魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~ 作:Yuino
仕事が忙しかったりして、ほとんど書く暇がなかったんです……
別の場所で作詞のお仕事(的な何か)とか、一時創作とかの準備もしていたので……(むしろこっちが要因)
ということで、長らくお待たせ(?)しました、どうぞ!
――ホテル・アグスタ正面
炎と炎がぶつかり合う。互いに炎が相殺された陽と剛は、にやりと不敵な笑みを浮かべながら――
「焼き尽くせ、アレス!!」
-応!-
「させっか、よ!!」
互いに拳を打ち付けあう。瞬間、衝撃とともに炎が巻き上がり、あたり一帯を焦土へと変える。
その焦土の中を、聖とラスタは一歩の踏み込み、一瞬で互いの得物の射程距離へと収める。
瞬間、振るわれる二槍と銃剣。突き合わされる度に火花が散り、魔力の嵐が吹き荒れる。
つい数分前に現れた二人――ラスタと剛により、フォワードメンバーはほぼほぼ戦闘不能。何とか生き残っていた聖と陽の二人が、彼女らを相手取るという形が出来てしまっていた。
対魔導師戦闘にまだ不慣れな陽だったが、もともとのセンスも相まって何とか剛のことを抑えることが出来ていた。
そして聖もまた、彼女の二槍に苦戦しつつ、どうにか捌ききっていた。
「ハァ――!!」
聖の一撃を軽くあしらったラスタは、身体を反転させて右手の長槍を振りかぶり、一気に振り下ろす。
聖は、それを絶対守護障壁を展開しギリギリで受け流し、逆手に持ち替えたガンブレードを振るう。
その一撃は左の短槍の柄でたやすく受け止められる。
かぁんと鳴り響く乾いた音。受け止め、受け流し、目標が完全に
「なめ――んな!」
その刺突を、聖は身体を大きく逸らし、体勢をわざと崩すことで避ける。
避けた瞬間、身体の近くで真空が突き抜けるような音が鳴っていた。空気が斬り裂かれる音が彼の耳元で鳴り響く。
放たれた勢いで、空気が割れる音が鳴る。背後にある樹木に、空気がぶつかり爆ぜ、抉られる。
直撃すれば戦闘不能はもちろん、死の可能性すらある威力を前にして、聖は怯まない。崩れた体勢のまま、掌底を柄に対して水力に叩き込む。
真っすぐに放たれた槍の中ほどを叩かれ、槍そのものが真上に弾かれる。槍を握っていたラスタは、その反動でほんの少しだけ体勢を崩す。
そう、その隙は本当に一瞬。むしろ、常人が見れば何も変わっていないようにも見える。
しかし、そんな隙でも、隙は隙。一瞬だけ生まれたソレを、聖は逃さない。
「
弾かれたように距離を離し、唱えるは聖の高速詠唱。
足元に展開される藍色の六芒星の魔法陣。
立ち上る魔力は、刃に集中していく。
ラスタは完全に自らの視界内、
絶対に、逃しはしない――
「天剣佐々木帝流――」
構える。
腰を落とし、精神を集中させるようにわずかに目を細める。
型は居合。日本の剣術の中でも最速を言わしめる、可視でありながら不可視の剣戟。
「天剣佐々木帝流」の原典となった「佐々木帝流」の中でも基礎の基礎といわれる、基本の構え。
そこに、魔法的強化がなされたのが「天剣佐々木帝流」。カスミ式魔法を含む、すべての強化魔法を付与して放たれる、音速の一太刀。
集中された魔力がガンブレードの武骨な刀身を一変、鋭く流麗な刀へと変化させる。
同時に展開される六芒星の魔法陣。カスミ式の魔法陣から立ち上る藍色の魔力。
「――鳳凰!」
「――!」
放たれる音速の剣戟。それをラスタは、両手の槍を十字に構えて受ける。
一撃目。居合の型から放たれる音速の刃は、ラスタの槍に阻まれる。
かこん、という軽い音を響かせて聖の刃は受け流される。
瞬間、好機を得たかのように構えられる二槍。大きく引かれ、魔力を纏った穂先が聖の心臓を捉える。
しかし、それを阻まれても跳ねるように返ってくる二撃目の刃が――
「な――にっ」
彼女の刺突よりも速く、確かに脇腹を捉えた!
