イーフェと奇妙な館   作:ゴールデン・フルスタ・ドミネイト

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第24話後半 見つけだせ2代目カロス

「備えとしてはそうですね。

俺はポイントで自分の防御力を上げました。

それくらいです」

「なに?」

 

それだけか? と言った反応だ。

 

「いやね。今はまだ迂闊に動けないんですよ。

なにせ本格的な備えって言ったら、館が世界の狭間である事を活かして、異世界に行く必要がある。

でも異世界に行ったら、第3勢力と鉢合わせる可能性があるでしょ?

だから、まず偵察要員の人材やら使い魔やらを何かしら用意して、安全を確認する必要があるわけです。

それから異世界に行かないと」

 

ゆえにそういった要員が確保出来るまでは、館で自身の力を蓄える他にやる事がないのだ。

 

「一応、異世界を偵察する目的のアンドロイドをロウリィさんに開発依頼中ですが……」

「なるほどそういう訳か」

 

ロンドは、使用人として納得したように頷いた。

そう、依頼は大分前にしているのだ。

ロウリィなら、とうに完成させていても不思議ではない。

しかし……。

 

「えぇ。

ニトスさんとイチャイチャしてて、全然仕事してませんからね」

 

最近のロウリィと来たら、マジで仕事をしてないのである。

彼女は今、ゴース家の屋敷ではなく、基本的に館の方で生活をしている。

まぁ館の主でもあるのだから、そこは別におかしい事ではない。

駄目なのは普段からニトスとずっと一緒にいて、仕事をしていない事だ。

ちなみに、ゴース家には週1回程度しか戻っていない。

尚その負担は、当然のようにカロスに押し付けられていた。

 

「あの、カロスさん無事ですか?」

「奴なら泣きながら働いているぞ……」

 

可哀想に、と言いたいところだが。

ドMのカロスなので喜びの涙であろう事は、透けて見えた。

 

にしても、カロスか……。

カロスとはこの世界に来て3日目の時に初めて会って以来、何度か顔を合わせているが、何というか……うん。

見た目は、細マッチョなガテン系のおっさんという感じだった。

良くも悪くも予想通りの年の取り方をした45歳のカロスだ。

ただ意外といえば意外だったのが、予想以上に有能だという事かな。

思っていたよりも強いし、何より財務管理に関しては名家の父に認められただけあって、超有能だ。

ロウリィの仕事をほぼ全て押し付けられているのに、1人でこなせてしまっているのが良い証拠だ。

超人と言っていい。

 

しかし、なぜか周りの使用人からは嫌われている。

まぁ、あのガテン系の感じが名家の使用人達には合わないんだろう。

 

「というかイーフェ、偵察についてだが」

 

ロンドが何か思いついたかのように、俺にそう言ってくる。

 

「お前のスキルで作った使い魔を異世界に飛ばし、それと視覚をゴーグルで共有すれば良いのではないか?」

「あー、それはアリなんですがね。

こんなレアスキル使って使役してたら、珍しくて異世界で情報が広まると思うんですよ。

すると、いずれ第3勢力に俺が使い魔で偵察してる事がバレるのは時間の問題。

そこから、アークスにいる事がバレるのもまた時間の問題かと」

「なるほど、道理だ。

思ったよりも考えているな」

 

そう折角の偵察なのに、俺のスキルでは目立ちすぎるのだ。

これではまるで意味がない。

 

「と、いう事で今の所、打つ手なしです。

ロウリィさんに期待して待つか。

あるいは偵察をやってくれる人が来ないか、期待するくらいですね。

まぁ、そんな奇特な人はいないでしょうが」

 

ポイントを貯めて、機を待つしかねぇ。

それに、ポイントで俺達はまだまだ強くなれる。

今はまだ無理に出る必要もないのだ。

 

