ループ羂索の災難   作:めろんそー

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羂索の死滅回遊ループ話 第2話
日車さんはこのシリーズでは羂索側です。


2周目①:仲間探し

まずは自分ができることを確認する。己の武器すら把握できない状態では猛獣を超えてもはや宇宙人である東雲奏には到底敵わない。

 

羂索は潜伏先から去ろうとする時、締めた呪霊を呆然と見つめる裏梅と会った。彼女は酷く憔悴していた。

 

「やあ。首でも取られたかい?」

羂索は裏梅を小突くが、ただ鬱陶しそうな目を向けるだけで反応が薄い。よほど手酷くやられたのだろうなと裏梅に心の中で合掌する。南無。

 

「キサマも……どうやら記憶があるようだな。」

そう言う裏梅は同類を見つけたのか少し安堵の表情を見せた。

 

「裏梅には東雲の術式についての情報は来ているかな?」

彼女は"東雲"という言葉に一瞬沈黙するも小さく頷く。私もまだ恐怖が取りきれていないのか、無意識に呪力がゆらいだ。

 

「これからどうするつもりだ。こんなの宿儺様を復活させる以前の問題だ。もし本当に時が戻っているなら猶予は15日だが。」

 

焦る裏梅に羂索は勿体ぶりながら話す。

「この繰り返しはおそらく世界が"釣り合いが取れた"と認識するまで続く。私達が彼女に対抗しうる力となるまで、ね。そして――どうやら私達は繰り返しを経るたび必ず強くなるみたいだ。」

 

それは裏梅も感じていた。明らかに前回より呪力の総量が増えているのだ。「キサマの言う"世界の理"で言うと、私達は時を繰り返すことでより強い因果、呪いの力を得るわけか。そしてコロニーの中にも呪力が大きくなっているやつがちらほらといると言うことは――」「いるだろうね。同じくループに巻き込まれている者が。」

 

美味しいところだけ言われて裏梅は不満げだ。しかし羂索があの呪力に当てられてなおこんな軽口が叩けるようなやつでよかったとも思う。絶望し何もできないまま己の死を待つなんてことになっていたら、と想像するだけで寒気がする。

 

「まずは情報収集。そして記憶をもつ泳者との接触を図り協力関係を築く。全員がより強化されていくことが確定しているなら、味方は多ければ多いほど良いからね。」

 

羂索は今後の方針を固め、まずは前回勢いのあった日車、鹿紫雲のいる東京の2つのコロニーに向かう。飛行型の呪霊を呼び出し、浴の準備が不完全であることを惜しむ裏梅を無理矢理呪霊の口に放り込んで出発した。

 

――リンゴンリンゴンリンゴン!泳者による死滅回遊へのルール追加が行われました‼︎――

 

最寄りのコロニーで登録を済ませ、東京第一結界に転送を終えると同時にルール追加を知らせるコガネの声が響いた。まだ2日だと言うのにすでに100点を貯めた泳者がいるらしい。羂索は期待に胸を膨らませる。

 

――<総則>9 泳者は他泳者の情報──“名前”“得点”“ルール追加回数”“滞留結界(コロニー)”──を参照できる。――

 

――リンゴンリンゴンリンゴン!泳者による死滅回遊へのルール追加が行われました‼︎――

 

――<総則>10 泳者は両者の合意がある場合のみコガネを通じて通話ができる。――

 

一つ目のルールが追加され、それを見計らったかのように二つ目のルールも追加される。早速羂索は100点以上の得点を持つ泳者を確認する。

 

・鹿紫雲一

・日車寛見

 

予想していた通りの展開だ。記憶を持つ強者はできるだけ早く100ポイントを貯め、ルールの追加をしようとする。総則9はともかく、10を追加した人物は協力の意志を明らかにしている。合理的に動いてくれて大変助かるね。

 

羂索と裏梅はこのコロニーで1番強い呪力を感じる東京芸術劇場に向かう。到着すると入り口の前でコガネと話す人物がいた。

 

黒いスーツに身を包み、その左胸には弁護士記章が煌々と光を反射している。日車寛見――前回の15日目時点では142点を所持していた泳者だ。たしか裁判を司る術式だったな――

 

羂索は自分で言っておいてそのおかしさに笑ってしまった。弁護士のくせに裁判官の真似事とは。

 

日車はこちらを一瞥すると、真っ直ぐ向かってきた。

「額に縫い目……君が羂索か。……ああ、たった今合流した。」

 

わずかに緊張した声で通話をしながら、こちらに話しかけてきた。相手はおそらく鹿紫雲だ。「いかにも。君が日車くんだね。」「ああ、そして単刀直入に言おう。君も"2回目"だな?」

 

肯定の意を返――そうとしたが、覚醒型の泳者にしてはあまりにも冷静すぎて思わず吹き出してしまった。「……どうした?」怪訝な表情を見せる日車に両手をあげて敵意がないことをしめす。「あぁ、いや、いきなり殺されたっていうのに随分と冷静じゃないかと思ってね。弁護士はみんなそうなのかい?いや、術師を2日で20人も殺す弁護士なんて1人しかいないか。」

 

「……最後に自分を罰するのは自分でありたいだけだ。」

 

日車は2回目の人生に可能性を感じていた。しかし彼が戻れたのはあくまでコロニーに侵入した後――2人の非術師を殺した後だった。もう消えない罪。小一時間ほど己に向き合った後、日車は自身の役割を「東雲奏を殺すこと」に定めた。彼は東雲奏の28年の人生を知らない。日車にとって彼女は大量殺人を目論む人間で、死滅回遊の記憶持ちの泳者は一度死を共にした仲間だった。

 

そこからは早かった。T大法学部受験を始めとするあらゆる難関をストレートで突破した日車の頭は、冷静に死滅回遊というゲームを俯瞰していた。

 

前回は鹿紫雲だけがルールを追加していたが、己も100点なら容易に取れる。自身がまずすべきことは同じく記憶を持つ強者とゲームマスターへの接触。

 

そこまでを殺されてから2時間もかからずに弾き出し、今に至る。

 

「俺は鹿紫雲と連絡をとっている。ゆくゆくはポイントの上位の人物に交渉をかける予定だ。」「それは私がするよ。受肉型の泳者のことはよくわからないだろう。」

 

渋い顔をする日車に、鹿紫雲との会話で経験済みであることを悟り苦笑する。

 

「そうだな。頼みたい。」「おやすいごようさ。その後はどうする予定だい?」「鹿紫雲は泳者間のポイントの譲渡を。俺は結界内への出入りを自由にするルールを追加する予定だ。そして鹿紫雲と合流した後残りの点の使い道を考える。」

 

2人で400点以上を稼ぐ、とさも簡単に言いのける様子に、10コロニー1000人という数字は不適当だったかなと苦笑する。

 

「じゃあ私達は引き継ぎ東雲奏の突破法について作戦を練っておくよ」「助かる」そう言って日車は泳者を狩りに向かう。

 

こうして東京第一結界の3人と鹿紫雲は共闘関係を結んだのだった。羂索はトップクラスの泳者2人を初手で仲間に出来たことに満足し、嬉しそうに劇場の中に入っていく。2人の会話でほぼ空気だった裏梅は裏梅で、この状況に希望を見出していた。やりようはあるのだ。

 

2回目のコロニー殲滅まであと13日。

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