TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女   作:こばみご

28 / 29
評価感想ここすき誤字報告誠にありがとうございます。マジ感謝。めっちゃ遅れてごめん。
とりあえずでも投稿しないと私のエンジンは点かないみたいです。書き溜めできない体質……?


まずその恰好をどうにかしたらどうなんだ

 古今東西、仕事は辛いものである。どんなものであってもそうだろう。あと面倒くさい。出来ればやりたくないという人がほとんどのはずだ。かく言う俺もやりたくない。やりたくはないが、やらなければならないのである。お金のためにもね。

 

 で、俺は現在進行形で椅子に座りながらパソコンと睨めっこをしていた。新年気分が抜けきらないまま、あーだとかうーだとか唸りながら、ひたすらにキーボードを叩く。

 クリスマスから正月までは、魔法庁も基本静かになる。俺たちもゆっくり休めた。ここぞとばかりに妖怪たちが攻めて来そうなものだが、そんなこともなく、年末年始は平和そのものだったし。あいつらにも休暇とかがあるのかもしれない。

 

 それはともかく……いや、だからこそ。ゆっくりと休むことが出来たからこそ、長期休み明けこそが1番辛い事を思い出した俺は、非常にげんなりしながら指を動かしているわけで。精神的には、1~2か月前の徹夜続きよりも辛い。

 

 まあ、仕事内容自体は簡単なものなのが救いか。魔法庁はほとんどペーパーレス化をしているらしく、パソコンでほとんどの作業が終わるのは助かる。紙の束がドーンという奴を想像していたので、実は拍子抜けだったり。随分久々に23世紀を体感したような、そんな気分だ。いやまあ、俺がいた頃からこんな感じだったけれども。

 

「怪物のパラメータ、10ほど少ないかと。こちらは逆に多いです」

「そうですか?斬った感じはこれくらいだったんですけど……」

「まず、感覚で決めないでください……」

 

 マリとサツキがやいやい言いながら、怪物たちのプロファイルを作成している。内容は主に級位の割り当て、及び能力の数値化。こういったデータの積み重ねが、後々の魔法少女を助ける……のかもしれない。

 

 ということで、俺たちがやっている仕事は、サルバシオンの活動ともたらした被害をまとめることだった。……これを加害者本人にやらせるのってどうなんだよ。確かにこれ以上ないくらい正確だろうけどさ。知っていることをそのまま文字起こしすればいいだけだし。

 

 それに、2人が仕事を手伝ってくれているので、すごく楽である。マリとサツキが怪物たちの分類をやってくれているので、俺は事件の概要を書けばいい。紙じゃないからパソコンにかじりついていればいいし。

 

 強いて言うなら、両側から漏れる気迫が怖いくらいだろう。辛すぎて「手伝ってくれたらできる範囲で一つ言うことを聞く」とか言ってしまったのがまずかったのか、両者共に凄い勢いで仕事を片付けている。そしてなぜか互いが互いを目の敵にしていた。バチバチである。なんでだよ。別に優秀賞ではなく参加賞だよ。争う必要はないよ。

 そのせいでいまいち集中できないので、もう少し勢いを落としてほしい。それか俺を挟まないようにしてくれ。そして勝手に戦え!

 

 

 

「帰りました……へっくち!」

「あ、お帰り……なんか元気が無いな」

「まあ、ちょっと。というか、ミコトさんもじゃないですか?」

 

 そんなことを考え、ため息をつきながら休憩をしていれば、丁度サキが外出から帰ってきた。どこか元気のない様子で、くしゃみをかましている。寒さで風邪でも引いたのかと思ったが、そういうわけでもないようで。不満げに口を尖らせるサキに何があったのかを聞けば、まあなんともアホな話が返って来た。

 

「ユキネさんたちの所に遊びに行ったんですけど、道中で妖怪の気配がしたので、変身して向かったら……ベンチでうなだれてる淫魔を見つけたんですよ」

「はあ。なんというか、珍しいな、それは」

「そして同種族だと思われたんですよぉ!」

「それはそうでしょうね」

 

 変身したサキはハイレグにグローブ、ブーツを着用し、そして背中と頭に小さな羽が生える。ついでに髪色が薄紫に変わり……詰まるところ、お茶の間に出せないこともない程度の、一般的イメージの淫魔である。そうでなくとも悪魔っぽいので、どちらにしろ魔法少女には見えない。誤解はやむなし。

