⸻とある巨大ライブ会場
照明が落ちる。
暗闇。
一瞬の静寂。
そして――
重低音。
ズン。
ズン。
ズン。
次の瞬間。
爆発する歓声。
「アビクラ!!」
「アビクラ!!」
「アビクラ!!」
「アビクラ!!」
揺れる会場。
床が震える。
数万の観客が、熱狂していた。
ステージ中央。
三つの影。
ライトが落ちる。
そこに立っていたのは——
三人。
三人の魔族。
完璧なフォーメーション。
無駄のないダンス。
一切ブレない歌声。
人間では決して到達できない領域の、完成度。
観客の目は離れない。
呼吸すら忘れる。
ステージ中央。
ゆっくりと、マイクを口元へ。
「さあ……人間たち」
七崩賢——
断頭台のアウラ。
微笑む。
「きなさい」
「私が——支配してあげる」
歓声。
絶叫。
誰かが泣いている。
誰かが膝をついている。
興奮しすぎて、気を失う観客すらいる。
それを見て、嬉しそうに微笑む。
まるで——
玩具を見つけた子供のように。
それは、まさに——
支配。
◇
「……ふふ」
優しく、微笑む。
魔界の歌姫——
ソリテール。
「大丈夫、怖くないよ」
「お姉さんと、お話ししよ?」
その声は柔らかい。
ただ——
そこに感情はない。
言葉にも。
歌にも。
踊りにも。
表情にも。
一切、感情がない。
ただ。
完璧。
異様なほど柔らかい関節。
人間ではありえない可動域。
そして。
神——否。
魔王が与えた、天性の歌声。
観客は涙を流す。
胸を押さえる。
魂を直接触られているような錯覚。
逃げられない。
聞くしかない。
◇
(私は人間を煽らない)
静かに踊りながら。
舞台の端。
第三の魔族——
リーニエ。
(ただ、やることをやるだけ)
歌いながら踊る。
踊りながら歌う。
一切の乱れもない。
呼吸すら揃っている。
人間では到達不可能。
それはまさに――
悪魔。
いや。
魔族。
⸻
◆リーダー
七崩賢
断頭台のアウラ
◆魔界の歌姫
大魔族
ソリテール
◆舞踊の極み
完全模倣の使い手
リーニエ
三人の魔族。
その三人から構成された
アイドルユニット。
その名は——
『アビス・クラウン』
◇
終演後。
歓声がまだ会場に残る頃。
楽屋。
無音の控室。
ソリテールが髪を整えながら言う。
「ねえ、アウラ。」
「さっき誰かが喋ってるのを聞いたんだけど——」
「“アーク・アルカナ”って知ってる?」
アウラは鏡越しに微笑む。
「……ええ、知ってるわ」
リーニエは腕を組む。
「私は知りません。」
ソリテールは首を傾げる。
「なぁにそれ」
「アイドル?」
アウラは小さく笑う。
「ふふ……」
「そうよ。」
少し考え。
そして、肩をすくめた。
「でも、別に覚える必要はないわ。」
ソリテールが肩をすくめる。
「えー?」
「私、知りたいな」
「教えてよ、アウラ」
アウラは立ち上がる。
扉へ向かう。
そして、振り返らずに言った。
「知る価値もないわ。ソリテール」
静かな声。
だが——
その中には確信があった。
アウラは微笑む。
「どうせ——」
一拍。
「私に支配されるんだから。」
静寂。
その言葉は——
これから始まる波乱を、
告げていた。
—— 第一部・完 ——
本作中で好きなキャラ
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ゼーリエ
-
ゼンゼ
-
フリーレン
-
フェルン
-
ユーベル