ブルーアーカイブ ―Cyber Troopers in Another Sky―   作:C03-HELIOS

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 リアル多忙につき遅くなりました。

 どうかお楽しみください

 追記
 2026年5月15日 読みやすくするため一部描写を削除


第二話 反転攻勢!――Strike back

 カタカタヘルメット団を追い払った後、改めて自己紹介を交わした先生と廃校対策委員会の面々。

 

「シャーレの支援のおかげで今回は凌げましたが、まだ安心できません

 ……最近になって、ヘルメット団の攻撃が急に激しくなったんです」

 

 アヤネが深刻そうに言うと、他のメンバーに口々に話し始める。

 

「アイツら、ここ最近は毎日のように襲撃してきているの。もう、うんざり!」

 

「そうそう。さすがに回数が多すぎてねえ~。物資も弾薬も底を尽きちゃっていたから、さすがに覚悟したよ。

 とても良いタイミングで現れてくれたね、先生」

 

「VRもいっぱい出して来ていましたからね~。

 前までは一機居れば多いくらいだったのに、最近は二機居るのが当たり前になっていましたから」

 

「ん。おかげで弾薬の消費がバカにならなかった」

 

“アヤネ、ヘルメット団の攻撃が激しくなった時期っていつ頃?”

 

「は、はい……確か、私が手紙を出す前日くらいからなので……一週間くらい前でしょうか」

 

“(……私がシャーレに赴任した日から……?)”

 

 何か頭に引っかかる物を感じた先生だったが、それを深く考える前に……。

 

「というわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」

 

「えっ⁉ ホシノ先輩が⁉」

 

「うそっ……⁉」

 

 ホシノの提案とセリカ&アヤネの一年生コンビの驚きの声に中断された。

 ……計画を提案しただけで、こんなに驚かれる先輩with会長ってどうなのか?

 

「いやぁ~その反応はいくら私でもちょーっと傷ついちゃうかなー

 おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー」

 

 さすがにホシノも不本意だったらしく、冗談交じりの不満の声を上げている。

 

「で、どんな計画?」

 

「ヘルメット団は、明日になったらまた攻撃して来るはず。

 セリカちゃんも言っていた通り、最近はうんざりするほどのハイペースだったからねー」

 

 そして、ホシノは広げた地図の一点を指さす。

 

「だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。

 今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」

 

「い、今からですか?」

 

「そう、今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし。

 それに、VRもまともに動かせないはずだしね~」

 

「あっ……確かにVRの操縦にはかなりの集中力が要りますから、さっきの戦闘で消耗した今なら……」

 

「VRを動かせる余裕が無い……って事ね!」

 

「ん。ヘルメット団の前哨基地までは30km程度。今から向かえば、十分に行ける」

 

「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思ってないでしょうし」

 

「た、確かにそうですが……先生はいかがですか?」

 

 廃校対策委員会のみんなに同意したいけど、明らかに迷っている様子のアヤネ。

 それに先生は静かに一言。

 

“私も同意するよ”

 

 その答えを待っていました、とばかりに元気よく装備を準備し始めるのはホシノ、シロコ、ノノミの三人。

 

「よっしゃ、先生のお墨付きも貰ったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」

 

「善は急げ、って事だね」

 

「はい~それでは、しゅっぱーつ!」

 

 そして、あっという間に準備を整えるや否や、そのままピューッ! という効果音が聞こえてきそうな勢いで、教室を飛び出していった。

 

「ちょっ、ホシノ先輩たち、早すぎるってー!」

 

「ま、待ってください! まだ準備が!」

 

 その速さについて行けずアタフタする一年生の二人。

 しかし、すぐさま準備を終わらせると、そのまま三人の後を追うように教室を飛び出していく……前にアヤネが立ち止まった。

 

「先生も一緒に!」

 

“うん、行こう”

 

 そして、先生と廃校対策委員会の面々は、ヘルメット団の前哨基地に出発していった。

 

