TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
ところで、コメディ部分どうやって書いてたんだっけ……?
功罪の罪の部分
さて、我々には帰る場所がない。端的に言えば住む家が。
サルバシオンの本拠地は放棄されたわけだし、これ以上そこに居つくわけにもいかない。そして俺は実家に帰れば師匠にぶち転がされることが確定している身なので、帰るに帰れないのだ。まあサツキがうっかり喋ってしまったらその時点で終わりなんだけど……
なら、残り2人のうちどちらかの家にでも転がり込めばいいのでは、と考えると。マリの家なんて随分前に爆発四散しているし、サキの家にいたってはなんと解約されていた。驚きである。これもすべて狐塚タマモの卑劣なる策であった。アイツ手が早えよ。
となるとやっぱり、我々には帰る場所がない。アカネさんから貰っていたしゅごいお賃金も、今となっては心もとないわけで。で、途方に暮れていた時に、ヒトミちゃんが言ったのだ。
「地下3階に丁度生活スペースがありますし……誰も使ってませんから、そこに住めばいいのでは?」
「…………。いいのか?それ……」
というわけで。俺たちは魔法庁に──職場に住むことになったのである。家としてみればなかなか変な間取りをしているが、そんなもん研究所の頃からなので特に気にはならない。環境も快適で、特に文句もなし。何故か3人一緒の部屋で川の字になって寝ている点は気になるところだが。住み始めてから一週間ほど経った今でも、家の問題は特になかった。……人の問題はあるが。
「たすっ♡助けてくだひゃ♡あっ♡」
「で、どうしてこんなことになったんスか」
「それが聞いてくれよキョウコちゃん」
そうして俺たち2人は、何故か廊下にあった落とし穴に嵌っていたサキを見つけた。こんなもん昨日までは無かったんですけど。一夜にして胸まですっぽり入るぐらいの穴が出来てるんですけど。凄い喘いでるんですけど。
八雲サキとかいうど変態は、案の定と言うべきか、ここに住み始めるや否やえっちな生物を自分の手で作り始めたのだ。とうとうである。部屋が何個もあるので一室ぐらい使ってもいいですよね!と輝いた目で言われてしまえば否とは普通に言ったのだが、「魔法の研鑽」というもっともらしい理由で押し切られてしまった。
もはや俺やアカネさんの手など必要なく、魔法を駆使して1人生命創造を繰り返すサキ。悪から平和を守る組織の拠点の真下に悪の組織の拠点があるようなものだぞ、またマッチポンプを疑われたらどうするんだ。
加えて。複製体って普通は時間経過で消えたりするもんだろうに、あいつらときたらいつまで経ってもいなくならないのだ。つまるところ、複製したものの形状維持に時間は関係ないらしい。なんとまあ厄介である。
そしてそのせいで、度々彼女の部屋の外にえっちな生物が脱走する事態が起きるわけだ。気づいた時には俺が一刀両断しているのだが、気づけなかった時は犠牲になることもあった。サキが。ゆえに、今日もこうやって床に擬態していた生物の罠にまんまとはまっているわけなのだろう。
「いや、とにかく助けてあげましょうよ」
「この光景に慣れちまってさ……なんかもう急ぐ気も起きないんだよ」
一緒に来ていたヒトミちゃんが呆れ顔で俺を見て、サキの両手を引っ張って救出しようと試みる。しかしなかなか抜けず、やがて彼女は全力で身体を後ろに傾けた。それでもサキは抜けない。そして引っ張られた当の本人は、下で何かが起こっているのか身もだえしている。
「らめっ♡らめれす♡おかしくなっちゃう♡」
「既にだろ」
「元はと言えば、アンタがエロ生物作ったせいでしょうが!どうしてくれるんスか!」
両肩を掴んでぐわんぐわんと揺らしてくるキョウコちゃんの叫びを聞きながら、引っこ抜かれてべちゃべちゃになっているサキを見ながら考えてみる。…………本当にどうしよう……俺はとんでもない罪を犯してしまったのかもしれない。捕まるときは一緒だぞ、アカネさん。真っ先に売ってやるからな。
「いやあ、ありがとうございます。脱走に全然気づかず、まんまとヤられちゃって……」
「もう結界張っていいか?えっちな生物だけ通れないやつ」
「…………それ、もしかして私も入ってますか?」
「……」
「ちょっとォ!」
確かにそうしてもいいかもしれない。すれば流石に懲りてくれるだろうか。椅子でぴゃーぴゃー騒いでいるサキを見て……いや、多分駄目だな。それで止まってたら苦労はしない。彼女の執念は今なおえっちな生物へと向けられているのだ。ここまでくると生来のものなんじゃないだろうか。俺は訝しんだ。
ともかく、遊びに来てくれたキョウコちゃんとヒトミちゃんにお茶を入れる。マリは夕飯を買いに近所のスーパーまで行っているので不在だ。いよいよ主婦みたいになって来たが、むしろそのポジションを狙っている節があるのは何故なのか。
「何か困っていることがないかと尋ねてみれば……どうしてあんな事に?」
「植物型の怪物を作ってみたんですが、素材元に擬態能力があったみたいで。あ、これ苗です」
「うわお前出してんじゃねえそんなもん!」
すっ、とどこからともなく出した植木鉢を机の上に置くサキ。2人ともそれを見るなり距離を置き、椅子に背をぴったりくっつけていた。そりゃあそうだろうよ。
出されたものを見てみれば、確かに育った植物が花を咲かせていた。思っていたよりかは小さく、光が苦手なのか下の方を向いている。そして蔓がうねうね動いていて。で、人の体液を吸って成長するとか何とか。つまるところ、エロ同人で見るやつだ。……この表現、そういった作品を見たことのある人にしか伝わらないよね。
「創るにあたって、やっぱり先人の知恵は大事だと思いまして。ネットで購入した同人作品、姉の分を合わせた312作品を読み直しながら創造してみたんですけど」
「多すぎでしょう」
「3分の2は姉のです!」
「チ、チハル……」
一体何割がチハルの分なんだ。最近、彼女へのイメージがどんどんと崩れていくのを感じる。ろくでもない奴だったけれど、こういう方向性ではなかったはずなのに。血は争えないということなのだろうか。
サキは胸を張りドヤ顔をかまし……それが何か思いついたかのような表情に変わると、植木鉢をずいとキョウコちゃんの方に差し出した。
「キョウコちゃん、良ければどうぞ」
「いらねっス……」
「じゃあ、ヒトミさん」
「え。……じゃあ、一応……」
「無理して貰わなくていいから」
ヒトミちゃんがおずおずと手を出すのを横から制止する。質の悪い冗談に付き合う必要はないのだ。……冗談だよな?
