YMT(ヤオモモの弟マジ天使)   作:HIGHレボリューション

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"麗日お茶子"昇天

芦戸が胸を押さえて倒れ込んだ後、千はトコトコと短い足でリビングを歩き回り始めた。その視線の先には、ぽわぽわとした雰囲気を纏う麗日お茶子がいた。

 

「おちゃこおねえちゃん!」

千は満面の笑みを浮かべて駆け寄ると、麗日の目の前でピタリと立ち止まった。

 

「え? 千くん、どうしたん?」

 

麗日が不思議そうに首を傾げて身を乗り出した瞬間、千は小さな両手をいっぱいに伸ばし、麗日の両頬をむにゅっと挟み込んだ。

 

「わぁ……! おちゃこおねえちゃんのおかお、おもちみたい! もちもちー!」

ぷにっ、むにゅっ、もちもち。

 

5歳児の温かく小さな手のひらが、麗日の柔らかい頬を容赦なく堪能する。悪意など微塵もない、ただ純粋な好奇心に満ちたその仕草。至近距離で見つめてくる、無垢な天使の瞳。

 

「あ……っ、ふぇ……?」

 

麗日の顔が、みるみるうちに限界まで赤く染まっていく。

ただでさえ破壊力抜群の千に、自分の顔を直接「もちもち」されるという特大の不意打ち。麗日の脳内処理能力は、すでにキャパシティを超えようとしていた。

 

「おちゃこおねえちゃん、ふわふわで、あまーい匂いがする! せん、おちゃこおねえちゃんだいしゅき!」

 

千は無邪気な笑顔を浮かべると、短い腕をめいっぱい広げて、麗日のお腹のあたりに「ぎゅっ」と勢いよく抱きついた。小さな頭がお茶子にすりすりと擦り付けられる。

 

「……えっ」

 

麗日の動きがピタッと止まった。

見下ろせば、上目遣いで自分を見つめる、破壊力抜群のうるうるした黒い瞳。5歳児特有の高い体温と、ベビーパウダーのような甘い匂いが鼻をくすぐる。

ドキンッ、と音が鳴りそうなほど、麗日の胸が大きく跳ねた。

 

「あ……、あ、ああ……」

「おちゃこおねえちゃん、あったかいねぇ」

「て、天使……天使がおる……」

 

へにゃり、と麗日顔がだらしなく崩れる。

 

「うち、もう思い残すことない……。こんな可愛い子に抱きついてもらえるなんて、うち、もうここで死んでもええ……」

 

あまりの尊さに自我を失った麗日は、無意識に自分自身に『無重力(ゼログラビティ)』をかけてしまったらしい。

「ふふっ、おねえちゃん浮いてるー!」と喜ぶ千を抱きしめたまま、麗日の体はふわりふわりと、幸せそうに天井へ向かって浮遊し始めた。完全に昇天(物理)である。

 

「う、麗日さん!? なに私の千と一緒に昇天しようとしてるんですの!?」

我に返った八百万が、血相を変えて立ち上がった。

 

「ズルいですわ! ズルすぎます! 私だってまだ今日、千からの『自主的なハグ』は頂いておりませんのに! 千! 麗日さんから離れてお姉様の胸に飛び込んできなさい!」

「ももねえさま、おこってるー? キャハハ!」

 

鬼の形相で天井に向かって両手を伸ばす八百万と、無重力空間でキャッキャと笑う千、そして「もう思い残すことはないわぁ……」と完全に涅槃の境地に達している麗日。

 

「……ダメだ、ヤオモモ完全に理性を失ってる」

「ていうか、麗日もヤバいな。完全に浄化されてるぞ……」

 

下から呆れ顔で見上げる耳郎や瀬呂をよそに、A組リビングの『八百万千・争奪戦』は、さらなるカオスへと突入していくのだった。

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