 

――一時間後

 

「カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました」

 

 車に残ってオペレーターを務めるアヤネの無線が響く。

 ちなみに先生も同じ車に乗っており、シッテムの箱を使って他の皆の様子を確認している。

 

「半径5km圏内に、敵のシグナルを多数検知。おそらく敵もこちらが来たことに気づいているでしょう。

 ここから先は実力行使です!」

 

 先生の持つシッテムの箱にも、アヤネの言った通りの状況が映し出されていた。

 ヘルメット団はアジト――地図によれば放棄された工場跡――を中心に迎撃する態勢を整えていた。

 VR部隊を中央に、他の団員を両翼に配置する……いわゆる鶴翼の陣に近い形だ。

廃校対策委員会はそこに真正面から突っ込んでいく形になっている。

 

『こちらホシノ。敵のVRを見つけたよー。今、映像送るねー』

 

 アヤネのタブレットにホシノからリアルタイムの映像が送られてきた。

 その映像には、廃工場の正門を塞ぐように守りを固める三機のVRの姿がある。

 VOXダニーやVOXルーと共通のデザインラインを持つその機体たちは、【VOX】シリーズと呼ばれる機種に間違いなかった。

 そして、シッテムの箱のVR識別アプリが各機のデータを表示していく。

 

 

【VOXダン】

●型式番号 SAV-350/D-101

 

●簡易解説

 シュンポシオンを構成する企業の一つ【ADX重工】が開発・製造している第三世代型VR【VOX】シリーズのバリエーションの一つ。

 ダン型は各種ミサイル兵器による後方からの火力支援を目的とした支援攻撃型。高い総合火力に後衛機としては及第点の装甲と機動力。そして優秀なコストパフォーマンスを誇る名支援機である。

 

●備考

 キヴォトスにおいて最も多くみられる機種の一つ。

 後衛でのミサイルを主とした支援射撃に特化した機体であるため、近距離戦闘に持ち込むのを推奨。

 ただし、本機は前衛役の機体と一緒に運用される事が極めて多く、近距離戦闘に持ち込むのが困難な場合もあるために注意されたし。

 

 

 

【VOXボブ】(【VOXボブ1号】)

●型式番号 HBV-350/B-240

 

●簡易解説

 シュンポシオンを構成する企業の一つ【ADX重工】が開発・製造している第三世代型VR【VOX】シリーズのバリエーションの一つ。

 ボブ型はドルドレイを参考に重装甲・大火力をコンセプトとした重戦闘型。

 第三世代型VRトップクラスの重装甲に、ドリルやクローランチャーなどによる近~中距離での高い火力を併せ持つ。特性上、戦線突破・拠点防衛において高い性能を発揮する。

 最新型であるボブ2号型との区別のためボブ1号型と呼称される場合もある。

 

●備考

 超重装甲かつ近距離での火力が極めて高いため近接戦闘は危険。機動性の低さと遠距離での手数の少なさから遠距離からの射撃戦での対応を推奨。

 可能であれば装甲貫徹能力の高い武器による速攻が望ましい。

 

 

【VOXボブ2号】

●型式番号 HBV-350/B-242

 

●簡易解説

 シュンポシオンを構成する企業の一つ【ADX重工】が開発・製造している第三世代型VR【VOX】シリーズのバリエーションの一つ。

 B-240ボブ1号の同型異種機となる重戦闘型。脚部をVOX-J系列のモノに換装する事で、機動性と引き換えに積載量と機体剛性の強化に成功しており、増加した積載量を装甲増設に回すことで防御面も大きく向上している。

 

●備考

 基本的にボブ1号と変わらないが、更なる装甲強化によりキヴォトスの一般的な銃火器では歯が立たないレベルの防御力を獲得している。

 より高火力、高装甲貫徹能力を持った武器による速攻を強く推奨。

 

●警告

 本機は発表されてから間もない最新鋭VRであり、現状ではADX重工を中心としたシュンポシオン社内のごく一部で運用されているのみで、一般には流通していない機体である。

 遭遇した場合、何らかの形でADX重工およびシュンポシオン社が深く関与している可能性が極めて高いのを留意すべし。

 

 

 

(シュンポシオン社が深く関わっている……?)

