TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
時は23世紀初頭。ネオン煌めく街の下、人と人ならざるものが争うこの世には、魔法少女が存在する。ちょっと奇抜なデザインの服装にやけに短いスカート、そして物騒な武器。……正直、魔法少女って感じではないが……なんにせよ、彼女らは日々街に出てくる怪物から一般市民を守っているのだ。頭が上がらない。
そしてもちろん、その怪物を統率する悪の組織も存在している。そいつらは今の世を統べ、自分たちの都合のいいように変えるために日々せっせこせっせこ怪物を作っては、魔法少女達にぶつけているのだ。そして大体負ける。勝率は大体3割くらいだと記憶している。
「ミコト所長!捕まえられましたよ、ついに!魔法少女になる前の優秀な素体!」
「お、マジか?じゃあ、ここまで連れてきて」
……そして俺は、その悪の組織側の人間である。もっと言えば怪物を作る係だ。給料は良いよ。そういう問題じゃないと思うけど。
どうしてこんな職についてしまったかはもはや曖昧だが……当時の自分を諦めが支配していたことは確かだ。あとはなんやかんや。適当すぎる。よく分からないまま女として生まれ変わった末にこんなことしているなんて、なんとも自分と言う人間はどうしようもないなと思ったり。そんなブルーな時は「でも他の奴らだって大概どうしようもないよな……」と思うことで何とか凌いでいる。泣きたくなってきたな。
まあ自分の事は置いておこう。部下のマリが言うには、苦労の末魔法少女のタマゴを確保することに成功したらしい。政府側もあたりをつけて守っているため、今まではそういった人材の拉致……勧誘に失敗してきたのだが、ついにというわけだ。
怪物を作るだけでは魔法少女集団には勝てないと悟った組織のボスが、俺に言った奴らの強化案。その一つが魔法少女の力の確保というわけだ。既に覚醒している子からエネルギーをちゅーちゅーする事も考えたが、どうやらエネルギーにもプラスマイナスがあるみたいで……正のエネルギーを怪物に注入してみたら爆発四散したこともあり、難航していたのだ。
じゃあ魔法少女を無理やり洗脳とかすればいいのではと問えば、倫理的にちょっと……とのこと。殺しはするが、殺し以上の辱めは良くないらしい。そんなんだから勝率3割なんだよ。言ったらぶん殴られた。くそう。
しかし最近の俺の研究により、まだ魔法少女として覚醒する前の子ならばエネルギーがプラスでもマイナスでもない、ということが分かった。いかがでしたか?
ともかく、それを利用すれば膨大なエネルギーを使えるというわけ。これをボスに報告すれば、あくまで保護と言う形を取ることを条件に、そういった人材の確保に人員を割いてくれることになった。……微妙に悪の組織っぽくない。もしかして、俺が上手く言いくるめないとダメだったりするのか?
そういった流れの末に現在。半年くらいかけてやっとこさピカピカのタマゴを手に入れることが出来たわけだ。正直これで上手くいかなかったら俺の仕事が凄いことになりそうなので、どうにか成功してほしい。頼むマジで。
「こちらになります」
「スーツケースで持ってきたのか……」
と、マリが持ってきたのはガタガタと動くスーツケース。ついでにくぐもった声も聞こえてくるぞ。……なんか、駄目な気がしてきたな。こんなんで保護されてくれないだろ。せめてケースに詰めずに連れてきてほしかった……
まあ、泣き言を言っても始まらない。とりあえずやってやろうじゃないか。側面についたジッパーを開けば、制服姿の女の子が手足と口を縛られている姿が現れる。ケースが開けられたことにしばらく驚いた後、俺の姿を見て体を捩っていた。何かしらの文句を言っているようだが、布のせいで不明瞭だ。とりあえず口から解放して──
「あ、貴方たち一体何なんですか!?私を誘拐して一体何をするつもりなんですか!あ、あれでしょ!触手とか機械とか触手とか使って洗脳するつもりなんでしょ!エロ同人みたいに!エロ同人みたんんんんーーーッ!」
口を布できつく縛った。マリの方を向く。
「…………本当にこの子?」
「はい、一応……ミコト所長の作った計測器もしっかり反応していましたから」
マジで?こんな変……じゃなくて、個性的な子が?俺も計測器をかざしてみるが、画面に出た数値は高く、魔法少女の素質があることをしっかり示している。しかも大分上澄みだ。スゲェ。
まあ……こう、誤解があるのも確かだ。怪物の
いうなればニチアサレベルの悪の組織。が、この子はどうやら此方をエロエロのエロ集団だと勘違いしているらしい。誠に遺憾である。とにかく、もう一度口の布を解く。喋って弁明しなければ──
「私はッ!私は屈しませんよそんな下劣なものになんて!いつか助けが来るまでいくらでも耐えてやります!調教できるものならしてみてくださいよぉ!!」
「なんだコイツ~~~!!」
こ、怖ェ……引きこもっていたせいで久しく感じていなかった恐怖がこんな奴に。若干笑っているが……これはアレなんだろうか、いわゆる誘い受けみたいな奴なんだろうか?だとしたらなおさら怖いが、魔法少女の適正年齢的にまだまだ学生だろうし流石にそんなことはないか。きっと気が動転して変な言い回しになっているんだろう。そう信じたい。
「おほん。その、強引にここに連れてこられてそう思うのも無理はないだろうけど……俺たちの組織はそういうえっちなことはしないんだよ」
「えっ?……だ、騙されませんよ!そう言って油断させたところをヌルヌルグチョグチョする気でしょう!」
