イーフェと奇妙な館 作:イーフェの手記
俺は中庭からプール、図書館、温泉、賭博部屋などを回り、リビングに来ていた。
『ありがとう、屋敷の様子は分かったぞ
このイヤホンには小型カメラも付いているからな』
イヤホンからロウリィの声が聞こえる。
耳に隠れるタイプのイヤホンなので、よく見ないと着けていると分からず、独り言を言っているように見えるだろう。
「俺、きちんとトーシュエンにも、ロウリィさんの事、話すつも」
『いや、それはやめてくれ』
「え、なぜですか?」
ゴリッチュ好きだし喜ぶと思うけど、20年後のB.B.ライダー世界なんて滅茶苦茶気になるだろうし。
『お前の話では、奴はこの屋敷の関係者である本と関わりが強い。
私はこの屋敷を秘密裏に調査している。存在が知られてみろ、どうなるか分からんぞ』
「確かに」
『仮に表向きは私の事が問題ないとされても、秘密裏に調査制限がかかる可能性もある。
絶対にトーシュエンにバレるのは避けろ。
という訳で、声もお前にしか聞こえないようにしておくからな』
「え、そんな事できるんですか!?」
『静脈を認証して、特定の相手にしか音波を』
「なんかよくわからないけど出来るんですね!」
本編の時点でルゥを作れるくらいの科学力があるロウリィだ。
そこから20年もさらに研究していたとしたら、このくらいは余裕か。
『お前の方で良かった。この屋敷の関係者からノーマークなのだからな』
「はぁ……光栄です」
嬉しいようなそうでもないような。まぁ、良いか。
「ついでにギャンブル勝たせてくれますか?」
『元手がないだろ、元手が』
そうなんだよなぁ。
こんな頼れる助っ人が来ると分かっていれば、今日の分使わず残しておいたのに。
『だが、元手は増やせるかもな』
「え? 増やし方分かるんですか?」
『察しはつく。ポイントは貨幣。
ならば増やし方は恐らく労働だ、普通の生活と同じく労働で増える』
「でも、仕事なんてないでしょう?」
『あるだろう。家事だよ』
「え?」
『後はプールや庭の手入れ。その辺りが考えられるだろうな』
「なぜですか?」
『プールを見ると、自動的に水が清浄される機能が付いていなかった。
中庭も恐らく、あのままだと草が伸び放題だ。
こんな屋敷を作れるやつがその対策をしないなんて事はないだろう。
あえてしていない。
労働システムの為にそうしているとしか考えれば自然じゃないか?』
た、確かに。
でもそうなると、今後仕事が出来ちゃうな。
まぁ、賭博の為にプール掃除したりするのも割と健全だし良いか。
「でも、その理論だとトーシュエンは昨日からポイントが少し増えている事に」
『なるな。だが、2人分の食事なので微々たるものだろう。
これが大人数なら話が変わるだろうが。
最も全ては仮説だ。実証したくばなにかやってみると良い』
「賭博の為なら!」
俺は早速プールに向かい、プール清掃をする事にした。
「うおおおおおお!!!」
デッキブラシでプールサイドを磨く!
「疲れたわ」
『早いわ!』
ざっとやったが、肝心のプールの中までたどり着けずプールサイドの清掃だけで終わった。
「増えてるかな」
『さすがに無理だろう』
一応、賭博部屋に向かう事にした。
「おっしゃ! 100ポイント入ってるぜ!」
『えええええ!?』
100だけだが入ってる。
もしかしたら、掃除するだけで入るログボ的な奴かもしれんが、まぁどうでもいい。
「ロウリィさん! これで勝負だ!」
『はぁ……。
どれ、改めてどんな賭博があるか見せてみろ』
*
「ハッハッハ! 思い通り! 思い通り! 思い通り!
やはりそうなったか! 俺の読みは天才だあああああ!
トーシュエンとは比べ物にならない! どうだ! 見たか! トーシュエン!
完全にこの俺の勝ちだ! この、俺の、勝ちだーー! ハッハッハッハッハッハ!!」
『いや、全部私の読みだろうが!』
最高だ! 最高すぎる!
トーシュエンよ。もはや貴様は雑魚だ。
なにが300倍だ。俺は今……。
「100000倍ッ! 1000万ポイントじゃああああ!!!」
まさか、こんな事があるとはな。
JRAの新馬戦、極々まれ数年に1回程度、3連単が1000万を超える事がある。
ロウリィはそれを先ほど。
『!?
