魔法少女リリカルなのはAnother~侍と呼ばれた青年~   作:Yuino

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異様なほど難産だった気がしないでもない、と思います。

どうも、Yuinoです。

三月から忙しくなるので、今の内に沢山書いておいていないと、って感じですかね~

ということで、第六話、どーぞ!

(後ほど簡単な修正等行います)


(2015/02/06 バグ修正及び加筆)
(2017/12/26 加筆修正)


06:スカウト

 聖は、思わず懐に隠していた雪風に触れる。それを見た青年は両手を前に出して「少し待ってくれ。せめて名乗らせてくれよ」と落ち着いた表情でにこりと微笑んだ。

 こいつ、何者なんだ。聖は訝しげに睨みながら、懐の雪風から手を離し、再び元の体勢に。すると青年は「ご理解痛み入る」と言いながら、一歩踏み出す。

 

「私はジン=アームスレイン。聖王教会及び、管理局所属の騎士だ」

「聖王、教会・・・・・・」

 

 銀髪で高身長。細身だが、しっかりとした体つきの青年、ジンは右手を胸に当てながら簡単に自己紹介をした。

 

 (聖王教会、どこかで聞き覚えが・・・・・・あぁ、そうだ)

 

 テスタロッサから聞いた朧気な記憶の中から内容を思い出す聖。しかし、いまはそんなことどうでも良い。そう自分に言い聞かす聖は、相変わらず態度を変えないでそのまま彼、ジンに問いかける。

 

「あんたの目的は?」

「私の目的、それは貴方のスカウトだ」

「はぇ?」

 

 思っても見なかった言葉に、思わず変な声を上げてしまう聖。

 まさか、スカウト? 俺を? そう思った彼は、あきれたような表情を彼に見せる。

 

「まさか。人違いじゃないのか?」

「それは有り得ないな。これは、貴方で間違いないだろう?」

 

 すっ、と飛ばされた遠隔式のモニターを聖に見せる。そこには、彼もよく覚えている戦いの記録、誘拐事件があったときの報告書が映し出されていた。報告書の執筆者は、フェイト=テスタロッサ=ハラオウン。

 なるほど、と一つつぶやき、聖はそのモニターをジンに返す。ジンは「お分かりいただけたかな?」と柔らかい笑みを浮かべて言う。

 

「つまり、俺の実力を考えて、管理局にスカウトにきた、と?」

「あぁ。ハラオウン執務官と私は、ちょっとした友人、ではないかも知れないが、まぁ、知り合いというわけでね。彼女曰く、面白い子が居ると話半分に聞き、興味を持った次第だ」

「へぇ、そいつはどうも」

 

 軽く会釈しながら、聖は「ところで」と問いかける。

 

「これは、なんのためですかね?」

「これ……あぁ、この結界のことか?」

 

 ジンはそれを聞かれ、先ほどまでの柔らかい笑みから一変。鋭く、威圧感のある笑みに変わると、懐から銀色の十字架のネックレスを取り出し、小さく、しかし鋭く呟いた。

 

「ヒースクリフ、我が甲冑を」

-Yes,my lord(心得た、我が主)-

 

 鮮血のような赤。赤色の光が彼の体を包み込み、光が晴れた頃にはジンは銀色に赤い紋様の入った甲冑を身にまとっていた。左腕には、体をすっぽり覆えるような巨大な盾。それの中心を貫くような形で収められていると思われるのは、おそらく盾と同じサイズの剣だろう。

 ジンは、その剣を引き抜き、構える。

 盾の大きさにしては余りにも細い。盾の大きさと比較すれば、ぱっと見細剣(レイピア)にも見えなくもない。

 

「なんのつもり?」

「貴方の実力を測ってきなさい、と言うのが所長の、私の所属先のリーダーの言いつけでね。貴方も刀を構えてくれ」

「はっ。ヤダね」

 

 聖はジンの一言を一蹴しながらも、彼は戦羽織”東雲”を──氷風を纏いながら展開し姿を変える。”刀を構える”と言うことを拒否しながらも、彼はその場で構える。

 徒手空拳。聖のもう一つの特技、ともいえないが、もう一つの戦闘スタイル。あくまで刀は抜かず、接近して格闘戦のみのスタイル。

 ボクシングから中国拳法、合気や空手など、古今東西様々な格闘技をごった煮にしたような格闘術は、聖オリジナルの構えを作り出す。

 ジンはそんな彼の姿を見て、へぇと小さく言葉を漏らしながら肩を震わす。

 

「私相手に、刀は必要ない、と言うことか?」

「今は、な」

「なかなかに、面白いっ!」

 

 ジンが地面を蹴って飛び込む。聖はそれを受け止める体勢をとり、一言大きく叫ぶ。

 

「カスミ式魔法、強化の一”大鷲”! 其の二”梟”!」

「せぇぇぇやっ!」

 

 ガキンッ、という音を立ててジンの剣、聖の右拳がぶつかり合う!