 

 淫魔はサキを見るや否や驚き、号泣したのだそう。同族に長いこと会っていなかったらしく、心細かったのだとか。で、色々話を聞いてあげたらしい。曰く、長い事していた休職から復帰したら、いつの間にか勤めてた会社が無くなっていたそうだ。……まあ恐らく悪の組織だろう。冬は悪の組織。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいと白きも……云々。

 

 出来れば捕まえて欲しかったが、妖怪にも無害な奴がいるというのが面倒な所。淫魔だというので無害かは怪しい所だが……まあ、奴らは合意を取るのが得意な種族なので、人死にが出ない限りはグレー止まりだろう。話を聞く限りだと、これからの生活を考え憂鬱になっていただけだし。

 

「嫌なのか?」

「嫌っていうか、恐れ多いです。私の衣装なんて、言ってしまえばコスプレじゃないですか」

「あ、リスペクトしてるんだ…………」

 

 どうやら淫魔に対して憧れとかそういうのあるらしい。やっぱり変な奴だよな、コイツ……。

 しかし、聞く限りだと否定をしなかったようだ。恐れ多いとか言うならそうしておくべきだったのではと言えば、渋い顔で言葉に詰まるサキ。

 

「だって、可哀そうだったんです……上京してようやく就職したのに、ひょんなことから苗床になって数ヵ月、気づいたら会社が倒産していたなんて!」

「結局そういう話じゃねえか!!」

「まあそうなんですけど、そんなのいつもの事じゃないですか。というか問題はそこじゃないんですよ!私が淫魔だと間違えられたことなんですよ!」

 

 正直どうでもいい話のように感じる。別にハイレグなんて魔法少女の基本装備だからそこはいいのだが*1、背中と頭にそれっぽい羽が生えているのだから言い訳のしようもないだろ。というか淫魔みてえなこといっつもしてるじゃねえか。事実陳列罪ってことか?

 

 言わば公式公認の淫魔(法少女)になったサキだが、それがどうにも認められないようだ。ぶーぶー言うその様は、駄々をこねる子供のようであった。いや、子供ではあるのだが、でも内容が内容だからな。

 

「そんなに嫌ならまずその恰好をどうにかしたらどうなんだ」

「あっそれユキネさんにも言われたんですよ!」

「言うだろ……そりゃあ」

 

 ユキネにも同じ話をして、同じ事を言われたらしい。アカネさんは苦笑していたとか。だろうね。まあ、サキは知らないのだろう。そういえば魔法少女の基本的なことを教えていなかったなと、彼女に向き直る。

 

「そもそも、細かい衣装変更なら普通にできるんだよ」

「え!?……これって後から変更できないものだと……」

「それじゃあ困る奴が昔にいたんだってさ」

 

 サキのように変な衣装(オブラートに包んだ表現)になってしまった魔法少女は意外といるのだ。流石にそんな恰好で妖怪と戦わせるわけにもいかず、魔法庁……まあ多分狐塚タマモなんだろうが、それが色々研究した結果、小さな衣装変更程度なら出来るようになったのだそう。

 

 魔法少女には因子がある。それがあるからこそ、魔法少女は魔法少女になり得るのだ。「マギア」と呼ばれるそれ、ビー玉程度の大きさをした魔力の塊の中には、固有魔法と……それに加えて、「強化」と「織魔(しきま)」の2つの魔法が搭載されている。

 それらは初級程度のものだが、痒いところに手が届くものになっており。俺は多分、これのおかげで生きているぞ。足を向けては寝られない。

 

「強化」はもっぱら身体強化に使い、「織魔」は変身時に衣装や武器を編むのに使う。これらは変身時にオートで使用されるが……それを任意で弄れるようになれば、幅が広がって素晴らしい、というわけだ。今回の肝は後者の魔法。まあ、「複製」でも似たことが出来るだろうが、こっちの方が消費魔力も少なく済むだろうし。習得の価値はあるだろう。

 

「で、どうする?」

「やります!こんな悲しい事は繰り返してはいけません!」

「まあうん……」

 

 どうするかサキに聞けば、もちろんやると返って来た。外行きの格好はしっかりするべきだ、とも。死ぬほどまともな事を言っていてびっくりしている。お前急に正気になるよな。その調子で家での振る舞いももう少し何とかしてくれないか?

