魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~ 作:Yuino
(どうにかこうにかのやっつけ仕事ですが
どーぞどーぞー
滑空するエネルギー弾を、ティアナはクロスミラージュとの
しかし、それらを打ち落としてもすぐに次の弾が間髪入れずに飛んでくる。
だが、ティアナは焦りの表情を浮かべずにそのまま次の狙いを定め、再びトリガーを引く。
目にもとまらぬ三連射。放たれた三発は、空中で分散し九つの魔力弾へと変化し、そのままかっ飛んでいく。無論、その全てはガジェットへ命中。撃破こそいかなかったものの、確実にそれらの足を止めた。
「スバル!」
「了解――!!」
瞬間、スバルが空中に展開したウイングロードでガジェットに接近し、正面からのストライクアーツで粉砕していく。
「アルケミックチェーン!」
「キャロ、ナイス!」
キャロの展開したアルケミックチェーンでガジェットの移動経路を阻害し、その隙間を縫うようにエリオが突貫。ガジェットを確実に仕留めていく。
「暁、前は任せる」
「はいな!!」
パパパッ、とラウラの高速射撃でガジェットを牽制し暁が一気に距離を詰めて一閃し、真っ二つにする。
「そぉれ!」
「ほんと、今日の所長張り切ってんなぁ!」
龍吉の影の尾が地を這いガジェットを吹き飛ばせば、それにように陽が拳の焔で吹き飛んだガジェットを焼き払う。
それぞれのフォワードメンバーの得意なことで、それらを組み合わせて今までで総数25のガジェットを撃墜してきた。
八人とも、肩で息をしつつあるもののまだまだ集中力も体力も有り余っている。
つまり――
(敵は多いけど、まだやれる――!!)
ティアナは次の標的に向けて銃口を向け、再びトリガーを三度引く。ガンガンガンッ、と轟音が鳴ってガジェットの足が止まり、その瞬間にスバルが鉄拳を叩き込んで粉砕していく。
完璧なコンビネーション。今日の今日まで必死にやってきたコンビネーションが、花開こうとしている。まさに、そんな動きだった。
『後方からガジェット増援! 数は五十オーバー!』
「なっ。まぁいいわ。全部、落としてみせる!」
今の報告に若干だが焦りの表情を浮かべるティアナ。
しかし、すぐに気持ちを切り替えるとクロスミラージュのカートリッジを切り替え、真っ先に戦闘のガジェットに対し三連射。
だが、ほんのわずかな焦りを含んだ魔力弾はガジェットに届かず、その足元へと着弾する。
外した、という一瞬出来た焦り。重なった焦りは更なる混乱を呼び、ティアナの頭の中を徐々にパニックが埋め尽くしていく。
(やばい、外した。抜かれ――)
一瞬生まれてしまった空白。その瞬間、ガジェットが怒涛の勢いでなだれ込んでくる。一機抜けたと思えば二機抜け、四機抜けて八機抜ける。そんな勢いで、あっという間に二十機以上のガジェットがティアナたちの防衛網を突き抜けていく。
「くっ、しまった……!」
ティアナはすぐさま反転すると思い切り駆け出す。彼女の引き留めようとするラウラの声にも「指揮は少し任せる!」とだけ言って駆け出す。
ガジェットとの距離は三十メートルほど。その距離を見て、彼女は無意識のうちにクロスミラージュを構えて四発ロード。
端末から聞こえる、ルキノの静止の声も「やれます、私とクロスミラージュなら!」という強気の声で無視し、そのまま魔力を溜めていく。
「クロスファイ――」
「ティアナ、横――!!」
スバルの声に反応して、ちらりと横に眼をやる。
すでにそこにはガジェット三型がアームを伸ばしていて、すでに目と鼻の先に迫っていた。
「――くッ」
チャージした片方のクロスミラージュを強引に動かし、ガジェットのほうへ向ける。
(狙いは二点。四発ロードのマルチアタック、だけど――やってやる!)
トリガーに指をかけ、頭の中に標的の場所を脳内に再現する。
そして――
「クロスファイア――シュート!!」
トリガーを引き絞り、魔力を解放する!
