TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女   作:こばみご

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評価感想ここすきありがとうございます。本当にありがたい。
無理やり進めた感が否めませんが、どうかご容赦ください。後々修正するかも……


「なんで引くんですか!!」

 ゲイボルグ。八雲サキがそう呟いた瞬間、槍にこめた魔力が淡く光り、異質な雰囲気を醸し出す。何度か見た、彼女の記憶の中の本物に似ていた。

 これならいける。直感したサキは槍を逆手に持ち、投擲の体勢へと移行した。不格好ながらのそれが、逆に迫力を醸し出している。

 

「ッ!」

 

 そしてその構えは、黄玉の魔法少女である菅木(すがき)アヤメの記憶とも一致していた。眞下キョウコの扱う必中の魔法がかかった槍、ゲイボルグに確かに似ている。

 変なものを作っていたが、まさか魔法まで出来るのか。にわかには信じがたいが、しかしハッタリではないと、肌を刺す感覚で分かった。

 

 アヤメの意識がサキの方へと向く。キョウコの魔法の厄介さは、仲間である彼女もよく知っている。まともな対処法は身体に掠らせて魔法の効力を失わせるくらいなもので、無傷で過ごすのはほとんど不可能なのだから。

 

「ていッ!!」

 

 見よう見まねのフォームで、サキは槍を投げた。キョウコのものと比べると遅いが、それでも魔力弾よりかは遥かに威力がある。

 

 アヤメは何度か大きく動くことで回避するが、その度に彼女の方へと切先が向き直り、その度に吸い込まれるように飛んでいく。

 

 間違いなく、これは必中の魔法だ。電撃で防ぐだけでは足りない。ならば拳でと、彼女は迎撃を試みる。

 

「随分なインチキだな。助かるが」

「めんッどくさ!!」

 

 しかし、この場には白藤(しらふじ)ユキネもいる。氷を地面に這わせ、アヤメの足を絡め取ろうとしたのだ。挟まれた妨害に、アヤメは対応せざるを得ない。本当に面倒だ。思わず舌打ちが出るほどに。

 

 だが、アヤメも並の魔法少女ではない。迫る氷を後ろに跳躍することによって避けたのち、彼女に向かって飛んでくる槍は身体を捻ることによって受け流す。左肩を滑らせるように避けることで必中の効力も失わせた。

 

 空中での出来事にもかかわらず、被害を軽微に抑えることに成功。肩から血が流れるが、まだ許容範囲内だ。

 

「なら──」

 

 彼女が着地すると同時、ユキネは四方から氷柱を放ち、自分も肉薄することでさらなる追撃を試みる。しかし、アヤメはそれを全方位に電撃を放つことによって対応した。無理やり進む利点は小さいだろうと、ユキネは飛び退いて回避する。

 

 

「……どーよ」

「面倒だな、まったく」

 

 捌き切った。複製の魔法自体は脅威だが、やってきたことは既知の攻撃。自分達や奴らの魔法のことは頭に入っている、ならば対処も無理なわけではない。そう考えたアヤメは警戒をしつつも、これまで通りユキネの方を優先することにした。

 

 

「『ゲイボルグ』っ!」

 

 ならば、とサキはもう一本槍を生成し、同じように投擲する。と同時に、ユキネは双剣を構えアヤメへと迫った。

 先程と同じような連携に、しかし彼女は冷静さを取り戻している。何事も、一度目より二度目の方がやりやすい。

 

「なっ!」

「はい、対処よろしく♡」

 

 拳に雷を纏わせ、剣を受け止める。そのまま密着することにより、アヤメはユキネを盾にする形になった。

 

 必中の魔法に、仲間のことを避ける機能はない。ほとんど最短距離で対象へと向かうのが特徴だ。つまり今度は、ユキネの顔が強張る番だった。

 

 両手は塞がれている、なら足か。アヤメなら出来るだろうが、ユキネにはその自信がない。数瞬迷ったのち、魔法を使い背中をガードする。衝撃が襲い、ユキネは前へつんのめった。腰が痛そうだった。