ドゴッ、という鈍い音が響き、ラスタを横へと吹き飛ばす。
(直撃した。手ごたえもあったし、このまま攻める!!)
距離が開いた瞬間、再び聖が距離を詰める。そして、腰だめに構えた刃を真横に振るう。
しかし、その一撃はすぐさま体制を立て直したラスタの超反応を以てして阻まれる。
瞬時に展開した魔力障壁で聖の一太刀を受け流し、再び双方の距離が開く。
「今の太刀……
「その通り、と言いたいとこだけとちと違う。一太刀目の勢いを殺さずに切り返しただけだ」
刀身についた血糊を払うようにガンブレードを振るい、聖は続ける。
「それに、ほんまもんの多重次元屈折現象はあの
「――ふふ、それもそうね。宝石翁は知り合いだけれど、私にもその秘奥は教えてくれなかったしね」
そんな風に軽く冗談を飛ばしあいながら、聖は今一度腰にガンブレードを添え、構える。「流填」から「集中」させられた魔力刃が、より一層鋭さを増す。
それを見て、ラスタもまた魔力を蓄えた槍を構え――
「――フッ」
「――っ!?」
先に構えた聖よりも早く、彼の左側へ踏み込み槍を振るう!
ほんのわずかに対応が遅れた聖は、身体ごと反転させてラスタの一撃を捌く。そして、ラスタを確実に自らの視界に収めてから、再び魔力刀を大上段から振り下ろす!
しかし、大上段から最大級の力を込めた一撃さえ、ラスタは易々と捌き切り、再び聖の左側へ回りこみ、槍を振るう。
「く――そっ」
こいつ、完全に俺の死角に!
歯ぎしりをしながら、身体を動かしてラスタを視界に収めながら彼女の槍を捌いていく。
しかし、彼の反応速度をラスタの槍の速度が徐々に超えていく。捌けなくなる数が増えていき、彼の身体を穂先がかすめ、鮮血が宙を舞う。
「この――やろっ」
「そろそろ、終わりにしましょうか」
反撃の一撃も受け流され、返すかのように一撃叩き込まれる。
肩への直撃。左肩を引き裂き、鮮血が舞う。
腱が断ち切られ、聖の腕がだらりと落ちる。
一瞬の内に、追撃を叩き込まんとラスタが槍を大きく引く。紫の魔力が揺らめく槍の穂先が、聖の心臓を捉えた――瞬間!
「サクラ、バースト!!」
-はいです!-
聖が纏っていた桜色の軽鎧がはじけ飛び、弾丸となってラスタを叩く!
無数の鋼に叩かれ、ラスタは思わず後退する。その瞬間、聖は意を決したように小さく、だが確かに言った。
「サクラ、左目を解除しろ。あの一発で追い払う」
-わかりました。魔導義眼封印解除。マスター……お気をつけて-
サクラの言葉とともに、左目につけていた眼帯がぱさりと地面に落ち、ついで融合していた彼女も弾かれるように宙へ出る。
黒スーツの姿へ戻った聖は、小さく「
「あら、負けを悟ったのかしら?」
「あぁ、勝てないことは悟ったさ。確かに、今の俺じゃあアンタにゃ勝てない。でも、正直
――ある。
そう言った瞬間、彼の周りの空気が変わる。
ゴウッ、と風が吹き荒れる。
唐突に吹いた突風ではなく人為的に起こされた風。
魔力が集中し、収束し、圧縮させられる時に吹く風。
それを感じたラスタもまた、その場で二槍を構える。その構えは今までの攻撃的な構えと異なり、二槍を重ねて十字にしたような、防御的な構え。
それほどに、今の風に、聖の魔力収束に、ラスタは警戒していた。
「姐さん――!?」
風が吹いた瞬間、剛はラスタのもとへ駆け――足を止めた。
交戦していた陽を強引に振り払い、彼の一撃を右腕を犠牲にして受けきり、彼女を守るべく思い切り駆けようとして、なお足を止める。
足を止めることになるほど、彼女が仄かに笑みを浮かべていたから。
「ふふ、面白い。さぁ、来なさい。あなたの全力を、私の全力で迎え撃つ――!!」
風が吹いた瞬間、迎撃の体勢をとった。
構えていた二振りの槍を一度収め、その両手に紫の魔力を纏わせ、大きく振りかぶる。
「ぶちかませ――佐々木!!」
風が吹いた瞬間、陽は叫んでいた。
圧倒的な火力を誇る剛を前にして、身体の至る所に火傷を負いながらもギリギリのところで抵抗してどうにか右腕を潰し、どこか笑みを浮かべて。
そして聖は――
「
彼自身が名付けた剣の銘を唱えながら、静かに握った光の刃を静かに突き出す。
放たれる光の奔流。色は桜。
その光は、天地を貫く創世の一撃。
ふり放たれた桜色の斬撃は、周囲にあるものを巻き込みながら直進し、ラスタへと向かう!
