ループ羂索の災難   作:めろんそー

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羂索の死滅回遊ループ話 第5話
ループものなはずなのにまだ2周目だしもうちょい続きます。
今回は甘井、麗美、シャルルの活躍回。日車、鹿紫雲とは違った戦い方で書いてて楽しかったです。


2周目④:愛知コロニー

「甘井は糖分を出力した形のレパートリーを増やして実戦で応用すること。麗美はその髪の毛の操作をもっと精密にできるようにすること。そしてシャルルは未来視を応用できるように接近戦を鍛えようね。」

羂索が3人の指導方針を伝える。3人の術式は経験の浅い覚醒型泳者にはいずれも不利なものだった。だからこそ羂索は愛知結界に到着したあと、甘井、麗美、シャルルの3人だけでとある倉庫にいる術師の説得、もしくは撃破を言いつけた。

 

 

ーー「ちゃんと未来見えるんでしょうね」麗美がこれを聞くのはもう3回目だ。

 

「……何度も言ってるだろう。未来視で見える長さはこのG戦杖に溜めた血液の量に応じて増える。君からもらった量なら5秒くらい見えるぞ。そうだな……今のままだと君は石につまづく。」

 

不満を言うだけで特に何も聞いてなかった麗美は盛大につまずいた。「なんで言わないのよ!」「言っただろ!」「まあまあ」

 

――言わんこっちゃない。言ってないけど。

麗美に対してそう思った甘井は2人を表面的には諫めているが、内心は不安でいっぱいだ。こんな調子で本当に大丈夫なのかと。

 

その時シャルルの目に「驚いて前方を見る麗美」が映る。「……敵のお出ましだ。」

 

警戒感を上げた3人の目の前に現れたのは、胸以外の全身が黒い毛で覆われた男。胸だけは白い毛がふさふさとしており、手足の爪は鋭く伸びていた。

 

「狼男……まるで漫画だよ」

「呪力がない人間がみたら普通の人間に見えんのかな」

2人は驚きを素直に口に出し、入念に男を観察する麗美も「男は狼」の本当に狼であるパターンを見てもはや感動すら感じていた。

 

一度目を閉じ、深呼吸した麗美は両手を上げて降参ポーズをとり、仲間に入れて欲しいと言った。

 

「「何を言ってるんだ⁈」」動揺する2人に「だって見るからに強そうじゃない。これも生存戦略よ。」と麗美は言い返す。

 

「私達はポイントが取れなくて苦労してるの。あなたがポイントを取るのを手伝うから守って欲しい」

 

ポイントが取れていないのは本当だ。呪力操作もおぼつかない3人は狼男にとってハッキリと()()に見えるだろうと麗美は算段をつけた。

 

しばらく考える姿勢をとった敵は再びこちらを見て一言だけ言った。

 

「断る」「「「!!!」」」

 

そう言った瞬間狼男は手を前に出し鋭い爪を銃のように飛ばして攻撃した。「このコロニーの弱者は全員殺されてるからな。お前ら他のコロニーからわざわざやってきたんだ。協力はガセだな。」狼男は続ける。

 

「バリバリ近接の見た目しといて遠距離攻撃するなんて卑怯よ!」

 

腕に爪が刺さって一気に血の気が引いた麗美は背を向けて逃げ出す。またも2人は同様して動けない。

 

「ならば近接で殺してやろう」2人を置いて麗美の方に飛ぶ。

 

――そのタイミングで麗美はノールックで髪を後ろに素早く伸ばし狼男の心臓を刺した。「なに⁈」

 

間髪入れずに甘井が杖型の長い飴を狼男に引っ掛け動きを一瞬塞ぎ、G戦杖でシャルルが袈裟斬りする。

 

「やったかしら」「そんなあからさまなフラグを立てるんじゃなぁい‼︎」

 

麗美の言葉にシャルルがツッコむ。シャルルの言う通り、狼男は麗美とシャルルによる傷をみるみる塞いでいき、フラフラと立ち上がった。

 

