イーフェと奇妙な館   作:イーフェの手記

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第16話 コミュ障コンビ、ゲーセンに行く

昼食後。

 

「さて、なにしよっかな」

 

ニトス達は重い空気になっていたが、俺には関係ない事である。

特に普段と変わらず、ふつーに昼食を終え、俺以外の全員が散り散りになった。

俺だけがリビングに残り、スマホをやってゴロゴロしている。

 

「ナビとは始めて会ったがあんな感じか〜。

あれが賭けの胴元。

どう機嫌を取っていくかね〜。

あっ、そだ」

 

例のイヤホンを入れていた事を思い出し、俺は取り出す事にした。

おっ、通信可能じゃん。

 

「もしもし」

『……イーフェか』

「あっ、ロンドさん。ロウリィさんは?」

『ぬお〜、なにやら猛烈に遊びたくなってきた〜』

「ロンドさん!?」

 

気でも狂ったんか!?

 

『という訳でイーフェ。

ゲームセンターコーナーに行かないか?』

「えっ? どういう目的で?」

『……遊びたいだけだ』

「絶対嘘だろ!」

 

不自然すぎるわ!

 

「『…………』」

 

謎の間が続く。こ、これは!

コミュ障2人が揃ってしまった時、特有のコンボ!

 

「い、行きますか? ゲーセン」

『うん』

 

なんか沈黙に耐えられなくて、行く事になった。

 

*

 

「す、すごおおおお! なんだここは!

素晴らしすぎる!」

 

俺は感動していた。

このゲーセン、入り口にある機械で好きな筐体を出したり、消したりして、自分の思うゲーセンを作れるのだ!

いや、屋敷紹介で機能としては知ってたけども、実際に見てみると全然感じ方が違う! なんて素晴らしい光景なんだ!

なにせ、とっくの昔になくなってしまったゲームも出せる訳で……。

 

「コード・オブ・ジョーカー!

コード・オブ・ジョーカーじゃないか!」

 

俺がむかーしにやっていたカードゲームの筐体も出せる。

これは凄いぞ!

 

『クレーンゲームはどうなっている?』

「なんだ? ロンドさんはクレーンが好きなのか?」

 

今のクレーンやメダルばかりのゲーセンじゃない昔のゲーセンが、この場なら実現出来るってのに。

クレーンだなんて不粋だなぁ。

 

「まぁ、でもどんなのが出せるか見てみるか」

 

俺は入り口でクレーンを弄ってみる。

ふむ……作品名などのジャンルごとに五十音に分かれているが、量が膨大すぎる。

 

「適当な作品を検索するのがいいかな」

『良いのではないか?』

「じゃ、競輪!」

『作品名では……?』

 

検索をかけると競輪関係のグッズがズラッと出てくる。

こいつは良いなぁ。

 

「当たり車券で検索! 0件……だと?

馬鹿な! そんな事ありえる訳がない!

罠だこれは罠だ! トーシュエンが仕込んだ罠だ!」

『普通に順当な結果だ……」

 

なんでないんだよおおおお!

その後も全公営ギャンブルでやったが、出なかった。

 

「ふざけるなああああ!」

『…………』

「ロンドさん! どう思いますか!

粉バナナ事があって良い訳がないと思いませんか!?」

『粉バナナとはなんだ?』

「有名な空耳です!」

『よく分からん……。

だが、イーフェ落胆するには些か早いのではないか?』

「?」

『ここには、あらゆるものがある。

つまりひょっとするとお前の世界になかった景品すら、あるかもしれんぞ?』

「ま、まさか!?」

 

俺はB.B.ライダーと検索をかけた。

すると……。

 

「ぬわああああ!

こんなに沢山のゴリッチュグッズがあああ!

俺をこれが作られた異世界に今すぐ飛ばしてくれええええ!」

『落ち着け……』

 

*

 

それから、俺はしばらくゴリッチュキャラのフィギュアを取ることにした。

ちなみに俺は自力で景品を取れたのが、人生で2度しかない位にクレーンが苦手なので、取れる見込みは薄かったが……。

 

『……離せ』

「ここ! ……おっし!」

 

なんと、ロンドが的確すぎる指示を出してくれて、景品を既に3つも取れていた。

 

『…………難しいものだな』

「えっ? こんな取れてるのに?」

『なぜかアームの強弱がないか?』

「いやそういうもんなんですよ。

一定金額入れないと、取れるくらいのアームの強さにならないんです。

だから、この台が今どれ位入ってる設定なのか見極めるのも、面白い所なんですよ」

『ほぅ……そうなのか』

「まぁ、アームが取れるくらいになったところで、すかしたりとかしたら、またやり直しですが」

 

て、待て。

そんな事も知らんのに、3つも、しかも通信機越しの指示だけで取ったのか?

