魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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どうにもこうにも難産でしたわ……

こういう日常的な描写はやっぱり苦手です、Yuinoです。

今回は、異様なまでにつたないですが、よろしくお願いしますー!

(2017/12/26 第一次加筆修正)


03:出会い

――一週間後。

 

 大きく欠伸をしながら、聖は終業のチャイムを聞き逃して一人取り残された教室でぼうっとしていた。

 つい先ほど自販機で購入した、激甘な某缶コーヒーは空になり昼食の時に食いっぱぐれたあんパンも既に彼の胃袋の中だ。

 

(完全に、やることがなくなったな)

 

 そんな風に頭の中で呟き、手元の時計を見る。時刻は間もなく四時半を回ろうとしていた。これ以上、教室にいる必要も無い。

 聖は席から立つと、大きく伸びをしていつもの通学鞄を手に。そして――

 

「帰るか」

 

 いつも通り一言。ぴょんと椅子から跳ね跳ぶようにして降りると、のんびりとした歩調で帰宅する。帰る方向は、決まって校門を出て右曲がり。家に真っ直ぐ帰宅するのではなく、一度近くの商店街で一週間分の食料を購入して行く予定だった。

 数十分歩いて、商店街の中を巡りながら買い物袋の中に食料を叩き込んでいく。野菜に果物、魚介類などを買い込んで大きく伸びをすると――

 

「む、そこにいるのは聖君ではないか」

 

 不意に声をかけられる。その声に反応して振り向くと、そこには聖の見知った顔があった。

 金髪の神父風の服装をした男性。右手にラテン十字の刺繍が刻まれたトートバッグ。中一杯に詰め込まれたリンゴを一つ取ってしゃくりと囓りながら、彼は右手を挙げて聖に挨拶する。

 

「ん、ミハエルさん」

 

 ミハエルと呼ばれた男性は、「こんなところで合うなんて奇遇だなぁ」とか言いつつ、再び手元のリンゴを囓る。

 

「相変わらずの風貌っすねアンタは……」

 

 ミハエル=ホーソーン。海鳴市の郊外にある教会の神父であり、聖祥大付属高校の非常勤講師(担当は英語及び世界史)。凛とした表情で、何処か飄々とした性格の彼は、学校でも教会でも人気の高いイケメン神父、として海鳴の街に通っている。

 しかし、その実体は――

 

「んで、今日は教会のお仕事ですか? それとも、聖祥高校の授業? もしかして――」

「その“もしかして”だ。相変わらず、ミス・小春は人使いが荒い」

 

 ふふっ、と微笑みながら彼は言う。

 彼の言うミス・小春。本名織村(おりむら)小春(こはる)は聖の悪友である龍吉の実姉であり、海鳴市に唯一存在する探偵事務所“花吹雪”の所長である。

 彼女が所長を務め、ミハエルも所属している探偵社は、その名の通り行う仕事は探偵のそれだ。迷子の犬猫探しから夫婦の素行調査、と言う名の浮気調査、もちろん、ドラマのような警察沙汰への介入等々、その他様々な仕事を請け負っている。

 

「昨日から働きづめでね。昼は講師、夕方から探偵社でイッツァバイオレンスとくれば、肩も腰も凝るさ」

 

 しかし、この探偵社は、普通の探偵事務所と異なる一面を秘めていた。それが、この探偵社“花吹雪”が、この探偵業界で在る意味一目置かれている理由になる。

 

「今回の、そんなにキツいンすか?」

「うむ。久々に警察からの直々の依頼でな。港の暴力団、というよりも――ポートマフィア、が正しいな。それの一斉摘発の協力、だそうだ」

「うっへぇ、そいつは大変そうで」

 

 そう、所謂“武闘派探偵事務所”。汚れ仕事、もとい、警察でも手を焼く力を持ってしまった暴力団やマフィアなどを、同じ武力を持って制する、そういう探偵事務所でもあるのだ。