イーフェ! 大チャンスだ! これの17-1-3の3連単を買え』
1点で予測したのだ。
「はぁ!? 10番人気以下の馬ばっかじゃん!
ロウリィさん、さすがにそんなので勝てるわけないだろ!」
当然俺は信じられなかった。
『良いから黙って買え!
私は別次元の競馬で研究し、この結果を出したのだ!』
「えー、でも知ってるのは別次元の競馬だろ?
レガレイラ知らなかったし、日本の競馬は知らないんだろ?
参考になるかな……まぁいいか。言ったからには乗ろう」
と一応買ってみたら、当たったという訳だ。
『私も信じられんな。
これほどのものは精々100回程度しか当たった事がない』
「100回!? 1000万円が100回!?」
ロウリィ化け物すぎんだろ。
『っと、それは良いがイーフェ。
トーシュエンが帰ってきたようだぞ? 先ほど少しばかり様子を見られていたようだ」
「なに?」
ロウリィの声が俺以外に聞こえない設計とはいえ、独り言でロウリィって言ってたから怪しまれるな。
『あぁ、お前が馬鹿笑いしてたところをな』
「なんだ、そこか良かった」
……言うほど良いか?
「今後、独り言で名前を呼ぶのは避けますよ」
『そうしてくれ、後、庭を見てみろ。
トーシュエンが面白いものを連れてきているぞ』
「面白いもの?」
庭に向かってみる。
「ど、ドラゴン……」
そこには馬3頭ほどのデカさのドラゴンがおり、トーシュエンはそれに跨って乗る練習をしていた。
「まぁ、軍隊引き連れてくるよりはましか。
そっか、そっちのパターンがあったか」
行動を読んでも、いつも斜め上に行く男よ。
俺は一旦、トーシュエンの死角になる賭博部屋の端まで移動し、ロウリィとの会話を続けることにした。
『あいつが庭の草とか食べてくれれば、草刈りの手間省けそうだぞ』
「たぶん肉食じゃないですかね」
さて、どうするかな。
ドラゴンか。餌とかちゃんとあるんかな。
『私としてはあのドラゴンの生態も一応調べたいが、贅沢は言わん。
が、一応、近づいてみてくれないか?』
「は!?」
『安心しろ、このイヤホンは頑丈だ。ロンドの龍曲でも壊れん』
「そういう問題じゃ。
っていうか、イヤホン頑丈すぎるでしょ!」
冥王様を瞬殺する技で壊れないイヤホンとか、もうこのイヤホンの素材で防具作れよ。
『ちっ、仕方あるまい。
だが、そんなに怖いなら、先の1000万で能力が上がったりしないのか?』
「しないでしょう」
『いいや、私はそうは思わん。
恐らく、屋敷のどこかに能力を取得できるような部屋があるはず。
この屋敷の主はそうすると私は考える』
うーん、まぁ1000万当てたのロウリィだし信じてみるか。
「じゃあ、どこにあると思います?」
『知らん、探せ』
「うーん」
個々人の能力を強化するとして、さらにこれからも屋敷に人間が来ると考えると……。
「実はそれぞれの寝室にスキル取れる場所が隠れてる、とか?」
『ありうる話だ』
俺は一旦、寝室に戻る事にした。
『イーフェ。部屋のテレビは調べてみたか?』
「ん? そういや使ってないですね」
テレビなんて普段部屋の使わないからな。
どれリモコンは……。
「あれ?」
『おい、ポイントメニューってボタンがあるぞ。
気づかなかったのか』
「テレビなんて、普段使わないから見なかったんですよ!」
多分、トーシュエンもこんなメニュー見てないだろう。
テレビをつけると、屋敷の施設紹介やポイントの貯め方、使い方など。
丁寧に紹介する画面が出てきた。
『滅茶苦茶分かりやすく、説明してくれてとる!
気づけよ!』
「う、すいません」
ポイントメニューに進むと、色々ポイントを使う画面が出てきた。
「まず、嗜好品が手に入るのか」
日常生活に必要なものは、そもそもポイントを使わずに手に入るから、カイジのペリカみたいなもんだろうか?
