YMT(ヤオモモの弟マジ天使) 作:HIGHレボリューション
タグにもありますがキャラ崩壊描写がありますので元々のキャラクターが好きな方はご注意ください
短い文章ですがどうぞ
わちゃわちゃと宙で騒ぐお茶子と八百万をよそに、ふと「無重力」の効果が切れて、千はふわりと床に着地した。そして、トテトテと歩いて向かった先には、少し離れたソファで静かにそば茶を啜っていた轟焦凍がいた。
轟は不思議そうに、足元の小さな生き物を見下ろした。
「……なんだ、お前」
「あのね! せんね、ももねえさまのおとうとなの!」
千は、轟の赤と白の髪をきらきらとした目で見つめると、無邪気な声でこう呼んだのだ。
「しょうとおにいちゃん! かみがた、いちごのケーキみたいでかっこいいね!」
ピタッ……と、轟の動きが止まった。
手にした湯呑みから、ぽたりと茶が滴り落ちる。
「……『お兄ちゃん』」
「うん! しょうとおにいちゃん!」
轟は四人兄弟の末っ子である。上に兄と姉がおり、彼が誰かから「お兄ちゃん」と呼ばれることは、これまでの人生において一度たりとも存在しなかった。
その瞬間、轟の脳内に雷鳴が轟いた。
自分が、お兄ちゃん。この純真無垢な小さな命から、真っ直ぐに慕われ、見上げられる存在。末っ子として生まれ育ってきた彼の中に、かつてない強烈な『兄性』が芽生えた瞬間だった。
轟はゆっくりと立ち上がると、天に向かって力強く右拳を突き上げた。その背中には、どこからか世紀末覇者のような荘厳なオーラすら漂っている。
「……わが生涯に、一片の悔いなし!!」
「「「轟ィィィ!?!?」」」
まさかのラ○ウばりの昇天宣言(立ち往生スタイル)に、上鳴や切島がすかさず総ツッコミを入れる。
「お前が言うな!!」
「キャラ崩壊しとるぞ轟!! 頼むから帰ってこい!!」
「お兄ちゃんって呼ばれたの、そんなに嬉しかったのかよ!?」
「ズルいですわ轟さん!!」
ついに泣きべそをかき始めた八百万が、ハンカチを噛みちぎらんばかりの勢いで地団駄を踏んだ。
「千が他の男性を褒めるなんて! しかも『お兄ちゃん』だなんて、私以外の誰かに家族の称号を与えるなんて……っ! ああっ、でもそんな無防備な千も最高に愛おしいですわ!!」
「しょうとおにいちゃん、つよい? せんをだっこできる?」
「……ああ。俺の右腕はお前を抱くために、左腕はお前を温めるためにある」
「真顔でとんでもないイケメン台詞吐きやがったぞコイツ!! 完全に弟にメロメロじゃねーか!」
末っ子ヒーローの隠された『兄願望』を完全に満たしてしまった5歳児の圧倒的ポテンシャル。完全に兄面をして千を抱き上げる轟と、それに嫉妬して「私にも抱っこさせなさい!」と暴れる八百万のせいで、A組リビングはさらなる阿鼻叫喚の渦に包まれていくのだった。