TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
がらんどうの部屋。かつてあった家具もなくなったそこを見ると、思っていたよりも広かったのだなと思う。救出された私は、かつての住処である旧研究所の中で休息を取っていた。1週間程度しか離れていないのに、なんだか懐かしく感じる。……多分、マリ辺りも思っていたことだろう。
そんなすっからかんの研究所内だが、それほど寂しいわけでもない。怪物を含めて8人ほどが居るのもあるが、それ以上に……
「で、なにか申し開きはあるか?」
「ないです……」
カンカンに怒ったボスがサキを叱りつけているからと言うのもあるだろう。うちの頭領は静かに怒る。怖いやつだ。しかしやることはやるので、既に尻を引っぱたくお仕置きを数十回ほどしていたりもする。痛いやつだ……サキは途中から喜んでいたような気がしないでもないが、言わない方がいいだろう。
まあ、琥珀の魔法少女ことヒトミちゃんには酷いことをしてしまった訳だし、仕方がない事だ。事故とは言えほとんど強姦のようなことをしたのだから、ぶっ飛ばされるどころかぶち殺されても文句は言えない。……最近周りでエロ同人展開ばかりが起こっていないか?
「はあ~~~……まあ……仕方がない。相手の戦力を削れたのは良しとしよう。本人にはその、申し訳ないが……」
「…………まあ、あの場にいれば最悪死んでいましたから。必要なことだったと割り切ることにします」
屈辱の顔をしながらも、ヒトミちゃんは納得しようとしていた。大人だ、大人すぎる。私よりか大分まともで善良な人間だ。どうしてこうなってしまったんだろう……
それなりに長い間拘束されていた彼女は、サンちゃんの体内からサルベージされた時にはしっかり事後であった。悲劇だ。やはりえっちな生物など生み出すべきではなかった。私にも業が返って来た訳だし。未だに腰に力が入らないし、脳みそもくらくらしている。くそう……
元凶であるサキは、涙目で私に抱き着いてきた。流石に堪えたらしい。しょうがないからとりあえず撫でまわしておこう。……キリよく止めたらもっとと催促された。こいつ本当に反省してるのか……?
「それに、丁度良いタイミングでもありましたから」
「丁度いい?」
一転して真面目な雰囲気になったヒトミちゃんが、真っ直ぐとした瞳でそう言った。どうやら、彼女にも思惑があるらしい。目に宿る決意は、相当強いものに見える。続いた言葉は、ある種納得感があり、そして同時に、私に驚きをもたらすものだった。
「ええ。──魔法庁炉端公安局局長、狐塚タマモ。私も彼女の討伐に協力させていただきたく」
「それをここで言う意味は、理解しているんだろうな?」
「ええ。貴方たちの手を借りてでも、為さなければいけないことですから」
こちらとしては願ったりではあるのだが、魔法少女が悪の組織と協力するのはよろしくはない。下手をすれば裏切りともとられてしまうかもしれないというに。
警告するユキネも意に介さず、はっきりとした口調でヒトミちゃんは答える。私の記憶を見たくらいでは、ここまでにはならない。おそらく彼女も、元々局長の裏の顔を知っていた側の人間ということだろう。私が最後まで気づくことが出来なかったそれを看破したということは、やはり──
「魔法を使って知った、ってところかな」
「ええ。といっても、局長の心をまじまじ視た訳ではありません。あの人は普段、おそらく術によって、心を隠していますから」
「……結界術か」
私の固有魔法と同じものだ、使っているから分かる。瞬間移動のからくりもそう。
結界術、それは空間を弄ることに特化したもの。空間転移も結界を張ったのも、そして怪物の外形を作れたのも、この魔法ゆえのことだ。悲しいのは、その道の輩にはそう珍しいものでもないという所。局長もこれを使って心を読めなくしたわけだし。
「ええ。しかし……油断していたのか、一度だけ読めたことがあるんです。たった一言……『潮時』と。……そしてその次の日に、魔法少女が1人引退しました」
「ただの引退じゃなかったわけだ」
「……ええ。違和感を覚えた私は、本人を尋ねに行きました。その時には既に……紛い物に」
「……」
ヒトミちゃんの
「アレの目的は、魔法少女の力だ。私たちが怪物を強化するためにとったアプローチと似てはいる」
「つまり、私みたいにえっちなことを……」
「違う、もっとシンプルだ。殺して食っているんだよ」
アイツは妖怪ではないようだが、近いものではある。奴らは基本的には人を食い、それによって力をつけるのだ。魔力の塊である魔法少女なんかは格好の獲物だろう。
もっとも、どっちの意味でも食っていたのかもしれないが。なんでサキの世迷言が当てはまる余地があるんだ、おかしいだろ。
「私たちだけでは、局長には勝てない。それが私と、サツキ先輩の下した判断です」
「サツキが……」