一方はアグスタへと向かうガジェットへ、もう一方は彼女自身へと向かってくるガジェットを薙ぐように。それぞれ放たれる。
ガガガッ、とガジェットを押し戻すようにたたきつけられる徹甲魔力弾。しかし、そのうちの数発、しかもアグスタへ向かったほうのガジェットへ放ったものが外れて行ってしまう。
外れていった魔力弾は林の方と地面にむなしく跳んでいき、消滅する。
ミスった。ただその事実だけが、彼女を一瞬にして取り囲んだ。
「しまっ――ッ!?」
ガジェットを追いかけようとして一歩踏み出すも、四発ロードの負荷が彼女の想像以上のモノだったようだった。
体が思うように動かない。
魔力の大量消費で、膝が折れる。体のいたるところが、まるでさびた金属のようにきしむ。
それでも、止まるわけにはいかない。
何とか一歩踏み出し、クロスミラージュの銃口を真っすぐガジェットへと向け――
「――え?」
突如、ガジェットの上空から白銀に輝く巨大な盾が落下し、ガジェットの行く手を遮ると、頭上から無数の剣が降り注ぎ、ガジェットを串刺しにしていく。
ふ、とティアナは上空を見上げる。
視線の先に映るのは、その手に身の丈以上の十字盾を背負ったレンと、黒の軍服に長大な狙撃銃を構えたリーナ、そして両手に光の剣を握り、さらに左右に二本ずつ同じ剣を浮遊させた聖が、じっとティアナのほうを見ていた。
「ティアナ、だいぶ気張ってたみてぇだな」
「――っ。だって……!」
「気張る理由もわかるよ、ティアちゃん。でもね――あなたは、一人じゃない。周りを見てみなさいな?」
そんな風にレンは問いかける。
それにつられるように、彼女はふと周りを見渡す。
周りには、すでに「いつでも動ける」と言わんばかりのスバルたち。
「ティア、いつでも私は大丈夫。いけるよ!」
「ランスター。指示をくれ。基本的に
ぐっとスバルが拳を握り、彼女の後ろにいるラウラが初風を構えて言う。彼の後ろで暁が「まっ、バカって何よバカってー!?」とわめいているが、いつものことだといわんばかりに無視を決め込む。
「一人のミスはその作戦に参加している全員がその場でカバー。反省はそのあとだ。ミスらない奴なんかいない。出来ることを――」
「各員――」
聖の声と、ティアナの声が僅かにかぶる。
先ほどまで、落ちに落ち切っていたティアナの表情は、今は明らかに異なっていた。
そう、どこか――
「――全力でやってこい。フォローは最大限、こっちがやってやる!」
「――散開! フォーメーションはB2、トップ、センター、バックはさっきと同じで行きます!」
『おう!』
自身に満ち溢れた、そんな表情で!
――少し離れた森林地帯
ガジェットをなぎ倒していくフォワード達の姿を見て、ほうと感嘆の声を漏らす女性がいた。
長い黒髪に、ボディラインがよくわかるぴちっとしたスーツ。
都市の中心部で見かければ、美しさと仕事の出来を兼ね備えた、美人ОLにも見えるだろう。
しかし、そのイメージを一瞬で掻き消す要素を、彼女は持ち合わせていた。
スーツの要所にある、明らかに戦闘向けな装甲。そして、真っ赤な槍だった。穂先の根本にはぼろきれのような布がまかれており、その布切れもまた、その槍そのものと同じように、血で染められているかのように、真紅に染められていた。
「なるほど。個人でも十分に強いけど、チーム全体だとSSランク魔導師とも相対できそうね」
そんな風にモニターを見て、思わず感嘆の声を上げる彼女。
その彼女を横目に、岩に寄りかかりながら青年が一人、彼女へ声をかける。
「ほう。んで、あんたならどうなんだラスタ?」
青年――市川剛はそんな風に、自分の隣にいる女性――ラスタへと声をかける。彼女――ラスタと呼ばれた女性は、ふうむとほんの数秒、考え込むように視線を沈めると、ややあってから自身に満ち溢れた表情を浮かべた。
「まぁ、私一人でも十分だろうけど……」
そんなことを言いながら、彼女はちらりと剛のほうへ顔を向ける。どことなくうずうずしている剛を見て、彼女はふふっと笑みを浮かべた。
「暴れたいのでしょう? いいんじゃないかしら」
まるで彼の真意を見抜いたかのように、妖艶な笑みを浮かべるラスタ。
彼女の言葉を受けて、たまっていた空気をすべて吐き出すようにかはっ、と短く笑い、そして腰に下げた一対の
「解ってるじゃねぇか、姐さん!!」
鋭い声を上げてゆっくり眼を閉じると、彼は目をカッと見開く。
開かれた瞳は、まるで猛禽類が獲物へと狙いを定めるかの如く鋭く、そして紅々と燃え上がっていた。
「さぁ、往こうや!」
「全く、血の気が多くてよくないわね。まぁ、嫌いじゃあないけれど」
そんな風に言いながら、剛は腰を落とし、ラスタは手に持った槍を担ぐ。
「市川剛、アレス=グランデ! 往くぜぇぇ!!」
「ラスタ=スカーサ、ガエヴォルガ。往くわよ」
そして、二人の影が森の向こう側。つまり、アグスタのほうへと飛んで行った。
「こいつで――」
フォワードメンバーの現場から少し離れた所。
そこに、彼女たちと同じようにガジェットと相対している二つの影――シグナムとケイの姿があった。
「最後!」
たがいに剣を振るい、ガジェット三型を十字に切り刻む。四分割され、爆発四散するガジェットを見やり、シグナムとケイは一度それぞれの得物を下す。そして、一息つきつつも周囲を見渡す。
