TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
うんうん唸りながら書かせていただきました。
ドオンと大きい音が、研究室の中から聞こえてきた。驚いた私は足を止めどうしても振り返ってしまう。何かが起こったことは確実。つい、戻ってしまいそうになって……背中の感触を思い出してしまい、その足が止まった。ミコトさんは私を守ろうとしてくれているのだから、戻ってはいけない。
研究室から20歩先の右壁に隠し扉がある、とミコトさんは言っていた。私がしなければいけないことは、そこから逃げることだ。言われた通りにきちんと20歩を数え、壁に触れている手を押す。
「……あ、あれえ?」
けれど、なぜか全くと言っていいほど反応がない。ほとんど殴るようにしてみても、自分の拳が痛いだけでビクともしなかった。ま、まさか、この土壇場で騙されたなんてことが……?
しかしここで、私の灰色の脳細胞がフル回転しだした。もしかすると、ミコトさんの言った20歩は彼女の基準であって、私の歩幅では合っていないのではないだろうか。そういえばあの人は意外と歩幅が小さかったような気がする。
とにかく試してみなければと、私基準の20歩地点から少しずつずらしていけば、3歩ほど研究室の方にズレた所で、壁に違和感を感じた。多分当たりだ。安堵の息をつきながら、歩数なんて人によって変化しうる数え方を使うのは良くないんじゃないか、なんて思ったり。もしも再会できたら、違う基準を使うようにお願いしよう。……再会、出来たら。
「大丈夫、ですよね……うぇっ!」
不安を振り払うように、体重をのせて壁を押す。回転扉だったそれは、思っていたよりも緩かったみたいで、勢い良く回った。思わず体勢を崩した私は、そのままズザーっと扉の先に倒れこんでしまう。痛い。膝って擦りむくとめんどくさいんだよな……
と、怪我の心配をした矢先。未だに地面と擦れる感覚が無くならないことに気づいた。ブレザーを着ているから分かりにくかったけれど、全身がすれているような感覚。一体なんだと目を開けば、私は滑り台を滑っているらしい。少しの風と共に、景色が少しずつ変わっている。
どうやら、隠し扉の先はすぐ避難経路に繋がっていたみたいで。転んだ拍子にダイレクトインしてしまったみたい。
ウォータースライダーによくあるであろう、トンネル型の滑り台のような感じだ。避難用の奴なら学校の避難訓練で何度か滑ったことがあるけれど、トンネル型となると初めて。少し気分が浮つい……速くない?
「ぴゃあああああ!!」
ちょっと、いや大分傾斜がおかしい。滑り台というよりジェットコースターとかの方が近いんじゃないだろうか。ちなみに言えば、今の私は転びながら滑り始めたせいで、顔から落ちていっているわけで。それはもう怖い。
「助けてぇ~~~!!」
ぐるぐるぐるぐると、何故か曲がりながら落ちていく。凄い勢いで滑りつつ、たまに登ったりもする。なんで!?なんで登るの!?
まるで遊園地のアトラクションみたいだ。行ったことが無いので想像だけれど、多分間違ってはない。どうして今その感覚を味わっているのかはよく分からないけど。誰なんですか、こんな避難経路設計した人は。絶対ミコトさんかボスかの二択でしょ。勘弁してください。……うぶっ、酔って来たかも……
でも、どうやら終わりが近づいて来たみたい。段々と外の音が近づいてくるのを感じる。……ところで、このままの体勢だと顔から出ていくことになるような──
「ヹっ!!」
「ん?……サキか」
「ユ、ユキネさ、うぶっ」
「ああ……まあ、最初はそうなる」
勢いそのまま投げ出されて、顎をすりむくことになった。とても痛い。ついでとばかりに、慣性にしたがって胃の中のモノが飛び出して来る。とてもきぼち悪い……
どうしてかそこにいた、フリフリの魔法少女っぽい衣装のユキネさんに背中をさすってもらいながら、流れる水へとリバースする。空間から漂う臭いのおかげで嘔吐が進んだ。ご飯が進むの対極だ。
「うう……ありがとうございます」
「いいよ、慣れてるからな」
ユキネさんも監視カメラを見てここまで来たらしい。この町の魔法少女は15人いるのに、10人程度しか映っていなかったのを怪しんだそうだ。この非常通路がバレているかは分からないけれど、警戒するに越したことは無いのはその通りだと思う。
それで、私が使ったのとは別の隠し扉から滑って来たらしい。三半規管が強いって羨ましい。と考えていたら、研究室前の非常通路が一番くねっているという事を告げられた。何でそんな設計にしたんですか!?