 

「ぐっ……」

「よう防ぐよ」

 

 ゲイボルグは天井へと弾き飛ばされた後、再びアヤメの方へと向かう。しかし彼女にとって、妨害の無い状況でのそれは大した脅威ではなかった。裏拳を当てることでいなす。槍はアヤメの後ろに突き刺さった。

 

「オリジナルより大分劣るね」

 

 そもそもとして、扱い方が一辺倒すぎる。ただ投げるだけでは、同格以上の相手はなかなか当たってはくれない。キョウコのやるような工夫が足りていなのだ。所詮は、上辺だけの模倣。

 

 

 

「んなこた分かってますよ」

「な──!」

 

 その時。至近距離、斜め後ろから、サキが現れた。いきなりだ。今まで羽虫一匹もいなかったはずのところから、転移して来たみたいに。

 

 サキは二投目の槍を投擲した時、もう二つものを複製していた。それは自身を景色へと溶け込ませることによって気配を限りなく薄くする、辻井マリの隠密の術。

 ユキネやゲイボルグに視線を向けていてサキを見ていなかったアヤメには、直前まで気づくことが出来なかった。サキは自身の脅威度の低さを利用したのだ。

 

 肉薄したサキが、生成していた槍に魔力をこめる。今度は魔法ではなく、純粋なもの。刺すわけではなく、振るために。アヤメは殴打での迎撃を試みるが、側腹部へ槍が当たるのが早かった。

 

「なめん……なッ」

 

 強い衝撃がアヤメを襲ったが、彼女はそれを堪え、サキへ反撃をする。拳は風を切り、勢いよくサキの顔面へと吸い込まれるように命中し、サキは吹き飛ばされ──

 

 

「ぶえ」

「は?」

 

 ──ることはなく、彼女は爆発四散した。

 

 アヤメの動きが固まる。あまりにも予想外だったからだ。脆すぎる。魔法少女になりたてだからとか、そんなレベルではない。

 

 しかし数瞬ののち、アヤメは思い出した。先ほどスライムに電撃を当てた時も、同じようなことが起こったことを。

 

 つまり。

 

 サキは二投目の槍を投擲した時、もう()()ものを複製していた。一つは、辻井マリの隠密の術。そしてもう一つは……

 

 

 自分自身だ。

 

 

 アヤメが殴ったのは複製の方だった。ならば、本物は?

 

 

 彼女の死角。隠密の解けた本物のサキは、拾った一投目の槍を大きく横に引いている。あとは振り抜くのみ。複製体のそれよりも、多くの魔力がこもっていた。

 

 防がなければまずい。アヤメの脳が警鐘を鳴らすが、しかし腕は振り切ってしまった。なら足か。彼女は蹴りを繰り出そうとし、そして気づく。

 

 足元が凍り付いている。自分の足すら、氷に覆われていた。誰がやったかなんて、分かり切っている。真下にいるのだから。

 

「今度は捉えたぞ」

「ッんのクソ兄──」

 

 

 サキの会心の一撃が、アヤメの腹を押しつぶす。衝撃が彼女を襲い、思わず肺から息が漏れ出た。その勢いのままに吹っ飛ばされていき、衝撃波を出しながら壁に激突する。

 

 土煙が舞い、轟音が響く。下水道という閉鎖空間が揺れるほどに、それは大きいものだった。

 

 

「だっしゃあい!どうですか、流石に効いたでしょ!!」

「腰を痛めた甲斐はあったな」

「はい!ごめんなさい!」

「いいよ。正直助かった」

 

 雄叫びを上げるサキに、腰をさすりながらユキネが答える。実際、ユキネだけではアヤメに有効打を与えることは難しい。この場であればなおさらに。サキの覚醒は、嬉しい誤算だった。

 

「じゃあ、今のうちに……うぐっ」

「っと。流石に燃費は悪いみたいだな」

「すいません……」

 

