言いながら、ぐいぐいと飲み切ってしまうレンさん。

 その言葉を聞いて、私は思わず聞き返しそうになった。

 今、彼女は何と言ったか。

 あなたも含めて、強い子がたくさんいる、といったか?

 いつしかその缶は空っぽになったようで、最後の一滴まで飲み切ってしまうとそれを下において踏みつぶす。

 

「んで、ティアナちゃんの悩みを総括すると……部隊の中で自分が一番凡人だから、もっと努力して強くならないと……って感じかな?」

「……凄いですね、レンさん。ほとんど正解ですよ」

 

 思わず苦笑してしまう。まさか、こんな簡単に悩みを当てられてしまうなんて、思わなかった。

 はぁ、と思わずため息をつきながら私は観念したような表情を思わず浮かべる。

 

「私の、いや。私の兄の魔法は、役立たずじゃない。それを証明したいんです。私は、もっと強くならなくちゃいけないんです――」

「それじゃ、ティアナちゃんが強くなったら、その先はどうする?」

「その、先――?」

 

 私が怪訝な表情で彼女を見ると、レンさんはふふっ、と笑いながら続ける。

 

「あなたが、あなたの理想とする強さを手に入れたとしましょう。その先、あなたは、その手に入れた強さで、何をしたい? 兄の――ティーダ=ランスターの力が無力ではなかったという証明のほかに、あなたが手に入れた強さで、あなたは何をしたい?」

 

 大きくないけど、確かに凛としていて、どこまでも通るような声で、レンさんは言う。

 兄が無力じゃない、ということを証明して、その先は――

 

「私は、何をしたいんだろう……」

 

 思わず出てしまった言葉にはっとする。そして、レンさんのほうへと向き直ると、にこにこと笑顔を浮かべる。

 

「自分が強くなって、本当にしたいことが何かなんて、そんな直ぐに分かったもんじゃないよ。でもね、唯一言えることがあるよ」

「唯一、言えること?」

 

 私の問いかけに、レンさんは再び空を見上げる。そして、自分の手を太陽にかざした。

 透き通るような白い肌。薄紫のショートヘアーが風に揺れ、わずかに隠れた双眸が私を捉えた。

 

「自分が求める強さに、自分が求める答え以外の何でもいい理由を一つ二つ、加えてみる。それだけで――」

 

 ほんの少し、強さってものに対しての見方が変わったりするかもよ?

 そんな風に言ったレンさんの表情は、どこか晴れやかで、どこか曇っていた。

 その言葉を聞いて、考え込みながらもうなずいた瞬間――

 

『敵襲! 第一種警戒態勢!』

 

 唐突なアナウンスが、私のイヤホンに響いた。




~次回予告~

 ついに始まった、ホテルアグスタ防衛戦。

 レンの言葉を頭に残したまま、ティアナは戦線中央で指揮を執り、戦場を動かしていく。

 しかし、この戦いの緊張感の中、ミスしてはいけないという自己暗示は逆効果になってしまい――

次回、魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~

StrikerS編10話~防衛戦~

「無理無茶無帽は大いに結構!」
「後ろには私たちが控えてる。だから、思い切りやんなさんな!」



~~~~~~~~~~~~

次回も、お楽しみに!
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