 

「変身!変身解除!変身!変身解除!……んん?これ、ですかね?」

「……眩しいですね」

「そうさね……」

 

 ということで、サキに変身してもらい、解除してもらい……それを何回か繰り返す。それによって彼女の身体が光ったり光らなかったり……なんともシュールな光景。あと眩しい。季節が季節なので、イルミネーションを見ているような感覚である。

 しかし、それによって魔法が使用される感覚を掴むことが目的なので、我慢するしかない。それにしたってだが。ともかく、一応こいつは天才の部類なので、5回ほど繰り返した時点で魔法の感覚を理解した。

 

「なるほど……魔力で紡ぐ糸みたいな感じなんですね。で、これで衣装を弄ると」

「そういうこと。じゃあまあ、どうにか淫魔っぽさをなくしてみてくれ」

「はあ。えー…………うーん…………」

 

 これでサクッと衣装を弄る事ができるようになったわけだが、じゃあ具体的にどうすればいいのかというのは俺には分からない。やったことないし。

 そしてやはり、サキもピンと来ていないようだった。「淫魔っぽくない、つまりえっちではない衣装……?」*2と言ったきりフリーズしている。エロは得意なのに、逆は無理なんだ……

 

「淫魔と言えば肌の露出。つまり、タイツを着て肌色を隠せば大分マシになるはずだ!」

「なんか、実感こもってますね」

「私がそうだったんだよ……」

 

 と、横からサツキがアドバイスをする。そういえば、コイツも最初は際どい格好をしていた。くノ一の衣装は下半身が脆弱なのだ。というか、魔法少女全般そんな気がしてきた。

 ともかく。それを考えれば割と理にかなっている提案な気もするが、サキの場合はスカートを足せばいい話ではないだろうか。ハイレグのままにしなくたって……

 

 アドバイスに従って、サキが一般的な黒いタイツを生成する。少しずつ編まれていくそれが、サキの肌色を隠していき……そしてそれが止まった。着用した姿はというと……

 

「どうですか!?良くなりました!?」

「…………逆効果じゃないか?」

「なんでぇ!??」

 

 ハイレグの角度がそれなりにあるせいで、結局肌が見えていた。まるで、たまにある「何でそこに穴をあけてるんだ」って衣装のよう。それに、タイツのウエスト部分も見えてるし。隠さないとダメな部分だろ、そこは。……これやっぱりスカートいるんじゃないかな。

 

「つなげてしまえばいいじゃないですか。ついでに、上もインナーで隠しちゃいましょう」

 

 しかし、マリが妙案を口にする。確かにこれは魔法、現実のファッションよりも自由なのだから、それを生かさない手はないか。言われた通りにサキが魔力を操作し、さらに衣装を作り替えていく。少し時間が経てば、今までとはだいぶ印象の変わった姿になっていた。

 

「今度こそいいんじゃないですか!?」

「おお……確かにマシになったかもしれない」

 

 首元を覆ったインナー、指の部分が空いたグローブ。ハイレグとタイツが合体したものにブーツ。羽を加味しても、大分淫魔からは遠ざかることが出来たのではないか。これならば、誤解されることもないのでは……いや、どうだろう。俺も麻痺してるからな。体の線は見えてるし、やっぱりスカートは着けてないし。ニッチさが増しているような……

 

「ありがとうございます!これで私もまともな格好に……」

「まとも……まとも……?」

「あと寒くない!」

「ああ、やっぱあれ寒かったんだ……」

 

 冬にあの格好は、やはり堪えるらしい。帰ってきたときにくしゃみをしていたのは、やはりそういうことだろう。……決戦の日、実はすごく凍えていたんじゃなかろうか。薄着一枚着た程度で劇的に変わるわけではないだろうが、多少の効果はあるはずだ。風邪をひくことがないと良いが。

 

 

「それに……これでえっちのバリエーションが増えますね……ふふ……」

 

 そして直後にぼそりと、サキがそう呟いた。…………コイツもしかして変身しても色々やってんのか?それは……駄目じゃないか……?