「打つ手なしか……俺はそうでもないと思うぞ」

「おっ? どうしてですロンドさん?」

「1人、偵察向きの人員が居るではないか?」

「え? こんな状況で偵察をやってくれる奇特な人がいる訳……」

「カロスだ」

「あ」

 

な、なるほど。

既にロウリィに偵察として使われ、黄泉の国からも帰還した実績もある。

過酷な偵察は、本人の嗜好と噛み合ってやりたがること請け合いだ。

なるほど、これほど向いた人材も居ないだろう。

しかし……。

 

「ロウリィさんに仕事を押し付けられている今のカロスさんが、偵察要員まで出来ますかね?」

「そう。そこが問題なのだ」

 

ロウリィが仕事をしていない現状に加え、カロスまでもが仕事を疎かにすれば、領地の仕事をする者がいなくなってしまう。

となると、アークスの治安は完全に乱れてしまうだろう。

 

「だが、その点についても少しだけ俺には考えがある」

「えっ、本当ですか。ロンドさん!」

「そも異世界に行く目的は、本格的な備えをする事だったな。

この街にも異世界から来た者が数十名ほどいるのは知っているか?」

「数十名!? そんなにいるのは知りませんでした。

ロウリィさんの実験に巻き込まれて、この世界に飛んできた人が居るというのは以前聞きましたが」

 

精々数人程度なのかの思ったが……。

この街には今、そんなに異世界人が多いのか。

しかし、街の外観は大きく本編と変わってはいなさそうだし、和食も普通に大繁盛。

という事は、ここより文化が進んだ所から来た人は居ない……。

あるいは、来ていても発展させる程の力がないかの2択になる。

 

「俺も総数は把握していない。

知っているだけで数十名。しかも、各々の能力は知らん。

まず、それぞれに話を聞き、カロスの代わりになる内政力を持つ人物を探し出せれば良い」

 

いやむずくない?

まず、歴史シュミレーションゲームみたいに内政の数値とか見えないし。

 

「そして、カロスの代わりを見つける事が出来なかったとしてもだ……。

異世界の知識を収集する事は出来る。

これは、異世界に行って探索をするのと同等の価値を持つと思うが、どうだろうか?」

「た、確かに」

 

よし、明日やるだけはやってみるか。

 

 

それから、館に帰還すると何やら広間は盛り上がっていた。

なんか知らない女が1人居るが……。

周りの様子を見るに、大方ハイブリッドがまた違う姿に変身できるようになったってだけだろう。

確か艦これのキャラだった気がする。

CVは分かるが、キャラの名前がさっぱり分からんな。

そして、横ではツヴァイが絶望していた。

この間、ネタでポイントを使って仕入れた旅立ちパックを勧めてみる。

割とマジで使いたそうにしていた。

心ぱ……いにはならんな、普通におもしれぇわ。

まぁ、そんなこんなでトーシュエンとも適当に話しつつ考える。

 

さて、先のロンドとの会話で出た話について、まず話すべき相手がいる。

俺はその場が縁もたけなわになったところで、声をかけた。

 

「ロウリィさん、カロスさん偵察に使って良いですか?」

「良いぞ、死ぬまで使ってやれ」

 

よし、許可が降りたぞ!

カロスの人権はロウリィが握ってるから、許可取りはこれで問題ないな!

 

「ありがとうございます。

後、カロスさんが偵察に行くと、仕事する人が居なくなるので、アークス内から代役を立てても良いですか?」

「むー?」

 

そういうと、ロウリィはさすがに唸った。

なんだかんだ言って、カロスは30年間付き合いのある家臣である。

その代わりがポンと立てられるかは、疑問なのだろう。

 

「あんなのでも、仕事は一応出来るからなぁ。

代役は難しいと思うぞ」

 

じゃあなんで、死ぬまで使ってやれとか言ったんだろう。

 

「あくまで見つかったらです。

実はロンドさんと相談してですね……」

 

俺は先の事を話した。

 