「それでもあの人は魔法庁の中で解決したがっていましたが……私はそうではない。使えるものは、使うべきだと判断しました」
どうやら、サツキも局長の裏を知っているらしい。いつの間にやらそういうのにも強く……なっているのだろうか。師匠に似てとりあえず斬ればいいって感じだからな……そして頑固。彼女がこちら側につくことはなさそうだ。無駄に力をつけおってからに、あしらうのも大変そうだな……
「だから、ミコトさんを逃がそうとしたんですか?」
「ええ。銀の魔法少女と……不知火アカネさん。紅玉の魔法少女であった貴女ならば、あるいはと」
その名前は、私も魔法庁にいた時に聞いたことがある。25年前、まだ妖怪の存在が広く知られていなかった頃。最初に覚醒した魔法少女のコードネームこそが紅玉。あらゆる敵を焼き尽くし、町の一帯を火の海にしたなんて逸話も残っている。そして、紅玉の名は現在に至るまで、その一人にしか使われていない。
ヒトミちゃんの言葉に、ボスは顔を歪ませる。そして目線を逸らして、部屋の壁を睨みつけていた。瞳の奥のどす黒いものを隠すような、そんな動きだ。
「昔の話だよ。それに、私も1人だけでは勝てなかった。だからこうして、組織を作ったわけだしな」
「ボスが負けるほどの……」
「ああ。屈辱だったよ……こんなものまで、付けられてしまった」
自嘲の笑みを浮かべて、彼女はそう言った。そして服の裾をたくし上げて、腹を見せてくる。そこには……そ、そこには……
………………ハート型の紋様が刻まれていた。心なしか、淡く光っているような気がする。ピンク色に。多分、この場の全員が同じことを思っていた。
「呪いだよ。全く悪趣味だ」
「いや、淫紋ですよね?それ」
「呪いの紋様だ」
「淫紋ですよね???」
馬鹿じゃねえの?何でこの人傷跡を見せるノリで淫紋を見せてきたんだ。気がふれたわけじゃないよな?大丈夫なんだよな??つーかそうでなくともパンツ見えてるからな。おかしいだろうが。
この人、倫理観はあっても貞操観念あたりが何故か緩かったが、まさか局長のせいだとかじゃないよな。もういいよ、そういう話。少なくとも今は聞きたくないよ……
「つまり、えっちなことされたんですか?」
「そうだよ。……あんな、あんなことを、あいつは……!」
「じゃあ淫紋じゃないですか!!!」
ヒトミちゃんは固まっているし、マリはいつも通り影を薄くしている。ユキネは……なあ、天を仰いでいないで助けてくれ。この場で一番ボスと過ごしているじゃないか。頼む、助けてくれ。おい。耳を塞ぐな。目を瞑るな!恥ずかしがってんじゃねえぞ!
そして言うまでもないことだが、サキはとてもはしゃいでいた。お前……
これマジで俺が収拾つけなきゃダメ?ホントに?勘弁してくれないか?こっちは真面目な話がしたいんだよ。思わず、クソデカいため息が出た。
「とりあえず、よく見せてください。多分、解呪できますから」
「本当か!?」
「習ってますからね、色々と」
こちとら神社育ちだぞ、それっぽいことはあらかた叩き込まれているんだ。あまり舐めるんじゃない。まあ、数時間前まで習ったものの殆どを忘れていたんですけどね。
とりあえず淫紋に触れて、どんな効果があるのかを解析してみる。「んっ」じゃない、大人しくしていなさい。……ははあ……ほお……
「発情に魔法効果減少。あと絶頂すると術者に現在位置がバレるみたいですふざけてんのか?」
マジでエロ同人ゲームのバステじゃねえか!!!なんでこんなもん付けたんだよ、あの狐頭がおかしいのか?おかしいんだろうな。条件付きGPSとかいう気持ちの悪い機能もついてるわけだしな。ちなみに、正規の手順以外で無理やり消そうとすると強制的に絶頂させてくるみたい。やっぱり気持ちが悪い。
それを聞いたボスは、どこか納得がいったように頷いている。というかこの人、ずっと発情してたのかよ。そんなそぶり全く無かったけど。何か抑える魔法でも使っていたのだろうか。尋ねてみれば、ボスは得意げに言った。
「なに、心頭滅却すれば火もまた涼し、と言うじゃないか」
……つまり気合で耐えていたということらしい。怖……程度にもよるけど、普通そういうのって我慢ができるもんでもないだろう。サキを見れば一目瞭然だ。とんでもない精神だなこの人。でもドヤ顔がうざったい。出来るようなことでもないだろ。
「……パンツ見えてる時点であんまりかっこよくないですよ」
「いいだろ今更別に、パンツくらい」
「よくねえよ」
くそ、もうそれはだらしないオカンのセリフじゃねえか。どいつもこいつもふざけていやがる。まともなのは俺だけなのか?ヒトミちゃん助けてくれ。君がこの組織を継がないか?ダメか。
「あの!仕組みだけ教えてくれませんか!?複製したいので!!」
「複製ェ?」
と、勢いよく引っ付いてきたサキが、駄々をこねるように懇願してくる。目が必死だ……というか、なんか今凄いこと言わなかったか?