 つまり、ミハエルはその“花吹雪”に所属する構成員の一人であり、特に武闘派と言われる人物の一人でもある。

 そして、他の探偵事務所とは異なり部分がもう一つあるのだが、それはまた別のお話。

 

 閑話休題。

 

「それで、今は明らかに買い出しですよね」

「あぁ。見れば判ると思うが、私の好物の買い占めをしてきた」

 

 ばっと意気揚々としてトートバッグの中を開いてみせる。その中には、真っ赤なリンゴ、芳醇な香りを漂わせるリンゴ、リンゴ、リンゴ、リンゴ……

 とにもかくにも、リンゴだらけである。

 この神父、食事を終え、二言目には必ず「リンゴをよこせ」というほど、リンゴが大好きなのである。聖書の中にある「知恵の実」はリンゴであるからしてーとか何とか、教会ではよく言う癖に、自分自身の大好物はリンゴ。全く、どうにかしている

 しかも、今彼は「買い占めてきた」といった。聖は、頭の中にリンゴばかり詰まってるんじゃないか、と思いながら、聖はため息混じりに彼を見る。

 

「んで、仕事途中にもかかわらずリンゴを大量購入してそのまま異常なし~、って帰ろうとした、と」

「まさか。そんなこと、四割くらいしか思っていないさ」

「四割思ってたんすか」

 

 軽く呆れながら、聖は「それでは、任務に戻るので」といってその場からそそくさといなくなるミハエルを見送りながら、そのまま帰宅しようとくるっと回れ右をする。

 すると――

 

「やぁぁっと見つけたわ」

 

 目の前にいたのは、金髪の女性。腰に手を当て、自信に満ちあふれた表情で聖の事を睨む彼女の顔に、聖は見覚えがあった。

 一週間前に起きた誘拐事件。その際、被害者となった女性の一人だ。その後それはニュースとなり、名前もばっちり公表されていた。確か、その彼女の名前は――

 

「確か……アリサ=バニングスだったか?」

「えぇ、そうよ。流石に、名前は分かってるみたいね」

 

 ニュースを見たからな、と聖は続けると、そんなことは気にしていないように、彼女は「まぁ、そこはどうでも良いのだけれど」と言葉を挟み、くいっと自分の親指を後ろに向ける。

 そこに用意されていたのは、黒塗りの大きな車。それを聖がリムジンであると理解するのに、数秒を要するほど、あまりにも立派すぎるリムジンだった。

 

(凄い嫌な予感がする。今すぐ逃げ――)

 

 聖が今すぐここから逃げようと自分の身体を180度回転させようとすると、彼女――アリサが呆れた表情で彼を見て、すっと彼の後ろを取って背中に手を当てる。

 聖はこの瞬間、こいつ何時の間に気配を!? とツッコミを入れそうになったが、今回は何とかこらえて驚愕した表情だけに抑える。

 

「早く乗りなさい。こっちだって忙しいのよ」

「ちょっと待て、背中を押すな。ちゃんと乗って、話を聞いてやるから」

 

 ぐいぐいと押される背中の感覚に耐えかねて、聖はおとなしく立派すぎるリムジンに乗り込む。聖がリムジンに乗り込むと、彼に対面するような形でアリサが乗り込む。そして、一言運転手に「出して」というと、運転手は無言で首肯し、リムジンが走り出した。

 無言の空間。若干いたたまれなくなった聖は、ふぅと一息ついてから「んで、用件は何だ?」と切り出す。

 するとアリサは一つ大きく息を吸い込んで、じっと聖のことを見る。そして一言、「ありがとう」とハッキリ口にした。

 

「……何のことだ?」

「一週間前のこと、覚えてないの?」

 

