「ねぇどうして笑っていたの?」
僕は彼女が道で笑っていたことを思い出して聞く。
「おもしろくって
みんなみんな私のこと聞こえないって笑ってた。
それが変わったんだよ!」
彼女は顔を赤らめてふふんと話す。
「これでもう私を笑うものはいないって喜んでいたのに……」
彼女は僕と同じなのかもしれない。
「さみしいって思ったの?」
「そう だからあなたにあえてよかった。」
彼女はぱっと立ち上がって目を輝かせていった。
「ねっ二人で歌でも歌おうよ!初めてでもさ!
せっかく音を手に入れたんだし!」
ワクワクしてキラキラ輝くその笑顔は眩しくて。
胸がドキドキしてたまらなかった。
「ねっこれとか有名で人気だったらしいよ!」
スマホから見せてくれる音楽たち。
しかしながらそこに音はない。
「もともと聞こえてなかったからどんな曲なのか分からないね。」
そう悲しそうに僕は呟いた。
「私たちが作ればいいんだよ!」
「一からでも本当の歌じゃなくても
歌ってそれを本当にするんだ!」
そういって彼女は歌い出す。 お世辞にもいいとは言えない。
しかし心は弾み、体が熱くなる。思わず僕も歌いだしてしまった。
しばらくすると広場に人が集まり始めた。
風が頬をくすぐり、日差しが少し熱を帯びていた。
音を失った彼らは何も発することはないが、
手拍子やスマホの振動が静寂の中で鮮明に感じられた。
香ばしいパン屋の匂いが遠くから漂い、
空気はわずかに暖かい。
彼らの目はキラキラと輝き、喜びを全身で表現していた。
ダンスに身を任せる者、手を叩く者、
スマホで記録する者——まるで小さな光の渦のようだった。
その場はまるでコンサート公演のごとく人が集まった。
「みんなー!ありがとう!」
彼女はますます元気に声を張り上げた。
僕はついて行けずに少しずつ隅っこに移動していたが……
「ほらレンも!」
若さの行動力とはすごいもので引っ張り出されてしまった。
「ぃえーぃ」小さな音だったが今の静寂に包まれた世界では
恐ろしく通った。
「ね?また明日!会えるよね!カフェ前で待ってるから!」
彼女は名前も明かさずに笑顔で立ち去っていった。
嵐のように去っていった彼女とそれにあわせてくる静寂。
まぁこんな日も悪くない。
僕は帰宅しながら今日のことを振り返って思う。
音が出せるのは僕たちのような存在だけ。
それを生かしてみんなに楽しんでもらうのは
僕にとっても気分がよかった。
「また明日……か」
僕は小さな胸の高鳴りを感じながら歩いた。
音がなくても、心の中で歌は鳴り続けている気がした。
明日もきっと、あの笑顔に会える──そんな気がしていた。
僕はあの子の笑顔がとても好きだ。
あの子が曇ることなく常に隣にいて
守ってやりたいと思った。
即興です 改変するかも?