TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
絶対いるよなこの話、ということで挿入投稿させていただきました。
ついでに前話(次話)もちょっぴり修正しました。
「はァ……」
青い空、白い雲。弱くも日差しが降り注ぐ今日この頃。最近は晴れが多く、結構なことであるけれども……今日も平和そのものな天気の中、しかし私の心には影が差していた。理由は単純、買った同人誌が値段の割に微妙だったから。触手を期待したのに対人メインだったのだ。
販売数が少ないのは別に良い。でもサンプルが少なかったことと4桁円したことは考えるべきだった。衝動で買ってしまってはこうもなる。ぐう、セールまで待てばよかった。人の欲とは恐ろしい。何度もした過ちを、こうして繰り返しているのだから。くそう。
そもそもの話。空は青いのに、太陽は明るいのに、販売サイトにある異種ものの数は少ない。大体全体の1割程度だ。玉石混合、食指が動くものを探すのも醍醐味とはいえ、やはり母数が少ない事には悲しさを覚える。いきなり30倍くらいに増えないかなとも思うが、それはもう異変か。
まあ、それは置いて置いて。憂鬱になりながら向かうのは、ユキネさんとアカネさんが住む家。あの日以来忙しくて会っていなかったため、ふと思い立って、こうして押しかけに行っているわけだ。元気にしてると良いんだけれど。
ちなみに、教えてもらった彼女らの仮住まいであるアパートはよく知っている場所だったので、特に迷うこともなし。なんと元我が家……の隣の部屋である。嘘でしょ??なんで???
こんな偶然あるのかと、しばらく開いた口が塞がらなかった。二度聞きしたし。世界というのは、案外狭いのかもしれない。それにしたって狭すぎる。
そんなことを考えながら、右へ左へと住宅街を進む。しばらくそうしていれば、懐かしき見慣れた景色が見えた。二階建ての建物が見えればすぐそばだ。うどん屋と何でも屋が収まっているその建造物、その数件隣にある元我が家。曲がり角を曲がれば、丁度それが見えるところだった。
「……む」
しかし。一歩そちらに足を踏み出した時、ふと気配を感じた。魔力の反応と言ってもいい。肌感では負の魔力、つまり妖怪の可能性が高い。特に破壊音とかは聞こえないけれど……おそらく、近くにいる。こんな真っ昼間にとも思うけれど、意外と潮時だったりするのだろうか。
そう思いつつ反応を辿っていくと、公園にたどり着いた。昔、家に誰もいない時にここで時間を潰していたことを思い出す。大抵誰かがいて騒がしくしていたから、居心地が良かったのだ。……うーん、あんまりいい思い出ではない。
ともかく。何かよくないことが起こっている可能性を考えて、変身をしてから慎重に、入り口の柵を乗り越えていく。おばあちゃんたちがベンチに座って談笑しているくらいで、特に異変はない。なんか大丈夫そう……いやまだ分からないし、警戒するに越したことはない。
複製したキョウコちゃんの槍を両手で持ちながら、おずおずと進んでいく。といっても大して大きな公園でもないから、すぐに気配の主は見つかった。
シャツにスカート姿の女性が、ドームに滑り台がくっついたような遊具、その陰にあるブランコに座っている。そして地面を見つめ、深いため息をつきながらうなだれていた。なんというか、くたびれた社会人といった感じで。大きなミスをして上司にどやされたりしたのだろうか、なんとも不憫な姿。でも魔力の反応があるんですよね。
「はァ~~……」
「あ、あのぉ」
なんかもう心配していたことも起こりそうにないけれど、とりあえず話しかける。声をかけて数秒、自分に言われていることを認識したその人は、私を見るなり目を丸くして固まった。その様子は警戒しているというわけでもなく、ただ驚いているようで。
「なっ、わ、おおお?ど……同族!?」
「え、いや」
そして、座っていたブランコから急に立ち上がり。ビックリして一歩後退る私の姿をまじまじと見ながら、身体をベタベタ触って来た。肩を掴まれ、羽を触られ、もにもにと頬を揉まれる。なんですかいきなり!
「ううう、ひっさびさに見たわ……懐かしいなあ。おかん元気やろか……」
「ええ……?」
文句を言おうとしたが、ぶわっと涙を流してむせび泣き始めたその人に、何と反応していいのか分からなくなってしまった。何が琴線に触れたのかは分からない。泣くほどだったんですか?
