イーフェと奇妙な館 作:イーフェの手記
中庭近づかない方が良い、との事だが何をしてようかな?
このゲーセンで様子見か?
「いや、1回部屋に帰るか」
ポイントを使って、今後に備えたい。
大量にあるが、これがナビの意思次第でゼロに出来る以上、有意義に使うべきだ。
「よし、色々見てみよう」
俺は手に入れたフィギュアを持って、部屋に帰る事にした。
「ん?」
ふとイヤホンを見ると、応答可の青ランプが消えている。
ついさっきまで会話できる状態だったのに。
忙しいのか、あるいはロンドが言っていたように何かが中庭で起きたのか?
大方、中庭にもカメラはあるだろうか、カメラで見た事件へと対応策でも考えてるんだろうか?
しかし、そのことについては今の俺にどうこう出来ることはない。
「スキル見よっと」
なんか俺だけの特技とかほしいよなぁ。
それでいて、仮に習得した技が取り上げられても経験が役立つようなのなら最高だ。
「シェイプシフター、自在に好きな姿に変身して、自分のステータスに応じた能力もコピー出来る。
カリオン使い、あらゆる聖剣を扱う事が出来る……シンプルだが強いな。
そしてこれは……」
◇
「よし、決まったぞ」
色々強そうな力がたくさんあった。今のポイントなら、習得できそうなものもある。
だが、俺自身がポイントで強くなったとて、ナビのさじ加減で無意味。
「さっき、お嬢がナビと敵対すると言っていたしな。
もしかしたら展開次第で、ナビに力を消されるパターンもありうる。
なら、途中で俺の力を全て消されても成果がゼロにはならないスキルはこれが良いだろう」
まぁ、トーシュエンのとちょっと被るが……。
こっちの方が俺っぽいかな。
合わせて使えそうなスキルも取ると……な、なな700万か。
だが、その価値はある!
「よし習得完了!
まずは手始めに……」
俺は部屋を出て、図書館に向かう事にした。
「はぁはぁはぁ、ふ、ふふふ!」
「なんか居るううう!」
図書館に入ると、早々に図書館全体に荒い息と笑い声が響き渡っていた。
「イーフェか! 今取り込み中だ!
ここを使うのは後にしてくれ!」
「図書館で何やってんですかニトスさん!
っていうか、ココには成人向けの本はないはずでしょう!?」
「この位の微エロの気分だったんだよ!」
えー……。
「ならまぁ、本だけ持って立ち去りますね」
ここは出よう。別の物で試せばいい。
『イーフェ! 話がある!』
その時、ポケットのイヤホンからロウリィの声が聞こえた。
ポケットに入れていても聞こえる音量、という事はつまり。
「む? これは今のお嬢の声か?
イーフェ、お嬢と通信が出来るようになったのか?」
ニトスにも聞こえてしまうよな。
「なっ! ジークが居るのか!
…………い、いや、だが、これはお前にも伝えねばなるまい。
イーフェ、ポケットからイヤホンを出し、どこかしらの台に置け。
ジークとお前に先ほどあった事を説明する」
俺だけでなく、ニトスにも聞かせたい事か。
何だろう?
そう思っていると、ニトスは2階から真剣な表情で降りてきた。
……半裸で片手には、くしゃくしゃのティッシュを持っている。
『ジーク貴様何をしておった!?』
「今はそんなことはどうでもいいだろう」
『さすがに突っ込ませろ!』
「何か大事なことが起きたんじゃないのか?」
『はぁ、まぁその通りだ。
先程、中庭の様子を見ていて分かった事がある。
まず、ナビの正体。
これは私も予想はしていたが、古代神話世界に存在したゾディアーク・ディライだったようだ』
「なんだそれは?」
なに!? ディライだと?
なぜ絶対悪ディライがこんな空間を?
そもそもディライにこんな空間を作る能力はない。
それは、対になる絶対善クーの方の力だ。
……どうやら、俺の知っているディライとは何かが違うようだな。
『イーフェはディライを知っていそうだな』
「えぇ、そうですね。
簡単にいえば、ロウリィさんやニトスさんの世界、全ての原点たる存在でしょうか。
真なる魔王の力も所詮はあの男からの派生物にすぎない」
「なっ! 真なる魔王の力の元という事か!?」
「それどころかニトスさんの居た世界。
更にはその前の世界すらも元を辿れば、あの男1人から誕生しています。
真なる魔王の力とゾディアークの力では格が違いすぎる。
ニトスさんの真なる魔王の力を、あっさり消せたのも納得です」
「そんな神みたいなやつがいるのか……」
「はい。
ですが、ディライという男は全ての世界の元たるエネルギー……エーテルは持っているものの、この屋敷の様なモノを創造する力はありません。
つまり、その男が本当にディライであるならば、俺の知っているディライとは別の存在である可能性が高いのです。
より強大な存在の別人の可能性が」
「うーん。
ただでさえ強い奴がもっと強いのか」
そうなるな……にしてもディライか。
うーん、目的が読めないな。
『奴はトーシュエンに恩を感じている様だった』
トーシュエンになぜだ?
