イーフェと奇妙な館 作:イーフェの手記
……えっと、なんか部屋寒くない?
「…………」
「…………」
エロシーンが終わり、後方座席から覗き込んでみると……。
見事なまでに2人とも無言で、何とも言い難い気まずい空気が流れていた。
「パパぁ」
「は、はい!」
なぜかニトスがビビっている。
「さいっていね」
「お、俺じゃないぞ!」
「さっき、確かに俺だなって言ってなかった?」
「気のせいじゃないかなイーフェ!」
ちなみに、なぜ最低と言われているかというと。
あの世界のニトスはハイブリッドと致しているにも関わらず、寝言でマギスンの事ばかり呟いていたからである。
「だが、これでハイブリッド!
パパは分かったぞ!
このままだと、トーシュエンも並行世界の俺と同じ目に遭う!
そして、ハイブリッド!
お前今、俺の事を最低と言ったが、トーシュエンも同じ事をしないと言えるのか!?」
「な、何ですって!?」
そうかそれだ! ナイスだニトス!
「ハイブリッドさん。
つまりこういう事ですよ。
まず並行世界のニトスさんは、気絶して襲われる中。
夢の中でマギスンさんの事を考え、それが寝言としても出ていた。
そして、実際に現実に抱いているハイブリッドさんには目にもくれていなかった」
「改めて、言われるとムカつくわねぇ」
「そこで、仮にトーシュエンにもマギスンさんの様な存在がいたとしたら、どうなりますか?」
「!」
気づいたようだな!
まぁ、そんなものが居ないのは知っているが、そこは重要ではない!
大事なのは、今後もトーシュエンが襲われない様にする事!
賭博部屋封印の話がもし本当なら、その火種は徹底的に封じなくてはいけない!
「じゃ、じゃあ、まさか、この私の銀髪の女の姿って」
「俺でいうマギスンの様な人の姿なの……か?」
滅茶苦茶勘違いしてるううう!?
アンナさん、そんな重要人物じゃねぇよ!
ま、いっか。
「俺も知りませんが、可能性はあります。
なにせ奴には謎が多い」
「ならあんなに興奮していたのに、私を拒絶してたのって!」
「可能性ですが、偽物は嫌だったという線も」
可能性な、あくまで可能性な。嘘はついてないからな?
「だとしたらハイブリッド。
その姿で結ばれたとしても、お前は幸せになれないぞ」
至って真剣にニトスはそういった。
なんか勘違いで凄いシリアスな事になっとるんだが?
「そ、それって。
さっきの並行世界みたいに、エッチしてる時にこの体の女の名前が出てきて……。
私は名前も呼んでもらえなかったり、するの?」
「かも……」
少し可哀想になってきたので、控えに肯定する。
「かと言って、普通に迫っても……。
わ、私は、トーシュエンさんに何が出来るのかしら」
「出来る事からやっていきましょう。
段階を飛ばしすぎなんです」
好感度が高いのは分かるが、さすがに初手から攻めすぎである。
もうちょい自制したら、すんなり済みそうな話なんだが。
「そ、そうだったわね……。
私なりに考えてみるわぁ……」
そう言って、ハイブリッドは出て行った。
うーん、良い方向に転がれば良いがなぁ。
「どう思うイーフェ」
「何がですか?」
「トーシュエンに、俺で言うマギスンの様な人物がいるか。
そして、それがあの銀髪の女かだ」
「可能性としてはあると思いますよ」
「付き合いが長いんじゃないのか?」
「長いですよ」
「なら、分からないのか?」
「いや、無理です。
俺個人の考えとしては、居ないに1票ですが……。
つい昨日、絶対にバレないと思っていたロウリィさんとの通信を見破られたばかりでして。
あいつに対して、予想を立てる事がもう無意味なんですよ。
だから、居るも十分にあり得る」
「なるほどな。確かにあいつはそんな感じがする」
ニトスは納得したようだ。
自分の身でその訳の分からなさは体感してるわけだし、そうもなるだろう。
「もし居たとしたら、ハイブリッドさんは大変そうですよね」
「だな……。
さて、この話はこのくらいにしてだ」
ニトスが背筋を伸ばしてこちらを見てきた。
なんだ?
「カルラのエロシーン見せて下さい!」
そう言って頭を下げてきた。
「あー、見れる様にしておくので、俺は一旦外して良いですか?」
「なんだ?
別にすぐには自家発電しないぞ?」
「そうじゃなくてですね?
トーシュエンに会わないと」
そう、賭博部屋の件。
ことが終わったら話すと奴は言っていた。
それを聞かない事には、気が休まらない。
「そうか、じゃあ自家発電してるから行って来い」
「結局するの!?」
*
トーシュエンはキッチンにいた。
昼食が近いから、ここに居るだろうとは思ってたよ。
「ハイブリッドは来てないのか?」
俺は聞く。見た所居ないからだ。
「いや、まだ来てないな」
「なら、早速聞かせてもらおうか!