 

「……やっぱり、ロンドさんは凄いですね」

『なにがだ』

 

今取れているフィギュアは……。

B.B.ライダーに出てくるホームレスのゲンさんフィギュア。

そして、正義の味方ギガトラストに出てくる赤羽糖姫フィギュア。

後、ゾディアークに出てくるフランク先生フィギュアを取った。

主人公が1人。モブキャラが2/3という異様なラインナップだが、こういうキャラがフィギュアになっている事が1番嬉しいのだ。

 

「おっ、このロンドさんの龍曲の龍ぬいぐるみ良くないですか?」

『実物の方が可愛いぞ……』

「そ、そうですか』

 

まぁ、そんな感じでマジで何もなく普通に楽しいひとときを過ごしていた。

 

*

 

「いやー! 大分楽しめましたよ!」

『そうか……』

 

そろそろ夕方かな?

他のみんなは何してるんだろう?

 

『今日は俺も楽しかった』

「はぁ、結局何が目的だったんですか?」

『楽しむ事だ』

「えと」

 

まぁ、確かに微かに楽しんでそうな雰囲気はあったから、否定はしにくいが。

 

『と見せかけて〜』

「どうしたどうした!?」

 

棒読みで急に何言い出す!?

 

「また、気が狂ったんですか!?」

『この方が盛り上がると思ったのだが……」

「そんなのいらないですよ!」

『そうだったか……』

 

なんか落ち込んどる!?

 

『では、正直に言おう。

楽しかったのと、げーせんで遊びたかったのは本当だ。

妻が居た世界に似た様な物があったと聞いていたからな』

「えっ!? 奥さんって異世界人なんですか!」

『あぁ、お嬢の次元調査でたまたま異世界から呼び寄せられた人間でな……』

「へー」

 

このタイプのゲーセンがあったという事は、日本の様な異世界から来た人間かな。

 

『お嬢の実験が完璧な物になったら、妻の世界に一緒に帰る計画もしている……。

今回のげーせんは参考になった』

「はぁ、ちなみに奥さん何者か聞いても?」

『言っても恐らく分からないだろう。なにせ普通の人間だ」

「そうですか」

 

この人の普通って参考にしていいのかな。

一応、奥さんの名前とか聞こうかな? 知ってる二次元作品のキャラの可能性もあるし。

……ま、良いか。知ったところでだしな。

 

『それは一旦置いておこう。

実は分からなかったと思うが、今回の真の目的はそれではない」

「いや、バレバレでしたが」

『なっ!? 莫迦な』

 

どこが馬鹿なやねん。

 

『だが、真の目的を聞けばお前も驚くぞ』

「あぁそれは気になりますね。なんだろう」

『これは……屋敷の情報収集のためだ』

「えっと……どう、驚けば?」

『!?

行動が読めるのか?」

「なんでだよ!」

 

なら、俺は冥王ルシファーと同格か!? んな訳あるか!

なんかロンドに敬語を使うのが、馬鹿らしく思えてきたな……。

 

『ならば、トーシュエンが魂のあるウィルヴィッシュに近づいている事も、この情報収集をもって、この屋敷とゴース家の行き来が可能になる事も分かっているのか……!」

「待て待て待て待てぇ!?」

 

急に情報量が多い! なに!? なんだって!?

 

「ウェルヴィッシュ!? なんでロンド……さんがその単語を?」

『次元を調査していく内、お嬢が見つけ、俺も軽く聞いた。

古代神話世界の用語と聞いている」

 

まぁ、B.B.ライダーの世界からすればそうなるか。

 

「で、トーシュエンがなんでそれに!?」

『言いにくいのだが……』

 

えー、要約すると。

今、自分でシコれんくて我慢すると、理性崩壊してほぼウィルヴィッシュ状態……。

死ねぇい! しょうもなすぎるだろ!