 

「ほう。強化魔法、しかも自己への攻防同時のフルブーストか!」

「こういうやつ、しかも自分限定だ。こういうのしか、俺は使えねぇよ!」

 

 刃面を左拳で再び叩き吹き飛ばす。それにより一瞬だけ出来た大きな間合い。その間合いを確認してから、聖は大きく踏み込む。右へ、左へ、ステップを繰り返しながら一気に接近する。それに合わせるように、ジンもまた回避先を読みつつ、剣を振る。

 回避と防御。その一進一退。聖の頬をジンの刃が掠め、ジンの体を捉えかける聖の拳。

 そして、数度目の回避を聖が終えた、その瞬間!

 

(ここ!)

 

 狙ったかのように、一度聖は大きく叫ぶ!

 

「カスミ式、霧走!」

「なっ!?」

 

 ガンッ、という地面を踏み砕くような音をたて、聖は残像を残して消える。

 カスミ式”霧走”は、発動の際に使用する魔力を自己強化”加速”に九割二分振りつつ、残った八分を自分の残像を生むことに使用する。しかし、その残像は一瞬だけなら相手の視線を釘付けに出来るほど、精巧なモノになっている。

 それ故に、一瞬だけ相手に視線を奪うことなど、造作ない!

 

「なぁる! 加速と質量のある残像! なかなか凝ったことをする!」

 

 しかし、この人物。ジン=アームスレインにはそれは通用しないようだ。

 確実に視線を奪ったと、確信していた聖の右拳。盾と体の間に潜り込み、人体の急所である鳩尾を狙ったショートボディブロー。しかし、そのボディブローは剣の腹で受け止められてしまう。

 

「そいつは、どうもっ!あんたも、大概だよなっ」

「お褒めいただき、感謝するよっ!」

 

 聖は、ひたすら接近して連打を叩き込む。しかし、それをジンは巨盾で一つ一つ丁寧に防ぎ、裁いていく。

 完璧に耐久戦。どちらかが痺れを切らし、先に大技を叩き込みにいった方がカウンターを取られる。そのことは、両者とも理解していた。

 しかし、だからこそ・・・・・・!

 

「ここ、だっ!」

「甘い!」

 

 大きな金属音をたてて盾と体がぶつかり合う。

 防いだ。ジンはそう思っていた。このショルダータックルを防いだ後、こちらのカウンターを叩き込む。そういう一連の流れが、彼には見えていた。

 しかし、聖自身、これを防がれるのは百も承知していた。防いでくれる、という事実にかけて。

 其の瞬間を、聖自身待っていた。

 さらに体を預けるようにして距離を積める。

 

「なっ・・・・・・」

「捕まえた、ぜっ!」

 

 盾とジンの隙間。正味十数センチのその小さな隙間に狙いを定め、彼は拳を叩き込む!左拳、短い溜めから放つ、リバーへの剛打。それをまともに喰らったジンは、身体をくの字に折りながらもキッと聖を睨む。

 

-風帝結界(ブラスト・エア)展開-

 

 その時、聖は気が付いていなかった。

 

「がっ。なめ、んなっ!」

 

 既に、ジンが対抗策を講じていたことに!

 

「くっ!?」

 

 風切り音とともに飛来するジンの剣。それを回避すべく、聖は大きく体を捩りながら一気に離脱する。

 

「ちっ」

 

 回避した、と思った聖は、自分の頬に触れる。ぬるり、とした感覚と共に、自分の手が赤く染まっていた。

 まさか、当ててきた……? 剣の間合いは把握している。まさか、測り損ねたか?

 聖は下がりながら相手--ジンの挙動を伺う。

 

「ったく、至近距離、しかも私の射程距離内で戦おうとするとは。なかなか度胸のある子だな、キミは。しかし……」

 

 ジンは剣を一振り。何の変哲もない行動だ。聖が道場で仮想敵と良くやる時、最後にクセで血糊を払う仕草と同じように、彼は剣を払う。

 一瞬だけ見えた。確かに、聖に目に映っていたのは、僅かに揺らいだジンの剣。

 すると、ジンが振るった剣は、僅かに空間を歪めるようにして、剣の先から何かが伸びていた。

 まさか、あれか?