賭博部屋が使えなくなるかもしれないってのは、なんだったんだ!
約束通り助けたから教えてもらおうかぁ!」
「あぁ、あれか。
アレは詳しく話すならな――」
そうして俺は真実を知った。
「は!?
要は俺が逃げたら、ナビに頼んで賭博部屋を使えないようにしてやるって意味だったのか!?」
「言い方が悪いけど、間違えじゃないな」
「マジかよ。テメェ脅したってわけか!」
「脅しっていうと少し違うな。
あの場にはナビがいなかったから、仮にやろうとしても出来なかった。
というか、イーフェを賭博部屋から締め出すとなると、星が必要になるはず。
だからよほどの事がない限り、俺もやらないよ」
「星ってのは?」
「あぁ、それは」
なんでも、トーシュエンはこれまでの人生で得た小説の評価を元に能力を割り振れる能力を持っているらしい。
マジかよ!
そんな力が手に入るなら、俺も生前、頑張っときゃよかったわ。
ハイブリッドを呼んだのも、ハイブリッドがアンナさんの姿に変身できるようになったのも、その星の力との事。
そんな事出来るなら、ポイントの完全上位互換じゃん! ずるっ!?
しかも残りの星はまだあるようで、トーシュエンにはまだまだ切れる手札がありそうだ。
「要するに、立ち去ると賭博部屋が使えなくなるっていうのは、ただのハッタリだ。
そんな事は起きないし、あの場ではイーフェを締め出す力もない。
でもナビと合流すれば、イーフェを賭博部屋から締め出せる可能性は高い。実際やるかはともかくな。
だから、嘘はついてない。だろう?」
「そういう事か……」
こいつめ、嘘はついてないがほぼハッタリじゃねぇか。
「ま、ハッタリをしたのは俺も同じか」
「どういうことだ?」
俺は、シアタールームでの一件をトーシュエンに伝えた。
「と、いう訳で。
今ハイブリッドの中で、お前はアンナさんを滅茶苦茶大切に思う人になってる。
ニトスがマギスンを思うのと同じくらいにな」
「イーフェこそ、なにやってんだああああ!?」
「クハハ! お前もハッタリをしたんだ。
そのくらい良いだろう? 助かった代償と思えば。
それにほら、あの様子だとハイブリッドも改心して、今後アプローチの仕方を変えてきそうだぞ」
「だと良いが」
そうそう。これで安泰というものだ。
「で、そのハイブリッドが遅いな」
「それに関してだが、今の話を聞いて1つ、思い当たる場所がある」
「なんだトーシュエン」
「ハイブリッドは、千年戦争アイギスの世界に行ったんじゃないか?
ナビが協力してる以上、行けなくはない。
話からして、アンナさん本人に会いに行くことはあり得る」
「…………」
そんな事になってたら、面倒すぎるだろ。
いや、でもありうる。
本人にトーシュエンの事を聞きに行ったという可能性は、十二分にありえる。
えっ? というか、ナビがハイブリッドに協力してるの?
それなら俺の今回の努力って、むしろナビからの好感度が下がるだけじゃ?
…………よし、考えないようにしよう。
「ほ、ほら、昼食にしようぜ!」
なんにせよ、アイギスの世界と関わるのは面倒すぎる。
軍だぞ? 国の軍隊だぞ!?
しかも、他の二次元作品と何度もコラボしているような作品だぞ!?
とても俺の手に負える代物じゃない!
「いや、悪いが俺は昼食は後にする。用事が出来た」
「やめろおおおおお!!!」
気軽に異世界に行こうとすんじゃねええええ!
「なにやってるのぉ?」
「「ハイブリッド!?」」
良かった、ハイブリッドが現れた! 救世主だ!
って、ん? スマホを持ってる?
「どうしたんですか? そのスマホ」
「これはナビにもらったのよ。
今、行きたい世界があったんだけど止められてねぇ。
代わりに、これで見る事になったわ」
そういって、見せてくれる。
うん、千年戦争アイギスのアプリですね。
ナビに止められたという話も気になるが、それは一旦置いておいて。
俺はトーシュエンの方に近づき、こっそり話しかける。
「トーシュエン。誤解を解きたければ今がチャンスだ!」
「そうだな」
「だが下手を打つと、せっかく慎重に段階を踏もうとしているハイブリッドが元に戻って、さっきのプールと同じことを繰り返す!
どうするかは任せたぞ!」
それを聞いて、トーシュエンはハイブリッドの方に近づいた。
そうして、取った行動は……。