TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
「まあ、やって見ますけど……見たことないものなので、時間がかかります」
「できれば1分ぐらいで作って欲しい」
「無茶ですぅ!」
疑うような顔は戻らぬままに、サキは魔法を行使する。設計図通りのものに、少しの想像を添えて、形を整え始めた。そしてミコトは、その姿を後ろに隠すように立つ。万に一つ、彼女に危害が加えられないように。
「絶対に守ってやる。だから頼んだ」
「……はい!」
いつも、後ろには相棒がいた。その時と同じ。ただ、自分のできることをするだけだ。ミコトは折れた刀を抜き、構える。その目の前には、妖艶な笑みを浮かべる狐塚タマモ。一見無防備な姿には、しかし隙は見えない。
「もういいかしら?」
「ああ。待ってくれるなんて太っ腹じゃないか」
防御に特化した彼女がいては、先程のようにはいかない。そう考え、タマモは目の前の
キョウコやアヤメの姿はない。誰かが運んだはずだ。つまり、残りの魔法少女もいる。ユキネとサツキの2人は、どこにいるのか。目に見える範囲にはいないが──近いはずだ。必ず、横槍を入れてくる。確信があった。
そして、彼女の警戒をよそにして。先手必勝とばかりに折れた刀を構えたミコトは、その刀身を魔力で伸ばしタマモに斬りかかる。が、爪に阻まれ、そのまま流し込まれた魔法によって、刃は一瞬で霧散させられた。
そこに間髪入れず差し込まれる、反対側の手からの貫手。それを目と鼻の先に展開した結界によって逸らすことによって事なきを得る。彼女は後退り、思考を回した。
「(元の状態の6……いや、5割ぐらいか?おかげで反応は出来るが……どちらにしろ時間がない、無理やりにでも削る)」
「(キレがないわね。攻撃は捌けるけど……それでも面倒な盾なことには変わりない。守りが届かない奴から攻める、それが一番かしら)」
両者は目を細める。互いに少なくはない消耗をしており、一筋縄ではいかない。時間がないのも同じ。
どちらともなく飛び出す。刀と鉤爪がぶつかる。後ろに転移し振るわれる一撃をミコトは結界で防ぎ、同時に身体をひねって刀を振り抜く。同じく結界によって強固になったそれは、一瞬では霧散しきれずにタマモの肌を焼いた。
飛び退いた彼女は、5つ魔力弾を放つ。それぞれ違う角度から放たれたそれは、2つほどがサキの方へと走って行った。ミコトは同じ数だけ手のひらほどの結界を作り出し、自分へと迫る攻撃を防ぎつつ、それを彼女の前に置き。そして結界は魔力弾を拒絶した。だが。
「ぐっ……」
がくりと、ミコトの身体が崩れる。サツキとの戦闘で負った傷はまだ癒えていない。そればかりか、未だその身を蝕んでいた。戦場に立っているのがおかしいのだ。加えて、その一瞬を逃すタマモでもない。これ以上ない好機に距離を詰め、仕留めにかかる。
だがそこで、彼女の肌が魔力を感じ取った。そちらを向けば、風が鋭利な形を成し、迫って来ている。飛ぶ斬撃。サツキの魔法を、タマモは避けようとし──足元が、凍っていた。
「チッ!」
やむを得ず結界を張る。範囲を絞り、出来る限り性能を高めたそれは、しかし斬撃を防ぎきれずに破られ、彼女に斬り傷を作った。ただでさえ紅まみれの身体から、更に血が流れた。
「思ったよりも、悍ましい姿ですね」
「……ボスとアヤメの分の礼はさせてもらう」
2人が姿を現す。サツキはミコトほどではないにせよ傷が多く、ユキネは衣装の所々が焦げていた。殺意のこもった瞳が、黒狐を射抜く。