 

「……しかたない、か。雪風、抜錨」

-はい、司令(しれぇ)!-

 

 諦めたような表情をして、聖は腰に差していた雪風を引き抜く。シャラン、と言う音をたてたかのよう。一瞬だけ、聖の周りだけに冷たく、凍えるような空気が舞い上がる。

 

「さて、ここからが本気、と言うわけだな」

 

 ジンが、剣と盾を構え直す。剣全体が揺らめき、まるでかき消えるようにしてその姿を虚空に隠す。それを見て、聖もまたその切っ先をジンへと向ける。

 にらみ合う時間。たった数秒の隙間。

 遠くでコトリと空き缶が落下する。その瞬間──!

 

「せっ!」

「ふっ!」

 

 ほぼ同時。突撃するタイミングも、剣と刀が振り下ろされるタイミングもほぼ同時。全く同時のタイミングで、火花が周囲を照らしていく。

 聖は、ジンの剣をほぼ感覚だけで受け流し、鍔迫り合い、回避していく。ジンもまた、正確無比に放たれる剣閃を盾でいなし、剣でガードしていく。

 

「はぁぁっ!」

「ぜあぁぁぁっ!」

 

 何度も。

 

「せぁぁっ!」

「なんのっ!」

 

 何度も……!

 

「せいやっ!」

「しっ!」

 

 何度も……!!

 

「せやぁぁっ!」

「はぁっ!」

 

 何度も!!

 

「しつこい!」

「しつこくて悪いねっ!」

 

 互いに悪態を付きながら、聖の刃をジンは盾で受け止める。受け止めたジンは、盾で聖を弾き飛ばしながら反撃の剣戟を飛ばす。

 見えない剣戟。聖の感覚上、それ以外に怖いものはないと思っている。

 だが、その見えない剣戟に似たものなら、幾度となく見てきた。

 音が遅れてくるほど早く振り抜かれる剣戟。

 父親の剣閃。

 彼曰く、音速の剣戟。

 そんな剣戟を今まで、過去に見ていたから聖はジンの剣戟を受け止めることができた。

 しかし、速すぎて見えない剣ではなく、根本から見えない剣を裁くというのはやはり苦労するもので、聖は所々に切り傷を負ってしまう。対するジンは、ほぼ無傷。大きな盾と見事な剣捌き。悉く聖の剣戟は逸らされてしまう。

 

(くそっ。これじゃジリ貧か)

 

 仕方ないか。そう小さく呟いた聖は、一度刀を納めて深呼吸するように大きく一息。そのまま瞳を閉じる。

 集中、集中。聖は心の中でひたすら呟き、ゆっくりと閉じた瞳を開く。

 

「──!?」

 

 ジンの背中に、ぞわっとした悪寒が走る。

 この感覚、感じたのはいつ以来だろうか。あまりに久しく感じていなかった、懐かしい感覚。

 ジンが覚えている限り、いつかの違法研究所の一斉検挙の時に相対した暴走魔導生物以来だろう。たぶん、それと同じくらいの”恐怖”。

 聖が構える。腰を低く落とし、右手は刀の柄に触れるか触れないかというくらい浅く。半身に構え、左足を踏み込み、今まで無駄に溜まりつつあった余剰魔力を、一気に放出させる!

 

「天剣佐々木帝流、奥義・・・・・・」

 

 聖は、ゆっくりと一歩踏み出す。それに合わせるようにして、ジンは盾を構えなおし、中で魔力を練り上げる。

 ジンが狙うはカウンター。あの構えから放たれるのは、十中八九居合い斬り。それをたてて受け止め、十八番のバーストカウンターで吹き飛ばす。

 いくらこれが、彼の実力を測るためのものとはいえ、管理局員であり、リーダーの懐刀、所長の右腕、局内トップの剣使いといわれる自分が、負けることは自分自身が許せない。だからこそ──

 

(本気で、来い!)

 

 魔力を練り上げ、余り余ったものが空中に飛散する。聖の藍色とジンの銀褐色。それらが空中でぶつかり合い、混ざり合う。

 

「──鳳凰!」

 

 バゴン、と轟音。

 先の地面を踏み砕きかけた霧走以上の轟音。

 明らかに、地面を踏み砕いた音が鳴り響き。

 それが聞こえたと思えば、すでに聖はジンの盾の正面まで接近していた。

 音速の踏み込み。初手で既に相手の死角を取るための踏み込みは、時に高速接近し、一撃にて相手を屠る布石となる。

 しかし、ここまでは予想通り。ジンは盾を構え、受け止める姿勢をとる!