 

 思わぬ情報に一瞬だけ思考が停止した先生だったが、すぐに気を取り直す。

 

“みんな、敵が思った以上に厄介そうだけど、作戦通りに!”

 

『『『はい!』』』

 

 先生の言葉に応えながら、対策委員会の面々が移動し始める。

 ホシノが最前衛、セリカが中衛、ノノミが後衛。

 先生のきめ細やかな指示によって、それぞれが互いをカバーできるかつ、面攻撃によって一網打尽にされない……そんな絶妙なポジションにつく。

 

 その動きを邪魔するかのようにヘルメット団からの攻撃も始まった。

 VOXダンの大型ミサイルランチャーがパズルのように変形・展開し、長大な大型ミサイルを発射したのを皮切りに、団員が持つ各種銃火器、VOXボブのビームカッター、装甲車の機関銃などが一気に発射される。

 

 しかし、歴戦の猛者な対策委員会メンバーたちには通用しない。

 嵐のような攻撃を障害物や地形を巧みに利用しながらしのぎ、その上で的確な反撃をかましていく。

 無論、先生の指揮のおかげでもあるが、彼女たちの実力の高さが無ければ成り立たない事でもある。

 

『ふげっ⁉』

 

 迂闊に頭を出したヘルメット団員の頭に、セリカのヘッドショットが炸裂する。

 

『ぎゃっ!』

 

 障害物の影から突如として飛び出したホシノが、驚きで足を止めたヘルメット団員を仕留める。

 

『あばばばば⁉』

『ひげえっ』

『どわーっ』

 

 対策委員会の側面に回り込もうとしていた小隊が、ノノミの放つ弾幕を浴びて一瞬で壊滅する。

 その上、少しでも負傷しようものなら、アヤネが操るドローンが治療キットなどを的確に送り込むため、

 

 これだけでもカタカタヘルメット団の不利は明らかだが――最大の問題は、主力であるはずのVRの動きが明らかに『悪い』事だ。

 

 VOXボブ1号、2号が重装甲と大火力を活かした前衛役として暴れていれば、先生指揮下の対策委員会でも簡単とは行かなかっただろう。

 しかし、その二機の動きが明らかに『悪い』のだ。いくらVOXボブ1号と2号の機動性が低いとはいえ、全ての動作がワンテンポ以上遅れているのは可笑しい。

 まだまともなVOXダンの方も、攻撃にラグがあったり、仲間への誤射があったり、変な方向に攻撃したりだの、明らかに様子がおかしい。

 

(さっきの戦闘で消耗している事を考えても動きが悪い……もしかして、慣れてないのか?)

 

 対策委員会の面々から。

 

『カタカタヘルメット団はずっとアファームドJ系列機だけを使っていて、毎日のように襲撃してくるようになってからVOX系列機が混ざるようになった』

 

 という情報を聞き出していた先生。

 これに『シュンポシオン内でしか運用されていないはずの最新鋭機を何故かヘルメット団が使っている』という情報を組み合わせると……。

 

(……カタカタヘルメット団の裏にシュンポシオンがいる?)

 

 嫌なキナ臭さを感じたものの、今は目の前の戦闘に集中すべきと先生はモニターに目を落とす。

 既にヘルメット団員の3割以上が戦闘不能状態だ。現在進行形でその数は増えて行く。

 

(戦況は順調。作戦通りならそろそろ……)

 

『ん、先生。準備できた』

 

 無線機から聞こえてくるシロコの声。

先生は間髪入れずに告げる。

 

“シロコ、やっちゃって! みんなも用意!”