 ジトっとした瞳でアリサは聖のことを見つめる。聖は彼女の言葉に対し、「別に、俺がやりたかったからやってるだけだ。礼なんて言われる事じゃない」とぶっきらぼうに言い放つ。彼の言葉に「素直じゃないわねぇ」と言い、軽く身なりをただすと真っ直ぐに見つめる。

 

「改めてお礼を言うわ。一週間前、私と友人を助けてくれて、ありがとう」

 

 彼女は凛とした声でそう言うと一礼する。聖も、同じように身なりをただすと同じように真っ正面から見据える。

 

「天剣佐々木帝流十三代目当主、佐々木聖。その礼、有難くお受けいたしましょう」

 

 聖がそういうと、リムジンがゆっくりとした動きで停車し、扉が開く。アリサが先に降り、それにつられるようにして聖も降車する。

 うわぁ、と聖は思わず声を上げた。目の前に広がる豪邸。洋風の形のそれは、一瞬だけそこが日本ではないのではと錯覚させる。唯一、若干似合っていない日本風の表札には『バニングス』ときっりち刻まれていた。

 

「さぁ、入って。二人も待ってるわ」

「は……?」

 

 ほかの二人、とは誰の事だろう。そんなことを考えながら、聖は彼女の後ろをついていく。

 豪勢な玄関を抜け、ずんずんと進んでいくアリサの背中を追いかけながら聖たちがたどり着いたのは、大きな客間、と言ったようなスペース。そこには、聖の見覚えのあった人物が二人――金髪の美少女と紫がかった黒髪の美少女が、話に花を咲かせていた。

「フェイト、すずか。待たせたわね」

「ううん、大丈夫だよアリサちゃん。それで、その人が……?」

「はじめまして、でもないですね。佐々木聖です。以後、お見知りおきを」

 

 そう彼が名乗ると、座っていた二人――フェイト=テスタロッサ=ハラオウンと月村すすずかが順々に挨拶をする。

 その挨拶の後、まるで決められているように「助けてくれてありがとう」と言ってきた。それに対し、聖は何で毎度毎度、と思いながらも少し表情を歪めながら返礼の意を表情で示す。

 そう。聖自身、あまり人と、しかもほぼ初対面の女性と話すことを極端に嫌う傾向にある。所謂、ちょっとした人見知りと言う奴である。

 その後、フェイトと共にバニングス邸を出発した聖。今の今まで口を閉ざしていた聖が、このタイミングで口を開いた。

 

「あのときは、見かけたからたまたま助けただけだ。それに、あそこで割って入ってなかったら、たぶん長引いただろうからな」

 

 そんなことを言いながら、彼はゆっくりと空を見上げる。そんな彼を見て、名乗ってからまだ一度も口を挟んでいなかったフェイトが、ゆっくり口を開いた。

 

「質問なんだけど、良いかな?」

「ん……?」

 

 彼女の言葉に首肯。工程の意を見せ、彼女を見る。フェイトは歩きながら、ゆっくりとした動きで空中モニタを展開し、それを聖の方へ向ける。聖は、それを見てふぅと一息つく。

 そのモニタには、一週間前の聖の戦う姿が映し出されていた。

 いつの間に撮られたのだろう。そんな疑問をそこそこに、聖はそれを視界の端でとらえながら口を開く。

 

「これが何か?」

 

 聖は本当に何も知らないと言う表情で言い返す。それに対し、フェイトは言い返すようにして彼に身体ごと詰め寄る。

 

「えっと、正確には……」

 

 すっ、と指さした先にあるのは、聖がちょうど魔法陣を展開した場面。その魔法陣の形は、おそらく彼女は知らないであろう形状。藍色の六芒星。その魔法陣の形式も、僅かに放たれる魔法式も、彼女自身、見たことのないモノだった。

 

「えっとね、あなたの魔法陣は、私の記憶上、管理局のデータベースに載ってないの」

 

 一体、貴方は何者? 彼女の問いかけに対し、聖は顔を俯けてから少しの逡巡。そして、ゆっくりと顔を上げてから「そうだなぁ」と呟いてから空を見上げてから彼女を見る。

 