許すわけにはいかない。非常通路で遊ばないで欲しかった。私の昼ご飯を返して。ユキネさんは微妙な顔をしていた。
「もう……それで、私はどうすれば?」
「指定の場所から地上に上がれ、とのことだが……私がついていくことは出来ない。これを渡しておくから、ちゃんと見ながら行くんだぞ」
そう言ってユキネさんは、下水道の地図がマッピングされた端末をくれた。現在地と、人に出くわしにくいとされる脱出地点が書き込まれている。段々と、本当にこの生活は終わりなんだという実感が少しずつ追いついて来た。
「……皆さんは、大丈夫なんですか?」
「後手に回ったから少し厳しい。少なくとも、ここは放棄することになるだろうな」
一か月程度この組織にいた。思い出というには少しおかしな記憶だけれど、確かに楽しかったんだ。その欠片が無くなってしまうのは、どうしても嫌だと感じてしまう。
そういった思いを見透かしたのか、ユキネさんは私を見てため息をついた。私に、というよりは、別の人に対して。
「ミコトと話はしたか?」
「……はい」
「なら、分かるだろう。今のお前がやるべきは、さっさと逃げることだ」
分かっている。今の私はあくまで一般人で、ミコトさんたちは悪の組織だ。言われた通りにするのが利口で、きっと良いことだ。それがどうしようもない事実だった。……でも……
「それはぁ、アンタも同じなんじゃない?」
いきなりの事だった。この場にも、雰囲気にも似つかわしくない軽い声。曲がり角の奥から、そんな声が聞こえる。そちらの方を振り向けば、にんまりと笑みを浮かべた黄髪の女の子が影から現れた。黒と黄色を基調にした衣装を着飾りつつ、艶のあるブーツとグローブを身に着けていた。どう見たって、魔法少女だ。
「どーせ負けちゃうんだしさ、尻尾撒いて逃げた方が身のためでしょ?」
「……チッ、面倒なのが出てきたな」
「こっちのセリフなんですけどー。大人しく冬眠してればよかったのに♡」
聞く感じでは知り合いみたいで、ユキネさんは厄介そうな顔をしている。反対に、目の前の子は笑顔のままだ。空間の温度が下がったように感じる。いや、比喩じゃないのかもしれない。ぱきりという、水の凍る音がしたから。
「門番にミカゼがいたはずだが……どうした」
「ああ、幹部だとか言ってた子?分かってるくせに。アタシがここにいるってことは、そういう事じゃん」
一触即発。ユキネさんが剣を抜く。二振りの剣を。対する魔法少女の子は、電気を帯びた拳を構えている。無手だった。けれど隙がない。多分あれが彼女の戦闘スタイルだ。
「サキ、前言撤回だ。私の後ろに下がっていろ」
「王子様気取りかよッ!」
瞬間、2人が飛び出した。音が響いて、衝撃が襲ってくる。同時に突風が私の方へと吹いてきた。
「あっちょ……おぶっ」
体勢を崩すほど強いそれに私は耐えきれず、その場で足を滑らせてしまった。なんとも情けない。これじゃあ白衣に躓いてコケたミコトさんのことを笑えない。
そのまま床に叩きつけられ、ゴンッ、というすごい音と一緒に頭に痛みが走って、視界がぐらついて──
私は愛を知らない。物心ついたころには、すでに親はいなくなっていたから。愛情というものが分からないまま、私は育っていった。
もちろん、知識としては知っている。学校の図書室、そこのおすすめ欄に置いてあった恋愛小説を一通り読んだことだってあった。私が人付き合いで致命的な失敗をしていないのは、きっとそういった風に知識で補っているから。
でも愛は分からない。
知りたかった。もっと言うなら、欲しかったんだと思う。
唯一の可能性としては姉だったけれど、バイトか何かで夜遅くまで帰ってこないことがほとんどで、まともに喋ったことはあまり無い。陰気な人だった。
そもそも、きっと私のことが嫌いだったんだと思う。私を視界に入れると、ムッとして視線を逸らしていたから。8歳差で父も違う私を、疎んでいたのかもしれない。
でも。小学5年生の頃、姉から話しかけられたことがある。「もしも私が死んだらどうするか」、そんな切り出し方だった。その時はよく分からなくて、首を傾げて固まっていた覚えがある。そしてその数か月後、姉は行方知れずになった。一人の家は、とても広く感じた。
「……う」
愛。求めて、そして半ば諦めたもの。中学の頃には、多少の分別もついていたし、私にとってそれがないものねだりだという事も、よく分かっていた。
インターネットで調べたことを書いてきてください、なんて課題が授業で出たのはそんな時の事。私は姉のノートパソコンを引っ張り出して、調べ物をしようと試みる。張り付いたメモを見つけたのも、その時のことだ。