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 カタカタヘルメット団がアジトとする廃工場の中にある、大きな倉庫の何の変哲もない暗い廊下。

 その天井に設置されていた換気口の蓋がゴトリと動く。

 恐ろしいほど静かに蓋は引き込まれ、開いた穴から一人の少女が飛び降りてきた。

 

「ん、侵入成功」

 

 アビドス高校の制服を纏う狼耳を持つ銀髪の生徒――シロコだった。

 彼女は周囲を見渡し、ヘルメット団員たちが来ない事を確認してから素早く走り出す。

 多少の足音が響くが、外から聞こえる戦闘の轟音にかき消されるため問題ない。

 

「先生の予想通りならこっちにあるはず」

 

 シロコが目指しているのは、倉庫の中央にある巨大な保管スペース。

 

「ん?」

 

 さっ、と近くの障害物に身を隠すシロコ。

 直後、カタカタヘルメット団員たちの焦ったような声が近づいてくる。

 

「くそっ! もう三割近い仲間がやられたってよ!」

 

「ボスからだ! 警備の奴らも全員出ろとよ!」

 

「良いのか⁉」

 

「アビドスの奴らは少数だ! ここまで来れる余裕は無い!

 それより今すぐ行かないと門がヤバいんだよ!」

 

「くっそー!」

 

 ドタバタと急ぎながら駆けていくカタカタヘルメット団員たちは、隠れているシロコに気づくことも無く通り過ぎていった。

 

(警備が居なくなったってことは、チャンスだね)

 

 シロコはスルッと障害物の陰から抜け出すと、さっきのカタカタヘルメット団員が走ってきた方向に向けて足を進める。

 数十秒も立たないうちに大きな鉄製の扉が現れた。

 

 完全に消えかけた『完成品保管室』の文字と、その上から適当に張り付けられた紙に書かれた『CISボートの部屋』の乱雑な文字。

 

「あった!」

 

 CISボート……正式名称は【Cockpit Interface System BOAT】

 シュンポシオン社がVRの操縦用に開発したコクピット型の大型筐体である。

 基本的に全てのVRはCISボートを使用しての操縦が大前提であり、VRを導入する=CISボートを導入するレベルの必需品だ。

 逆に言えば……CISボートを抑えられればVRは無力化できる。

 

 シロコはゆっくりと鉄扉を開ける。

 何か分からない破片、錆びた鉄の部品類、スクラップ同然の金属片の山、劣化したケーブルの束などが無造作に置かれた、殺風景な大きな空間が広がる。

 しかし、そんな空間に似つかわしい、近未来的な装置がど真ん中に鎮座していた。

 アニメのロボットの密閉式コックピットだけを取り出して設置したような、大型の筐体。

 それは間違いなくCISボートだった。しかも三台。

 これを無力化すればヘルメット団のVRは無力化されるはず。シロコはヘッドセットに手をかける。

 

『ん、先生。準備できた』

 

 待ってましたとばかりに即座に返事が返ってくる。

 

『“シロコ、やっちゃって! みんなも用意!”』

 

 シロコは飛び出すような勢いで、一つ目のCISボートに近づき、小さなハッチを手慣れた手つきで開ける。

 その中には大きな一つのレバーが鎮座していた。横には『緊急停止・解放レバー』の警告文も見える。

 シロコは躊躇なくそのレバーを思いっ切り引いた。

 

 プシュー!