「一応、俺の魔法陣……俺は戦方陣って言ってるんだけど。あれは、俺、いや、家の家系のオリジナルだ」

「お、オリジナル!?」

 

 フェイトの驚いた表情を前に、聖は「そうだよなぁ」と苦笑気味に頬をかく。彼は鞄の中に入れていたマックスコーヒーの缶を彼女に手渡すと無言で近くにあったベンチを指さす。それを見たフェイトは、とりあえず座って話さないか、と言う提案と受け取り、首肯してベンチへ向かう。

 聖はベンチに座ると、端までのそのそと移動して反対側にフェイトが座れるようにスペースを空け、鞄に入っていたブラックコーヒーの缶を開けて一気に飲み干す。

 

「実質、俺の戦方陣……魔法陣であるカスミ式魔法は門外不出。誰彼と教えられるようなモノではないが――」

「そう。ならいいの」

 

 飲み終わった空き缶をゴミ箱の中に放り込むと、フェイトは立ち上がってくるりと回りながら聖の方に向き直る。聖もそれに少し遅れて立ち上がると、空き缶を上に投げてから指弾の要領でゴミ箱へ撃ち込む。空き缶は、カラン、と言う音を立ててゴミ箱の中に入っていく。

 

「へぇ、面白いねキミ」

「面白がられんのは、個人的には好かん」

 

 ふん、と明後日の方を向きながら聖は大きく伸びをする。その後ろ姿を実ながら、フェイトは彼に声をかけた。

 

「あのさ、佐々木君が良ければ、なんだけれど……」

 

 

 

同日、夜

 

――管理局に、入局しない?

 

 何で、私はあんな事を言ったのだろうか。フェイトはベッドに寝転がって天井を見上げながらそう思った。

 私は、先日受け取った映像を見直しながらベッドから起きあがり、もう一度彼のことをレポートに纏め直すためにデスクへ向かう。

 

(名前、佐々木聖。固有の魔法術式“カスミ式”を使用。手持ちの武装は、刀、だよね。他の特記事項は……特になし、で大丈夫かな)

 

 レポートを保存して、印刷。私の好みで、毎回こういう重要書類は紙媒体とデータ媒体、二種類で用意している。まぁ、私の趣味だから、毎回提出するのはデータの方なんだけれど。

 

「それにしても、面白い子だったなぁ。なのはじゃないけれど、きちんと育てれば、もっと伸びていきそうな、そんな気がする」

 

 そんなことを思いながら、私はもう一度映像に目を向ける。

 

 つい最近、日本に戻ってきた私の目的は、違法な人身売買を生業としているAA級の違法魔導師の逮捕。その人物が、最近地球に降り立ったと聞いたのが三週間前。相手が相手だから、少し無理を言ってなのは達と一緒にすずかのところに設置させて貰った転送ポートに降り立ったのが一週間と一日前。

 そして一週間前、お昼になのはの実家で休憩している時。アリサの家の執事さんから急な電話が入った。

 

――お嬢様方が誘拐された、と。

 

 その時、私の直感でその誘拐犯が恐らく違法魔導師だろうと予測。私となのは、はやての三人は上手く海鳴市を三分割して捜索を開始。その時、海沿いの倉庫から魔力反応を感知した私は、上空から倉庫に突入。その時に、私はであった。

 

 青い光を纏う、一人の少年に。

 

 私は少年に助けられて、違法魔導師も逮捕出来た。実際、結果的にオーライだったけれど。

 そんなことがあり、今日。アリサの計らいで改めて彼と再会出来た私は、思わず唐突に管理局に誘ってしまった。

 

「何やってんだろう、本当に」

 

 そんなことを思いながら、私は瞳を閉じる。ゆっくりと来る眠気に、私は翌日何をしようかと考えながら、私は眠りについた。

 




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