「しねーよ。……ほら、周りで寝てる奴らを見てみな。いかにもなのはいないだろ?」
「……ほ、本当に?エロないんですか?」
「エロないよ」
周囲にいる保存液に漬けてある怪物たちを一通り見まわした後、そういう下品な手段を取らないのが分かったのか、彼女は露骨にガッカリしていた。なんでだよ。頭痛くなってきたぞ……
と、マリがスッと報告書を差し出してきた。拘束を解くついでに、つらつらと書かれた情報を読む。それによれば、この子の名前は八雲サキ。父母はおらず一人暮らしの16歳で、記述にある通りならあまりいい生活はしていなかったらしい。今日の夜7時頃、バイト先に足を運んだところ妖怪に襲われる。店員が被害に遭い、とうとうこの子の番……という所を誘──保護したとのこと。
「なるほど……辛かったね。同僚さんが無事だと良いけど」
「いえ、目の前でヌルグチョでしたから、駄目だと思いますよ。いいなぁ……」
「よくねえよ!」
だ、大丈夫だろうかこの子。倫理観がアレなんじゃないか?嫌いな子だったんだろうか。だとしても、お姉さんそういうの良くないと思うんだけど。ってコラ、うっとりした顔をするな。
というか、この子もしかして……いやまあ、事件のショックで気が動転しているのかもしれない。ここは慎重に勧誘しないとだな。……なんで悪の組織なのに気を遣って話しているんだろうか。
「それで……なんですかここ?どうして私を誘拐したんですか?身代金は期待できませんよ、私」
「保護ね、保護。事件に巻き込まれてなければ、普通にしたんだけど。とはいえ、乱暴なやり方になったのは申し訳ない……で単刀直入に言うと、君には魔法少女の適性があるんだ。そしてその力を、我々に貸してほしい」
そう言われたサキは、しばらく俺の言葉を咀嚼した後、目を開いて白黒させていた。いきなり言われても、と言う感じだろう。もし俺が同じこと言われても詐欺だろって思うし。
「魔法少女っていうと、庶民の味方の?」
「うん」
「悪の組織と戦うような感じの?」
「そうだね」
「たまに敗北してえっちな目に遭う?」
「くどいぞ君」
どうしてすぐそっち方面に行ってしまうのだろうか。襲われた時に頭でも打ったのか?後で精密検査した方が良いなコレ。そうでなくとも、こんな優秀な子は調べておきたいし。
「別に戦えってわけじゃないから、安心していいよ」
「えー。……いや、そもそも。貴方たちは政府の人間には見えませんし、あれって怪物ですよね?つまり……悪の組織の方?」
そう油断していると、ここに来て至極まっとうな疑問を投げかけられた。そりゃあ、異形がタイラントよろしくホルマリン漬けのようになっている場所の組織なんて、まともな集団とは思われないだろう。どう見ても悪の組織。いや、実際そうだが。
さて、どうしよう。別に無理やり従わせてもいいんだけど、出来るなら前向きに協力してくれると、こっちとしてもやりやすい。
かといって諸々を隠しきれる気もしない。バレる時期によってはとんでもないことになりそうだ。なら、最初にある程度話しておくのが一番いいだろう。ボスからは正直に言えとは命令されていないので、上手くぼかせばいい。腕の見せ所だ、弁舌は全く得意じゃないが。
「……確かに我々は政府の人間じゃない。だがこいつら
「はえー、そんな集まりが。でも、魔法少女が戦わないと平和じゃなくなっちゃいますよ」
「それがおかしいのさ。子供に治安維持を任せるってのがね。しかも政府の奴らは、適性があると見るや否や無理矢理覚醒させて戦わせているのさ。おそらく、今日君が事件に巻き込まれたのもそういうことだろう」
サキの適性は前述の通り高い。これなら国が目をつけているだろうに、何故妖怪の暴挙を許したのか。それは彼女を覚醒させるためにそう仕向けたからで間違いない。
彼らはこれまでも同じような方法で魔法少女に目覚めさせ、無理矢理戦わせてきたのだ。他の手段もあったろうに……正直、うちとやってることがどっこいどっこいである。政府こわーい。
「だから我々は魔法少女に頼らない兵士を作ろうと考えている。学生なんて友人と駄弁ってればいい、少なくとも無理に危険な事をさせるべきではない。そうだろう?」
「なるほど……あれですか、エナジードレインとかするんですか?」
「うん、まあ…………うん…………そうとも言える。きみが協力してくれるなら、この異形をより強く、より賢くすることが出来るだろう。そうすれば、子供が無理に戦う必要もなくなるさ。……ありきたりな言い方だけど、君にしかできないことなんだ。どうかな?」
嘘は言っていない。厄介極まりないから魔法少女に戦ってほしくないと思っているし、政府の行動は本当だし、こんなチャンス二度とは訪れないだろうからこの子にしかできない。うん、嘘は言ってないな。
サキはどうしようか迷っているようで、うんうんと唸っている。まあ選択肢はないわけだが、あるように思わせるのも大事だろう。数分の後、決意したのか一つ頷いた後、彼女は口を開いた。
「一つ、確認したいんですけど……エロはないんですよね?」
「ないよ」
「じゃあ、ありにして欲しいんですけど」
「あんだって?」
「エロありにして欲しいんです!それなら協力します!」
……
…………
…………………
「なんだコイツぅ……」
本当に、大丈夫なんだろうか、色々と。俺は天を仰いだ。マリは気まずそうにしていた。心なしか、ガラスの中の怪物たちすら引いている気がした。ふんす、と鼻息荒くしているサキだけが場違いだった。