 

 そんな圧縮空気が吹き出る音と共に、CISボートの前面上方部分が戦闘機のキャノピーのようにパカっと開く。

 

「えっ、えっ、えっ⁉」

 

 突然、CISボートが開いたことに驚いた声を漏らすカタカタヘルメット団員。

 頭に嵌めていた半固定式の大型機械式バイザーゴーグルを外し、周囲を確認しようとするが。

 

「じゃ」

 

「ぎゃあ⁉」

 

 シロコの容赦ない弾丸が意識を刈り取った。

 

「まずは一つ」

 

 シロコは気絶したヘルメット団員には目をくれず、二つ目のCISボートへと走る。

 さっき開けた物と同じレバーを引こうとしたが……。

 

「むっ」

 

 レバーを隠しているハッチに鍵がかけられていたせいで無理だった。

 新型のCISボートにつけられたロックシステム。悪意ある者に緊急停止・解放レバーを使われて無力化される危険性を防ぐため、レバーのあるハッチそのものをロックできるようにしたシステムだ。

 ちなみにCISボートそのものは、7.62mmフルジャケット弾の連射にも軽く耐える強度を持っており、今のシロコじゃ短時間で強引に突破するのは無理だ。

 

「仕方ない」

 

 シロコはCISボートの後ろに回る。

 そこからは電源ケーブルや通信ケーブルなどを収めた太いケーブルが伸びていた。

 シロコはそのケーブル目掛けて愛銃の弾丸を叩き込む。

 本体は十分な強度を持つCISボートだが、ケーブルまで頑丈なわけではない。

 1マガジン全部を叩き込まれたケーブルは、完全に被膜が破れ、中身の金属線をズタズタに切り刻まれていた。

 

 プシュー!

 

 さっきと同じく圧縮空気の音と共にCISボートが開く。

 電力供給が絶たれるなどの致命的な異常事態が起きた時、中のパイロットが閉じ込められるのを防ぐ緊急脱出システムが起動したのだ。

 ただ、これが起動したという事はパイロットにも異常事態であることが伝わっている。

 CISボートから転げ落ちるように飛び出したカタカタヘルメット団員は、アサルトライフルを構えようとしていたが……。

 

「ふん」

 

「ふげっ⁉」

 

 あらかじめ構えていたシロコに撃ちぬかれて気絶する。

 シロコは急いで三つ目のCISボートに駆け寄る。これも新型のようだったので、後ろに回りこんでケーブルを壊そうとするが……。

 

「うっ……」

 

 ケーブルがあるはずの場所は、金属製のいかにも頑丈そうな装甲とパイプに置き換えられていた。

 最新型のCISボートにしか使用されてない防弾装甲ケーブルパイプ。12.7mm弾の直撃にも耐える触れ込みのそれは、シロコの今の武器ではすぐに破壊できない代物。

 

「まずいかも」

 

 シロコの耳には、こっちに急いで近づいてくる何人ものヘルメット団員の足音が聞こえ始めている。これ以上、時間をかけたらこっちが危うい。

 シロコは慌てて周囲を見渡し……ある物を見つけた。

 それはカタカタヘルメット団員の武器置き場として使われていたらしい一角。

 アサルトライフルやマガジン、ヘルメット、拳銃などが置かれているが……そこにあったのだ。

 ――RPG-7。旧式の対戦車ロケットランチャー。ご丁寧に対人・対装甲車戦闘を想定した徹甲榴弾仕様の弾頭までついている。

 

「ん!」

 

 目を輝かせながらシロコはRPG-7を手に取り、それをCISボートへと向ける。

 ドン! と発射されるロケット弾。

 それは見事にCISボートの後ろに命中し……パイプはもちろん、CISボートそのものを吹き飛ばす大爆発を引き起こした。

 

「ぎゃああああ!!!」

 

 木霊するパイロットと思しきヘルメット団員の悲鳴。

 直後、鉄扉を蹴破るようにして複数のヘルメット団員が突入してきた。

 

「な、なんじゃこりゃー⁉」

 

 リーダーらしき赤いヘルメット団員が、目の前の惨状に叫んでしまう。

 しかし、そのせいでRPG-7を再装填するシロコの姿を見つけるのが遅れてしまった。

 

「ん!」

 