どんな理由でウィルヴィッシュになろうとしとんねん!

過去最低の理由のウィルヴィッシュ化だよ! 絶対悪ディライも呆れるよ!

 

「うちの知り合いがしょうもなくてすまんな」

『友人ではなかったのか』

 

そんなしょうもない理由でウィルヴィッシュ化する奴は知らん。

 

『だが、本人にとっては深刻な問題のようだ』

「いやそれは分かりますよ? 性格上そうだってのはね?

でもなぁ……」

 

化け物になる事に最後まで抗い続けた本編のシュガーを見ている以上、そんな理由でウィルヴィッシュになりますと言われても、さすがに何とかしろよと思ってしまうのだ。

これはゾディアークをプレイした以上、仕方がない。

 

「で、ちなみになんでロンドさんがこんな事を知ってるんですか?」

『カメラだ。

屋敷内に既に無数のカメラが設置されてある。ゴース家製のな』

「えっ!? いつの間に!」

『昨夜、地下ゲートから扉の隙間より這い出て、設置された。

超小型ドローンでだ』

 

マジで気づかなかった……。

 

『ちなみに、シアタールームの先刻の様子も撮れているぞ』

「うわあああ!

ニトスさんの1人遊びはデータ消してあげてくださいねぇ!」

『……もう無駄だ』

 

……そうだったかぁ。

 

『そのカメラでだ。

ナビがトーシュエンに先程の事をリビングで説明する様子が撮れた』

「それで知ったと」

『更には新情報もある』

「新情報?」

『イーフェが、コード・オブ・ジョーカーに無中になっていたついさっき。

俺はお嬢から最新情報を聞かされた。やはりあのナビ……黒だったようだ』

「黒?」

 

ロンドから聞くに、ロウリィが異世界ゲートの鏡の様子をチェックしていると、トーシュエンとナビが地下に現れ、会話を始めたらしい。

そして、途中まではありがた迷惑なナビの様子に怒るトーシュエンでしかなかったのだが、終盤のやりとりが完全にお嬢の琴線に触れた。

 

「ニトスの想い人を簡単に寝とれる、ね」

『お嬢は完全にナビを敵と認識したぞ。

そこで問う。イーフェ、お前はどうだ?』

 

俺、俺か?

 

「まぁ、賭けの胴元ですしね。

悪く言っちゃいけないイメージですが」

『しかし、奴の気分次第でポイントはゼロに出来る。

さらに奴はトーシュエン最優先だ。

イーフェ、お前の扱いはかなり下だ』

 

まぁ、そうだな。

 

「ま、確かに?

心証上げるために電撃まで喰らったってのに、前初めて会った時はなーんもありませんでしたよね。

それってどうかと思いますわ」

『ならば、イーフェもナビを敵と見なすか』

「いや、そこまでは時期尚早です。

俺はナビの事情を詳しく知りません。

ムカつく所はありますが、敵は言い過ぎでしょう」

『ではどうする』

「テキトーに分からせてから、事情を聞き出せれば1番良いんじゃないですかね」

『真なる魔王の力も通じない相手に、か?』

「はい」

 

1番はこれしかないからな。

 

『策はあるのか?』

「痛い目見せる作戦なら一応。

ただ、情報聞き出せるかは分かりません」

『真なる魔王を歯牙にもかけない。

生死も存在しないであろう相手に一矢報いる策がある……だと?』

「あります」

『ポイントで得たスキルは全て奴の掌握下だぞ?』

「知ってます。なので、やるならそちらの力が必要になりますね。

ですが出来ます」

 

断言出来る程の自信はないが、出来る可能性が高いのは事実だ。

鍵は黄泉の国にある。勿論、黄泉の国に送ろうという訳でない。生死の存在しない相手にそんな事をしても何の意味もない。

まぁ作戦が通じない可能性もあるが……その時はゴース家に責任を被せるかなぁ! フハハハハ!!!

 

「ま、ただ俺は無理に敵対するつもりはないです、とだけは強く言っておきますからね。

今は中立です」

『そうか……分かった。

それと……中庭で騒ぎが始まりそうだ。

今は近づかない方が良いぞ』

「え?」

『ハイブリッド……なにか、始める気のようだな』

 

この時の俺はまだ知らなかったのだ。

今、中庭でとんでもない事が始まろうとしていたとは。

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