イーフェと奇妙な館   作:イーフェの手記

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第6話 賭博狂、胴元の為に洗練を受ける

「やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺はそう叫びながら、リビングでその場に倒れ伏していた。

見上げると、トーシュエンが雷を身に纏っている。

 

「いてぇ! いてぇよおおおお!」

「仕方ないなぁ」

 

トーシュエンはそう言って、俺をソファーまで運んでくれた。

 

「殺すぅ、ぬおおお!」

「分かった分かった」

 

そう言いつつ、トーシュエンは朝食の後片付けを始めた。

 

…………さて。これで上手く行ったかな?

 

全ては今日の朝に遡る。

俺がトーシュエンに昨日の競輪場の事を話したら、奴はとんでも無いことを言ってきた。

浮いた本に会って、色々と聞いた。

ここは世界と世界の狭間だ。ここで暮らして欲しいと言われた。

自分は雷魔法を使える様になった。元の世界は大戦が起き、壊滅状態。

それを聞いて、俺は思わず汗をかいた。

トーシュエンからは見えなかったかも知れないが、貧乏ゆすりもしていた。

その理由は言うまでもない。なぜなら……。

 

(え、じゃあ、アイオーン未完のまま終わったって事ぉ!?)

 

頭の中は、それで一杯だった。

嘘だろゴリッチュさん、そして同志(ゴリッチュファン達)。

後、ついでに気になってた聖騎士リッカの物語のアペンドは!?

アニメで言えばわたなれ2期は!? 甘織れな子×甘織遥菜の姉妹百合は!?

全て無いまま終わったというのか……。

別に俺が見れないのは仕方ない。自業自得だし。

でも、ファンが誰1人観れなかったのは辛すぎるだろ。

……だが、今、それを表に出すのは賢くない。

今、ここでの行動は非常に大切だ。

 

(浮く本というのは、恐らく存在するだろう。

魔法に関しては見ないと分からないが、こいつの事だ。

使えてもおかしくはない)

 

トーシュエンというのは、浮世離れした仙人のような雰囲気を時たま醸し出す人物なのだ。

元より魔法を撃っても、まぁトーシュエンだしな、で済まされる様な雰囲気を持つ男だ。

いやはや、これほどまでに事態が進んでいたとは驚くしかないが、屋敷の関係者と関わった事が分かった以上、驚くだけではいられない。

なぜなら……。

 

(本がこいつに”だけ”手を貸す可能性は高い)

 

そう俺は、普通のギャンブラー。そんな異様さはない。

つまり、本にとって俺はモブキャラのはず。

それが違うのなら、俺にだって魔法が使えてて良い筈だ。

では、このモブたる俺が雷魔法使いと化した友人や、正体不明の本、更にはいずれ屋敷に来るであろう住人とどう過ごすか?

今後の課題はそれだ。

屋敷の関係者の存在、そして魔法の存在が分かった今となってはな。

だが、まず確認すべきは……。

 

「実際に魔法は使えるのか?」

「使えるぞ、ここだと危ないから中庭で見せるよ」

 

と、いう訳で、中庭に行って、魔法を見せてもらう事になった。

 

「ライトニング!」

 

その声と共に雷が発生し、岩が砕けた。

うん、俺が当たったら死ぬな。いやもう死んでるけど。

こいつは平然としているが、その威力はとんでもない。

なにせ小さめとはいえ、岩を砕けるわけだからその威力はライフル銃を超えている事になる。

射程ももっと伸ばせそうだし、ロケットランチャー以上の火力でなければ負けそうにない。

これにより、今後もし拳銃なんかが手に入る機会があったとしても、ただのライトニングの下位互換と化してしまった。

次屋敷に来る相手がもし善良な人だったら、逆にこれでビビらせたりしないだろうか?

だが、雷というのは威力調整が出来れば、生活に応用出来そうで良いな。

 

……さて、ここで俺が取るべき行動はなんだ?

 

屋敷に深く関係している本は間違えなく、トーシュエンの事を重要視している。そして本から見れば、俺はモブである。

そんなモブなりに、屋敷の関係者である本と上手くやっていくのが、まず暮らしの土台として大切じゃないだろうか?