「……卑怯なのはどっちだ。」そう言う狼男に、シャルルは甘井のいる方向へと爪を飛ばす未来を見た。「甘井!避けろ!」と叫び、甘井は間一髪で飛んでくる爪を避けた。

 

「反転術式持ち……!なんで羂索さんはこんなやつを説得しろだなんていったんだよぉ!」甘井は嘆く。そんなこともお構いなしに狼男は狙いを甘井に変え飛びかかる。「甘井!近接戦を仕掛けられるぞ!」シャルルは再び叫ぶ。しかし分かっていたとて戦闘経験がほとんどない甘井は防げない。それを理解して狼男は未来視を持つシャルルを放置し甘井から潰すことに決めた。

 

「小賢しさはともかく、弱すぎるな。過去の術師ではないと言うことか。」狼男は3人を"何度叩いても避けて血を吸おうとしてくる蚊みたいな奴ら"だと思った。おそらく最初から3人ともグルで演技をしていたな。全く持って鬱陶しい。

 

殴られて吹っ飛ばされる甘井はなんとかプリンを出して衝撃を緩和するが、すでに低血糖である。

「飴にプリンに……メルヘンなやつだな」

 

麗美が死角から攻撃を仕掛けるが、容易く髪を切られる。

「もっと近くから攻撃しろ!じゃないと強度が足りないぞ!」シャルルは超遠くから攻撃する麗美に叫ぶが「うっさいわよ!怖いんだから仕方ないでしょ!」そう言ってまた物陰に隠れてしまった。多分本気で言っている麗美にシャルルも今度は演技ではなく本当に呆れてしまう。

 

だが時間は稼げた。その一瞬の隙で甘井は狼男に触れる。「流石に生物だから糖分あるよな……」

何かが吸い取られるような感覚があり、距離を取るが狼男は強い頭痛に襲われた。

 

「俺は手で触れることを通して糖分を吸収したり、与えたりできる。さっきみたいに糖分をお菓子に変えることだって可能だ。」術式の開示で通常よりも多くの糖分を得て甘井は低血糖から回復する。ぐったりとしていた甘井の目に再び光が宿った。そのままフラフラの狼男の前に回り込んで飴玉を2つ飛ばして狼男の両目に命中させる。目潰しだ。

 

「ぐあああぁぁぁぁ!!」「今だ!」

 

シャルルが前方から甘井を飛び越して迫る。呪力を感知し振り払おうとするも、「ある程度近づけば切れた髪の毛も操作できるのよ」と自慢げに言う麗美によって腕を刺される。2人に夢中で接近に全く気づかなかったのだ。

 

「反転術式を使えるやつはぁぁぁ脳!」と叫びながら脳にG戦杖をブッ刺しシャルルがトドメを刺した。

 

まだ警戒心を解いていなかった3人だが、5ポイントが入ったというコガネの知らせで顔を見合わせ、一気に顔を綻ばせる。「「「……やったあああ!!!」」」

 

――呪霊を通して戦闘を見ていた羂索は、3人が無事術師を倒したことに満足する。「そろそろ、私も動かないとね」ーー

 

その一方で狡猾どころじゃない3人の戦い方に裏梅はドン引きしていた。今は霜凪一発でどうにかなるとはいえ、これから更に強く狡猾になると思えば「仲間で良かった」と思うのであった。

 

3人は勝利の喜びを噛み締めている。もう誰かに従うだけの人間ではないのだ。

麗美は2人に駆け寄り肩を叩く。

 

「私達、案外戦えるじゃない!」




麗美が狼男と戦うことで成長して欲しいなと思った次第でした。裏梅はドン引き担当かな。
現在春休みなのでじゃんじゃん更新していく予定です。

2026/03/06追記
シャルルがシャルルっぽくなくて泣く。次回は漫画ネタ入れたいしフランス語言わせよう。
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