 色々やって衣装を整えたわけだが。外見がいくら変わろうが、中身がこれじゃあ結局あまり意味がないのではないかと……俺はそう思った。

 

 


 

 

「調子はどうだい?」

「良い感じだね。ただ、ちょっと」

「ちょっと?……ああ、以前の力が出ぬか」

 

 とある施設の内部、装飾のまるでない質素な部屋で、3人が言葉を交わしていた。病院服を着ている1人は、四肢を閉じたり開いたりを繰り返し、自身の動きを確かめている。そして白衣を着たもう1人は、そんな彼女に眼を走らせながら、バインダーに挟んだ紙に何かを書き留めていて。そして薄い導師服を着た最後の1人が、無骨なベッドに寝転がり、2人を見つめていた。

 

 病院服の方が、魔力を操作する。指先をひょいと踊らせると、周囲のそれが彼女の元へと集まって行った。しかし彼女にとっては、それは振るわない結果だったようで。なんとも言えない表情をして、椅子にもたれかかった。

 

「そーいうこと。ほら……んー、やっぱり鈍ってるね」

「寝(・)起(・)き(・)じゃそうだろうさ。それに前の肉体とは別なんだから……まあ、慣れだよ」

「えー、面倒」

「そう言わないでくれ」

 

 口を尖らせて抗議する病院服を軽くあしらいながら、白衣の女はペンを走らせる。状態は良好、意志疎通の問題なし。魔力状態は元の7割程度……等々。回収した魔法少女の因子、それに紐づいていた魂を人造の肉体にはめ込んだのだ、経過観察は必至だろう。初めての例に内心うきうきの彼女は、苦戦しながら魔法を行使する病院服に再び体を向けた。

 

「まあ、動けるのなら重畳だ。約束は覚えているかの?」

「分かってるって。君たちに協力する代わりに、私は術を教えてもらう」

「そう。自分の目的が達成されたからと抜けるのもなしだ」

「それやるの、小学生くらいじゃない?」

 

 白衣の言に苦笑で返す病院服。だが納得もしていた。これまで戦った奴らは、外見はともかくとして、結局幼稚な奴らが多かったから。まあ、人間もそんなものなのだろうと、彼女は心中で付け加える。大人なんて、極めて稀な生命体だ。

 

 それぞれの目的のために集まった彼女らは、今のところは協力している。人探しやら、コレクションやら、偉大な計画やら。一見バラバラだが、意外にも噛み合いがいいようだった。だが、そうでなくなった時は迷いなく切り捨てるだろう。絶対やるという確信と、やられるという確信とがあった。仲がいいのか悪いのか。

 

「他にはいるの?」

「君と私とヤチエと……あともう1人。淫魔の子が丁度職を探していたみたいだから、雇おうと思ってね。個人的に都合も良いし」

「なんだお主、そういう趣味か?」

「違うよ」

 

 淫魔と聞いて身構えるが、しかし珍しくまともな存在らしい。仕事とプライベートは別だと言っていたそうな。なんとまあ、随分とできた子だと考えると同時。都合がいいってなんなんだろうかと、2人は疑いの目で白衣の女の方を見る。まなざしを向けられた彼女はそういうのではないと否定しているが……さておき。

 

「まあ、4人もいればいいんじゃない?それっぽくなってきたじゃん!冬は悪の組織、ってね!」

「……なんだいそれ」

「枕草子だろう。レイ、まさか知らんのか?」

 

 病院服は元魔法少女だったにもかかわらず、やけにはしゃいでいる様子だった。たまたま秩序側に立っていただけの彼女は、好き勝手出来る現状を意外と好意的に見ているようだ。他の魔法少女も──彼女もこれくらい軽ければなと、導師服の女、ヤチエは考えた。

 

「そういう意味ではなくてだね……ちなみに、他の季節は?」

「全部悪の組織」

「風情が無いな」

「無いねえ」

 

 くだらないことに笑う2人を、白衣……レイは呆れ顔で見ていた。しかし、実際にそうなのだから笑えない。春夏秋冬、いつでもどこにでも湧くのが悪の組織。虫だってもう少し配慮をしているというのに、年がら年中出現していては、風情もへったくれもないだろう。

 

 しかし思えば、テレビの中でも1年中戦っているわけだし。そもそも、これまでの悪事で季節を選んだことはない。元から自分らにはそんなもの存在していないことを察したレイは、1つため息をついた。

*1:
要出典

*2:
そもそも魔法少女という属性自体がえっちでは?という顔 手遅れ




後日談全然思い浮かばなかったので、とりあえず中編くらいのものを書こうと思います。1話完結は俺には無理だったよ……
そしてまたバトルがあります。大したもんでもないですが、嫌な方はごめんね。一応、本編より少ないぐらいの文量を予定しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。