マリが言うには、サキの固有魔法らしい。魔法含めて大体のものを複製できるのだそうな。とんでもない魔法じゃないか。やっぱり才能か。今思うと大分淫魔みたいな恰好をしていたわけだが……なるほど、そんな奴が淫紋を使えるようになるわけだ。
「……駄目に決まってんだろ……」
もうそれは淫魔じゃん。教えるわけないだろ。
結局、ぐだつきながらもなんとか段取りが決まった。といっても、誰が誰の相手を担当するのかくらいなもので、大したことを考えたわけでもないが。
サキがどうしても一緒に行くと言って聞かないので、最低限戦えるように鍛えないといけないし……ここで留守番していろなんて言える雰囲気じゃなかったからな。
今、こちらの戦力は中々に潤っている。逆に、魔法少女たちはほとんどが怪我でダウンしている状態。ここ数年で一番のチャンスだ。今なら、アイツの首に手が届く。
「調子はどうです?」
「最高だよ。いや、もっと早くに解呪してもらえば良かった」
「誰かさんが記憶を消してしまいましたからね」
解呪の終わったボスは、軽い運動をしながら自分の身体能力を確かめていた。その顔はあからさまにはしゃいでいる。強力な呪いだったし、解放感もひとしおなのだろう。
「悪かったよ。でも、あの時の君は見ていられなかったからな。まあ、燃やしても燃やしても戻るのは意味が分からなかったが……」
ボスの魔法は炎。大抵のものは燃やせる。それがたとえ、形の無いものでも。あの時、相棒を失って茫然自失だった俺の記憶を消して、まるでやる気のない研究者に仕立て上げたのはボスだ。といっても、俺も無意識に魔法を使っていたみたいで、少しずつ治っていたらしい。その度に燃やしていたそうな。徹底してるな……
でも多分、記憶の戻った俺は1人で魔法庁まで行って、そしてボコボコに負けていたと思う。そうすれば戦力が減るばかりか、最悪相手が強くなってしまうわけだ。そう考えれば、ここまでした理由も分かる。分かっては、いるけれども。
記憶の多くは既に戻って来ていた。俺が魔法少女として覚醒した所から最後、俺の相棒が俺の代わりに死んだところまで、ぽつぽつと。でも、肝心なその相棒の顔は、名前は、まだ闇の中。
あと少し。もう少しで、思い出せるというのに。つかめそうでつかめない、もどかしい感覚だ。言い難いものが、胸を締め付けた。こんなものを、今まで忘れていたなんて。
「……ヘアゴム、ありませんか?失くしてしまったので」
「失くすというか……まあ、そうだな」
これ以上考えていると、ドツボにはまってしまいそうだ。誤魔化すように、ボスに話しかけた。ヘアゴムどころか服も欲しいのだけど、まあそれはともかく。
「……これしかないが。良いだろ?」
そう言って、彼女は懐から一つのものを取り出す。俺には似合いそうにない、黒のリボンだった。ボス、こんなものつけていたことあったか?
「借り物なんだ。無くさないでくれよ」
「又貸しかよ……相手も怒りますよ」
「そうでもないさ」
よく分らないことを言って、ボスは微笑みながらリボンを押し付けてきた。こういう時の彼女は、大体なにか意図がある。……もしかすると、そういう事なのか。
受け取ったそれを握ってみる。何故か、不思議と懐かしい感じがした。
ようやっとバトルに行けるかと思います。ちょっと自信ないけど……頑張らせていただきます。アンケートのご回答ありがとうございました。
バトル描写の量、どれくらいがいいですか?
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がっつりでいい
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それなりがいい
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最低限がいい
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そんなことより俺と性癖バトルだ!!!