〈材料〉
かつお節2g/醤油小さじ1/みりん少々
①全部まぜる
②フライパンで炒って汁気を飛ばす
③さめたら完成
<鶏そぼろの作り方>
〈材料〉
鶏ももひき肉 100g/醤油、酒、みりん、砂糖 各大さじ1
①鍋に全部の材料を入れる
②鶏ひき肉と調味料を軽くませる
③中火にかけ、かたまりをほぐすように炒める
④汁がなくなったら完成
週末、少年は帝襟に連れられブルーロックに来ていた。泊りがけのためリュックを担いでいる。
この2日間で必要な調味料や食材を事前に伝えていたが合っているかの確認と設置を依頼した3つ口コンロの確認を行う予定で、クリスマスプレゼントを楽しみにしている子供のような気分だった。
「スッゲェーーーー!」
ピカピカのキッチンに並ぶ大量の食材に目を見開く。
調味料のさしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)に加え、みりんが揃ったことに興奮する。
砂糖、塩、醤油はスーパーに置いていたが、それ以外の調味料はスーパーに並んでいるところを見たことがなかった。今回試しに頼んでみたが揃うとは思わず感激した。
他にもあると嬉しいなという希望を込めて頼んだものが並んでおり、大人の力(財力)ってすごいと思った。
「これで大丈夫そうでしょうか?」
「完璧です!」
「あぁ、よかった…」
「あ、これお土産というか差し入れです。マフィンっていう御菓子です。小腹が空いたときにどうぞ。マフィンの底の銀色のやつは食べれないんで注意してください」
白い箱を手渡され、帝襟は反射的に受け取った。
「ありがとうございます!後でいただきます」
「じゃあ、俺下準備に取り掛かるんで」
「わかりました。ちょくちょく見に来るので足りないものなどは教えてください」
「了解です」
そういって少年と別れた帝襟は用意したものに不足がなかったことに胸をなでおろす。少年から受け取った白い箱から今まで嗅いだことがないいい匂いがして胸が高鳴った。絵心がいる部屋に入り、自分のデスクでいそいそと箱を開く。それだけでくらっとくるような香りが押し寄せる。
中には黄金色をしたものが4つ並んでいる。
一つ手に取るとその軽さに驚いた。濃厚な匂いを胸いっぱいに吸い込むと一口かじる。
舌の上で余韻だけを残しほろほろとほどけていく。柔らかくて穏やかな甘さに自然と笑みが浮かんだ。
「………アンリちゃん、それって」
帝襟が部屋に入ってきた時からしていた今まで嗅いだことがない匂いに絵心は思わず視線をやる。
「例の子が差し入れにくれたんです!すごいですよこれ!!」
「……試しに俺にもくれない?」
「えー!なんでですか!あんなに反対してたのに!「エナジーバーで十分栄養は取れる。非合理的だ」とか言って!」
「結局GO出したんだからいいでしょ」
「あと3つしかないのに…しょうがない、1つだけですよ。あと底の銀色の紙は食べれないそうです」
「ありがと」
しぶしぶとした表情で帝襟から渡されたそれは普段食べているエナジーバーとは明らかに違う、ちょっとした力でしぼんでしまう程の軽さだった。先に銀紙を外し、思いきりかぶりつく。口じゅうに染み込むようなじんわりとした甘さが広がった。鼻から抜ける品がある香りに意識が持っていかれそうになる。あっという間になくなったそれに思わず帝襟の方を見た。
「だめです」
「アンリちゃん」
「絶対にダメです!」
「初めに4つ入ってたなら半分の2つは俺の分ってことだよね」
「ぐぬぬ…」
食品を点検後、ひとまず冷蔵庫に戻した後真っ先に始めたことは調味料の味見だった。このディストピアで記憶通りの味をしているのか確認が必要だからだ。
ついでに漬物やら何やら完成までに時間がかかるものを仕込んでおく。
一通り確認と作業が終わると鍋で米を炊く。
そこまで難しくはなく、米を研いで浸水を30分した後、鍋に入れ、米2合に対し400mlの水を入れ蓋をする。はじめは中火にかけ沸騰したら弱火で10分。その後火を止めて10分蒸らしたら完成だ。
しゃもじがないため大きめのスプーンを使って鍋の底からかき混ぜるようにほぐす。炊きあがった白米の宝石のようなつやつやとした輝きと芳醇な香りにうっとりとした。
衛生面を考えて透明な手袋をした後、白米を手に取る。あつあつのご飯の熱さに耐えながら片手に持った山の真ん中を凹ませ、試食している間に作ったおかかをたっぷりと詰める。
ほっほっとリズムよくその作業を繰り返し、4個ほどのおにぎりが完成した。
おかかと同時並行で作っていた鶏そぼろもおかかと同じようにおにぎりに詰める。帝襟に頼んでおにぎりの王道の具である鮭や炊き込みご飯のおにぎりも作りたかった。しかしこれまでおにぎり屋で出したことがなく、あまり奇をてらわない方がいいかと考えいつもの具で用意をした。
鍋の底にこびりついたおこげをかき集めちいさなおにぎりを作ると口に含んだ。もっちりとした白米とかりっとしたおこげだけだがそれで十分だ。
「うまいなぁ」
その日ゴールポイント一覧表に追加された「おにぎり屋のおにぎり」という文字は、潔には燦然と輝いているように見えた。括弧書きで「※週末限定」と記載があり、今日が週末であることを潔は知った。
「おにぎり屋のおにぎり」の文字の下に「おにぎり屋のお菓子」と「おにぎり屋の定食」という文字が並んでいる。
お菓子は潔にも想像はついたが「定食」というのは覚えがなかった。「おにぎり」と「お菓子」は1ポイントなのに対し、「定食」だけが2ポイントも要する。
少し迷った後で、潔は「おにぎり屋のおにぎり」と自身のゴールポイントを交換した。
出てきたおにぎりはいつも見ていたあの形だ。しかも2つもある。添えられた付箋には「おかか」「鶏そぼろ」と書かれている。以前にどちらも食べたことのあり潔の口の中は想像しただけで涎でいっぱいになった。
おかかのラップを外しかぶりつくとまだほのかに温かい。口に含んだだけで中に入っているおかかの香りがふわりと漂う。どこか海を感じさせるにおいだ。
「あー、うまい…」
じんわりと染み入るような温かさと味に潔はほっと一息ついた。
「おっ!それが前に言ってた「おにぎり」?」
「あぁ」
「ちょっともらーい♪」
蜂楽におにぎりをかじられ潔は啞然とする。食べた張本人は目をキラリと光らせた。
「―――これが「うまい」…!」
「っ!!そうだろ!うまいだろ!」
「うん!まだ温かいね。もしかして作ったばっかりかも」
「そういえば誰が作ってんだろ?」
潔が疑問に思っているともう一つの鶏そぼろのおにぎりを蜂楽に狙われる。
「こっちもちょっと分けてくれたり…」
「絶対ダメ!」
少年は深夜0時を過ぎてもまだキッチンにいた。詳しく言うとキッチンで鮭の解体をしていた。
帝襟にダメもとで鯛と鮭を頼んで取り寄せてもらったはいいが、切り身になっているはずがなく、1匹丸ごと用意されていたからだ。鯛は何とか捌けたが、それよりも大きな鮭には悪戦苦闘していた。包丁の背で取った鱗が飛び散り、至るところで照明の光を浴びてキラキラと光っている。
「やることが、やることが多い…!」
そんな少年の嘆きは誰も知らない。