ここで大事なのが、昨日、俺が魂賭けようとしてた事。

あれは、確実に本からの心証が良くない!

なら新事実を知った今、無理のない程度に主役を立てるムーブをして、本の心証回復に努めてやろう!

それに、本はこの屋敷で賭博の胴元でもある。

やはり賭け事は胴元が1番儲かるのだから、その胴元の好感度が高ければ、賭けで有利になる可能性は高い。

つまり、好感度を上げるに越した事はないのである!

 

「お前の方が凄いじゃないか」

 

俺は呟く様にそう言った。

否定をしてきたが……。

 

「まぁ待て、お互いの昨日の出来事を仮に成果として並べてみようじゃないか。一旦リビングに戻ってな」

 

と言って、ゆっくりリビングに向かう事にした。

成果という方式で数を並べれば、自分が凄いと認識するに違いない。

それに加え、俺も大袈裟に落ち込んだり暴れたりしてやれば良い。

これで、見事に主役を持ち上げる三流役者モブムーブが完成するという訳だ。

いざ、心証回復!

 

「さて書くぞ。

まず、俺の成果はこの屋敷以外の場所にも行けるのを確認した事だ」

 

もうこの時点で嘘である。

あの競輪場は、十中八九この屋敷内の仮想空間だ。

だから、外に行く方法など知らない。

仮想空間である根拠としては、選手が入場する敢闘門から俺が突如出てきてるのに、係員が誰も止めに来なかった事。

そしてあの時間、動いていない筈の券売機が動いていた事だ。

勿論、魔法で俺の行動を誤魔化したという可能性がゼロとは言えない。

だが、可能性としては1、2割の方だろう。

そんなしょうもない事で別の世界に迷惑をかけるくらいなら、仮想空間の方が話が早い。

 

「次はお前の成果で」

 

だが、屋敷以外に行けるという事にしておけば、ここが世界の狭間だという情報が信憑性を帯びる。

世界の狭間だから、別の世界に飛べるのだと。

というか実際、世界の狭間なのだから、別世界に飛ぶ方法も探せば見つかる可能性は高い。

だから、別の空間に行く方法を見つけたという俺の情報は下位互換の様に見せる事が出来る。

 

「主に3つ、3つだ」

 

それに俺が見つけたのは、仮想空間だと真相を知っても、奴は別世界に飛ぶ方法を見つけた方が上じゃね? と思いそうだし問題ないだろう。

勿論、そんな訳はなく、仮想空間には別世界と違って、いくら壊れても良いという利点がある。

更に、太刀打ち出来ない強敵が召喚された時、閉じ込めるのにも使えるので、一概に別世界の方が上とは言えないのだ。

仮に別世界に閉じ込めようものなら、送った先の世界で力をつけて戻ってくる事があるからな。

そして、何より別世界はそもそも大気すらどうなってるのか分からないので、飛んだ瞬間に死ぬ危険性だってある。

普通に考えれば、仮想空間の方が安全なのである。

 

「1つ目は、元の世界の現状確認ができた事!」

 

これは心底思っていた。理由は言うまでもない。

神の目のアイオーンの安否が分かったからである。残念ながら否の方だったが……。

だが、そんな事を伝えても主役を持ち上げるムーブにはならんだろう。

 

「今後の方針が決まった。

元の世界に帰る選択肢がなくなり、ここに住むか別世界を探すしかなくなった」

 

元々、元の世界に帰るとか考えてなかったけど、とりあえずそれっぽい理由として挙げる。

なにせ死んでるんだから、元の世界に帰れるとか初めから考えていない。帰れた方が逆に怖い。

というか、未だに死んだ後なのに腹減るの疑問なんだけど。

こいつは転生後の肉体とでも思ってそうだから、それに合わせて話してるが、俺は何か違和感があるな。

でも魔法が出てきたし、もうそういうものだと思うしかないのかねぇ……。

 

俺は2つ目、3つ目と話しながら、後ろ手でこっそり腕時計を外し、椅子に置き、同じくポケットのスマホも抜いて置いた。

全てはこの後のトドメの三下ムーブのためだ。

少し賭けにはなるが……まぁ、ある意味やる価値はあるかな?