3対1。誰もが実力者のこの中で、タマモが圧倒的に不利のように見える。しかしその実、そこまでの差はなかった。誰も彼もが小さくない負傷をしており、身体、精神、諸々を合わせれば、均衡がとれていると言うことが出来るから。……ゆえに。
「誰からにしようかしら」
数的には不利だが、質的に言えば有利。1人でも戦闘不能状態にできれば、それだけで天秤は大きく傾く。ミコトたちも、それは分かっていた。誰も欠けぬままに、彼女にダメージを与える必要がある。
「引導を渡させてもらいますッ!」
「それは残念……ねッ!」
サキに動いたのはサツキだ。接近戦を仕掛け、隙にユキネの氷柱が差し込まれる。そしてサキのいる場所から動かないミコトが、避けきれない攻撃を結界によって防ぐ。その強度は、この場の誰よりも高く。しかし、それもタマモの
それを幾度か繰り返した後。サツキによる縦一文字を半歩横に転移することによって避け、タマモは魔法をこめておいた鉤爪によって、結界ごと彼女の身体を裂いた。回避しきれず側腹に当たったそれが、血の色で赤く染まる。サツキの身体が一瞬よろめいた。
「させるかッ!」
その追撃、心臓を狙った突きを、ユキネが剣で防ぐ。続いて、冷気操作によって作り上げられた複数の氷槍がタマモに向かって飛来するが、それすらも転移により後ろへと下がることで回避された。まともに攻撃が当たらない。
「……ズルくない?」
「貴女もやればいいじゃない」
サツキには近接戦闘、ユキネに対しては魔力弾を放つことで、両方の連携を防ぐ。これ以上続けても、こちらが不利になるばかり。なんらかの行動を起こさなければ、魔法少女側は負ける。かといってミコトが動けば、サキに危険が及ぶ。タマモは目ざとくそれを見ているはずだ。
なら、自分の札を1つ切るか──ミコトがそう考えたその時。
「お仲間と遊んでなさいな」
「なっ!?」
タマモは唐突にユキネのもとに転移し、そのまま蹴りを放つ。咄嗟に剣で防御をするが、それも万全ではなく。ユキネは勢いを殺しきれず、ボールのように飛ばされる。その先にはミコト。追撃を確信した彼女が構えるが、迫るユキネによって視界が阻まれる。そこで彼女は理解した。
「(っやられた!!)」
狙いは1つしか考えられない。結界でユキネを受け止めながら後ろを向けば、転移したタマモがサキに凶爪を振り下ろさんとしていた。一瞬、しかし確実に遅れた。今から結界を練ったとして、それは彼女の攻撃を防ぎきるものにはならない。使うしかない。ミコトは意識を向け、「不変」を──
「完成っ!」
「ッ!!」
だが。サキは確信していた。あれだけ執拗に自分を狙っていたタマモが、そう簡単に狙いを変えることはないと。そう考えていたから、奇襲にも対応が出来たのだ。
乾いた、しかし重い破裂音と共に、サキの手元から魔力が走ることによって、それは防がれる。というよりかは、弾かれたという方が正しい。彼女の掌、その上には、1つの長銃があった。
それは細かい点に差異はあれど、確かにミコトの記憶から描き出したもの。金銀の二柱、主な攻撃を担っていた八雲チハル、その得物である「魔導銃」。仕組みが同じならば、準ずる火力が出る。これならば、タマモを倒せる。
「ユキネ!」
サキの首を引っ張って、ミコトはユキネを呼ぶ。彼はそれを合図に魔法を行使した。それにより、周囲の気温が更に冷え込んでいく。なにか、してくる。タマモは飛び退きそれを回避しようと試みるが、それも意味なく。
夜の黒を塗りつぶすように、視界の殆どが真反対の色に染まる。ユキネは先程まで降っていた雨を凍らせ、そして霧を作ったのだ。それは広範囲を覆いつくし、辺り一面が氷に覆われる。広がった銀世界に……しかしタマモは落胆していた。
