追加公演期間中のある日。
ゼンゼが事務作業中、
アークアルカナの人気分析記事を見掛ける。
ユーベル:抜群のアイドル性
フェルン:次世代のエース
ゼーリエ:ステージ上のカリスマ
フリーレン:圧倒的歌唱力
そして、
ゼンゼ:露出は控えめ。人気指標は“最下位”
しばらく画面を見つめ、
スマホを閉じる。
「……まあ、ほぼ裏方ですからね」
誰もいない事務所の一室。
笑ってはいるが、目が笑っていない。
⸻
その夜
大陸魔法協会・アークアルカナ事務所
いつも通り、簡易布団で横になるゼンゼ。
うとうとしながらもSNSアプリを開き、
検索画面を見つめている。
【 ゼンゼ 】
恐る恐る、検索。
出てくる投稿は数こそ多くなかった。
だが。
”ゼンゼ様の衣装設計ほんと天才“
”MCの流れ全部ゼンゼが組んでるの知ってる?“
”アークアルカナが崩れないのゼンゼのおかげ“
”ゼンゼいなかったら今の完成度ないよ“
“ゼンゼ様と結婚したい”
“↑蟻とでも結婚してろよ”
“↑↑●すぞ”
“ゼンゼが総理やれ”
“↑なんかの間違いで選挙出ないかな”
“↑どんな間違いだよ”
“ゼンゼは最強の土台。一生推すって決めてる”
「……ふ、“最強の土台”か」
嬉しいような、複雑な心情。
スクロール。
さらに。
長文の投稿を見掛ける。
『ゼンゼは目立たない。でも、
彼女が一歩引いて全体を調整しているのがわかる人にはわかる。
歌も踊りも相当レベルが高くないとできない芸当。
あの人が一番“プロ”。』
いいねは、5000。
爆発的ではない。
でも。
引用は全員長文。
ゼンゼ、目を細める。
「……濃いですね、この人たち」
瞼が重力に負け、
すぅと意識が薄れていく……。
⸻
翌日
ライブ前、
楽屋。
ユーベルがスマホを突き出す。
「見た? SNSのゼンゼ考察アカウント」
フェルンも頷く。
「話題になってましたね」
「衣装の布の使い方まで分析してます」
フリーレン、笑う。
「それは怖いね……」
フェルンが冷静に返す。
「ファンの熱量が何より高い証拠です」
ゼーリエは腕を組む。
「当然だ。ゼンゼはアークアルカナの“核”だ」
「ファンも馬鹿ではない。見る者は見ているのだろう」
淡々と言い切る。
ゼンゼ、少し照れる。
「やめてください……」
ユーベルが言う。
「でもさ、ゼンゼのファンって“色々”やばくない?」
「……“色々”やばいとは?」
ゼンゼが聞き直す。
ユーベルがニヤリと口角を上げる。
「ライブでさ、すっごいうちわ持ってたよ……」
「“今日も采配最高”とか」
一拍。
「……“生まれてきてくれて、ありがとう”とか」
全員、吹き出す。
◇
その日
追加公演の2日目
ライブが終盤に差し掛かる。
アンコール前。
客席の一角。
統一色の緑のペンライト。
静かだが揃っている。
そこから聞こえる。
「「ゼンゼー!!」」
数は多くない。
だが声が太い。
ゼンゼ、一瞬固まる。
ステージの端。
ゼーリエが小さく言う。
「ゼンゼ、前に出ろ」
「え?」
「貴様を見ている者がいる」
押し出される。
ゼンゼ、マイクを持つ。
「……えっと。いつもありがとうございます」
歓声。
「私は前に出るタイプではありませんが……」
声が震える。
「……皆さんが楽しめる形を作るのが仕事です」
「こんな私ですが……今後ともよろしくお願いします」
深く頭を下げる。
誰にも気づかれないが、彼女の目には涙が浮かんでいた。
客席から。
「「それが好きだー!」」
ゼンゼがゆっくりと顔を上げ、
小さく微笑む。
「……変わった人たちだ」
野太い歓声が会場を振動させる。
◇
終演後、
楽屋。
「今日ゼンゼ泣きそうになってたじゃん」
ユーベルが茶化す。
フェルンが小さく頷く。
「すごく良かったです」
フリーレンも続ける。
「いやー数字じゃ測れないね……」
ゼーリエが静かに言う。
「……重要なのは“順位”などではない」
ゼンゼが顔を上げる。
「……え?」
ゼーリエは淡々と続けた。
「土台が崩れれば王も立てん……」
「それが組織というものだ。」
一拍。
「ゼンゼのファンは、見る目がある」
ゼンゼの目が少し潤む。
「……でも、厄介ですよ?」
ユーベルが即答する。
「私たちのファンは全員厄介だよ」
ニヤリと笑い、さらに続ける。
「……だけど、ゼンゼのファンはさらに厄介w」
一瞬の沈黙。
それから、全員が笑った。
◇
その夜
ゼンゼの投稿。
”いつも応援していただいてありがとうございます。
目立たないタイプですが、自分なりに頑張ります。
引き続き、アークアルカナをお願いいたします。“
いいね:1万
コメント数は少ない。
でも。
全てが長文の投稿ばかり。
ゼンゼは知る。
派手な炎ではない。
だが、
“消えない火”が自分にはあると。
本作中で好きなキャラ
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ゼーリエ
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ゼンゼ
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フリーレン
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フェルン
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ユーベル