『ここからが私達にとって大事な話になる。
全員、聞く勇気はあるな?』
ここからさらに重要な話があるのか。
「聞きます」
「俺もだ」
『うむ、なら話す。
トーシュエンの正体はシルバの亡霊だ』
「は!?」
前世、という事だろうか?
奴自身は日本生まれ日本育ちだったはずだが……。
しかし、そうだな。
生まれは良く分かっていなかったし、亡霊と考えれば、奴に昔からある霊感にも合点がいく。
それにしても、シルバだったとは。
「そ、そうなのか?」
ニトスも動揺しているようだ。
『あぁ、間違えない』
「なら……俺はシルバに助けられたんだな。
ふっ、まさかこんなことになるとは」
「ロウリィさん、気になる事があります」
『どうしたイーフェ』
「シルバの死んだ時代はヴァジュラ……ニトスさんが亡霊を生んでいた時期と被らないですよね?」
実際に、本編でシルバの亡霊なるものは登場していない。
それが何よりの証拠だ。
『そう、そこなのだよ。
知っての通り、亡霊はヴァジュラの力無しでは実体化しない。
つまり、トーシュエンはジークでない誰かによって、生み出された亡霊という事になる。
それがお前の世界で誕生した。あるいは産まれてから異世界転移したのだ。
次に、トーシュエンを亡霊として生み出したと考えられる第1候補は』
「絶対悪ディライ、ってわけですね?」
『あぁ、奴の力であれば亡霊を生み出すことは容易だろう。
仔細は不明だがな。
それであれば、ディライとのつながりも1度で説明がつく』
なるほど。可能性としては高いな。
ただ生み出したにしては、ディライの方が恩を感じているっぽいのが気になる。
ディライの性格上、自身が生み出したものは駒扱いするはず。
まだ知らない何かがありそうな気がしなくもない。
「お嬢はシルバの事を今はどう思っている?」
ニトスはそう聞く。
元を辿ればシルバを倒すためにニトスは呼び出された。両親への復讐の為に。
今のロウリィはどう思っているのか、それは俺としても疑問だ。
『シルバを憎い気持ちがあるに決まっていよう』
「まぁそうだろうな」
『だがな。
小僧とジークが別人であるのと同じように、トーシュエンとシルバが別人であるというのは分かっている。
シルバの奴が、お前を命がけで助けたりするものか』
「なら、トーシュエンの事は悪くは思っていないって事ですか?」
『そう言われると回答に困るな。
ディライと繋がりがあり、不気味な存在で警戒が必要であるのは間違いない。
しかし、恩があり、シルバとは別人というのは分かっている。
警戒はするが、個人的に悪人とまでは思わんな』
やはり、あいつのこれまでの功績がデカかったか。
かくいう俺も少し驚きはしたが、正体がわかり、逆に安心している位だ。
「そういえば、亡霊といえばオラクルの奴はやはりあの後……」
『そうか。お前は見てはいないんだったな。
小僧は冥王会のケルガー、グレイシャルと相打ちになった』
「……そうか。冥王会の幹部2人相手によくやったなオラクル」
真剣な表情で俯きながら、そういうニトス。
弟子と師匠の関係でニトスとオラクルは確かに違った。
というか、そもそも性別から違う。
シルバとトーシュエン。これも亡霊であるのならば、違いがあって当然である。
この屋敷で言うなら、サラドとハイブリッドだって違うしな。
「ロウリィさん。
この先、どう動くつもりですか?」
『予定は変わらん。監視カメラの事はバレたようだが、何も問題はない。
なにせこの屋敷で必要な調査は既に終えたのだからな』
「なに? いつの間に終わった?
というか監視カメラってなんだ?」
そうか、ニトスは知らんのか。
『ジークには分からんかっただろうが、視認するのも難しい超小型のカメラを隠して屋敷に設置したのだよ。
まさか見つかるとは完全に予想外だった』
「……もしかして、あの米粒や小さい虫の事か?」
「米粒? 虫?」
『おっ、分かっていたのか?
そうだ、そんな風にカモフラージュして屋敷の各箇所において……」
「イヤーーーーン!」
「ニトスさあああああん!」
ニトスは倒れた。
そうか、これまでの1人遊びを見られていた事に気づいてしまったんだな……。