興味本位でサイトの名前を検索してみれば、そこは私には刺激の強いものばかりが売っているところだった。そう、えっちなサイト。駄目だとは思いつつ、18歳以下は云々なんて確認を恐る恐る突破して、IDとパスワードを使ってログインすると、確かに姉の使っていたアカウントだった。
複雑な気分になりつつ、購入作品を見てみれば……劇薬だ。姉の集めたコレクションはちょっと……アレだった。男の人を性転換させてメス堕ち三穴触手姦だなんてそんな……すごく凄かった。人の発想力って怖いなと思った瞬間だ。
でも、何を馬鹿なと自分でも思うけれども。羨ましいと、そう思ったのだ。それに、子供は愛の結晶だなんて言う。なら同じ行為をすれば、少しは理解できるのかもしれないと、そう考えてしまった。
「……痛い」
だけど違った。色々あって誘拐されて、念願のことが出来た時。感じたことは、私の想像していたものとは少し違うということ。
確かにお腹からびりびりとしたものが脳みそに来て全身が痙攣するような快楽は本当に素晴らしいものだけれど、それでも後に残る虚しさを思い出すと、やっぱり違うんだと思う。(それはそれとして毎日2時間は少し短い)
何度試しても、それは変わらなかった。私の望んだものではなかった。それだけのこと。
意識がはっきりしてきた。ズキズキと痛む頭を押さえる。思わず声が出るほどに、頭を撃った衝撃は大きい。
なかなか痛みが収まらないので、さすってみることにした。ミコトさんがしてくれたように手を動かせば、少し痛みが引いた気がする。
さっきの出来事に思いをはせた。他人に撫でられたのは初めてだったと思う。恥ずかしかったけれど、すごく─
「……あ」
──もしかすると。あれなのだろうか?
痛む頭がぐるぐる回って、一つの解を示した。そうだ、そうだよ。初めてのことで理解が及ばなかったけれど、今思えばそう。
ミコトさんに撫でられたときの、恥ずかしさとは少し違った、身体の芯から来るあの暖かさ。きっとあれがそうだ。こんなことになっていなければ、私はもう一度求めていたと思う。なんてタイミングの悪い襲撃なんだ。
諦めきれなくて、変に迷走して、でも見つからなくて、やっぱりないものねだりだと、そう思っていたのに。
自分にとってないものだと思っていたものが、確かにそこにあった。あの人の優しさこそ、そういったものだった。
ようやく見つけたんだ。一つの側面に過ぎないかもしれない。けれど、やっと理解できたんだ。
あれが愛なんだと、私は今確信した。
「もうやめたらぁ?ここじゃアタシの方が有利だって、その小さい頭でも分かるでしょ?」
「その割に攻めあぐねているじゃないか……!」
ユキネさんと魔法少女の子は、未だ激しい戦闘を繰り広げている。氷が飛び、雷が飛び、そして血が飛ぶ。互角のように見えて、ユキネさんが押されているように感じた。なら、手伝うべきだ。
「ユキネさん!」
「なんだ!?後にしろ!」
「私、逃げません!」
「!」
宣言する。私の決意を。うじうじするより先にこうするべきだった。後から思うと馬鹿だなあ、なんて思う。私はいつもそんな感じだ。
けれど、この選択だけは後悔しないという自信があった。
素質があるだなんて言われた日から、少しだけ鏡の前で練習してみただけだけれど。
今なら出来るよね。
「『変身』!」
魔法少女の衣装は、イメージ通りの普通なものから、あまりそれっぽくないものまで様々あるらしい。どんなものになるかはその時まで分からないけれど、本人の意思がある程度関係しているとミコトさんは言っていた。
身体が光りだす。魔力によって衣装が作られていき、それが胴に、足に、手に、そして頭に着けられていく。ふわっとした風がどこからともなく吹いて、私のことを祝福してくれているようだった。
出来た。本当に変身が出来た。正直半信半疑だったけれど、ちゃんと成功した!
……というのに、2人は何だかなんとも言えない表情をしていた。ユキネさんは呆れ顔で、魔法少女の子の方は引いている。なんで、と自分の格好を見てみると、どうしてか分かった気がした。
ハイレグに、ブーツに、グローブ。そして何故か、頭と背中から羽がついていた。これは、つまり。
「…………淫魔じゃないか」
「うわぁ……サルバシオンってそういう組織なんだあ……」
「違うんだが」
どうやらまた一つ、誤解を生んでしまったみたい。心外だ!
バトル描写の量、どれくらいがいいですか?
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がっつりでいい
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それなりがいい
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そんなことより俺と性癖バトルだ!!!