圧倒的範囲。圧倒的魔力量。それを使ってすることが、ただの視界の妨害。しかも二番煎じだ。吹雪で音も誤魔化した気になっているようだが、それだけ。今更問題ではない。それよりもと、彼女は考える。
「(あれは確かに、八雲チハルの魔導銃。まともに食らうわけにはいかないか……)」
八雲チハルの得物が凄まじかったという記憶は、タマモにとっても新しいものだ。魔導銃は魔力弾を撃ちだすだけだが、しかしそれに特化している。威力は収束魔力弾に匹敵し、それが何度でも撃てる破格の性能。もっとも、彼女の魔力と魔法が前提だが。
だがサキならば、同じようなことが出来るはずだ。魔法が2つ以上同時に使用できるなら、重ね掛けも可能だと考えた方が自然。「凝弛」による魔力の収束、そして「必中」。これを組み合わせれば、届く。ゆえに、この状況で最も警戒すべきはサキ。
「だから、貴女は邪魔しないで欲しいのだけれど……」
「そうはいきませんよ」
ぎりぎりと、金属の擦れる音。サツキの刀と、タマモの鉤爪が交差する。しばらくそうした後、爪にひびが入った。そのまま両断しようと、サツキが力を籠め──透かされる。腕を構成する結界を解いたのだ。残った義肢が、サツキのもとへと伸びる。そして。
「慣れてきました。姑息さに」
「あら」
彼女はそれを、余裕を持って受け止めた。続く魔力弾による攻撃も、悉くが斬られる。言葉に嘘はなく、サツキはタマモの戦法に適応してきている。
透かす、逸らす、そして避ける。あらゆる手を使い相手のリズムを崩さんと試みるが、そのほとんどが効果をなさない。自分が手塩にかけて育てた一番手は伊達ではなかった。彼女はサツキを相手にするのは早いと考え、その場から後方へと離脱しようとし。
「
そこで、タマモの表情が消える。方向は9時、そう遠くない場所で。2m先が見えないような氷霧の中、魔力が渦を巻くと共に、確かに声が聞こえた。
眞下キョウコの、声が。今最も、聞きたくない声が。
タマモが与えたダメージは、確かに致命傷ではない。意識を刈り取ったにすぎず、サキの後に始末しようとしたのを妨害されてから既にそれなりの時間が経っている。既に目覚めている可能性は、確かに考えられた。だが、早い。想像よりも圧倒的に。
指先に魔力を束ねる。撃たれる前に撃つ。それしかない。彼女は即座に声の方に走り……そして、行く手が阻まれた。
「どうする?」
「クソガキ……!」
ここぞとばかりに、ミコトの妨害が入る。不敵に笑うその姿に、タマモの顔が明確に歪んだ。狙っていたのか。八雲チハルの得物を再現してまで、この状況を。
彼女がここにいるということは、サキはフリーということ。殺す好機に一瞬、足が強張るが……それを振り払う。今この状況では、キョウコが一番の脅威。やれなければやられる。
ミコトは無手。先程の攻防では二度とも「凝弛」によって霧散させられたことを踏まえ、費用対効果が薄いと判断しての事。代わりに両手で行使される魔法は、その性能を高めていた。ここが防衛線。
魔力弾を撃ちだす。圧縮されたそれは、ミコトの身体、その顔に向けて飛んでいく。彼女は斜めに結界を張り、それを弾こうと試み……そこで、タマモが魔法の性質を反転させる。
収束した魔力が一瞬にして散り散りになり。相手の視界を奪った。先程の出来事の繰り返しに、ミコトは即座に身を翻し、即座に走る。視界の先には、転移したタマモ。
2人は並走しながら、小手先の掛け合いを繰り返す。魔力弾を逸らし、作り出した障害物を払う。そうして一歩、ミコトが前に出た時。タマモの目の前に、その身を超える結界を張った。
同時、タマモも同じように、結界を展開する。彼女はミコトとは違い、それを妨害ではなく、自分の補助に使用した。足場にすることで、ミコトのそれを飛び越えたのだ。その先には──影。