 

「俺の持ってきた成果はお前の2つ目に近い。

それに2つも足されたら、俺はどうやっても負けなんだよ」

「確かに、そうなってしまうかも」

 

やはり納得したな。行くぞ!

 

「クソがああああ!」

 

俺はトーシュエンに激昂する演技で掴みかかった!

 

「落ち着け!」

「これが落ち着けるかあああ! ヤケクソじゃ死ねぇい!」

 

適当な攻撃では演技だなとバレてしまう。

俺は全力で頭突きの目潰しを放った!

すると……。

 

「やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

俺はそう叫びながら、リビングでその場に倒れ伏していた。

見上げると、トーシュエンが雷を身に纏っている。

 

「いてぇ! いてぇよおおおお!」

「仕方ないなぁ」

 

トーシュエンはそう言って、俺をソファーまで運んでくれた。

 

「殺すぅ、ぬおおお!」

「分かった分かった」

 

そう言いつつ、トーシュエンは朝食の後片付けを始めた。

マジでいてええええ! が、上手く行ったかな?

恐らく死なない程度の雷撃が来るだろうと思っていた。

これで丁度良い制裁を喰らった感じになって、オチがつき、本も大体満足だろう。

よし、少し体が動く様になってきたぞ。

もう少し、このムーブ続けるか。

椅子に座って、無傷の腕時計とスマホをこっそり回収してから俺はトーシュエンにこう告げた。

 

「今日こそ、賭博で爆儲けをして俺も強い力を景品交換してやるぜ!」

 

そのまま、賭博部屋に向かう。

勿論、景品交換場所がないのは知っているが、それっぽい事を言っているだけである。

ん、雷の影響か? 普段より体が軽いな。

トーシュエンが着いてきていた気がするが、後ろに居ない。

気付かない内に相当、早く歩いちゃったか。

奴も走れば追いつけるだろうが、そこまでしようとは思わなかったのか?

 

「どうせだし、来るまで待とう」

 

少し部屋の前で待つ……来ない。

 

「は?」

 

一応、部屋の中も見るが、当然居ない。

何かあったか? 一旦リビングに戻ろう。

 

「……いない」

 

俺はリビングに戻った。しかし、居ない。

 

「うーん」

 

本の心証に関わるしな。一応、探してみるか。

 

「おーい!」

 

俺はまたまた屋敷探索をしていた。

中庭はどうだ?

 

「ん!?」

 

なんだあれ? 中庭に穴が開いてるぞ?

そういえば、トーシュエンが部屋割りの時に雑談でチラッと言ってたのを覚えてる。

中庭で光る物を見つけた気がしたが、気のせいだったとかなんとか。

 

「気のせいじゃなかったってわけか」

 

遠目に見る限り、穴の中には階段があり、恐らく地下部屋が下にある。

なんで開いた?

昨日との中庭の違い。

それは、この場でトーシュエンが魔法を……。

 

「まさか魔力を感知した一定時間後に、地下への階段が開く的な仕掛けか?」

 

あり得る話。そして今トーシュエンは恐らく、あの下にいる。

仮に魔力で開く仕掛けだとすると、中はどんな部屋なんだろう。

魔法練習場か? あるいは危険な場所か?

だが、何にせよ俺に着いてくるのをやめて向かい、しばらく戻って来ないような場所。

普通の部屋と異なるのは確実。無策で行くのは危険だな。

だが、待ってるだけも良くない。

適当に準備してから行こう。

 

「そう……賭博部屋でな!」

 

もしかしたら、探せば本当に強い物が手に入る交換機能とかあるかもしれんしな!

それが理由だからな!

よーし、まずは賭博部屋からだ。いくぜ!

今日は中央競馬で勝負!

3/7 中山牝馬ステークス買い目はワイド5-10だああああ!

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