とりあえずハンカチを渡せば、それで鼻をかまれた。すごい、流石は関西弁。ギャグというものを理解している。
「あ、すまん。ひたっとったわ」
と。私の困惑を察したのか、女性が正気に戻り。そして指を鳴らすと、風が彼女の身を包んで……そして姿が変わった。ハイレグ、ニーソックスにグローブ、そして悪そうな羽。ついでにそれっぽい尻尾まで生えている。私が鏡でよく見ている姿よりも近い。なな、なんと。
「ウチはリリ。見ての通り、アンタと同じ淫魔や」
「ひょわあ…………!!あ、サキと言います。私は──」
「ええ名前やん。親御さんサキュバスから取ったんやろな」
「え?????」
なんと。どうやら彼女……リリさんの正体は淫魔であるらしい。すごい、初めて見た。やっぱり、本物は質感が違うように感じる。うっひょう。サインとかもらえるだろうか。
……しかし何故か。何故か、私のことを同種族だと勘違いしているらしい。流石にそんなことはない。魔力の反応で違うとバレそうなものだけど、まったく疑われていないみたいだった。妖怪にも正負があったりするのかな。
あと名前の由来は絶対そんなんじゃないですよ。そんなとんでもない名前の付け方は、両親も流石にしないはず。どちらかと言うと姉がやるんじゃないだろうか。
「ウチ……よか年下やな。里から来たんか?」
「里?えっと、私はここの生まれで」
「おお、現地人か。だから気配に差異があるわけやな!」
あ、しまった。誤解が深まった気がする。違います、違うんです。私は淫魔じゃないんです。私のはあくまでコスプレだし、天と地の差があるし、そんな、恐れ多いというか。言おうと思ったけれど、彼女の嬉々としたような表情を見てしまっては、口をもごつかせるくらいしかできなかった。あと里って何。
「じゃなくて。その……魔力の反応があったので来たんですけれど。なんでこんなところに?」
「あ……すまんな、垂れ流してしもた。いや実は、勤めてた……会社?が、倒産してもうて」
「あらまあ……」
うーん。会社の部分にハテナマークがついているのが怪しい。もしかすると、それって実は悪の組織なのでは。でも、リリさんは淫魔って雰囲気とは少し違う気もするし*1……意外と本当に会社勤めなのかも?現代社会で普通に働いている妖怪……意外といそう。
「うう……休職?してる間にこんな事になるなんて思てへんかった……」
「そこにもハテナマークつくことあります?」
「いやな、申請してへんねん。出来なかったっちゅうか……実は、触手のねぐらに連れ込まれて、最近まで苗床なっとったんや──」
「詳しくお願いして良いですか!詳しく!!」
「うおうるさっ」
途方に暮れて困っている様子だったが、それどころではない単語が耳に入ってきたので思わず肩を掴んで聞いてしまう。ビックリして引かれたが関係ない、そんなえっ……恐ろし……えっちな話、聞かねば損である。そうしなければ詳細が気になって夜も眠れないのだ。同人誌と同様。
リリさんは口をもにゅもにゅして何か言いたそうにしていたが、私の顔を見て観念したかのように話し始めた。
「アンタも好きやなぁ……く、詳しく?えー……四肢を呑まれて、ガスみたいなのを吸わされて」
「おお!!」
「意識がぐらぐらしたところで腹にぬらぬらしたもん乗せられて、押し付けられて……そんなん、そんなんされたらウチ……」
「おお……」
「で、そのまま穴という穴に出し入れされたんや……上顎、子宮、そんで結腸。すごい水音がして、耳ん中まで舐めまわされて……う、うう……」
「おおお!!!」
もじもじと赤面で話すリリさんは、なんとも扇情的な雰囲気を醸し出していて、まさに艶というべきものがあった。今日はこれでいいか……?
しかし、やっぱり生の声というのは素晴らしい。他の人の話からしか得られない栄養というものは確かにある。ヒトミさんのも良いけれど、彼女は初心さが出ていて微笑ましい感じ。いずれ引きずり込むとして、今はまだ見守るべき段階だ。
対してリリさんの話はまさに現実に起こったエロ同人誌展開。そうなれば最後、普通なら死に一直線なもの。終わりの恐怖と共に興奮がやってくるこのいけない感覚こそ、私の好物である。
「なんでそない感動してんねん……」
「あ、すみません。異種姦が好きなので、つい……」
「ええ……筋金入りやな……」
「えへへ。でも、リリさんもそうなっちゃったんじゃないですか?」
「いやんなわけ……んなわけ…………。うう、ウチは普通やったのに……!」
頭を抱えて悶絶しているリリさん。性癖が捻じ曲がってしまったんだろう、だがそのことが認められないようだ。受け入れれば楽になりますよ。お手伝いしてもいいですし。ここでいきなりサンちゃんを召喚して……いや、私が悪の組織の手先みたいになってしまう、やめておこう。
「はあ……まあ、ともかく。数ヶ月くらいそうしてたんやけど……寿命でか、母体がぽっくり逝ったみたいでな。それで、なんとか這って逃げてきたんや」
「ほほお。で、帰ってきたら会社が倒産していた、と」
「そうなんや!ビルごと無くなっててな!?地下もあったんやけど、それも埋まってたし……上京してせっかく入った会社やのに……4年くらいいたのに……仲間はどこやねん……」
会社があったはずの場所が更地になって売りに出ていたらしい。土地の前で呆けて立ち尽くして、途方に暮れてしまったそうな。住居もそこだったそうなので、家が勝手に解約されていた私とほとんど同じようなものだろう。うう、分かりますよ。あの焦りと困惑と虚脱感が同時に来たような感覚……
「だ、大丈夫です!私もひどいもんでしたけど、最近はとてもいい思いをしてますから!人生、割と何とかなりますよ!私も出来ることがあればお手伝いしますし!」
「なんやねんその動きぃ……」
身振り手振りで励ますことを試みるけれど、およおよと泣くリリさんにはあまり効果がない。なんなら変な目で見られてしまった。キョウコちゃんはこれで元気になったが、駄目か。やっぱりサンちゃんか?やるしかないか?
「……。でも、そうやな。後ろ向きに考えすぎてもあかんか。ありがとな、もうちょい頑張ってみるわ」
「!はい!応援してます!」
淫魔っぽくない、穏やかな笑みをたたえて、リリさんは静かに頷いた。どうやら私の慰めにも、辛うじて効果はあったらしい。そんな表情を見て、私は彼女が報われてくれればいいな、と思い。
それから、一言二言会話を交わしたのち。連絡先を交換して、私たちは一旦別れることにした。ちなみに、ちゃんとサインはもらった(リリさんは困惑してたけど)。もしも頼ってくれた時は、精一杯の力を貸すことにしよう。ミコトさんたちに手伝ってもらうのもいいかもしれない。
……あれ、結局私が淫魔だって勘違いされたままじゃないですか?しかも加速しているような……
・あほ知識
サキの名前はサキュバスから連想して考え付いたので、リリの勘違いはある意味正しいです。ばかみてえな名前の考え方だな!