 リーダーたちがシロコに気づいたのは、彼女がRPG-7を発射したその時だった。

 弾頭はヘルメット団員たちが対応する間もなく、彼女たちのすぐ目の前の地面へと命中し、爆発した。

 

「「「「うわああああああ⁉」」」」

 

 無双ゲーの雑魚キャラみたいに吹っ飛んでいくヘルメット団員たち。

 彼女たちを尻目にシロコはRPG-7を放り投げると、懐から取り出した煙幕手榴弾も投げる。

 猛烈な勢いで白い煙に覆われていく倉庫から、シロコは急いで脱出していくのだった。

 

 

 ――その頃、外では

 

「嘘だろおお⁉」

 

「どうなってるんだ⁉」

 

「こ、この、ポンコツー!」

 

 VOXダンが突然、停止したのを皮切りに、VOXボブ1号、VOXボブ2号も停止したせいで、カタカタヘルメット団員たちは大混乱に陥っていた。

 いくら動きがポンコツとはいえ、VOXダンの支援火力、VOXボブ系二機の重装甲・大火力は本物。特にVOXボブ系の二機は『盾』としては抜群の存在感を放っていた。

 しかし、それが全部まとめて消えたのだ。戦術が根底から覆ったも同然だから、大混乱も当然と言える。

 ただでさえ不利な状態だったカタカタヘルメット団にとって、その大混乱は致命傷だった。

 

“みんな、今の内に制圧するよ!”

 

 先生の合図で、対策委員会の面々が一気呵成に攻めかかった。

 特に時間稼ぎのタンク役として、消極的な戦闘を強いられていたホシノの勢いがもの凄い。

 うへえー、という気の抜けた声を出しながらも、混乱するヘルメット団員たちに急速接近。そして、容赦なくショットガンをぶちかましていく。

 

「ひぎいっ!」

 

「ぐへっ」

 

「ふぎゅっ⁉」

 

 VRが動いていた時とは比べ物にならない速度で文字通り殲滅されていくヘルメット団員たち。

 その後ろではミニガンの集中砲火を浴びたテクニカルが炎に包まれているし、正確な銃撃によってバタバタと倒れていく団員たちの姿もある。

 

「みんな落ち着け、動揺するな!」

 

 そんな中、カタカタヘルメット団に唯一残されたテクニカルの上から、この基地のボスらしき赤ヘルメットに団員が声を張り上げた。

 

「こっちの方が数では上なんだ! 包囲して攻撃を浴びせろ! たった3人相手に負けたとあったらウチらの沽券にも関わるぞ!

 ……うん? おかしいな? アイツら4人居るはずだよな……?」

 

 直後、テクニカルの後ろから大量のマイクロミサイルが現れる。

 シロコのドローンに装備されたやつだ。

 

「げええっ⁉」

 

 慌ててテクニカルから飛び降りようとするが時すでに遅し。

 マイクロミサイルはテクニカルの燃料タンクや弾薬類を巻き込みながら、カタカタヘルメット団のボスへと命中し、そのまま大爆発を起こしたのだった。

 

「ぼ、ボスううううー⁉」

 

「ボスがやられちまった⁉」

 

「もうおしまいだー!」

 

「ひ、ひえええええ!!!」

 

「み、みんな逃げるぞ!」

 

 ボスが呆気なく撃破された事は、カタカタヘルメット団の戦意を完全にへし折っていた。

 各団員はまるで蜘蛛の子を散らすように遁走を始める。

 ちゃんと仲間意識はあるのか、気絶したり戦闘不能になった団員などを、担いだり抱えたりしてから逃げていくのが分かる。

 先生としても対策委員会にしても逃げてくれる分には手間がかからないので、牽制射撃を続けて逃亡するように仕向けていく。

 

 結果、カタカタヘルメット団員たちは、装備をその場に放り出すくらいの体たらくで逃げ去っていくのだった。

 

『ヘルメット団の反応、どんどん離れていきます。私たちの勝利です!』

 