 そして、音が響く。

 轟音。ただただ轟音と表現するに相応しい音が響いた。

 金属と金属がぶつかり合う轟音が一回。強引に何かを切り裂くような音が一回。空中に響きわたった。

 ジンは、聖の初段を見事受け止めた。そして、バーストカウンターも成功させた。それで、聖を吹き飛ばした──はずだった。

 

「なん、だと・・・・・・!?」

 

 しかし、聖は無事だった。左腕を力なくダランと下げ、右手にはしっかりと雪風が握られている。しかし、それは振り抜かれたように右に行っておらず、左側に向けられており、切っ先もまた、ジンの方へ向けられていた。

 

「まさか、あの状況で二連撃、とな! あっはっはっはっ、これはお見逸れした!」

「あぁ。あの状況でこっちが大技叩き込めば、そっちは十中八九カウンターを叩き込んでくる。簡単すぎる予想だが、それくらい分かってたからな」

 

 予想も予測も出来たんだよ、というように刀を振るう。血糊を払うような動作から、再び構える。

 ジンは呆れたように大笑い。まさか、あの状況で二連撃を撃てるとは思っても見なかった。

 通常、居合切りというものは振り抜いたらそれでほぼ終了なのだ。しかし、そこで彼の居合は終わらない。

 彼の居合──もとい斬撃は一振りで二発の斬撃が飛んできた。これは、魔法とかそう言うのを超えている。しかも、今のは魔法を殆ど使っていなかった。技術のみで、魔法の極地である第二魔法級の『マホウ』を扱う青年。

そのことに、ジンは思わず笑いを隠せなかった。

 

「第二魔法……しかも魔力を使わずにそれを再現するとは。本当に、お見逸れしたよ! サー・ヒジリ・ササキ!」

「だから、そのサー呼びは止めろ。俺はあくまでも侍だ」

「侍、か……まぁ、良いだろう」

 

 ジンはそう言いながら懐から名刺大のカードを取り出すと、それを聖に投げる。聖はそれを受け取り、実際にそれが名刺であると確認すると、どこか納得いかないという表情を浮かべながらも「確かにいただきました」と一礼。それを見ると、ジンは笑顔を浮かべて告げる。

 

「いつか、来ることを待っている。ヒジリ=ササキ」

「いつか、な。ジン=アームスレイン」

 

 さよならだ。そんな言葉を残し、ジンは結界と共に姿を消した。

 

 

 その後、姿を消していた聖が再びなのは達と合流し、さらに買い物に付き合わされることになるのは、また別のお話。

 

 

 

──ミッドチルダ首都クラナガン 管理局地上本部

 

 地上本部の地下にあるとある一室。部屋の名前を示すプレートには、『特別戦略技術研究部』と刻まれていた。

 その部屋の前にようやく到着したジンは、大きく息を吐きながら扉をノック。それから数秒たってから、扉の向こうから眠そうな声が響いた。

 

「開いてるよ~。入っといでジン」

「流石にバレてるようだな、所長」

 

 扉を開けながらジンは部屋の中に入る。

 部屋の中は、書物であふれかえっていた。専門書から漫画まで種類は様々。まさに本の巣窟、と言う表現が相応しいかもしれない。

 そんな場所に、彼女──ルルイナ=ディートハルトはいた。

 

「お帰りジン。んで、どーだった、例の子は?」

「報告する前に服を着ろ。研究者とはいえども一応女性だろう、なんだその色気のない格好は」

 

 ジンは、近くにあったラックから白衣をルルイナに投げつける。それもそうである。ルルイナは下着姿だったのだ。黒の下着姿で、彼女はパソコンの前でデータの処理を行っていたのだ。

 まったく、と言いながらジンは近くにあったローブを羽織る。その胸に輝くのは、ハーケンクロイツにもよく似た剣と銃の紋章と、菊花紋章を組み合わせたような、そんなマーク。

 ルルイナは、ぶつくさ言いながらも白衣を着てから肩を回す。そして、再び椅子に座ってからくるくると回る。そんな姿を見ながら、ジンは彼女に対してデータを渡す。

 そのデータをモニタで見ながら、ルルイナは笑いながらジンを見る。

 

「へぇ。思った通り面白い子ね。この、ヒジリって子」

「あぁ。戦いに対する嗅覚は私以上。おそらく、得物を持つことで本気を出すタイプ。こういうところは、レンに似てるな」

「レンちんが聞いたら発狂しそうねぇ」

 

 そんなことを言いながら、ルルイナは戦闘詳報を見ながらゆっくりと微笑んだ。

 

「ヒジリ=ササキ君、か。ジェイソン討伐が終わったら、来るかしらね?」

「来るさ、きっと。まぁ、五体無事にこれるかは、分からないけれど。ジェイソン相手に五体無事にいくかすら、怪しいものだ」

 

 

 

 決戦の日は、近い。それを、誰もが予期していた。




感想とか色々、お待ちしております。

あと、前回からの募集もまだ行っておりますので、そちらもご一読お願い致しますっ

それでは、次回をお楽しみに!
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