「なるほど、アークスに来た異世界人を当たるのか。

ひとまず戦闘に長けたものがいない事は確認しているが、私も内政力や特殊能力までは見ていなかったな。

うむ、異世界の情報を探るのは良いだろう。

仮に適任が見つかったら、私の元に連れてこい。

カロスと同じくらい仕事が出来るか、テストしてやる」

 

カロスの仕事って、普通に拷問を受けるのとか入ってそうなんですが……。

ま、まぁ、それはさすがにテストではやらんだろ。

 

「それと、異世界人に情報を聞くなら適した場所があるぞ?」

「え? どこですか?」

「お前も知っている」

 

 

「ヘッヘッヘ! 大将、今日はよろしくお願いしますぜ!」

「どうしたイーフェ」

 

眼帯を付けたトーシュエンに不審そうに見られる。

ちなみに、赤黒い目が子供に怖がられるからという理由で、店に立つ時だけこいつは眼帯をつけていた。

館では何もつけていない。

でも、個人的には夜に廊下で会うとびっくりするから、館でもつけろよと思ってる。

 

「うるさいわよぉ」

 

ハイブリッドにそう言われてしまう。

俺は「江戸前」に1日バイトとして入る事にした。

なるほど、ここは今街で1番人気のある場所だ。

異世界人も来ているだろう。

 

「っと、すまない。

トーシュエン、ハイブリッドさん。

少し協力してほしい事がある」

 

そう言って、2人に小指第2関節程度の大きさのモニタを2つ差し出した。

昨夜、ロウリィから貰ったものだ。

 

「なんだ?」

「これをポケットとかに入れて接客してくれないか?

えーと、少し長くなるがな。

要は今、この街にいる異世界の人々から話を聞いて、情報収集したいんだよ」

「どうしてだ?」

「ロウリィさんは20年間実験をしていてな。

その間に異世界から呼ばれた人が少なく見積もって数十人。

この街で生活しているらしい」

「そんなにいたの?」

 

まぁ、そうなるよな。

トーシュエンは聞いてなかった訳だし。

でも、異世界人がいる事そのものは疑問に思ってない様な?

まぁ、良いか。

 

「全員、戦闘力はないらしいが……異世界の情報は持ってるから話を聞きたい。

そのモニタ、異世界人が近くに来たら、自動で震えて知らせてくれるらしい。さらにモニタ内に顔も記録されるんだと。

異世界人って言っても、ロウリィさんの実験に巻き込まれて来た奴に限るけどな。

俺達にモニタが反応してない時点で、分かると思うけど」

 

と、大切な事を伝えてなかった。

 

「何より、この調査で内政力のある人物が見つかったら収穫だ。

今、カロスに異世界の偵察をやらせようとしててな。

ロウリィさんにも許可は取った。

でも、カロスの代わりになる程の内政力を持つ人間が居ないから、実行出来ないんだ。

偵察要員が居ないと第3勢力のいる今、迂闊に異世界に行けないだろう?

という訳で、カロスの代わりになる奴が居たら、大成果って感じだな。

だから仕事しつつ、モニタに異世界人の反応があったら教えて。

バイトの俺なら途中で抜け出して、店出た所を話聞きに行けるから」

「事情は分かったわぁ。

見ただけで内政力なんて分からないけど、ひとまずこの機械が振動したら、伝えればいいのねぇ?」

「はい」

 

おや?

ハイブリッドが意外に協力的だな。

 

「じゃあ、これをする代わりに今日のイーフェの仕事を増やすけど……問題ないわよねぇ?」

「なっ!」

「今日、凄く混む日なのよ。

あら? 拒否するなら断るけど、どうするのぉ?」

「うぐ、やります」

 

お前の嫁だろ何とかしろよ、の目でトーシュエンを見る。

しかし、トーシュエンはむしろハイブリッドに親指を立てていた。

こいつらぁ……。

 

ちっ、仕方ない。

たかが1日バイトだ。忙しかろうと仕事して、後は異世界人に話を聞いてやるぞ!

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