「菓子やインスタント食品、ゲーム諸々。いろいろあるな。
そして、こっちは能力強化か」
お目当てものだ。
「特殊スキルが色々あるな。だが、最低100万。
これなんて1つで1000万か」
俺はそもそも戦闘に向いてないので、戦闘スキルは最低限で良い。
まずは基礎能力を上げるか。
「筋力、耐久、素早さ、魅力、運とかか。まぁ定番だな」
まず俺は、耐久に50万。運に10万振った。
後はスキルだ。
初級の回復魔法に初級の筋力強化、素早さ強化。
周囲3メートルほどに貼れる簡易結界魔法。これを習得する!
「よし、魔法習得!」
俺は、初球の回復・補助・結界魔法を使えるようになった。
魔法は計80万の消費だ。
耐久も50万振っている以上、相当なものになっているはず。
「ロウリィさん。今の俺ってどのくらい防御上がってるか分かりますか?」
『先のライトニングだったか?
恐らく、それを全力で喰らっても何発か耐えられる程度にはなってるな』
まぁ、そのくらいなら十分か。これで、多少の事故も平気になった。
既にライトニングより強い技を取っている可能性はあるが……。
元より、普通に暮らせればそれでいい。出来る事故対策としては十二分だろう。
「さて、特殊スキルは……」
『そろそろトーシュエンの練習が終わるんじゃないか?
戻ったらどうだ?』
「まぁ、そうですね。
昼飯時だし、中庭行ってからリビングに行くか」
『昼飯時か。私も一旦席を外すかな。
イヤホンは外していていいぞ。ただし無くさんようにな』
「分かりました」
『後、余裕があったら、イヤホンを付けてドラゴンと接触するように。
データが欲しい』
「えー……善処します」
やりたくないけど。
そう思っていると音が聞こえなくなる。
イヤホンを外してみると、青い光が消えていた。通信が切れている証だ。
さて、ロウリィの要望だ。
トーシュエンにはロウリィの事がバレないようにしないとな。
俺は気合いをいれつつ、ポケットにイヤホンを入れ、中庭に向かった。
「おうおう、なんかすげぇ事になってんじゃねぇか」
俺は丁度練習を終えたと思わしき、トーシュエンに話しかける。
「イーフェ、驚かないのか?」
「どうせ異世界に行ってきて連れてきたんだろ?
狭間の世界だから、異世界に行けるのは分かってた。
そして、異世界でお前がドラゴンを捕まえてくるのは驚くほどの事じゃないさ」
いや、本当はさすがに少し驚いたけどね?
「さっき賭博部屋で大勝ちして、今俺は心が広いんだよ。
ドラゴン程度では揺れんよ」
「へー、珍しいな。いくら勝ったんだ?」
「ふっ、勿体ぶらせてもらおうか?
桁が大きすぎるものでな」
「まさか10万とか勝ったのか?」
「甘いな。お前程度と一緒にしてもらっては困る!」
「10万で甘い?」
トーシュエンは考え込んでいる。ふっ、思いつきもしまい。
「まさか、50万か?」
「1000万だよ! この阿呆があああああ!」
「1000万!? 嘘だろ!?」
ハッハッハ! そうだろうそうだろう!
そういう反応にもなるだろう!
クハハ! この俺の実力を思い知るがいい!
「それだけじゃないぞ。ポイントの貯め方も分かった。
仕事をするとたまるようだ。
掃除、家事、庭の手入れなんかだな。
そしてポイントだが、これはそれぞれの寝室にあるテレビで自由に使う事が出来る!」
「俺が異世界に行ってる間にそんなことまで」
本気で驚いているようだ。
そうだろうそうだろう!
まぁ、ほとんどロウリィの成果なんだけどね。
だが、そのロウリィと通信できるようにしたのは俺だし、そしてロウリィと話せるのも俺だけだ。
よって、俺の成果だあああああ!!!
「ま、そういう訳なんで、そっちの話も聞かせてくれ。
後、昼飯にしようぜ。
ポイントが欲しいから、俺も手伝う」
「1000万もあれば要らないんじゃ」
「ふざけるなああああああ!!!
俺は、このでかいポイントを少なくとも500万は残し!
500万を1度のギャンブルに突っ込んで倍にするという夢のような楽しみをするんだよ!
だから、嗜好品に使う分は自力で貯める!」
「お、おぅそうか。まぁ手伝ってくれるのはありがたいが」
「後一応、俺もポイントで少しだけ魔法を使えるようになった。
その辺りも説明するよ。
リビングに行こうぜ。そっちの異世界での話も聞かせてくれ」
俺たちはそのままリビングに昼食へと向かった。