「『穿羅──」
「ほんの一瞬」
詠唱か、舞か。どちらにせよ槍は未だ放たれることは無く、その手にとどまっていた。タマモは五指に魔力を込め、それをただ一点に集中させる。狙うは心の臓、生物の急所。
「遅かったわね」
指先から、収束魔力弾が撃ち込まれる。それは寸分違わず狙い通りの場所、彼女の左胸に着弾し……その体が斃れていく。槍を持つ手が力なく下がり、電池の切れた機械のように崩れ落ち、そして。
「愚人は」
「『夏の虫』……なんちゃって」
「な──」
そしてタマモは、それがキョウコではないと気づいた。
八雲サキだ。キョウコの声音で喋るその姿は、しかし確かにサキだった。彼女は目を見開き、思い至る。
彼女が真価を発揮する時は、今のような複数人で戦闘する状況。戦場の隙間、思考の虚を突くような魔法の使い方は、魔法とよく合っている。
だが。誰も彼も、魔法の複製という点にばかり注目する。それは、狐塚タマモも同じだった。だから、一杯食わされた。
「みんなの分と……ついでに姉の分です!」
「ついでに?」
サキが──サキの複製が弾ける。それと同時、背後で2人の声がした。本物のサキが魔導銃を構え、ミコトがそれを支える形で立っている。銃口はこちらを向き、その穴から光が漏れ。「凝弛」と「必中」、その二つが乗った弾が、トリガーを引くと共に放たれた。
「馬鹿な……」
そうして、それはタマモの心臓を。彼女が当てた弾と同じ場所、生物の急所を貫き。彼女の身体が後ろにぐらりと傾く。そしてごぽりと、口元から血が流れ落ち、そのまま意識が遠くなる中で──
──かちり、と。何かがはまるような。時計の針が合わさるような、そんな音を聞いた。
右足が後ろにずれ、傾いた身体を支える。焦点の合わない瞳を、紅の零れる口元を歪ませて、彼女はくつくつと笑った。
「ふふ……フフフフ……アハハハハ……」
異質な気配が、場を支配する。風が凪ぎ、音が止む。静寂の中、タマモの周囲の空間が歪んだ。
「おい、まだ動くのかよ……心臓穿ったんだぞ、そこは死んどけよ……」
「………………」
「どうしたサツキ」
「なんでもないです」
魔法は、詠唱や舞によって威力を増す。また、そのどちらかが前提となる技も存在している。
どちらにとっても、この戦いは最初から最後まで、時間稼ぎを目的として行われていた。魔法少女側にとっては、ミコトが来るまでの、サキの武器完成までの、またはキョウコたちが目覚めるまでのもの。誰か1人でも戦線に加われば、形勢はこちらに傾く。そう考えての策。
対して、狐塚タマモにとっては。もう一度、
「孤城真打」
「あークソ、何でこうなるんだ……」
2度目の真打。理論上は3回放つことのできるそれは、実戦では2度の行使でも困難を極める。魔力量の問題と、工程の重さの問題があるためだ。大抵の場合、戦闘が決着するまでに魔力総量は半分を切ること、そのような中では長い詠唱や舞は容易ではないことが原因だ。
しかし、タマモはそれを成し遂げた。圧倒的な魔力量、そして技量によって。この時点での彼女の魔力残量は、総量の3割5分。外せば一転して危機に陥るだろうが、至近距離にいるミコトたちには、その余波ですら凄まじい攻撃となりうる。実質、回避は不可能。
「ミコト……」
「やるしかねえだろ」
ならば、防ぐしかない。ミコトは印を結び、そして祝詞を口ずさむ。それと共に、通常よりも強固な結界が形作られていく。
「『片岡に露みちて、あげひばり名のりいで、かたつむり枝にはひ──」
周辺の魔力が一点に集まる。風も、熱も、光すらそこに集まるようであった。空間が歪み、割れんばかりの悲鳴が、そこから零れ出す。