しかしラスタもまた――
「
その一撃にすら恐れることなくほぼ同時に両手を突き出し、魔力を撃ち放つ。
放たれる光は紫焔。
極大な砲撃ではなく、細いレーザーのような魔力砲。
「おおぉぉぁぁぁっっ――!!」
「はあぁぁぁっっ――!!」
それぞれの砲撃と斬撃は真っすぐに直進し、双方の中間地点でぶつかり合い、爆ぜる!!
爆ぜた衝撃で聖は後方へ大きく吹っ飛ぶが、ラスタは数メートル後退するだけにとどまった。
吹き飛んだ聖を追撃しようと剛が一歩踏み出すが、彼を制するようにラスタは手を広げる。
「姐さん――?」
「タクトにも連絡入れなさい。一度退くわよ。今の一撃、多分撃ててあと一発だけど『
「マジか――しゃぁねぇか」
ちっ、と舌打ちすると、剛はそのまま足元に丸薬を置き、ラスタを抱えて思い切り上へ跳躍する。そして、それと同時に丸薬を砲撃し、爆発させる。
「待ちやがれ――!」
「落ち着けって、陽。こりゃ魔力チャフ付きの煙幕だ。こっちはもちろんだが、あっちもこれが展開されている間はそう簡単に探知は出来ねぇよ」
膝をつき、肩で息をしていた聖はそう言い切ると、その場で大の字に倒れこむ。
いくら相殺できたとは言えども、その代償は外敵にも内的にも大きかった。その反動が、完全に出てきているのだった。
「黒天斬り裂く桜光の剣」を放つ基軸となった右腕は、当分使い物にならないくらいのダメージを負っている。それに加え、魔力消費も相対的に大きかった。
「でも、ひとまずこれで――」
アグスタ任務は、終了だな。
そう呟いて、聖は目を閉じる。
すうっ、と落ちていく意識の中、聖は遠間から響くティアナの声が耳に届いていた。
「抜刀撃、雷火」
「護刀一ノ型、颯天!」
放たれた雷撃は地を這う毒蛇のようにケイを追い立てる。
しかし、ケイは慌てる表情一つ浮かべずに刀を鞘に納めたまま振るい、疾風を巻き起こして雷撃を振り払う。
まるで同じ映像の巻き戻し。タクトが攻め立て、ケイがそれらをすべて防ぎきる。
「へぇ。では、これならば!」
どう対処しますか、と問いかけるような表情を浮かべたまま大きく刀を振りかぶる。
そこに収束されていくのは、先ほどの雷撃とは明らかに収束率の異なる魔力。それを感じ、ケイも今まで以上に警戒度を高めた――
「抜刀撃、雷火改め――蒼雷火」
瞬間、放たれる雷の蛇――いや、もはや蛇という速度ではないだろう。地を這わず、一度上空に放たれた雷撃は、まるで上空から獲物を狙い仕留める隼の如き速度で急上昇、急降下し、ケイへと迫る!
直撃する。それを一瞬で悟ったケイは、
「護刀、一ノ型二番――颯天双撃!」
そして放たれる伝家の宝刀。
音速を超える雷速を迎え撃つべく、鞘から放たれる神速。
迎撃の居合撃ち。滅多にお目にかかれない、ケイの防衛居合術。
まるで刀本体が揺らめくように振るわれ、放たれた雷撃を一つ残らず撃ち落としていく。
そして全て撃ち落としたのち、ケイの反撃が始まる!
