イーフェと奇妙な館 作:イーフェの手記
「ぐわああああ!!!」
ツヴァイは死んだ。
いや死んでないけど、一瞬でやられた。
それはもうガレリアン並の出オチだった。
「よし、片付けたぞー」
あの後、ニトスを呼んでからツヴァイの拘束を解き、広場で戦闘となった。
何気に初めて来る広場だが、ツヴァイはここで召喚されたらしい。
広くて戦いやすそうだが、そんな事は何も関係がない。
結果はこの通りである。
ツヴァイ……可哀想に。この屋敷に来てからもう3回も負けてるよ。
で、またボロボロになってるよ。
拘束だけで済ませた俺の優しさをみんな見習ってくれよ。
「ツヴァイさん。失礼しますね」
「あぁ?」
「支配の金鞭(ゴールデン・フルスタ・ドミネイト)!
オラァ!」
「イーフェ、何トドメさしてんだ!?」
遠くからニトスに突っ込まれてしまう。
「いや違いますって」
「うおおお! なんだ!?
俺の体が鞭で叩かれて、気持ちよくなってきたぞ!」
「何だ貴様カロスか!?」
「落ち着いて下さいニトスさん。これが正常なんです」
「んな訳あるか!」
ツヴァイは全身を震わせている。よく効いているようだな。
「ふぅ、その鞭の力か? 傷が治ったぜ」
そう、別にトドメをさした訳でも、変なプレイをした訳でもない。
さっきのは、ツヴァイの体内にいる俺の使い魔を活性化させたのだ。
ツヴァイはニトスの攻撃を受けた。
という事は、体内の使い魔には相当なエネルギーが溜まっている事になる。
それを活性化させてやれば、宿主であるツヴァイの肉体回復も期待できるという訳である。
欠点としては、ダメージを受けた直後にしか使えない事くらいか。
「お前、中々使えるじゃねえか。名前は?」
「イーフェです」
「イーフェか。俺に使われる気はねぇか?」
「今はやめときますね。
それよりも黄泉の国にツヴァイさんを送った者について、教えて下さい」
「良いぜ。負けは負けだ。
それに使えそうな奴も見つかったしな」
俺かよ。
「俺は死んで、異空間に飛ばされた。
そこで、茶色い帽子のおっさんに会ったんだ」
異世界転生ものに登場する神にあったのかと思ったが、少しイメージと違うな。
「そいつは、ウェルチのような喋り方をしていた」
「関西弁かよ」
一気に神様感がなくなったな。
今出た情報だと、普通の関西のおっさんじゃん。
「時の語り部ナギ、そう名乗る胡散臭い男だ」
「な、なに!?」
「知ってるのか?」
「あ、あぁ、恐らく知ってる奴だ」
ナギ、真の名は厄災ニュー。
ゴリッチュ作品のラスボスの1人だ。
B.B.ライダーのさらに2個前の作品、シナーズ・ブラッディ・カルマのラスボスである。
「奴は協力者を募っててな。
味方になってくれそうな俺を異空間に呼び、声をかけたんだとよ」
「ナギの目的といえば、あの」
「そいつは知らねぇがよ。
どうやら、アイツも上の命令を聞いているだけらしい」
ナギが? ナギだって相当な実力者だぞ?
なにせロンド級の実力者が2人居て、倒せたラスボスだからな。
アレより上となると、真なる魔王クラスになってくる。
なのに、ナギより上が居るのか?
「リーダーから貸された能力で、どんな力も与えるって言ってやがった。
望む力は何でもな。
そんなもの興味はねぇから、B.B.ライダーに会わせろって言ったら、黄泉の国行きだぜ。
何の説明もなくな。正気状態を保てる加護は付けられたみてぇだが、説明はなしだ。
良く思える訳ねぇだろそんなの」
「それは確かにそうだな」
ニトスも思わず肯定する。
うーん、気になるな。ナギの上司は誰なんだ?
