陽炎の色彩 =同級生がマリスビリーを殺すまでの話= 作:新ツキハ
・『自分』/名も無き少女/名も無きキミ
一つの肉体、一つの魂、一つの精神。
それで成り立つ『人間』という存在に、無理やり二つ目の精神を入れられ別人の精神同士が『混ざった』結果生まれた、さらに別の精神。
ベースである精神の片方は女子高生、片方は別世界の40代前後の男性。『精神』としての積み重ねは男性の方が多かったこともあり、口調や立ち振る舞い、思考が男性的な時期が多かった。
そもそも精神が注がれたのは、本来肉体と魂の持ち主だった女子高生にマリスビリーに関する『知識』を与えた上で『殺せ』と命じるためである。命じようとした存在からすると、混ざったのは想定外だった。
肉体と魂の影響もあり、最終的に性自認は完全に女性に。口調も少し柔らかくなっていっている。
この31日の間、ずっとスピーカーで直接脳に響かせているような『マリスビリーを殺せ』の声/命令を聞き続けていた。それに暗闇のような絶望、身を任せてしまえばいいと言う自分自身の甘い声が重なり、いつ衝動的にマリスビリーを襲ってもおかしくなかった。
だが、そうしなかった。
彼女の精神力がそもそも『二人分』あったということもあるが、それよりも何よりも『マリスビリーを殺したくない』と考えていたからである。
思考を暗闇に変えるほどずっと響く声の中で、『マリスビリーを殺す為に生まれた存在』に対してマリスビリーが与えた『くだらなくて楽しい夏休み』の記憶は、星のように輝いて見えた。それがあまりに大切で、それをくれたマリスビリーはもっともっと大切で──恋をしていた。
かくして、生後31日の彼女は死を選んだ。
・マリスビリー
『名も無き少女』と出会ってしまった男性。
時計塔の『君主(ロード)』の一人であり、『アニムスフィア』の当主であり、後に『地球白紙化』の計画を実行するはずだった魔術師。
『冬木の聖杯戦争』の下見の為に冬木を訪れ、『噂話』が好きな学生から情報を集めるべく潜入していた。セカンドオーナーとは交渉済み。
『隣の席の少女』の家庭の歪みに関しては持ち前の『眼』で知っていたが、不関与。あくまで『クラスメイト』としての距離感だった。
しかし、一学期の終業式の日『隣の席の少女』は目の前で死んだ。
新しく生まれた『名も無き少女』は自分の夢の証明そのものであり、自分のことを知っている上でまっすぐに向き合って来た。『君』ではない、『キミ』だった。あまりにぐちゃぐちゃで、矛盾していて、『美しい』とは言えない在り方で、『自分が救うべき人間』そのもので。
それでも、何より輝かしくて、沢山の『色彩(いろ)』を『思い出』をくれた人で。『計画』が成されれば、今いる『彼女』は居なくなってしまうのでは? と恐怖するほどに、心が染まっていて。
──恋心を自覚した日、マリスビリーは『自分の殺害計画』を企てた。
・『私』/『隣の席の少女』/『███』
本来『名も無き少女』の肉体の持ち主だった少女、事実上の死人。
いわゆるネグレクトに近い状態を受けており、心身ともに消耗していた。マリスビリーに対しては『隣の席』として必要最低限に接し、深くは関わっていない。マリスビリーは見目からして美しく、立ち振る舞いも整っていたので近寄りがたかった。
本を読むことで『自分ではない誰か』に思いをはせ、現実逃避する。
・『俺』/『別次元の男』
『私』の肉体に入り込んだ精神、正しくは模造された精神体。
『Fate/Grand Order』のプレイヤーであり、『マリスビリーの計画』を知った後の人間。プレイ歴は10年、『Fateシリーズ』との付き合いは15年を迎えていたため、『魔術』などの『神秘』に関することにも『設定』として詳しい。
ただし、憑依ではなく本編のような『混ざりもの』になっため、持ちうる知識を最大限使うことはどう足掻いても不可能だった。
本体は別世界にて、今日も元気にゲームしている。
・上位存在
これに関しては本題とはズレるため、この項目は補足にもならない。無視しても構わない。
メタ的な話になるが、この話の原案はとある掲示板にて
『みなさんには学生時代のマリスビリーの同級生になり最終的に彼を殺す任務を与えます』
というテーマのスレッドが立ったことだった。
そこから派生した話であるため、この話における上位存在は『そのスレッドで「こうなったらいいな」を話し合っていたスレ民たち』ということになっている。
テーマを立てた所謂『スレ主』ではなく『スレ民』が上位存在であるのは、『こうなるのではないか』『こうなったら楽しそう』という『願い』を綴っていたのがスレ民であるから。
たった一人の誰かの願いではなく、数多の小さな願いの結晶によって『マリスビリーを殺す誰か』が生まれた。というのが本編には出ない裏設定のようなもの。
またこの話を読んだ『読者』も『もしも』を求めた存在であるため、そういった人間の願いも当てはまるかもしれない。
勘違いさせてしまわないように補足するが、『上位存在』は黒幕ではない。
無数の小さな願いの集合体であるため、そこに具体的な意思はないのだ。『願った者』も、『もしもを求めた者』も悪ではない。
集まった願いが『マリスビリーを殺す同級生』を生み出した結果こうなった。それだけの話である。
そういう『機構』、というだけ。