サキは「こんなに可愛いのに……」とか言いながら頬を膨らませていた。事情を知らない人からすれば、彼女が寄生なりなんなりをされて母性を植え付けられてしまった哀れな子のように見えるかもしれない。そんなんだからキョウコちゃんから洗脳を疑われたんだぞ。
「そもそも、新しいのを作るのやめないか?サンちゃんがいるんだからさ」
「いーやーでーすー!まだまだ探究するんです!創ってない生き物がいるんです!蜘蛛にクラゲにフェイスハガー……!」
「悪の組織じゃん」
「あんたっス、あんた」
案の定というべきか、彼女の欲は収まることなく。自分で作れるようになってしまったせいなのか、留まるところを知らない。心なしか、作ることが最大の目的になっているような気もするが……でも蜘蛛はやめてあげて欲しい、マリがひっくり返るから。
「……まあ、この調子なら大丈夫そうですね。新生活にも順応しているということでしょう」
「ちょっと違う気もするっスけど……元気ならよかったっス」
ため息をつきつつも、その顔に微笑を湛える2人。きっと、今日の訪問も心配してくれたゆえのことだろう。当の本人は首をかしげているけれど。
サキが俺たちに誘拐されてからたった2か月だが、彼女にとっては何よりも濃い日々だったわけで。しかも、ようやっと日常に戻ったかと思えば、家が無くなってるし。
魔法を手にしたことで変わってしまう子は多い。今までの魔法少女なんて徴兵と変わらないし、嫌でも戦わせられるわけで。自信のあった子だって、妖怪を前にして動けなくなってしまうのが大体だ。それならまだしも、増長して一般市民に迷惑をかけ始めるようなのもいる。そうやって、壊れていく。
元をたどれば、魔法と呼ばれるもののせい。長きにわたって人類はその力を使ってきたわけだが、やはり少年少女には過ぎた力なのかもしれない。いや、大人ですら扱いきるのは難しいだろう。
「色々あった後ですから。一度心身を視て欲しいと、キョウコちゃんが」
「……また、見逃したくはないっスからね」
「そう、ですか?んー……そういうのは全然。大丈夫ですよ」
そう考えると、サキはそれに狂わされた側の人間だ。魔法によって俺たちに狙われて、巻き込まれていき、魔法少女として覚醒し、戦い……そして今、えっちな生物を作っている。…………着地点がどう考えてもおかしい。おかしいが。
「だって、失ったものより、得たものの方が多いですから!」
なんとも身も蓋もないような言い方だ。けれど、それでいいんだろう。心から笑えているのなら、今はそれでいい。随分と楽しそうな表情をするサキを見て、そんなことを思った。
「で、どうすんだよこれ……」
そうして、サキがキョウコちゃんと共に外へ遊びに行った後。彼女の研究室(仮)に結界を張って人間以外が簡単に出入りできないようにした俺は、居間の机にぽつんと置かれた触手植物を見て唸っていた。片付けてから行けよ、というなんとも親みたいな考えを抱いて。
「意外とおとなしいですね。明るいからでしょうか」
「まあ、床に穴を掘るほどだからね……相当光が苦手なのかも」
これがサキを弄んでいたのと同種とは思えないくらいには静かだ。まだ苗というのもあるだろうが……なんとまあ、よくこういったものを作れるもんだと感心してしまったり。若い子の発想力ってすごいわ。
しかし、成体になれば人を超える大きさになるようだし、育成環境を間違えなければいいとはいえ床に穴をあけられるのは勘弁してほしいし……総じてペットには向かない。当たり前だが。
「処分してしまうんですか?」
「そうだね。これ以上建物に被害がいっても困るから、サキに隠れて燃やしちゃうかな」
「でしたら」
ライターはどこだったかなとか考えていると、ひょいとヒトミちゃんが植木鉢を持ち。頬と耳を赤く染めて、なんだか……恥ずかしいような、サキで見たことあるような、そんな表情をしながら、口を開いた。
「その。良ければ……譲っていただけないでしょうか……」
……
…………
………………。
…………本当にどうしよう……
・あほ知識
元来、怪物の魔力は負に偏っているが、複製体の魔力は八雲サキ当人に依存し正となる。つまり、複製体ならば魔法少女の魔力を拒絶反応なく受け入れることが出来るのだ。光のえっち生物(???)を生み出せる唯一の存在、それが八雲サキである。