これまでの出来事に大きく関わってそうな気がする。
根拠はある。
俺の死因であるダイナマイトだ。
ナビがディライであり、ディライがトーシュエン第一と分かった。
そしてあのダイナマイトは無痛であり、元の世界にはない物。
と、ここまでの条件が揃ってだ。
ディライが、あのダイナマイトを創り出したとは考えにくい。
なにせトーシュエン第一なのに、トーシュエンの死因を作ってしまう。
その後の大戦を考え、あえて無痛ダイナマイトで死なせたという可能性もあるが、仮にそうするとなぜ俺に使わせたのか? という疑問が残る。
つまりだ。
俺の死因であるダイナマイトも元を辿れば、そのナギの上司に行きつく気がするのだ。
そうして、ナギの上司こそがこれまでの館の出来事の元凶……の可能性もある。
何にせよこいつの正体は、探らねばならない。
「一応、今の話はロウリィさんに報告しておくか。
結局、加護に関する詳細は分からずじまいだが」
「俺も興味なかったからな。
ただ、ナギの奴は気に入らねぇ。
倒しに行くんだったら、協力してやるぜイーフェ」
「無理です。やめといてくださいねツヴァイさん」
「何だとぉ?
俺を殺したサムライヘンジに比べれば、奴は弱いはずだぜ」
いや確かに、真なる魔王状態のサラドよりは弱いけど!
ツヴァイの戦力を1とすると、相手が50万や100万なんだから、勝ち目ないの一緒だって!
「イーフェ。
さっき俺を呼びにきた時に、お嬢の屋敷に行き来できる様になったと言っていたが……。
あれは本当か?」
ニトスがそう聞いてきたので、正直に答える。
「まぁそうですよ」
「なら直接会って話した方が良いな。
行くぞ」
「えっ、ロウリィさんにも覚悟ってものが」
「お嬢がヘタれるかもしれんだろう。
先に行った方が良い」
それもそうか。
ディライが止めてこなきゃ良いが……。
その辺の話まではトーシュエンから聞いてなかったな。
まぁ、すごく疲れてそうだったし。
「じゃ、行きますか。
でもロウリィさん側が起動しないと、行けないかもですよ」
「その時はその時だ。
とりあえずゲートまで行こう」
「分かりました。
ただ仮に行けたとしても、今回はすぐに帰ってきましょう。
ナビの事もあるので、行く時間は最小限で」
「……分かった」
すごく寂しそうに言われてしまった。
最期に会って以来の直接対面。
直接会って日常会話をするとなれば、それこそ1200年ぶりになるのだ。
そういう反応になるのも仕方ない。
だが、今は今後を優先しなくてはな。
「勿論、俺も行くが良いよな?」
「ツヴァイさんも!?」
「イーフェ、お前はつかえる。
今後のために特別について行ってやるよ」
え、いらない……。
なんで俺、ツヴァイの好感度上がってんの?
トーシュエンがハイブリッドの好感度爆上げしてる時、俺だけツヴァイの好感度上がってるのおかしくね?
俺のヒロインはツヴァイなんですか?
「イーフェ、そんな顔をするな。
実験材料としてお嬢が喜ぶこと請け合いだぞ」
「まぁ、それもそうか」
「おい、お前ら俺の事を何だと思ってやがる?」
「ニトスさん。
俺、スキル名長いから略したいんですが、何が良いですかね?」
「おい、無視すんな」
「普通に金鞭で良いんじゃないか?」
「おい!」
「え? ダサくないですか?
俺、実は今思いついてるのがあるんですよ。
“ゴー”ルデン・フル”ス”タ・ドミネイ”ト”
で”ゴースト”!
覚えやすいし良くないですか!?」
「確かに、覚えやすさでは良いんじゃないか?」
「ですよね!
じゃあ、今日からこのスキルの名前はゴーストです!」
「おい、この俺を置いて先に行くな!
お前らああああ!」
*
と、言う訳でゲートまできたんだが。
「なんか普通に行けそうだな」
「ですね」
ゲートに近づくと、イヤホンのランプが激しく点滅し、ゲートがハッキングされ、ゲートの先がゴース家になった。
それは鏡の上のネームプレートで分かる。
「もうアークスで暴れたりしねぇから安心しろ。
行くぜ、お前ら」
「なんであいつが仕切ってるんだろう、サブキャラのクセに」
「本当ですね……」
「お前らさっきから俺に恨みでもあるのか!?」
そんなこんなで、騒がしくも俺達3人は一旦ゴース家に向かう事になった。
しかし、この頃の俺達はまだ知らない。
まさか帰ってきた時、屋敷があのような事になっているなんて……。