もう間もなくとある列車が来るであろう時間、左手の甲に埋め込まれているラピスラズリを加工した正六面体の魔術礼装を確認する。
「……しきりにその手のやつ見てるけど、なんか心配事でもあるのかしら?」
「いえ、特にこれといった異常はありません」
「なら執拗にそれを見るのはやめなさい、周りが見てるわよ」
「おや、これは失礼。見られたところで弱点にはならないので問題は無いのですがね」
「それでもよ、一応それあなたの秘奥に繋がってるのでしょう?取られたらどうするのよ」
「その程度で何とかなるならその者は
「はぁ……貴方がいいなら私は何も言わないわよ、面倒事になっても面倒は見ないから」
「えぇ、構いませんよ」
静かに魔力を滑らせ既に解き放っている使い魔越しに列車の様子を見る。無事問題なく到着しそうではある、少し仕込みを線路経路で組み込んだからどうなるかと思ったが……この分だとバレてないな。
「おや、あちらにいらっしゃるのは……オルガマリー様、挨拶に行かれてはどうですか?」
少し離れた所にいるロード・エルメロイ二世を見つける、少し誘導してやれば素直にそちらへ向かうオルガマリー。いやはや年若いとはいえ魔術師としては素直すぎないか?
今後はトリシャと共に腹芸くらいは仕込むべきかな、ロードの代理として出席する席は多いわけだし。
「さあ、お嬢様」
「な、何よトリシャ。ファラデーも何よ」
「いえいえ」
「失礼いたしました、また改めて挨拶をさせてくださいませ」
「私も後ほどお伺いさせていただきます。では」
ここで話すには少しばかり列車が到着する時間の方が早いのでここらで解散することに。二世から離れた場所で懐から紙でできた人型を取り出し、隣に立つトリシャへ渡す。
「これを渡しておこう」
「東洋の
「あぁ、君が死ぬ未来が見えたんでな。回避できるならしておきたい」
「私が死ぬ、ですか。まだそういった光景は視えていませんが」
「俺の
「まぁ死ななければ最悪俺が何とかできる。だからその身代わり人形は君が死ぬまで発動しないようになっている、一応高価な素材を使っているからな」
「……またですか、今回は何を使ったんですか」
「素材だけでいえば神代木を使った和紙だな、ただ職人の方は日本で1000年近く和紙職人を排出してる特殊な家系に頼んだ」
「はぁ……」
「ん?なんでため息してんの」
「一体いくら使ったかは聞きませんが、その散財癖はやめておきなさい。如何に自身で稼いだ金とはいえココ最近使いすぎでは?」
顎に手を当ててココ最近の出費を思い出す。正直なところでいえば簡単な家具や消耗品の類は魔術で用意できるためデカイ買い物くらいしかしていない。
「あぁ……そういえば聖遺物とかこの前買ってたな」
「金剛杵とか何に使うつもりなんですか」
「いやぁ、ちょうど安くなってたもんで」
「はぁ……」
「とりあえずその話は後にしよう、列車が来るぞ」
「えぇ、きちんと後で話し合いましょうね、きちんと 」
思わず目を逸らす。逸らした先にあったオレンジに近い銅色の目と合う、その目はニマニマと笑っていてこちらの失態に笑っていることを示していた。
「課題増やしますよ」
「んな!それは理不尽じゃない!」
「人を煽る悪い子に育てた覚えがないので、これも教育の一環ですよ」
「意地悪すぎないかしら!?」
ケタケタと悪い笑みを浮かべてやる。原作よりかは……元気が良い、活きがいいとも言うか。主従ではあるが、俺の感覚としては手間のかかる妹であり、1度影からこっそりとオルガマリーのつぶやきを聞いたことがあるが俺のことを兄と認識しているらしい。
この世界線ではFGOは起きないが……それでも危険は至る所にある。頑張らないとねぇ。