「──神、空にしろしめす。すべて世は事もなし』」
「ほざけ」
それが嘘だったかのように、場に静寂が訪れると同時。凛とした声音が、祝詞を唱え終える。そして、「不変」を付与した結界を展開させた。その効果は永く、あらゆる攻撃を通さない、結界術の神域。
「
黒が放たれる。一直線に結界へ向かってくるそれは、着弾と同時に不変を削り取ろうとうねった。
極一点に収束された魔力は、しかし同時に命中するものすべてを霧散させる能力を持つ。魔法にすら干渉する魔法、それ同士の衝突。凄まじい衝撃がミコトを襲った。
「不変」が「凝弛」を拒絶しようとするが、圧倒的な威力を前に、少しずつ圧されていく。ミコトが結界の構築に使った魔力量は、身体に残ったその全て、総量の2割5分。たった5分の差だが、実数値にすれば、それは大きな差となる。神に対しては、不足。
「うるせぇーーッ!!」
そんなことは、ミコトも分かっている。真打への対応に防御を選択すること自体が、そもそも良くないのだ。真打による攻撃は真打によって対抗するのが基本。だが彼女は、3割を残すことが出来なかった。その程度では、あと10秒程度しか持たない。
それでも。一縷の望みをかけて、ミコトは結界を維持する。その身をもって、血を滲ませながらも支え続けていた。
残り8秒。ガリガリと音を鳴らして削れていくのを、その都度修復していく。それでも、削れる速度の方が早い。
残り5秒。軋みをあげながら、結界が震える。それを、奥歯を食いしばって食い止める。しかし攻撃は未だ重く、足が後退る。
残り3秒。ピシリという悲鳴が響く。見れば、結界に罅が入っていた。だが、それでも。
残り1秒。結界に入った罅が、蜘蛛の巣のように広がる。向こう側の衝撃が漏れ出た。もう、後がない。あと数瞬で、神域は崩れ去る。ミコトは片膝をつき……魔力が切れる。意識が遠のく。
「これで……終わりよ!!」
そうして。タマモは結界を食い破らんとする黒を迸らせ。にやけた顔と共に、確信した勝利を叫んだ。
「そうだな。終わりだ」
「あ?」
背中からの一突き。それはタマモの、今や薄くなってしまった身体を貫いた。血が滴り、焦げた肌を這う。ごろごろと、内で嫌な音がした。
緩慢な動作で、彼女は振り向く。不知火アカネが──満身創痍から回復した不知火アカネが、左手で剣を突き刺していた。何故生きている。何故立てる。何故……気づかなかった。
サツキとの戦闘の後、サキの加勢をする前。ミコトはアカネの元へとたどり着き、最低限の治療を施していた。タマモがやったように、失った人体を結界で代替したのだ。そして後は、祈った。彼女が意識を取り戻し、窮地を救ってくれることを。そうして、今。アカネは確かに、この土壇場に間に合った。
しかし、それだけで背後からの奇襲を無防備に受けるタマモではない。にもかかわらず、今の今まで全く気がつかなかった。余裕がなかったにしろ、この至近距離、しかも攻撃されるまで感知できないなんてことは、通常ではありえない。あり得ないはずなのだ。だから、通常ではなかった。
「ふ、ふざけ」
「焔真打」
刃が灼ける。炎が渦巻く。周囲の温度が跳ね上がる。振る必要はなかった。このままでいい。このままで、消し飛ばせる。一片も残さずに、魂すらも灰にすることが出来る。
ああ。この時を、どれだけ待ち望んだか。
「
「噓よ、こんな……こんな!!こんな──」
燃える。つま先から、耳の天辺まで、一瞬で炎に包まれ。凄まじい音と共に、業火がタマモを焦がす。その身は赤く、紅く染まり──
──そして、炎が消え。灰すら、風に流されていき。最期に残ったのは、白い煙のみだった。