 嬉しそうなアヤネの声が無線機から聞こえてくる。

 

“戦闘終了だね。みんなご苦労様”

 

「これで昼寝も捗るかなー。ありがとうね先生~」

 

 戦闘直後とは思えないポヤポヤした雰囲気のホシノが、のんびりとした口調で言う。

 

「ホシノ先輩はもうちょっとシャキっとしてください!」

 

 駆け寄ってきたセリカが、ちょっと怒ったように言うが、ホシノは全く堪えた様子が無い。

 

「でも、ホシノ先輩の言う通り、しばらくはのんびりできそうですね~☆」

 

 ノノミがそんな事を言いながら、先生たちの方へと歩いてくる。

 

『はい、まだまだ問題は山積みですが、ひと段落はつけそうです。

 ……これも先生のおかげです。ありがとうございました!』

 

 アヤネがそうお礼を先生に告げた時、セリカが一人キョロキョロと辺りを見渡し始めていた。

 

「そう言えばシロコ先輩は?」

 

「うーん? おじさんは見てないよお?」

 

「そう言えば、戦闘が終わってから姿が見えていませんね~?」

 

 ホシノとノノミの二人も辺りを見渡す。が、シロコの姿は見えない。

 

“まだ工場の中にいるんじゃ?”

 

「……もしかしたらシロコ先輩、何か金目の物を見つけたのかも……」

 

「「「『……あ~』」」」

 

 対策委員会の面々から呆れたような納得したような声が漏れる。

 

「シロコちゃんならあり得るね~」

 

「だったら私たちも入ってみましょうか~☆」

 

「もう、シロコ先輩ってば……」

 

 そう言いながらも工場の門へと向かう三人+先生。

 ……と、思ったら、シロコが現れた。

 

「ん! みんな!」

 

 目をキラキラ輝かせながら、テンション高く話しかけるその姿は、まるで宝物を見つけた元気いっぱいな子犬の様。

 ……自分たちの想像が当たっていることに気づいてしまった、対策委員会の皆が『あー……やっぱりかー』みたいな表情になってしまう。

 

「凄いものがあったから、来て!」

 

 そう言うや否や、みんなの反応も見ないまま、彼女は廃工場の奥へと走り去ってしまった。

 

「ちょっ、シロコ先輩、待ってよー!」

 

 慌てて真っ先に追っていくのはセリカ。

 その後ろから、ホシノとノノミが『仕方ないな~』とでも言いたげな雰囲気のまま、早歩きくらいの速度で追いかけていく。

 そして、先生とアヤネの二人は、苦笑いを浮かべながらも、四人の後を追っていった。

 

 

 

 数分後

 シロコが対策委員会と先生を案内したのは、廃工場の奥にある倉庫の一つだった。

 入り口からは一番遠い倉庫であり、戦闘にも一切巻き込まれていない様子だ。

 その倉庫の中、タンク・キャリアーを改造したと思しき輸送車の荷台に、二機のVRが乗せられていた。

 

「これ!」

 

 普通のVRより一回り以上に大型な躯体。

 鮮血を思わせる鮮やかな真紅のカラーリング。

 頑丈な装甲を幾重に重ねて組み立てたような、いかにも重装甲そうな機体。

 右腕に装備されるのは全高を凌ぐほどに長く巨大なバズーカ・ランチャー。

 異常に大きな両肩には、明らかに何かの兵装が搭載されているのが分かる。

 

 明らかにさっき戦ったVOX系列機体とは『格が違う』VRだ。

 

「――まさか【ライデン】?」

 

 セリカが深刻そうな顔でそう呟いた。

 

「え⁉」

 

 それに驚くのはアヤネ。シロコ以外の他のみんなも多かれ少なかれ、驚いたような表情を浮かべている。

 

「そ、そんな、なんでヘルメット団がライデンなんか保有しているんですか⁉」

 

 アヤネの声は明らかに動揺していた。

 

「しかも二機も……一体どこで手に入れたんでしょうね~?」

 

 ノノミも心底不思議そうにしているが、雰囲気が硬い。

 

「…………」

 

 ホシノに至っては、いつもの昼行燈さが嘘のように、鋭い視線を向けるだけだ。

 

“みんな”

 

 そんな中、先生が口を開く。

 

“このVR……そんなにやばいの?”