「往々にして奔れ、
刀を収め直し、鞘の先を地に打ち付ける。
瞬間、展開される二つの魔法陣。展開された魔法陣から放たれるのは、青色の魔力弾。時間差で放たれる二つの魔力弾は、まるで彗星のように尾を引いてタクトへと迫る。
しかし、タクトはそれを見て二槍を口元を歪め――
「食らいつくせ、ルプス!」
-All right-
思い切り左腕を振るい、放たれた魔力弾を撃ち落とす。
それはまるで、肉を食いちぎるオオカミのように、機械の鉤爪のついた巨腕が二発の魔力弾を引きちぎる。
ぐるりと直刀を手の中で回し、再び構えなおす。
「魔力外装、それも限定展開か。研究途中とか聞いてたんだけど?」
「あぁ、
明らかに変わった。
表情も、構えも、口調も。
何もかもが、変化した。
いや、
ケイは、目の前の青年の
「駆け抜けろ、ハシュマル――!」
瞬間、自分のいた場所に突き刺さる鋭い槍。
その槍――もといブレードはタクトの後ろから伸び、まるで生き物のようにうごめいて突き刺さる!
「硬質ブレード!? 純魔力ならまだしも、実体刃とかありかよ――!?」
そもそも、どっから生えてきた今のブレード!?
そんな風に思いながらも、突き刺さったブレードを蹴り飛ばし、思い切りタクトへ近接。刀を振り上げ、たたきつける!
叩きつけられた刀を、タクトは平然と受け止める。そして、にやりと不敵な笑みを浮かべ――再び叫ぶ。
「潰せ、グシオン!」
瞬間、展開されるは背中から伸びる四つの巨腕。
組まれる握り拳二つ。広げて拘束するように飛んでくる腕が二つ。
四つ腕をかいくぐり、ケイはどうにかタクトの射程距離から離れ、再び居合打撃を放とうと構えた瞬間――
「撃ち貫け、フラウロス!」
背中から展開された左右の腕が組み合わさり、巨大な砲門へと変化する。その二対の砲門には、すでに魔力が収束されている。
砲撃体勢に入っている。それを理解したケイはすぐさま構えを攻撃から防御へと切り替える。
足元に展開するミッド式の魔法陣。居合というよりもまるでテニスのバックハンドのように体をひねって力を溜める。
「
「護刀二ノ型一番――旋風!」
タクトの砲撃に併せて放たれる、ケイの防御。大火力の砲撃を受け止め、あまつさえ明後日の方向へ吹き飛ばす。
ケイはそこからさらに一歩踏み込み――
「護刀一ノ型一番――颯天改式!」
「んぉ――!?」
再び居合の構え。そして、ケイの右腕が
そう錯覚するほど、その一撃は
放たれる
鈍い金属音が響き、タクトの合金の籠手に確かな傷跡を残す。
「へぇ、ずいぶんと遠間からノビてくるじゃねぇか」
「
ひゅん、と刀を振るってから再び納刀。静かに腰を落とし、ケイは再度構える。タクトも一度、構えなおすがややあってから握った直刀を仕舞い大きく伸びをする。
まるで、「ここでお開きだ」と言わんとするように。
「ちっ。撤退命令か。出ちまったモンは仕方ねぇ」
ぱちん、と指を鳴らすとタクトの足元に魔法陣が展開される。
転送魔法。そう理解したケイは、追撃をしようとして――やめた。
転送魔法の下に重ねるように展開されたダミーの魔法陣。それが
(こいつ、なんて用意周到な)
その場で構え、反撃されないように警戒するしかできないケイは。ぎりっと歯ぎしりしてタクトを見送る。それしかできなかった。
しかしタクトは、そんなケイを見てどこかうれしそうな表情を浮かべ、叫んだ。
「この戦い、お前に預ける。またいずれ、殺りあおうぜ」
「……次こそ、あんたの目的をきっちり聞き出してやる」
そうケイはタクトに告げ返す。
彼の言葉を聞いたタクトは、笑顔を浮かべてそのまま魔法陣の彼方へと消えていったのだった