 しかし、彼女にとってはこれが初めての戦闘だ。無茶をした結果、魔力不足で視界がぐらりとして、その場にへたり込んでしまう。

 魔法の複製は、流石に消費が大きい。最後の一撃にも、それと同じくらいの魔力をこめていたのだ。枯渇するのも仕方がないだろう。

 

 これ以上は望めない。ユキネはこの場を離れようと、サキの肩を持つ。上の状況がどうなっているかが気になる、早く戻らなければ。ついでにミコトの安否も。

 

 後ろの土煙を見る。アヤメがどうなったかは分からないが、生きてはいるだろう。触らぬ神に祟りなし、もうしばらくは会いたくないと思ったユキネは、彼女に背を向けて歩き出した。

 

 

 それがいけなかったのか。

 

 

「ちょい、何終わった気になってんの」

「…………しつこいぞ、お前」

 

 煙塵の中で影が揺らめく。段々と濃くなっていくそれは、やがて人の輪郭を作り出した。頭から血を流すアヤメは、ふらつきながらも立っている。

 

 その双眸はまっすぐと彼女たちを見つめていた。ユキネがサキを隠すように前に出れば、アヤメは眉間のシワを深くする。それを自覚してか、誤魔化すように笑ってみせた。

 

 

「まあ、ちょっと舐めてたよ。それは反省。

 

 だから……次で仕留める」

 

「後がないだけだろう」

 

 

 その一言で、場の空気が変わる。アヤメがゆらりと構え、ユキネもそれに続いた。2人を中心として、魔力が渦巻いていく。雷が走り、空間が冷える。

 

「サキ、防御しておけ。ミコトの魔法だ」

「え?いや、知らないんですけど」

「何度も見たはずだ。気合でやってくれ」

「今ァ!?」

 

 それは、各々が到達した魔法の最奥。魔力総量の3割を消費することによって発動するそれは、各々が戦局を変える力を持つ。ある者は全てを燃やし、ある者は一刀で天を割り、またある者は時を止める。

 

 風が止み、音が消えた。それは、嵐の前の静けさ。2人は、同時に口を開いた。

 

「轟渦──」

「六花──」

 

 

 

 

 

「──永世真打」

 

 しかし次の瞬間、空間に轟音が鳴り響く。アヤメの魔法でもなければ、ユキネでもない。第三者の魔法、その衝突により天井が崩壊する音だった。

 

 破片が降り注ぎ、悲鳴を上げながら地面に突き刺さっていく。薄く張った氷が割れ、水飛沫が方々で舞い上がった。

 

「な、なんですか!?」

 

 突然のことに、サキが声を上げる。そのせいか、彼女の頭に大きめの破片が落ちてきた。ゴロゴロとのたうち回りながら悶絶することになり、結局冷気の魔法で患部を冷やしている。

 

 そんな中、がらがら、と鳴るコンクリートの中心で、2人の人影が見えた。

 

 

「……駄目か」

「いいや、大分効いたよ……」

「サツキ先輩!」

 

 影の正体は、アカネとサツキだった。上でそれぞれの戦闘を終えたのちに遭遇、そして激戦を繰り広げ、こうして床を抜くほどの大技を激突させたのだ。

 両者傷だらけで、衣装も所々破損している。だが、魔法の最奥──真打を食らったアカネはさらに、右胸から肩にかけて大きく斬られていた。かろうじて腕は動くが、とても戦闘が継続できるとは思えない。過去にミコトにやったように、傷を治すことも出来ないようだった。

 

「ボス!」

「む。君が…………君が……?」

「………………。か、覚醒したんだな」

「またその反応ですか!!!」

 

 声の方を向いたサツキは惨憺たる光景を目にする。サキが意味不明な格好をしているのが見えたのだ。インナーだけのその姿は、かつて相対したことのある淫魔のようだった。もしかしなくともその可能性の方が高い。しかし、写真で見た顔は目の前の少女のものだった。

 ミコト先輩は否定していたが、やはりそういうことをしていたのだろうか。サツキに疑念が再び芽生えるが、そういえば彼女がひどく言いづらそうにしていたことを思い出す。……サツキは嫌な予感がした。