 

 それに真っ先に反応したのはセリカだった。

 

「やばいってもんじゃないわよ!」

 

 その表情はとても焦っているようにも見えた。

 

「このVR……【ライデン】は、『単機で小規模学園を制圧できる』バケモノVRなのよ!!!」

 

 

 

 

 

 某所

 

「なに? ヘルメット団の前哨基地が壊滅しただと?」

 

「はい。どうやらアビドス廃校対策委員会による攻撃を受けたようです」

 

「馬鹿な。不法占拠者どもは校舎の防衛すらままならない程の物資不足のハズ。いくら【暁のホルス】が強かろうと、物資不足ではまともに戦えん。

 そんなのがどうやって前哨基地を落とすと言うのだ!」

 

「未確認情報ですがシャーレの『先生』が関わっているとの情報が入っています」

 

「……先生だと? 確か、弾薬や物資類を大量に持った状態を目撃されたのを最後に、消息を絶っていたはず……まさか!」

 

「そのままアビドス高校に向かったというのか⁉ 物資を渡すために⁉」

 

「……ならば前哨基地が壊滅した説明もつく。

寄せ集めの部隊を指揮してドルドレイを無傷で倒すバケモノが、アビドス廃校対策委員会という猛者たちを指揮しているのだ。生半可な戦力では太刀打ちできまい」

 

「くっ、よりによって一番邪魔な所に現れおって……」

 

「我らの計画が露見する可能性はどうなっている?」

 

「現状では無い……とは言い切れません。間の悪い事に、前哨基地にはADXからの支援物資として第二世代型VRが配備されたばかりでした。

 情報に疎いアビドス、キヴォトスに来たばかりの先生であれば気づかれない可能性はありますが、もしも気づかれた場合、尻尾を掴まれる可能性があります」

 

「希望的観測が混ざっている現状認識は現状認識ではないぞ!」

 

「あの先生の事だ、どこからかVRの情報を手に入れていても不思議ではない!」

 

「最悪なのは先生から連邦生徒会に露見する事だ。

 いくら超人が居なくなり弱体化したとはいえ、未だにその力は強大な事に変わりはない。

 彼奴らにこのような違法行為が露見すれば真っ先に叩かれるぞ」

 

「それで済めばいい。ゲヘナのコウモリ共も問題だ。

 奴らは雷帝と組んでいた我らを相当に恨んでいるからな。下手をすれば『アビドスを救う』の大義名分の下、嬉々として襲撃をかけてくるぞ」

 

「【暁のホルス】に続いて【白の魔王】まで来られたら戦略が崩壊しかねんぞ!」

 

「……止むを得ん。来たばかりで悪いが、奴にはここから退場してもらおう」

 

「それでしたら、実は少し興味深いお話が」

 

「ほう?」

 

「先の壊滅した前哨基地にいたヘルメット団ですが、どうやらアビドス廃校対策委員会の誰かを誘拐する計画を立てているようです」

 

「……それは使えそうだな」

 

「『誘拐された生徒を救出しようと向かったところ……』か、建前は十分だな」

 

「ならばこちらでもっと良いシナリオを用意してやれ。

『アビドスへの復讐のためにブラックマーケットで傭兵を雇ったが、そいつがやりすぎた』……とな」

 

「分かりました。準備いたします」

 

 




銀行強盗が趣味なシロコなら、こんな破壊工作も行ける行ける!
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総合評価:762/評価:7.43/連載:17話/更新日時:2026年05月12日(火) 00:20 小説情報

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