「ひとまず、このあたりのガジェットは掃討したな」
「恐らく。それよりも――」
ちらり、と聖たちのいるホテルの方をシグナムは見る。先ほどは言った通信――ガジェットの増援の出現。それを聞いて、シグナムはともかく、ケイは気が気でなかった。
何せホテル防衛の主軸はスターズとライトニングの新人フォワード四人と、龍吉と陽、ラウラと暁の八人。幾ら聖と彼の所属元からの助っ人が二人いるとはいえ、ガジェットの増援を聞けば黙ってはいられない。
シグナムも驚くほどの勢いでガジェットを殲滅し、つい先ほど、最後の一体も斬り伏せた。
「あぁ、聖たちの方も心配だ。今から向こうに合流――」
「――っ、シグナムさん!」
シグナムがふと意識を逸らした瞬間、ケイは表情を急変させる。
愛刀を構え、思わずシグナムをドン、と突き飛ばす。
-刺ッ-
瞬間、彼女がいた所に突き刺さる一本の刀。鍔のない打ち刀。三尺ほどのそれが、先ほどまでシグナムのいた場所に、深々と突き刺さっていた。
「ミカヅキ!」
「っ。これくらい、どうってことないですよ」
シグナムが思わず叫ぶ。彼女を突き飛ばしたケイの右腕につうっ、と伝う血。先ほど突き飛ばした際、降ってきた刀がケイの腕をわずかにとらえていた。
斬られたところをケイは指でなぞり、魔法で止血する。けがを治したわけではない。傷口を無理やり縫合して血を止めただけだ。一撃でも食らってしまえば、再び出血は免れない。
「くそ、このタイミングで新手ですか」
「そのようだな」
ケイはげんなりと、シグナムはどこか覚悟を決めたような表情で上を見上げる。
そこには、えんじ色のスーツを身にまとった男性がいた。
右手には杖、そして左手には先ほど地面に突き刺さった刀と全く同じものが握られている。
彼と目の合ったケイは、思わず一歩下がって朧の柄に手を添える。
得体のしれない何か。
しかし、ケイは理解している。
久しく感じていなかった、この感覚。
そう、それはまさに殺気。
威圧感でも、存在感でもなく、確実に殺すという、殺意の塊。
「シグナムさんはフォワードのみんなのほうへ。ここは――!」
鞘に収まったままの朧を逆手に構え、ケイは真っすぐその男性をにらむ。
シグナムは、ケイの言葉に一つ頷くとそのまま思い切り後方へ飛び、フォワードたちのいるアグスタへ向かう。
その彼女を見送ってから、ケイは右手に握っていた朧を左手に握りなおし、その場で構えなおす。
ゆっくりとした所作で降りてきた男性もまた、ふわりと微笑みながらも右手に握った杖をこつりと地面につけ、会釈した。
「初めまして少年。私はタクト=イツカ。訳あって人を探している。話を、聞かせてくれるかな?」
タクトと名乗った男性は、左手に握っていた魔力刀を消滅させると表情を変えずにそんなことを言う。
それに対してケイは、まったく警戒心を解かずに朧を握ったまま動かない。。
「普通、そういうことなら刀ぶん投げたりしませんよね? まぁ、名乗ってくださったからには名乗り返しますが……自分はケイ=ミカヅキ。管理局――今は機動六課所属。もとは本局航空第601に所属していました。人捜し、ということなら、こちらもある程度協力できるかと」
「なら、お聞きします――」
瞬間、タクトの姿がケイの前から消える。そして、次の瞬間――
「シ――ッ!!」
「なぁっ!?」
居合の構えのまま真正面に対峙。まさに「目にも留まらぬ速さ」で接近し、杖から直刀を引き抜き、ケイの首ギリギリの場所に添える。
とんっ、という音が聞こえるかのような緩やかな所作。ただし、それには丁寧さ以上に殺気のほうが含まれており、その笑顔ですら恐ろしい。
「管理局、最高評議会の三名の居場所を、教えていただきたく」
「はぁ? そんなの――」
くん、と右足を浅く沈み込ませ、ほんの少しだけ右腕を動かす。
瞬間、吹き荒れる蒼白色の魔力風。それを感じ取ったタクトは、一歩分だけ体を引く。
瞬間――
「知らないし、知ってたとしても教えられないな!」
ケイの手元から、無数の斬撃が解き放たれる!
タクトはそれを身を逸らすことで回避し、自らの刀で遮ることで防ぎ、弾き飛ばしていく。
しかし、その中の一発が防御を抜き去り、タクトの頬をかすめていった。
(痛みを感じぬ斬撃。これは、空圧による風の斬撃)
頬の血をぬぐい、直刀を逆手に構えてタクトは距離をとる。
対するケイは、鞘に収まったままの刀の柄に手を添え、再び居合の構えをとる。
「ミカヅキ流迎撃居合術、
ケイは腰を低く落とす。そして、左足に意識を集中させ、すり足で一歩、前に出る。
「悪いけど、正当防衛ってことでこっちも対応させてもらうよ」
「ならば私も、実力行使で対応させていただきましょう」
斬撃の射程範囲外に逃れていたタクトも、改めて直刀を握りなおし、くるりと手の中で回して構えなおす。
そして――
「ミカヅキ流剣術皆伝、ブレイズ01、ケイ=ミカヅキ。往くよ」
「流派無し、無所属。タクト=イツカ。来ませい!!」
二つの刀が、人知れずぶつかり合う。
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