 

 アカネも一瞬動揺したが、そんな服を用意した覚えなどない。しばらくの思考ののち、覚醒をしたのだと理解する。予想通り良くない方向性の格好へとなってしまったのか、と内心で嘆くが、口には出さない。顔には出ていた。傷の痛みが増したような、そんな気がした。

 

「私はそんなことだろうと思ってましたよ」

「マリさん!……それどういう意味ですか?」

 

 いつのまにやらサキの隣に立っているマリだけが、平然とした顔でそういった。ミコトに次いで長い間見てきたのだ、「どうせ痴女みたいな格好になるんだろうな」と予想することなど容易だった。負の信頼である。諦めているとも言う。サキが絶望するが、自業自得である。

 

「……とにかく逃げるぞ。ここから出て、研究所の方まで行こう」

「み、ミコトさんは?どうなったんですか?」

 

 アカネが半ば強引に話を変える。サルバシオンの3人とサキは全員、少なからず消耗している。ユキネはまだ余力があるが、それはアヤメやサツキも同じこと。正直に言って分が悪い、撤退を選ぶことは至極普通だった。

 だが、それだけで納得することはサキには出来ない。ついでにマリにも出来ない。この場にあと1人、足りない人がいるからだ。ミコトの存在こそが、2人にとって最も重要なものだった。

 

「私が確保した。そも、先輩は元々こちら側の人間だ。取り返しただけに過ぎない」

「え、先輩??」

 

 いきなりのことにサキが固まった。ミコトが捕まった事よりも、その後のことに思考が寄ってしまう。

 

 そもそも、さっきから知らない情報ばかりだ。全て本当の事として考えると、玉垣ミコトは元々魔法少女だったが、何かしらきっかけがあり現在は悪の組織に所属している俺っ娘ダウナー系女性研究者キャラということになる。しかもクール系の強そうな後輩までいるし。盛りすぎだ、あり得ない。流石にどこかが嘘だろうとサキは考える。段々と混乱してきた。

 

「八雲サキ、君もこちらに来てくれ。まだ間に合うはずだ。それに、キョウコと和解してやって欲しい」

 

 サツキはそう言って、サキへと手を差し伸べる。現在の魔法庁の側にはミコトがいて、キョウコもいる。サキの中で最も大きい存在である2人が両方いるのだから、断る理由はない。これまでならば、そう思えた。

 

「嫌です。私の居場所はこっちです。キョウコちゃんのところには私から行きます。ミコトさんも返してください!」

「サキ……」

 

 しかし、サキは即答する。覚醒したその時にもう決めたのだ。せっかく始めた自己証明を、ここで終わらせるわけにはいかない。それにとっくに手遅れだ。母親が彼女を捨てた時に「間に合う」段階は過ぎている。

 

 指を指されたサツキは、目を細めたのちに一つ息をついた。話は終わったということだ。

 

「……残念だ。ならば……斬り伏せる」

「駄目だ。一旦お開きだよ」

 

 

 再び戦いが始まるかと思われたその時、アカネが一つのものを取り出す。それは手持ちのボタンスイッチだった。

 それを押した瞬間、四方八方が爆発する。空いた天井、本拠地内までもが爆炎に包まれた。思わずサツキが手で顔を覆ううちに、両者の間までもが爆発する。

 

「いざという時のために持っておいたんだ。自爆スイッチ」

「人が残っていたらまずいんじゃ……?」

「確認はしたさ。少なくともミコトなら大丈夫だ。さ、行こう」

「でも……」

「……すまない、この場は耐えてくれ」

 

 下水道が、赤に包まれていく。サキたちはそれから追われるように、地上への道を走り出した。

 その日、サルバシオンの本拠地は跡形もなく消え去った。構成員たちの痕跡すら決して。

 




この作品、一番不憫なのはキョウコかもしれない。こんなはずでは……

バトル描写の量、どれくらいがいいですか?

  • がっつりでいい
  • それなりがいい
  • 最低限がいい
  • そんなことより俺と性癖バトルだ!!!
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